
住民訴訟の提起 弥富市長に対する損害賠償請求
この訴状は、原告(弥富市の住民)が弥富市長 安藤正明氏に対し、約730万円の損害賠償を求める住民訴訟を提起したものです。
訴訟の背景
弥富市は、国の子育て世帯等臨時特別支援事業補助金(住民税非課税世帯等への10万円給付)に関する事務手続きで誤りがありました。具体的には、令和3年度と令和4年度の事業実績報告を間違えて提出したため、愛知県から概算払いを受けていた補助金のうち、730万円を返還することになりました。
原告は、この730万円の損害は、市長が職員の選任や監督を怠ったことが原因だとし、民法715条1項の使用者責任に基づき、市長個人が弥富市に賠償すべきだと訴えています。
訴訟の主な主張
原告は、市長の責任として以下の点を挙げています。
- 担当職員の過失:
- 弥富市の担当者が誤った報告書を提出したことが、直接的な損害の原因。
- 市長の監督責任:
- 市長は職員の任免権と指揮監督権を持つため、公金の支出に関わる事務で職員がミスをしないよう、指揮監督する義務があった。
- 市長が「ダブルチェック」のようなミスを防ぐ体制を構築せず、重要な書類の作成・提出を職員任せにしていたことが過失にあたる。
- 人事異動の問題:
- 令和5年度の健康福祉部福祉課では、補助金事務の担当者(グループリーダー、課長、部長)が軒並み異動し、誰もこの事務に詳しい職員がいなくなった。
- この極端な人事異動により、適切な引き継ぎが行われず、服務規程が想定していない状況が生じ、結果的に報告書のミスにつながった。
- 市長の無関心:
- この補助金事業は、住民への10万円給付という市民の関心が高い重要な政策であったにもかかわらず、市長が「事業の詳細を承知していなかった」と答弁している。
- この市長の無関心が、不適切な人事異動や指揮監督権の不行使の原因だと指摘。
監査請求と提訴に至る経緯
原告は、まず令和6年11月14日に市長個人への730万円の賠償を求める住民監査請求を行いました。弥富市監査委員は、原告が損害の発生を知った時期に「正当な理由」があったと判断しましたが、市長に報告書のミスを予見できた可能性や指揮監督の怠慢は認められないとして、監査請求を棄却しました。
これを受け、原告は、市長が報告書のミスを防ぐ対策を取らず、市に損害を与えたことについて、職員の選任監督責任があるとして、今回の住民訴訟に踏み切りました。
求める判決
原告は、名古屋地方裁判所に対し、安藤正明市長が弥富市に730万円を支払うよう命じる判決を求めています。
弥富市 補助金返還問題に関する被告(市側)の主張と原告(住民側)の反論
この文書は、弥富市が補助金を返還することになった問題に関して、市側が主張する「やむを得ない事情」と、それに対する原告側の反論や疑問点をまとめたものです。
被告(市側)の主張と原告(住民側)の主な反論・疑問点
- A氏(当時のグループリーダー)の過失がないとする主張について
- 市側の主張:
- この補助金業務は初めての単発事業で準備期間が短く、複雑だった。
- 不足分を別の補助金で補填するという特殊な業務だった(ただし、原告はこの点を「誤り」と指摘)。
- A氏は愛知県の職員に十分に確認していた。
- 4月に学校教育課長に異動し多忙だったため、後任のB氏に十分な引き継ぎができなかった。
- 原告側の反論・疑問点:
- もし特殊な業務だと認識していたなら、組織としてもっと慎重に共有し、対策を取るべきだった。どのような対策を取ったのか示してほしい。
- 弥富市は県内の自治体で唯一この業務で失敗している。
- A氏が担当したのは初めての事業かもしれないが、「特殊な業務」とは言えない。むしろ、一人で文書を作成する体制こそが特殊ではないか。
- グループリーダーが起案者だとすれば、下位の職員がチェックする体制が機能せず、適切なチェック体制が取れていなかったのではないか。
