⛵ 教育改革のパラドックス:「ハコ」に熱中し、「中身」の危機が棚上げ!
校歌とスクールバスに集中する裏で、生徒の半数が「無気力・不安」の危機
弥富市の総合教育会議では、小学校再編(よつば小学校)や地域部活動移行といった大規模な「構造改革」が着実に進む一方で、子どもたちの心の健康に関わる喫緊の教育危機への戦略的議論が後景に退いていることが浮き彫りになりました。
1.【熱量ミスアライメント】「どう運営するか」が「何を教えるか」に勝利
市は、21億円の新設校の校歌制定やスクールバス経路といったロジスティクスに膨大なリソースを投入し、詳細なスケジュールを組んでいます。
- しかし、再編で目指すべき「新しい学び」や、深刻化する教育課題を解決するための具体的なカリキュラム戦略についての言及は薄く、「箱」の整備が「中身」の質に優先されている状況が懸念されます。
2.【心の危機】不登校の半数を占める「無気力・不安」に戦略なし
生徒指導報告で、小・中学生の不登校理由の**半数近くが「無気力、不安」**であるという衝撃的な統計が明らかにされました。これは、生徒が学校生活への関与(エンゲージメント)を決定的に失っている構造的な危機です。
- 議論の不足: 会議での対応は、カウンセラー増員といった「対症療法」に留まり、この**「無気力」を教育的・授業改善的な視点からどう払拭するか**という根本的な戦略的議論が欠けていました。
- ICT依存の加速: 不登校の要因として、スマホやゲームへの熱中が顕著に増加。市長が「メーカーが制限を付けた電話を出してほしい」と発言するなど、技術の進化スピードに行政の対応が追いついていない状況です。
3.【地域連携の難航】期待された「主体性」が行方不明
学校跡地利活用や地域部活動移行において、市長自身が「地域の意向が一番大事だが、市はどうするんだという話ばっかり」と述べ、地域側が主体的な計画を立てるという行政の期待が実現していない現状が露呈。行政が財政的な「テコ入れ」を通じて関与せざるを得ず、改革が新たな行政負担と不確実性を生んでいる可能性が指摘されます。
結論: 弥富市は、構造改革の膨大なエネルギーを、生徒の「無気力」という根本原因を断ち切るための教育戦略に振り向けることが、今、最も求められています。
令和6年度 第2回弥富市総合教育会議:要約
本会議の議論は、教育の質そのものに関わる核心的な問題が深刻化しているにもかかわらず、その対応策が大規模な組織再編とロジスティクスの議論に圧倒され、後景に退いている状況が浮き彫りになりました。
1. 構造改革の先行と実効性の懸念
弥富市は、小学校再編と中学校閉校という二大構造改革に、最も多くのリソースを割いています。
- 小学校再編(「よつば小学校」開校準備):
- 焦点の偏り: 校歌制定、スクールバス経路、PTA組織確立など、開校までの形式的なプロセスとロジスティクスに議論が集中しています。特に校歌制作は2027年まで詳細なスケジュールが組まれており、準備の熱量は評価できます。
- 教育内容の欠如: 一方で、再編によって目指すべき「よつば小学校ならではの学び」や、増加傾向にある不登校・無気力といった喫緊の教育課題を解決するための具体的なカリキュラムやプログラムについての言及は薄く、「どう運営するか」が「何を教えるか」に優先されている印象です。
- 地域連携の難しさ: スクールバス利用と児童クラブ利用に関する意向調査の回答率が初日2割程度に留まっており、地域住民の関心や協力体制の構築に課題が残ることが示唆されました。
- 学校跡地利活用と地域部活動展開:
- 地域主体の不成功: 市長からも、跡地利活用において「地域の意向が一番大事」としつつも、現状は「市はどうするんだという話ばっかり」であるという懸念が示されました。これは、地域側が主体的な利用計画を立てるという行政の期待が実現していない現状を露呈しています。
- 行政代行の困難: 休日部活動の地域展開については、受け皿となるべきNPO法人が「だいぶ荒れてます」と市長が発言するなど、既存の地域組織の活用に難航しており、行政が財政面での「テコ入れ」を通じて関与せざるを得ない状況です。学校の負担軽減を目指す地域移行が、かえって行政側の新たな負担と不確実性を生んでいる可能性が指摘されます。
2. 喫緊の教育危機に対する戦略的議論の不足
生徒指導報告において、弥富市が直面する最も深刻な教育上の危機が統計として明確に示されましたが、会議内での議論は報告に留まり、具体的な戦略的対応の議論が不足していました。
- 「無気力・不安」の危機: 小・中学生の不登校理由として、「無気力、不安」が半数近く(小50%、中48%)を占めているという統計は、学校生活における生徒のエンゲージメント(関与度)が決定的に低下していることを示しています。
