
弥富の残土山問題と行政訴訟
- 訴訟の性質
- 今回の訴訟は民事訴訟ではなく、違法な処分の取消を求める行政訴訟である。
- 固定資産課税の問題
- 行政は地方税法に基づき、固定資産の価値を評価し課税を行うが、恣意的な差異があってはならない。
- 住民は専門知識がないため、不満があっても訴訟を起こすことが難しい。
- 裁判所の判断
- 盛土された土地には利用価値がないと認定し、弥富市の評価が違法であると判断。
- 評価替えの時期が不適切であり、国家賠償法に基づく損害賠償が認められた。
- 弁護士費用の賠償
- 地権者の弁護士費用50万円のうち10万円を被告に支払うよう命じられた。
- 弥富市の控訴
- 弥富市は控訴を行ったが、その理由が不明瞭であり、控訴権の濫用と見なされる。
- 行政事件であるにもかかわらず、民事事件のように扱っている点が問題視されている。
- 議会の同意の重要性
- 行政は議会に説明し、同意を得るべきであり、住民を無視することは許されない。
悪質業者の違法で強引な残土の持ち込みに端を発した、いわゆる弥富の残土山問題ですが、
今回の訴訟は民事訴訟ではなく「違法な処分の取消を求める行政訴訟」です。
例えば土地の売買の値段が高いとか安いとかいう契約自由の原則による、
対等の当事者間の争いとしての民事事件ではなく、
市民が違法な行政の取消を求める行政事件です。
ところで、皆さんは、普段は疑問を感じていない固定資産に対する課税処分。
これは行政が地方税法という法律と固定資産税評価基準という総務省の作成した基準に基づいて家屋や土地の価値を評価して、課税するものです。
課税の評価にあたって、恣意的な差異があってはなりません。
そんなことがあれば制度を揺るがすとも言えます。
多くの場合、住民の側は不満があったとしても、
専門的知識もなければ、裁判を起こすだけの気力もないので、仕方ないで済ましていると思います。
今回の訴訟で裁判所は、盛土された土地には利用価値がなく、盛土が出来た経緯や、ほかの市町村では違法な盛土地を農地として評価している事実を認定しそれに対して、弥富市の評価は、評価基準に反した違法な評価をしており、弥富市長は職務上尽くすべき注意義務を尽くさなかったと判断しています。
評価替えをする時期でも、評価替えの基準年である令和3年ではなく、年度途中の令和5年に評価替えをしたのは、特段の事情がないので、違法としています。
なので、通常ではなかなか認められない国家賠償法による損害賠償が認められています。
弥富市が適切に課税評価をしていれば、このような裁判を原告が起こす必要はなかったわけで、
そのためにかかった地権者の弁護士費用50万円のうち10万円を、国家賠償法を根拠として被告に支払いを命じています。
これに対して弥富市は、自分たちの主張を認めてほしいという漠然とした理由で控訴を行いましたが、
これは、客観的に見て大きく覆るとは思えません。
そもそもその理由がはっきりしないまま、とりあえず控訴だけしている点において、
控訴の権利を濫用している。市長がいたずらに住民を苦しめるものとして、許されないものだと思います。
行政事件であるにもかかわらずあたかも民事事件であるかのように装っている点にも問題があると思います。
行政事件であれば、少なくとも議会にきちんと説明をし、どういう形であるにしても同意を得るこれについては、東京都がそのように取り扱っています。
議会の同意を得ず、専決処分だと言って議会や住民を無視して住民を訴えるということは、行政のあり方として、おかしいと思います。