- A氏が愛知県職員に確認したというが、対外的な連絡記録が残っていないのは組織の脆弱さを示している。
- 前任者に聞くこと自体が問題であり、組織として資料が共有され、引き継がれるべきだった。
- 追加交付まで受けていたのに、なぜ最終的に返還することになったのか。補助金を即時返還したこと自体がおかしい。
- B氏(後任の担当者)の過失がないとする主張について
- 市側の主張:
- B氏もこの業務の経験がなかった。
- A氏の異動により、十分な引き継ぎ時間がなかった。
- 原告側の反論・疑問点:
- グループリーダーの役割が明確に定められているのか? グループリーダー制度は決裁を容易にする半面、チェック体制が甘くなる可能性がある。
- 今回の決裁に財政課が関与していない点も問題。担当部長で決裁が完結している。
- 実績報告書は事実上「契約書」の意味を持つ重要な書類であり、500万円を超える決済規定(総務部長・財政課長の関与)が見落とされた可能性がある。これを見落とした市長の責任は何だったのか。
- 補助金の返還手続きについても見落としがあったのではないか。
焦点となる点
補助金返還の責任が、担当職員個人のミスだけでなく、組織全体の人事、チェック体制、そして市長の指揮監督といった 構造的な問題に起因している。
件名:令和7年(行ウ)第6号 損害賠償請求住民訴訟事件 準備書面(1)の要約
訴訟の概要と原告の主張
この文書は、原告(弥富市の住民)が弥富市長安藤正明氏に対し、約730万円の損害賠償を求める住民訴訟に関する準備書面です。
原告は、弥富市が補助金を返還することになった原因は、市長の人事権行使の過失と指揮監督義務の怠慢にあると主張しています。
原告が指摘する問題点
- 極端な人事異動:
- 令和5年度に、補助金事務を担当していた健康福祉部福祉課のグループリーダー(A氏)が異動し、後任者(B氏)も未経験で、引き継ぎが不十分だったと市は主張。
- しかし、原告は、グループリーダーだけでなく、福祉部長や福祉課長までが同時に異動しており、福祉課内で補助金事務を知る者が誰もいなくなったことを指摘。これは市が定める服務規程の趣旨を無効にする「異常な人事異動」だと主張しています。
- 市長自身も議会でこの人事異動の過失を認めているとしています。
- 市長の指揮監督権の怠慢:
- 市は補助金事務の特殊性や困難性を主張しますが、愛知県内で弥富市以外の54の自治体は同様の誤りを犯しておらず、客観的な困難性はないと原告は反論。
- 本来、市長が指揮監督権を行使し、財政課など他の部署の職員に補助金作成業務の協力を命じていれば、誤りを防げたと主張。
- 特に、市自身が「異例の取り扱い」と認識していたにもかかわらず、市長が何ら指示しなかったことは、職務の困難性ではなく、市長の指揮監督権行使の怠慢であると断じています。
- 市長の無関心:
- 問題の補助金は、住民税非課税世帯への10万円給付という市民の関心が極めて高い重要な事業であったと指摘。
- しかし、市長が「事業の詳細について承知していなかった」と答弁していることは、市長自身の事業への無関心を自認するものであり、これが不適切な人事異動や指揮監督権の不行使につながったと主張しています。
結論
以上の点から、原告は、弥富市長が事業の重要性を十分に認識せず、不適切な人事異動を行い、かつ必要な指揮監督権を行使しなかったことにより、補助金に関する誤記が発生し、市に730万円の損害を与えたと結論付けています。
したがって、市長は民法709条に基づき、弥富市に生じた損害を賠償する義務があると主張しています。
「弥富市の出す情報がもう信用をできないことについて 一連の不祥事に共通する問題点は組織の管理監督能力じゃないですか?」 令和6年12月 一般質問