- この構造的な問題(子どもの無気力化)に対して、SC/SSWの増員やマニュアル作成といった対症療法的な支援体制の強化は行われているものの、学校教育課から、この「無気力」をどう払拭するかという教育的・授業改善的な戦略が提案されていません。
- ICT依存の蔓延と対応の遅れ: 不登校の要因として、スマートフォンやオンラインゲームへの熱中が顕著に増加していることが報告されました。
- 保護者による制限が子どもによって容易に解除されるなど、技術の変化スピードに学校・家庭・行政の対応が追いついていない状況が浮き彫りになりました。市長から「メーカーが制限を付けた電話を出してほしい」という発言があったように、個別の家庭指導だけでなく、社会全体の構造への対策が求められています。
3. 総評
本会議は、長年の懸案であった構造改革(学校再編)を形式的には着実に進めていますが、その膨大なエネルギーが、不登校の過半数を占める「無気力・不安」の根本原因を断つための教育戦略を検討する時間を奪っているように見えます。学校という「ハコ」と「制度」の整備に終始し、「中身」である教育の質や生徒の心の健康への積極的な介入策が棚上げされている懸念が残ります。
令和6年度 第2回弥富市総合教育会議 議事録
1. 開催日時・場所
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 日 時 | 令和7年3月4日(火) 午前10時45分~ |
| 場 所 | 弥富市役所まちなか交流館2階 会議室 |
2. 出席者・説明者
出席者
- 市 長: 安藤 正明
- 副市長: 村瀬 美樹
- 教育委員会:
- 教育長: 高山 典彦
- 教育長職務代理者: 阿部 康治
- 委 員: 浅野 美喜子、矢野 浩一、宇佐美 貴江
- 歴史民俗資料館長: 伊藤 隆彦
- 生涯学習課課長: 飯塚 義子
説明者
- 教 育 部 長: 渡邊 一弘
- 教育部次長: 柴田 由美子
- 学校教育課課長: 田畑 由美子
- 学校教育課主幹: 入山 宗弘、三浦 聡
- 学校教育課課長補佐: 日原 友美
会議内容
5. 開会
〇 部長より 令和6年度第2回総合教育会議を始めさせていただきますので、どうぞよろしくお願いします。次第にもありますとおり、今、教育委員会で進めています小学校の再編、また中学校の再編、そして跡地の話を少しさせてもらいながら進めたいと思います。地域の部活動展開という教育委員会のテーマがありますので、これらについて本日のテーマとさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
6. あいさつ
〇 市長より おはようございます。本日は足元の悪い中、年度末ということで大変お忙しい中、総合教育会議にご出席賜りまして、誠にありがとうございます。(中略)
- 十四山中学校の閉校: 78年という長きにわたり地域の子どもたちを支えてきた十四山中学校が、いよいよ3月24日に閉校の時を迎えます。教職員、保護者、地域の皆様に改めて感謝申し上げます。
- 新たな出発: 閉校は区切りですが、新たな出発でもあります。子どもたちは大人以上に柔軟に対応できる耐性の持ち主であり、弥富中学校へ行って1日も早く慣れ、大きく成長されることを願っています。
- 卒業式: 中学校は3月7日、小学校は3月19日に卒業式を迎えます。教育委員の皆様のご出席をお願い申し上げます。
- 本日の議題: 弥富市の子どもたちの未来に向けての有意義な会議になりますことをお願い申し上げ、冒頭のあいさつとさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
〇 部長より ありがとうございました。
7. 議題
(1)小学校再編整備方針について
〇 三浦主幹より
- 再編委員会: 2月26日に実施。学校運営、教育計画、施設資料、通学スクールバス、PTAの全5部会で構成。
- ア. 交流活動:
- 2月19日(水)に現2年生(未来の6年生)による初めての対面交流を実施。様子を再編だよりとして配信し、保護者・地域からも反響があった。
- 令和7年度は全学年での交流を検討。来年度4月から5月に第2回教育計画部会を開催予定。
- イ. 校歌制作について(資料②)
- 作曲: 音楽の専門性が求められるため、弥富市にゆかりのあるヤトミウインドアンサンブルに謝金なしで依頼を検討中(11月3日に受託意思表示済み)。
- 作詞: 地域に愛されることを重視し、言葉やフレーズを公募とする。
