「自己啓発」は古い体制から身を守る無敵の盾!
〜伝説の「放し飼い公務員」に学ぶ、最上位目標とキャリアデザイン〜
はじめに:今の若手は、すでに「優秀」である
めざすべき職員像、最後のテーマは「自己啓発とキャリアデザイン」です。
とはいえ、デジタルネイティブであり、子どもの頃から自然とスキルアップに励んできた今の若手職員の皆さんに対し、今さら「自己啓発をしましょう」とお説教をするつもりはありません。
知識や最新のツールを使いこなすスキルにおいて、皆さんはすでに50代の役職者を遥かに凌駕しているはずです。
だからこそ、この最終章では、従来の「公務員像」をあえて疑い、皆さんが公務員という仕事の「本当の醍醐味」を味わいながら、自由にキャリアを描くための戦略をお伝えします。
1. 庁内の「縦割り」を捨て、「斜め上のメンター」を探せ!
今の時代、自己啓発本を何十冊も読み漁るよりもはるかに価値があるのは、自分のロールモデルとなる「メンター(相談相手・導き手)」を見つけることです。
直属の上司や先輩である必要はありません。
むしろ、部署が違う「斜め上の先輩」や、市役所の外にいる人がベストです。
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オンラインの海へ飛び込む: 「オンライン市役所」などの公務員コミュニティや、Facebookの勉強会グループは検索すればいくらでも出てきます。
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アウェイでの出会い: 他自治体の熱意ある公務員、NPO法人で活躍する人、地域活動のリーダーなど、外の世界で「この人、面白いな」と思える人に出会ってください。
いずれ皆さんが30代、40代になったとき、今度は皆さんが「斜め下の後輩」たちを導くメンターになってほしいと願っています。
2. 古い「公務員像」を疑え
今の50代の役職者の中には、最新の経営学や人材育成の知識に触れる機会がないまま、ただ「先輩の言うこと」を聞いて上り詰めてきた人も少なくありません。
皆さんが彼らを見て「ギャップ」や「古い」と感じるのは、ある意味で当然のことです。
これまでのハンドブックで述べてきたコンプライアンスや人権といった「絶対に守るべき一線」は存在します。
しかし、それ以外の「公務員とはこうあるべき」という固定観念は、一度疑ってかかってください。
毎日の売上や利益を追う民間企業とは違い、公務員の仕事は「価値の測定」が難しいものです。
しかし、だからこそ「ストレートに市民の幸せ(価値)を追求できる」という、究極の特権を持っています。
3. 伝説の「放し飼い公務員」が教えてくれたこと
ここで、私が若かりし頃(1980年代)に出会い、私の公務員人生のメンターとなったある人物のエピソードを紹介します。
それは、東京都世田谷区で出会った自称「放し飼い公務員」の児童館職員でした。
当時の児童館には、学校に行けない(行かない)子どもたちが集まっていました。
彼は「児童館の施設の中」という枠組みに一切囚われませんでした。
子どもたちが望めば一緒に遠足に行き、果ては市民ボランティアを巻き込んで、公園に廃材を持ち込んだ「冒険遊び場(羽根木プレーパーク)」の設立という歴史的な偉業の裏でキーマンとして動いていました。
彼は笑いながらこう言いました。
「俺は放し飼いの公務員だ。給料をもらいに行く時だけ区役所に行って、あとは自由に子どもたちのために働いている」
これこそが、公務員における「最上位目標」の体現です。
「児童館という施設を管理すること」が目的なのではなく、「そこに来る子どもたちの幸せ」が最上位目標です。
その目的のために必要な行動を、組織の枠を超えてストレートに実行する。これほど贅沢で、ダイナミックな仕事のやり方があるでしょうか。
4. 「自己啓発」を、自分を守る“無敵の盾”にする
最上位目標に向かって真っすぐ動こうとすると、時に「面倒くさがりな先輩」から冷ややかな目を向けられることがあります。
「なんでそんな余計なことをするんだ」「なんでわざわざ休みをとって、自腹でそんな勉強会に行くんだ」と。
そんな時、彼らにいちいち自分の熱意や理想を説明して理解してもらう必要はありません。代わりに、この言葉を魔法の盾として使ってください。
「自己啓発です」
「休暇をとってどこに行くの?」「自己啓発です」。
これだけで十分です。自己啓発とは、単なる趣味ではありません。
皆さんが外で得た知見や人脈は、最終的に「市民の幸せ」に直結する最高の投資です。
周囲のノイズから身を守り、自分の信じる「公務員像」を追求するためのマジックワードとして、堂々と「自己啓発」という言葉を使い倒してください。
おわりに:公務員という「最高の遊び場」へようこそ
公務員の仕事は、言われたことをこなすだけのルーティンワークではありません。
最上位目標を見失わず、自分の頭で考え、行動する人にとっては、これほど地域に大きなインパクトを与えられる面白い仕事はありません。
この『オンライン職員ハンドブック』が、皆さんの日々の迷いを晴らし、古い慣習から身を守る「盾」となり、そして未来を切り拓く「武器」となることを心から願っています。自信を持って、あなたらしいキャリアを楽しんでください!
