
弥富の未来を創る!
〜7世代先を見据えた総合計画への提案〜
はじめに:私たちは、どんな未来を子どもたちに届けたいだろう?
私たちは日々の暮らしの中で、ついつい目の前のことに追われがちです。しかし、少し立ち止まって考えてみませんか? 「弥富というまちを、これからどんなふうにしていきたいだろう?」と。
ネイティブアメリカン(別名:インディアン)の人々は、何か物事を決めるときには「7世代先」のことまで考えていたと言われています。約200年先、つまり今の私たちから見れば、江戸時代末期にあたる時間感覚です。
この弥富の地で、私たちのご先祖様は、水害と闘いながら農地を開拓し、商売を興し、様々な知恵と工夫でこの地域を「弥栄(いやさか)に富む弥富」へと築き上げてきました。例えば、弥富のシンボルである金魚は、江戸時代末期に郡山(奈良県)から江戸など東の消費地へ運ぶ途中、弱った金魚をこの木曽三川河口の良質な水で休ませたのが始まりと言われています。また、度重なる洪水で川底が上がってしまった佐屋川や佐屋港が使えなくなり、港が弥富の焼田、そして前ケ須へと移っていった歴史。さらに、明治時代には、村田さんという人が、今の名古屋の東海通から十四山を通って前ケ須へ至るルートを「東海道」にするよう政府に働きかけ、実現させたという記録もあります。
これらの歴史は、先人たちが未来を見据え、困難を乗り越えてきた証です。では、私たちは、200年先、あるいはもっと身近な「30年後」の未来に、どんな弥富を残せるでしょうか?
- 30年後、弥富の人口はどうなる?〜未来を見据えた計画の必要性〜
「30年後」と聞くと、少し遠い未来に感じるかもしれません。約30年前の1995年頃、日本全体でも弥富でも、65歳未満の現役世代の人口はピークを迎えていました。その後、人口全体は大きく減っていないように見えても、実は65歳未満の人口は既に約2割も減少しています。例えば、近鉄弥富駅の乗降客数も、この間2割減とほぼ同じ傾向を示しています。
そして、これから先の30年後、2055年には、様々な予測がありますが、私たちの人口構成はさらに大きく変化すると言われています。この100年間で日本の人口が約6000万人から1億2000万人を超えたように、またこれから6000万人程度まで減少すると予測されています。このような大きな変化の波の中で、私たちは弥富の未来をどう描くべきでしょうか?
- 弥富市「総合計画」の役割と未来への道筋
弥富市には、市の未来像を描く大切な計画があります。それが「総合計画」です。これまでに「第1次弥富市総合計画」「第2次弥富市総合計画」が策定され、今まさに「第3次総合計画」を立てる時期を迎えています。
この総合計画は、大きく分けて二つの要素で成り立っています。
- 基本構想(ビジョン)
これは、弥富が「どんなまちを目指すのか」という長期的な夢や方向性を示す部分です。今の総合計画では10年間を計画期間としていますが、本当に大切なのは、ネイティブアメリカンのように「7世代先(200年後)」をも視野に入れながら、少なくとも「30年後」の弥富の姿をビジョンとして市民が描くことです。
- 歴史認識の重要性: 弥富がどのような自然環境にあり、どのような地理的・歴史的背景(地政学的な立ち位置)を持ってきたのか、そして地域の人々の暮らしがどのように変化してきたのかを、きちんと振り返る必要があります。
- 市民目線のビジョン: 現在の状況をしっかりと見つめつつ、未来に起こりうる変化を予測し、市民の皆さんの目線で「何が足りないのか」「何を伸ばしていくべきか」を深く考え、ビジョンに落とし込みます。
- 市民全員で考える機会を: 「弥富や愛知、日本、世界のこれからを真剣に考えたい」という思いのある人々(おそらく人口の約2割の方々)が、積極的にこのビジョン作りに参加し、深く議論することが重要です。 また、「今は忙しくてなかなか難しいことを考える余裕はないけれど、まちの未来には関心がある」という中間層(おそらく人口の約6割の方々)の声も丁寧に聞き、共感できるようなビジョンを共に創り上げていく必要があります。そうしなければ、この先30年、あるいは200年の弥富の進む道を誤ってしまうかもしれません。
- 若い世代が主役のビジョン: 特に、これからの弥富を担う30代以下の若い世代が、未来のまちづくりについてじっくりと話し合い、主体的に関わっていくことが不可欠です。
- 「長老の知恵」と反省: もちろん、経験豊富な「長老の知恵」も非常に重要です。しかし、それは単に過去の成功体験を語るだけでなく、私たち(昭和のバブル期を生きてきた世代)が過去に「何を先送りにしてきたのか」「本当に正しい投資をしてきたのか」といった反省をふまえた、未来への提言でなければなりません。今の社会にみられる「今だけ、自分だけ」といった風潮に流されず、未来の世代のために何ができるかを考えることが、真の「長老の知恵」となるでしょう。
- 基本計画(実行プラン)
これは、基本構想で描いたビジョンを実現するための具体的な手段や、行政がどのように行動していくかを示す部分です。
- ビジョン実現のための手段: 基本計画は、単に既存の政策を「業務の棚卸し」のように合理的に実施するだけでなく、基本構想という「夢」を実現するための具体的な「道筋」として、論理的、かつ科学的に作られるべきです。
- 広範な視野で考える: ビジョンを作る際には、弥富市だけでなく、名古屋大都市圏という「強力な引力を持つ都市」との関係、そして木曽三川流域や伊勢湾を含む中部圏という広範な視野(パースペクティブ)を持って考えることが重要です。そうすることで、弥富の真の立ち位置と可能性が見えてきます。
- 住民の声を基盤に: 行政の内部資源を積み上げるだけでなく、市民の声を真摯に聞き、市民の皆さんが弥富の未来、さらには日本や世界のこれからについて深く考えるきっかけを作り、その声をビジョンに反映させるプロセスが不可欠です。
この二つの階層(基本構想と基本計画、その下に実施計画)が連携し合うことで、総合計画は、弥富の未来を拓く羅針盤となります。
- 未来を創るために、今、始めること
- 若い世代が主役の議論の場: これからの弥富を担う40代以下の若い人たちが、少なくとも30年、できれば200年後の未来の地域をどう創っていくか、じっくりと話し合える場を、市として、あるいは海部地域全体として設けるべきです。
- 世代を超えた対話: 長老世代は、自らの経験と反省を「知恵」として若い世代に伝え、共に未来を考える対話の場を築くことが求められます。
- 地域を超えた連携: 弥富単独ではなく、海部地域全体で協力することで、より多くの人々が参加し、広範な視点から未来を議論できる場を創っていくことができるでしょう。
このプロジェクトを通じて、弥富の豊かな歴史と先人たちの知恵を学び、未来への羅針盤となる総合計画を、市民一人ひとりの声と共に創り上げていくことを目指します。