- 校歌制定委員会: 応募フレーズを編集・作詞するため、教育委員会が委嘱した10名程度で組織(作曲者含む)。
- 校歌制作スケジュール(主要な点)
- 3月4日:総合教育会議で説明
- 7月18日~8月18日:歌詞に入れたい言葉・フレーズ募集期間(夏休み期間)
- 令和7年9月~11月:制定委員会で作詞作業
- 令和8年1月~12月:作曲開始
- 令和9年1月:校歌完成発表
- 令和9年6月上旬:青少年健全育成大会でヤトミウインドアンサンブルの伴奏で発表
- 令和10年4月:開校式
- ウ. 校舎(施設資料部会)
- 2月19日に第2回施設資料部会を実施。次回は5月中旬頃に第3回を予定。中学校の施設資料部会をお手本に進める。
- エ. スクールバス(通学路スクールバス部会)
- 現在、バス停候補地と運行経路を具体的に検討中。徒歩通学路の検討も進める。
- 意向調査: 「よつば小学校開校時における児童クラブの利用についての意向調査」を3月10日までGoogleフォームで実施中。下校時のバス利用児童数把握が目的。回答率は約2割(約260家庭中57件回答)。
- オ. その他(PTA部会・学校運営部会)
- PTA部会: PTA規約確認や組織・役員選出方法の作成を進めており、令和7年9月ごろまでに方針を決定予定。
- 学校運営部会: 校歌制作について協議。
〇 市長より ありがとうございました。
(2)中学校再編について
〇 三浦主幹より
- ア. 交流事業(資料③)
- 1月30日:十四山中・弥富中の1年生合同で職業講話を実施(プロソフトテニスプレーヤー、市役所職員が講師)。市役所の仕事への興味を持たせるなど良い刺激となった。
- 3月13日:合同上級学校説明会(保護者含む)を予定。
- 3月21日:6小学校の新中1と在校する十中・弥中の生徒との合同交流会を予定。
- 保護者への周知: 不安解消のため、学級編成や教職員配置、心のケア、弥富中学校編入出張説明会(来週火曜日に十中で実施予定)などを明文化し、保護者に発行。
- イ. 十四山中閉校式(資料④)
- 日時: 3月24日、9時20分~10時10分。
- 式次第: 市長式辞、校長式辞、来賓あいさつ(国会議員予定)、卒業生代表あいさつ、生徒代表の言葉、校歌斉唱、校旗返納(教育長へ)、教育長による閉校宣言、閉式の辞。
- 来賓: 総勢61名が出席予定。
- ウ. その他
- 3月13日(木)に最後の中学校再編委員会を開催予定。
〇 副市長より 中学校再編委員会だよりはこれが最後となるのか?
〇 次長より 閉校式後にも、4月19日に「シン弥富中」としてあと2回ほど発行する予定。
〇 副市長より 十四山の校旗は閉校後どうなるのか?どこかに飾っておくのか?
〇 教育長より 部活動の優勝旗などを飾るスペースに一緒に入れてもよいかと考えている。子どもたちの思い出のためにも、どこかに飾ることを検討したい。
(3)教育委員会における学校跡地利活用について
〇 部長より
- 教育委員会としても、財政、都市計画、児童課など多岐にわたる課と連携し、跡地利活用計画を進めている。
- 進捗: 跡地利活用基本方針を教育委員に提示し、市長部局で進めていた公共施設配置の資料に基づき、学校やグランドの面積、考え方について協議を開始している。
- 結論の目途: 今夏前までを目途に、グランド利用率なども踏まえて議論を進め、利活用の方向性を定めたい。
〇 市長より
- 栄南小学校のように地域で利活用実行組合が立ち上がるのは大変良い。市としても地元意見を吸い上げやすくなる。
- 現状は「市はどうするんだ」という声が多いが、地域の意向が一番大事。地域にまずは利用していただきたい。
(4)部活動地域展開の進捗について
〇 部長より
- 教育委員会での大きな課題。令和9年9月から土日・休日の部活動を学校から切り離し、地域展開していく方針を校長会を通じて進めている。
- 目的: 地域でスポーツ・文化活動に親しんでもらうため、地域指導者にお願いしていく。
- 進捗:
- 野球: 「弥富クラブ」としてこの4月から動き出し、地域の指導者のもとで指導が開始される予定。競技種目を深くやりたい子どもたちの新しい場所となる。
- その他: 吹奏楽など、他にも動きが出せないか地域に働きかけ中。
- NPO活用: 他の自治体で活用されている総合型スポーツクラブ(NPO)を、本市でもテコ入れし、受け皿として強化したい(来年度予算化予定)。
- eスポーツ: 部活動とは異なるが、弥富中学校で麻雀などで大会優勝者が出るなどの活動もある。
〇 副市長より 弥富市部活動地域展開推進協議会設置要綱の1月23日付けは、準備委員会の開催日か?まだ正式な発足ではないのか?