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地方自治体における次世代人的資本の構築とキャリアデザイン:最上位目標、越境学習、および「放し飼い」パラダイムの統合的考察(自分の考えをAIで検証補強)
序論:行政マネジメントの転換期と「シン・職員ハンドブック」の戦略的意義
現代の地方自治体は、気候変動に伴う激甚災害、人口減少、多文化共生、そして高度に複雑化する市民ニーズなど、かつてない規模の社会課題に直面している。
こうしたVUCA(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)の時代において、従来の「前例踏襲」や「法令の機械的執行」のみを旨とする官僚制パラダイムは、急速にその有効性を失いつつある。
行政組織が持続可能な公共価値(Public Value)を創出するためには、組織を構成する職員を単なる「消費される労働コスト」として扱う旧来の視点から脱却し、継続的な投資によって価値を増幅させる「最大の資産(人的資本)」として再定義するパラダイムシフトが不可欠である 。
本報告書は、こうした時代背景のもと、弥富市において構想されている若手職員向けの「オンライン職員ハンドブック(シン・職員ハンドブック)」の最終到達点である「目指すべき職員像と自己啓発(キャリアデザイン)」のパートに対する包括的な理論的支柱と実践的枠組みを提示するものである。
幼少期からデジタルネットワークに接続し、自律的なスキルアップに慣れ親しんだZ世代の若手職員に対し、旧態依然とした上意下達のマニュアルを押し付けることは極めて非効率である 。
彼らに真に必要なのは、厳格な規則の羅列ではなく、判断に迷った際に公務員としての原点に立ち返るための「羅針盤」であり、自らの市場価値を高めながら組織をアップデートしていくための「戦略マップ」である 。
本稿では、現在の行政組織にはびこる世代間ギャップや構造的病理を紐解きながら、組織の枠組みを超越する「斜め上のメンター」や「越境学習」の重要性を論じる。
さらに、手段の目的化を防ぐ「最上位目標」の哲学、そして1980年代の世田谷区で実践された「放し飼い公務員」という先駆的なロールモデルを統合し、次世代の公務員が目指すべき究極のキャリアデザインと自己啓発のあり方を詳細に分析する。
第1章:官僚制組織の構造的病理と世代間ギャップの顕在化
「ヒラメ文化」とOJTガチャがもたらす組織の硬直化
現在の地方自治体において中枢を担う50代の管理職層の多くは、現代のような高度な経営学、心理的安全性、デザイン思考といった組織開発の科学が自治体に浸透する以前に入庁し、キャリアを形成してきた。
彼らが若手であった時代は、右肩上がりの経済成長と人口増加を背景に、与えられた予算を滞りなく消化し、中央省庁や首長の方針に従って均質な行政サービスを提供することが「優秀な公務員」の条件であった。
その結果、人事評価の権限を持つ上司の顔色のみをうかがって行動する、いわゆる「ヒラメ」のように上だけを見て昇進してきた管理職が少なからず存在する。
このような旧来の組織文化における最大のリスクは、若手職員のキャリア形成や成長が、配属先の上司の能力や人間性に完全に依存してしまう「OJTガチャ」の構造である 。
上司の「背中を見て覚えろ」という暗黙知に依存した育成手法は、業務の属人化を生み出し、組織全体へのナレッジの還元を阻害する。
さらに、古いパラダイムに固執し、最新の社会的価値観(ダイバーシティ、アジャイル思考など)にアップデートされていない管理職と、タイムパフォーマンス(タイパ)や社会的意義を重視する若手職員との間には、深刻な世代間ギャップが顕在化している 。
