📝 公金管理は”ブラックボックス”? 弥富市行政に潜む二つの危機
日付未記入から遊具の危険放置まで—組織の「内部統制」が機能不全
弥富市の定期監査結果は、「法令におおむね適合」としつつ、形式的なミスの多発と子どもの安全に関わる本質的なリスクの軽視という、行政運営の根幹に関わる重大な問題を浮き彫りにしました。
1.【安全の危機】危険な遊具を「使用可」にしたリスク管理の欠如
十四山東部小学校では、C判定15基、D判定3基という危険な状態の遊具を、ほとんど「使用可」としていたことが判明。事務処理の正確性以前に、子どもの安全という最優先事項に対する行政のリスク管理意識が極めて低いことを露呈しました。
2.【公金管理の危機】「補助金事務」が学校に丸投げされる構造
弥富北・弥富中学校における補助金事務の指摘は、最も深刻な行政構造上の問題を指摘しています。
- 権限の混同: 市から交付される公金(市の歳出)の支出決定プロセスを、市役所(学校教育課)ではなく学校側が作成・実施している。これは、行政が自らの**「公金管理責任」を現場に転嫁**し、責任を曖昧にしている構造が疑われます。
- 事務のブラックボックス化: 交付申請や請求といった重要な公金処理手続きに正式な行政内部の決裁(起案)がないケースが存在。いつ、誰が、なぜ公金を決定・執行したかの記録が残っておらず、行政監査や議会チェックの機能が麻痺する原因となっています。
3.【基礎事務の危機】「砂消し訂正」と「備品シール忘れ」
保育所では、6万円超のテレビに備品シールが貼られていないなど、公有財産の基礎的な管理が不徹底。さらに、公文書である年次有給休暇処理簿を**「砂消し」で訂正**するという、公務員としての公文書管理意識の低さが指摘されています。
結論: 監査報告書は、弥富市役所全体で内部統制の機能が著しく低下していることを示唆しています。特に公金処理と安全管理に関する構造的な問題は、形式的な注意ではなく、行政の根本的なプロセス設計の再構築を必要としています。
弥富市のホームページから
- 定期監査結果報告書 (PDF 384.0KB)
弥富北中学校、弥富中学校、十四山東部小学校、弥生保育所、南部保育所
監査結果の整理分析
1.監査の全体的な評価:形式主義への傾倒と本質的な問題の軽視
監査報告書は「法令に適合し、正確に行われ、最少の経費で最大の効果を上げるように努めていることがおおむね認められた」としつつ、多数の指摘事項(措置を要する事項)と留意事項を挙げています。
視点:
- 形式的な問題の多さ: 指摘事項の多くが、日付の未記入、履行確認日の未記入、鉛筆での修正、書類の保管場所の散在、決裁区分の誤りなど、事務処理の基本的な手順やルールの不徹底に関するものです。
- これは、職員個人の意識の問題だけでなく、組織全体として内部統制(内部でルールを守らせる仕組み)が有効に機能していないことを示唆しています。
- 本質的なリスクの軽視(遊具の問題): 唯一、子どもの安全に直結する重大な問題として「十四山東部小学校の遊具保守」が挙げられています。C判定15基、D判定3基という危険な状態にもかかわらず、ほとんど使用可としていた点は、「事務の正確性」よりも「子どもの安全」という最優先事項への意識が低いことを示しています。これは行政のリスク管理能力の欠如を露呈しています。
2.学校施設(中学校)における補助金事務の問題(最も深刻)
弥富北中学校と弥富中学校における補助金事務の指摘事項は、学校と市の「会計処理の役割分担」に関する根本的な混乱を示しています。
| 指摘事項 | 意味する問題点 | 弥富市の行政構造上の課題 |
| 日付の未記入 | 補助金事務における基本的な書類(申請書・実績報告書)の作成ルールが徹底されていない。 | 単なるミスではなく、補助金が適正に執行されたことの証明能力の欠如。 |
| 支出負担行為決議書等を学校が作成 | 市から交付される補助金(市の歳出予算)であるにもかかわらず、その支出の決定プロセスを市(学校教育課)ではなく、学校側が実施している。 | 【権限と責任の混同】 補助金は市の公金であり、その執行手続きは市役所側で行うべきです。学校にこの作業をさせるのは違法性を含む可能性があり、行政が自らの「公金管理責任」を学校に転嫁している構造が疑われます。 |
| 起案文書の未作成 | 交付申請や請求といった重要な公金処理手続きに行政内部の正式な決裁(起案)がない。 | 【事務のブラックボックス化】 誰が、いつ、どのような理由でその補助金を決定・執行したかの記録が残っておらず、行政監査や議会チェックの機能が麻痺する。 |
【結論】
中学校での補助金事務の混乱は、弥富市役所全体として「補助金(公金)の適正な流れ」に関する指導・管理ができていないことを示しています。これは、学校教育課の監督責任が問われる事項であり、形式的な注意ではなく、根本的な公金処理プロセスの再設計と全職員への教育が必要です。
3.児童福祉施設(保育所)における備品管理の問題
保育所(弥生保育所、南部保育所)に関する指摘は、備品管理の不徹底に集中しています。
| 指摘事項 | 意味する問題点 | 課長級所長の役割と課題 |
| 備品シールの未貼付 | 弥生保育所で6万円超のテレビに備品シールが貼られていない。台帳の記載漏れも散見される。 | 【基礎的な資産管理の欠如】 備品は市の公有財産であり、紛失・盗難防止のために厳格な管理が求められます。この不徹底は、課長級所長の「管理職としての基本責務」が機能していないことを示しています。 |
| 物品不要決定書の処分方法未記入・台帳削除漏れ | 処分した備品の記録が不完全で、備品台帳から削除されていない。 | 簿外資産・負債を生む原因となり、財産管理の正確性を損なう。所長が公務員としての物品管理の重要性を理解していない可能性がある。 |
| 年次有給休暇処理簿の砂消し訂正 | 公文書である年休処理簿を砂消しで訂正している。 | 【公文書管理意識の低さ】 公文書の訂正方法(取消線と訂正印)は公務員として必須のルール。公文書に対する厳正な意識が低い。 |
【結論】
保育所における指摘事項は、課長級所長が日々の「行政事務管理者」としての責任を十分に果たしていないことを示しています。