〇 教育長より 1月の日付は準備委員会の日。団体の役員や校長先生が変わるため、正式な発足は4月以降、5月ごろになる予定。
8. 報告事項
(1)スクールカウンセラー・SSWの活動について(資料⑤)
〇 次長より
- スクールカウンセラー(SC): 3名配置。小中連携に注力し、同じSCが巡回できるようにした。中1ギャップ軽減のため、小6への授業や教職員研修会を実施。
- スーパーバイザー(SV): 夏休み中に研修会を実施し、先生方の意識変容が見られた。SVを中心に、学校と市教委、SCの役割分担などを網羅した「弥富市教育委員会緊急支援の手引き」を作成。
- スクールソーシャルワーカー(SSW): 2名配置(学校教育課籍と日の出小学校籍)。児童課や福祉課との連携がスムーズになり、早急な支援が可能に。
- 教育相談コンダクター: 中学校再編に向け1名配置。十四山中で保護者懇談会に同席し、特別支援学級の交流会などにも携わり、次年度は弥富中に籍を置く。
- 次年度に向けて: 教育相談コンダクターを校長OBなどもう1名増員し、教職員支援や多忙解消にも力を借りる予定。
- 切れ目のない支援: 令和8年からはアクティブ、カラフルを十四山支所に移転し、平日に発達検査などができるようにするなど、学校外での相談体制の充実を目指す。
(2)いじめ・不登校者数等報告(資料⑥)
〇 入山主幹より
- 不登校者数(令和7年1月末現在):
- 小学校:44名(90日以上欠席16名)
- 中学校:68名(90日以上欠席27名)
- 出現率(県平均との比較):
- 小学生:2.6%(県平均2.4%)→ 弥富市の方が高い
- 中学生:5.9%(県平均7.4%)→ 弥富市の方が低い
- 不登校の最も多い理由: 小中学生ともに「無気力、不安」が最も多く、小学生で50%、中学生で48%を占める。
- 新たな傾向: スマホ、オンラインゲームに熱中するあまり生活リズムが不規則になり、不登校となるケースが増加。
- 課題: 小学校から中学校へのスムーズな接続。ネット依存を防ぐための学校・家庭連携による未然防止・早期対応。
〇 副市長より 小学生でもスマホを持っているのか?夜9時までや、親による時間制御などはなかなか浸透しづらいか?
〇 入山主幹より 低学年からスマホを持つ子どもが多く、高学年になるとほぼ全員が持っている状況。子どもがパスワードを解除するなど、親が制限をかけることが難しいケースが多い。
〇 市長より 電話メーカーが自動で電源が落ちるなど、フィルタリングが万全の「子ども向け」の電話を出してくれると良い。
(3)その他
〇 副市長より 小学校再編に伴うスクールバス部会での議論に、**スクールガード(地域見守り隊)**の体制強化も併せて進めていけるか?
〇 部長より 進めていかなければならないと考えている。バス利用区域では送迎がなくなるため、バス停までの見守りをお願いしているが、地域のボランティアであるため、なかなか難しいという声も聞かれる。十分にご理解いただいたうえで進めてまいりたい。
〇 副市長より 区長会など様々な機会を通じて、地域の方々に見守りへの声掛けを続けてほしい。地域力向上にもつながる。
9. 閉会
〇 部長より では、これをもちまして、第2回弥富市総合教育会議を閉じさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