Z世代のキャリア戦略と自律型学習の要請
これからの若手職員には、受け身の姿勢で「教えてもらう」のを待つのではなく、あらゆる業務経験や失敗から自ら学びを「ハック(抽出)」し、能動的に課題を発見する当事者意識(マイプロジェクト思考)への転換が求められる 。
若手職員は、自身のキャリアを組織に委ねるのではなく、自らの市場価値を高めるために主体的に行動しなければならない。
| 評価軸 | 従来型の公務員像(管理統制型) | 次世代の公務員像(自律共創型) |
|---|---|---|
| 業務の基本姿勢 | 指示待ちの作業、前例踏襲、無謬性(失敗の隠蔽) |
課題発見、当事者意識、アジャイルな改善(試行錯誤) |
| 人間関係・連携 | 縦割り(サイロ型)、部門内の閉鎖的な関係 |
部門横断、ボーダレスな協働、斜め上の関係性構築 |
| 学習・育成モデル | OJTガチャ(上司依存)、「背中を見て覚えろ」 |
経験からのナレッジ抽出(ハック)、相互フィードバック |
| 価値観・目的 | 予算の単なる消化、法令・ルールの厳格な執行 |
経営感覚を持った公共価値の投資、最上位目標の追求 |
第2章:「最上位目標」の共有による手段の目的化の打破
公務員が「お役所仕事」と批判される最大の要因は、ルールを守ることや事業を実施すること自体が目的となり、本来の目的が見失われる「手段の目的化」にある 。
この病理を打ち破り、組織を本来の使命へと向かわせるための強力な概念が「最上位目標(Ultimate Goal)」である。
工藤勇一氏の教育改革に学ぶ最上位目標のマネジメント
この概念の有効性は、元千代田区立麹町中学校長であり、のちに横浜創英中学・高校の校長を務めた工藤勇一氏の先駆的な学校改革によって実証されている 。
工藤氏は、宿題の廃止、定期テストの廃止、固定担任制の廃止など、教育現場における「当たり前」を根本から見直した 。
これらの改革は単なる奇をてらったものではなく、「学校は何のためにあるのか」「生徒がどう変容することを目指すのか」という最上位目標に照らし合わせた結果、既存の手段(宿題やテスト)が目的に寄与していない、あるいは目的を阻害していると判断されたためである 。
工藤氏が掲げた学校の最上位目標は、「世の中ってまんざらでもない!」「結構大人って素敵だ!」といったキャッチフレーズで表現される、生徒の社会的自立と幸福である 。
行政マネジメントにおいても全く同様の思考プロセスが求められる。
「この条例は何のためにあるのか」「この窓口対応は誰の幸せに寄与しているのか」という根本を問う議論を欠いたまま、短期的な結果や前例に飛びつくことは、公共組織としての存在意義の放棄に等しい 。
「全員がOK」を導き出す対話と民主的プロセス
最上位目標を機能させるためには、関係する全てのステークホルダー(市民、職員、外部団体など)が合意できる普遍的な価値である必要がある。
誰かの価値観を一方的に押し付けた目標では、必ず反発が生じ、モチベーションは失われる 。
工藤氏が指摘するように、社会には多様な価値観が存在し、「みんな違っていていい」という多様性の尊重と、「誰一人取り残さない(全員がOK)」という包摂性は、時に相反する概念となる 。
例えば、体育祭の最上位目標を「全員を楽しませる」と設定した場合、運動が得意な生徒と、運動が苦手な生徒、あるいは集団行動が嫌いな生徒の利害が対立する 。
この対立を多数決で安易に処理するのではなく、粘り強い「対話」を通じて、全員が納得できる「第三の解」を探り出すことこそが、民主主義の根幹であり、SDGs(持続可能な開発目標)の真の理念である 。
行政の現場においても、市民間の利害対立や、市民からの苦情(クレーム)に直面することは日常茶飯事である。
