弥富市の入札問題、本当の「本丸」とは?
〜「お仲間内のルール」から抜け出し、健全な競争を取り戻すために〜
市役所が「これからは工事の上限価格(予定価格)を事前に公表して、クリーンにします」と発表すると、一見とても良い改革のように聞こえるかもしれません。
しかし、公共工事の仕組みを深く見つめると、それは根本的な解決にはなっていません。弥富市が抱える一番根深い問題(本丸)は、価格の公表ウンヌンではなく、「指名競争入札(市役所が参加者を選ぶ古い方式)」に固執し、「一般競争入札(誰でも参加できる全国標準の方式)」への移行を避けていることにあります。
この仕組みが、地元の建設業界や私たちの税金にどのような影響を与えているのか。市民の皆様にもわかりやすく、3つの視点から詳しくひも解いていきます。
1. 「選ばれたお仲間」だけの競争が、企業の成長を止めている
指名競争入札とは、市役所が「今回はこの数社だけで競ってください」と招待状を出す方式です。この最大のデメリットは、「競争が起きないこと」にあります。
例えば、今の農業の世界を想像してみてください。 「やる気があって新しい技術を取り入れる農家にはどんどん支援をし、そうでないところには補助金を出さない」という、厳しいけれど自立を促す流れになっています。
しかし、弥富市の建設業界(公共工事)はどうでしょうか。
「待っていれば、市役所から順番にお呼びがかかって、利益の出る仕事がもらえる」という環境が続けば、企業はどうなるでしょう。
「最新の機械を導入してコストを下げよう」「社員の技術を徹底的に磨いて、他社より安く早く良いものを作ろう」という企業本来のハングリー精神や成長意欲が削がれてしまいます。
結果として、意欲があって本来もっと大きく伸びるべき優秀な会社が、いつまでたっても「横並び」のまま伸び悩んでしまうのです。
2. 他の街では30年前から起きている「前向きな新陳代謝」
「一般競争入札(実力勝負)」を基本としている他の市町村では、すでに30年も前から、業界の健全な「新陳代謝(世代交代や企業の再編)」が進んでいます。
具体的なエピソードをご紹介します。
ある地域の70歳を迎えた建設会社の社長さんが、会社を畳む決断をしました。「もうこれ以上、社員を養って会社を良くしていく気力も体力もない」という理由です。
「会社がなくなる」と聞くと悲しい話に聞こえますが、実はそうではありません。
彼が長年育ててきた優秀な現場の職人やスタッフたちは、これから伸びようとしている地元の元気な会社が「ぜひうちに来てほしい!」と喜んで全員引き受けてくれました。
また、会社にあった中古のダンプカーやショベルカーも、スクラップにするより、その元気な会社が買い取ってくれたのです。
長年付き合いのあったお客さんも、しっかりと引き継がれました。
これが、正しい競争がある世界での「前向きな会社の畳み方(事業承継)」です。
仕事がない会社から、やる気と実力のある会社へと「人」と「機械」というバトンが渡される。
こうして地域の中に、より強くて筋肉質な建設会社が育っていくのです。
3. 弥富市に必要なのは、一時的なパニックを恐れない「開国」
他所の地域が30年かけてこうした新陳代謝を繰り返し、強くてたくましい企業を育ててきたのに対し、弥富市だけが古い仕組みを守り続け、いわば「鎖国状態(ガラパゴス化)」にあったと言えます。
ずっと「幕府(市役所)」の顔色をうかがい、言うことを聞いていれば安泰だった企業たちが、いきなり「一般競争入札(開国)」に直面すれば、確かに最初はパニックになるでしょう。
いわば、弥富の建設業界にとっての「明治維新」です。
「競争になったら地元の会社が全部潰れてしまうのでは?」と心配する声もあるかもしれません。
しかし、決して弥富の会社に実力がないわけではありません。
現場で働く職人さんたちの技術や真面目さは、他地域の企業と比べても遜色ないはずです。
ただ、その実力を100%発揮するための「開かれた競争の場」が与えられてこなかっただけなのです。
まとめ:今こそ、本当の改革を
私たちが求めるべきは、単に「価格を公表する」という表面的なルール変更ではありません。
市役所が持つ「業者を選ぶ権力」を手放し、実力のある会社が正当に評価され、成長できる「一般競争入札」へ移行すること。
一時的な摩擦や痛みを伴ったとしても、この「開国」を成し遂げなければ、弥富市の行政も、地元経済も、本当の意味で強くなることはできないのです。