
弥富の農村地域の未来と持続可能性
弥富市の農村地域も、人口減少や社会の変化という大きな課題に直面しています。特に、農業の担い手や地域のコミュニティがどのように変化していくかは、弥富の未来を考える上で避けて通れない重要なテーマです。
現代の農業と地域のつながり
今、日本の米の生産は、「オペレーター」と呼ばれる大規模な農家や農業法人が主力になりつつあります。彼らは広い範囲の農地を借りて耕すことで、効率的な農業を実現しています。しかし、その「借りている農地」や、それを取り巻く水路、道路などの管理は、実際には昔からその土地を守ってきた中小規模の農家の方々が、採算を度外視して支えているのが現状です。
- 二階建ての構造: 効率的な米の生産を支えているのは、この「オペレーター」というプロの農業経営者と、先祖代々受け継いだ土地を、たとえ採算が厳しくても守り続けている**地元の中小規模農家(地域の集落)**という、二階建てのような協力関係があるからなのです。
- 「不在地主化」の兆候: 少しずつ、名古屋や東京、あるいは海外へ引っ越してしまい、実際に農地に住んでいない「不在地主」となる農家も現れています。しかし、現時点では、ほとんどの農地は地元の集落(農村コミュニティ)によって守られています。
農村地域の「スポンジ化」という課題
見た目には立派な家が並んでいても、その中身が空っぽの「空き家」が少しずつ増えている現象を、私たちは**「スポンジ化」**と呼ぶことがあります。まるで穴の開いたチーズのように、地域に住む人が減り、中身がスカスカになりつつある状態です。これは、単に建物が壊れる「物理的な崩壊」だけでなく、地域コミュニティそのものが衰退していく深刻な兆候です。
この農村地域の「スポンジ化」は、弥富市だけでなく、愛知県、国、そして自治会レベルに至るまで、真剣に向き合い、対策を講じる必要があります。
豊かな農村地域を未来へ繋ぐために
- 人が住み続けられる環境づくり: 農村地域に人が住み続けられるようにするには、単なる「ばらまき」のような行政施策ではなく、そこに住む人々が「安心して暮らせる」環境が不可欠です。例えば、子どもを育てられる教育環境、高齢になっても移動や買い物がしやすい交通・商業環境、そして困った時に医療を受けられる体制など、生活全般を支える政策が必要です。
- 地域の文化と誇りを育む: 行政が一方的にサービスを提供するだけでなく、その地域に伝わる文化を大切にし、地域の人々が「この地域に住んでいること」に誇りを持てるような取り組みを進めることが重要です。
- 農業と他産業との調和: 農村地域の基幹産業は農業ですが、農業だけで地域を維持していくことは困難になりつつあります。人が住み続けたいと思える暮らしを実現するためには、農業と、それ以外の産業(例えば、地域の特産品を活かした加工業、観光業、あるいはテレワークを可能にする情報インフラ整備など)との調和を考え、多様な仕事や生活の選択肢がある地域を目指す必要があります。
大規模な「オペレーター」が米を生産してくれるからといって、人がいなくても良い、というわけではありません。豊かな農村地域は、そこで暮らし、地域を守り、文化を育む人々がいるからこそ、持続可能な地域となるのです。弥富市は、この現実を深く認識し、農村地域の未来を真剣に考えていく必要があります。