このとき、マニュアルを盾にして対話を拒絶したり、不都合な意見を安易に「カスタマーハラスメント(カスハラ)」とレッテル貼りして排除したりすることは、行政の不作為である 。
正当な苦情を「市政改善のエンジン(宝)」として捉え、最上位目標(市民の幸福・地域の持続可能性)に基づいてルールそのものを柔軟に見直すスタンスこそが、次世代の公務員に求められる資質である 。
第3章:境界を融解させる実践者:「放し飼い公務員」の系譜
最上位目標に向かって、組織や制度の枠組みを超えて行動した公務員の歴史的なロールモデルとして、1980年代の東京都世田谷区で活動した澤畑勉氏の存在が極めて重要である。
彼は自らを「放し飼いの公務員」と称し、その実践は今日の行政に多くの示唆を与えている 。
船橋児童館における最上位目標の実践
澤畑氏は世田谷区の児童館(船橋児童館等)の職員であったが、彼の行動は「児童館という施設(箱)の中で子どもを管理する」という従来の枠には全く収まらなかった 。
学校に行けない子どもたちが児童館を訪れた際、彼は施設の中に留まることの限界を悟った。
児童館の最上位目標が「子どもたちの成長の場となり、幸せを保障すること」であるならば、施設内に子どもを閉じ込めておく必要はない。
彼は子どもたちを連れて遠足に出かけ、共に遊び、彼らの生活と悩みに直接寄り添った 。
「給料をもらいに行く時だけ区役所に行き、あとは自由に子どもたちのために働いている」と自嘲気味に語ったことから「放し飼い公務員」という異名がついたが、これは決して職務怠慢ではない。
むしろ、行政の縦割りやハコモノの境界を自ら破壊し、市民の真のニーズ(最上位目標)に直接アクセスする高度なフィールドワークの体現であった。
羽根木プレーパークと「黒衣(くろこ)」のスタンス
1979年、国際児童年の記念事業として世田谷区の羽根木公園に日本初の常設型冒険遊び場「羽根木プレーパーク」が開設された 。
この画期的な事業の背景には、英国の造園家アレン卿夫人の著書『Planning for Play(都市の遊び場)』を翻訳し、日本に紹介した大村虔一・璋子夫妻ら地域住民の熱意と、それに共鳴した世田谷区公園課の職員との官民協働があった 。
澤畑氏もまた、このプレーパークの運営や、多様な市民活動が集う「雑居まつり」の立ち上げにおいて、極めて重要なキーマンとして暗躍した 。
彼のスタンスは常に「黒衣(くろこ)」、すなわち裏方であった 。行政が前面に出て市民を指導・動員するのではなく、地域の父母や学生、専門家をマッチングさせ、市民自らが安心して自由に行動できる環境(場とつながり)を裏から整えることに徹したのである 。
| 「放し飼い公務員」の哲学 | 現代の行政マネジメントにおける意義 |
|---|---|
| 最上位目標の直視 | 「児童館という施設を守る」手段の目的化を排し、「子どもの幸せ」という最上位目標のために施設の境界を越える行動力。 |
| 「黒衣(くろこ)」のスタンス |
行政主導のパターナリズムからの脱却。市民活動の自主性を尊重し、裏方として環境整備とマッチングに徹するファシリテーター型の行政運営 。 |
| 「恩送り(On-okuri)」のエコシステム |
見返り(恩返し)を求めず、受けた恩を次の世代や他者へ送ることを推奨。支援の輪が自然発生的に広がる持続可能なコミュニティの設計思想 。 |
| 「いのちと人権」への絶対的コミットメント |
制度の網の目からこぼれ落ちる人々(不登校児、障がい者など)を排除せず、徹底して寄り添うコミュニティケアの実践 。 |
澤畑氏の軌跡は、公務員という職業が、毎年利益を出したり売上を競ったりするビジネスの世界とは異なり、最上位目標(市民の幸福)に対してストレートに行動できる「時間と裁量」が与えられた、極めて恵まれた、醍醐味のある職業であることを証明している。
