小林節 慶応大学名誉教授、長谷部恭男 早稲田大学法学学術院教授 「憲法と安保法制」① 2015.6.15
1. 重要なキーワード
今回の議論の土台となっている、法学・政治学上の重要用語です。
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立憲主義 / 法の支配: 権力者(政治家など)を憲法というルールで縛る仕組み。
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法的安定性 / 論理的整合性: 政府の憲法解釈において、過去から一貫して守られるべき論理の筋道。
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個別的自衛権 / 集団的自衛権: 自国を守る権利(個別)と、同盟国を守るために他国へ赴く権利(集団)。
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専守防衛: 相手から攻撃を受けた時にのみ防衛力を行使する日本の基本姿勢(小林氏は自衛隊を「第2警察」と表現)。
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砂川事件(砂川判決) / 統治行為論: 政府・与党が集団的自衛権合憲の根拠として持ち出した過去の最高裁判例と、高度な政治判断を要する問題に対する司法の姿勢。
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武力行使の一体化 / 大森4要素: 自衛隊の後方支援が、他国の武力行使(戦闘)と同じ行為とみなされてしまうかどうかの判断基準。
2. 刺さる言葉(抜き書き)
お二人の発言の中でも、特に比喩が秀逸で本質を突いている「刺さる言葉」を厳選しました。
小林節 教授の言葉(情熱的・本質的な政治批判)
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「憲法を無視した政治を行おうとする以上、これは独裁の始まりなんです。」
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「壁との論争って辛いですよね。発展性ないですよね。」(論争の前提となる理解が通じない政府・与党の姿勢を揶揄して)
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「法的にも政治的にも経済的にも愚策である」
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「都合悪くなると急に聞こえなくなって『お前らど素人だ』という扱いで……政治家なんてのは実は選挙で当選しただけで何の資格要件もないわけですから」
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「自衛隊員は日本国の公務員ですから、必ず任官の際に(日本国憲法の遵守を)宣誓してるわけですよ」
長谷部恭男 教授の言葉(論理的・皮肉の効いた法的批判)
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「藁にもすがる思いで砂川判決を持ち出してきたのかもしれませんが、藁は所詮藁。それで浮かんでいるわけにはいきません。」
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「車のキーを忘れた夫に『取ってきてくれ』と言われ、タンスから日記帳まで家中のありとあらゆる鍵を持ってきた妻と同じ議論」(自衛権の「一部」を認めた砂川判決を、集団的自衛権「すべて」の容認にすり替える論理の飛躍を批判)
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「自分にとって都合の良いことを言った時は『専門家』とし、都合の悪いことを言った時は『素人』という侮蔑の言葉を投げつける」
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「自軍のゴールが危険にさらされているにも関わらず、味方の選手を相手側のフィールドに拡散させるようなもの。愚の骨頂です」(限られた防衛力を地球規模に拡散させることへの安全保障上の批判)
3. 論点整理
お二人の発言から読み取れる「安保法制案」に対する主な論点と問題提起は、以下の4つに整理できます。
① 集団的自衛権行使要認の「違憲性」と「論理破綻」
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小林氏: 憲法9条の下で日本が持てるのは「警察の延長(第2警察)」としての専守防衛力のみ。海外へ軍隊を派兵し、他国の戦争に参加する集団的自衛権の行使は明白な憲法違反。
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長谷部氏: 昨年(2014年)7月の閣議決定は、「個別的自衛権のみが許される」という従来の論拠を用いて「集団的自衛権も許される」と主張しており、論理的に破綻している。法案の文言上の「限定(歯止め)」も機能せず、法的安定性が完全に失われている。
② 政府の根拠「砂川判決」と「統治行為論」の誤用
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両氏共通の指摘: 砂川判決の争点は「日本に駐留する米軍の合憲性」であり、日本の「集団的自衛権の行使」など全く問われていない。無関係の判例を根拠にするのは法律学の基本原則に反する。
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小林氏: 統治行為論とは「司法が判断を政治部門に委ねる(最終的には主権者である国民が選挙で決める)」ことであり、「政府が憲法違反をしても良い」という免罪符ではない。
③ 「後方支援」による武力行使の一体化リスク
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長谷部氏: 従来設けていた「戦闘地域と非戦闘地域の区分」を廃止し、弾薬の提供や発進準備中の航空機への給油を認めることは、外国軍隊の武力行使との「一体化」そのものである。現場の状況が刻々と変わる中で、一体化の判断を現場任せにするのは極めて危険。
④ 日本の「安全保障」としての実質的な愚かさ
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小林氏: 中東などの泥沼の紛争に「アメリカ軍の二軍」として参戦すれば、日本は自らテロの標的となり、これまでの「中立な調停者」としての国際的立場を失う。
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長谷部氏: 安全保障環境が厳しくなっていると言うのであれば、なおさら限られた防衛力(自衛隊)を地球の裏側に拡散させるべきではない。また、日本が米国の戦争に協力したからといって、米国がいざという時に日本を助けるとは限らない(米国憲法上、連邦議会の承認が必要であるため)。