第4章:組織外ネットワークの構築と「越境学習」の戦略的導入
若手職員が「放し飼い公務員」のような本質的な課題解決能力を身につけるためには、職場の中だけで完結する研修やキャリアデザインでは不十分である。
現在の組織内に尊敬できるメンターが見当たらない場合、あるいは組織の「ヒラメ文化」に同化しないためには、組織の外に「斜め上のメンター」を見出し、多様な価値観に触れる「越境学習」が不可欠となる 。
外部ネットワークと「斜め上のメンター」
現代は、公務員系のFacebookグループや「オンライン市役所」に代表されるような、全国の自治体職員が自主的に集い、最新の知見を共有する情報ネットワークが無数に存在している。
こうした勉強会グループへの参加は、自自治体の現状を相対化し、客観的な視点を取り入れるための強力なツールとなる。
さらに重要なのは、メンターの対象を「他の公務員」に限定しないことである。
NPO法人や支援団体のリーダー、あるいはそうした団体に日常的に参加している一般の市民こそが、行政の盲点を突き、真の市民ニーズを教えてくれる最良のメンターとなり得る。
組織の境界を越え、肩書きを外したフラットな対話を通じて得られる知見は、いかなる高度な座学研修にも勝る実践知である。
先進自治体の事例:飛騨市における人的資本投資と越境学習
組織規模の大小にかかわらず、首長やマネジメント層に明確なビジョンがあれば、高度な人的資本投資と越境学習の機会を提供することは可能である。
岐阜県飛騨市(都竹淳也市長)の取り組みは、その最も成功したモデルケースの一つと言える 。
飛騨市は、「ここで働く価値」を再認識できるような働きがいの向上を目指し、単なるスキル習得に留まらない多層的な人材育成を展開している 。
| 飛騨市における人材育成・越境学習の実践 | 具体的な内容と戦略的意図 |
|---|---|
| 行政実務研修(上級官庁への派遣) |
林野庁や岐阜県庁への職員派遣を実施。組織外の広い視野、高度な専門知識、そして人的ネットワークを獲得させ、市に還元させる 。 |
| 関係人口創出プログラム「ヒダスケ!」 |
地域の困りごとと全国の支援者を結ぶプログラム。延べ4500人が参加し、そのうち33%が飛騨市民自身。職員も運営や実践に関わることで、市民や外部人材との協働(共創)を肌で学ぶ 。 |
| 最新テクノロジーの実証実験 |
さくらインターネット株式会社と連携し、国内完結型の生成AI業務支援サービス(RAG機能等)を導入。業務効率化と同時に職員のAIリテラシーを向上させ、DXマインドを醸成する 。 |
| グローバル人材の育成 |
台湾・新港郷への高校生海外派遣事業等を通じ、異文化にどっぷり浸かり人生の幅を広げることを首長自らが推奨。職員に対しても、枠に囚われない広い視野を持つことを組織文化としてメッセージングしている 。 |
飛騨市の事例は、自己啓発やスキルアップを個人の「根性論」に丸投げするのではなく、組織側が心理的ハードルを下げ、将来的に公務遂行に役立つ経験(eラーニング予算の確保など)を幅広く支援する環境づくりの重要性を示している 。
第5章:組織防衛と自己変革の刃としての「自己啓発」
若手職員が最上位目標を見据え、市民の声に真摯に耳を傾け、越境学習を通じて組織の枠を超えて活動しようとすると、必ず直面するのが「現状維持バイアス」に囚われた内部からの同調圧力である。
不勉強でやる気のないベテラン職員や事なかれ主義の上司からは、「なぜそこまで市民の言うことを聞くのか」「なぜ休日にまで怪しい勉強会に行くのか」といった冷笑や反発を受けることが予想される。
「自己啓発」という言葉の戦略的活用
このような状況において、自分が目指す理想の公務員像や最上位目標の価値を、理解する気のない人間に正面から論理的に説明し、説得を試みるのは膨大なエネルギーの浪費である。
ここで戦略的に活用すべきマジックワードが「自己啓発」である。
休暇を取得して外部のNPO活動や勉強会に参加する理由を問われた際、「自己啓発です」と毅然と答えることは、自らの信念と時間を守るための強力な防衛策(シールド)となる。
それは単に「個人の趣味」ではなく、行政官としての能力を向上させるための正当な研鑽であると宣言することに他ならない。
公務員の自己啓発の特異性と「最大の贅沢」
世の中には自己実現や自己啓発に関するビジネス書、人間開発本が溢れている。
しかし、公務員にとっての自己啓発は、民間企業のビジネスパーソンが転職市場で自己の市場価値を高め、個人的な経済的利益を追求するための「スキル獲得競争」とは根本的に異なる。
公務員が自らの時間と労力を投資して行う真の自己啓発とは、それが直接的であれ間接的であれ、最終的に「市民の幸せ(福祉の向上)」に直結するものでなければならない。
社会の痛みを分かち合い、制度の網の目からこぼれ落ちる市民を救うためのネットワークを構築することは、行政のテキストブックには載っていない高度な専門性である。
利益追求という制約から解放され、純粋に「社会を良くするため」「目の前の市民を救うため」に自らの能力と時間を投資できるのは、公務員という職業にのみ許された特権である。
その意味で、公務員が最上位目標に向かって行う自己啓発は、最も贅沢で、最もやりがいに満ちた「醍醐味」なのである。
第6章:弥富市「シン・職員ハンドブック」の実践的展開と人権感覚のアップデート
ここまで論じてきた次世代の公務員像(最上位目標の共有、越境学習、放し飼いパラダイム)を、弥富市の若手職員向け「シン・職員ハンドブック」の中に具体的にどのように実装すべきか。
その中核となるのが、公務員の存在意義の根幹である「人権感覚」のアップデートと、心理的安全性の確保である 。
コンプライアンスと人権保障の最前線
公務員は、憲法第99条に基づき、基本的人権を守る直接的な義務を負う「最前線の盾」である 。
窓口対応一つ、通知文一枚をとっても、それは市民の権利を守る(あるいは奪う)行為に直結する。過去の「東京都青年の家事件」において、同性愛者団体の施設利用を拒否した行政側が全面敗訴し、「知識がなかった(知らなかった)は許されない」と厳しく断じられたように、社会の変化に合わせて自らの人権感覚をアップデートすることは、公務員の絶対的な義務である 。
ハンドブックの実践編においては、抽象的な人権論にとどまらず、弥富市の地域特性や日常業務における具体的なケーススタディを提示する必要がある。
| 実践領域 | 業務における具体的な行動規範と留意点 |
|---|---|
| 配偶者暴力(DV)被害者の保護 |
DV被害者の住民票交付制限(支援措置)の確実な実行。住所漏洩は被害者の生命を脅かす重大な人権侵害であることを認識し、窓口での不自然なサインを見逃さず関係機関と連携する 。 |
| 性的マイノリティ(LGBTQ+)への配慮 |
申請書等における不必要な性別欄の撤廃。窓口でのカミングアウトに対する「アウティング(第三者への無断暴露)」の絶対的禁止。見た目で性別を決めつける対応の排除 。 |
| カスタマーハラスメント(カスハラ)対応 |
正当な「苦情(市政改善の宝)」と、理不尽な「暴言・要求(カスハラ)」の境界線の見極め。不当な要求に対しては、若手が一人で抱え込まず、組織として毅然と対応するプロセス(チームワーク)の徹底 。 |
| 防災・減災におけるインクルーシブ視点 |
海抜ゼロメートル地帯を抱える弥富市において、避難所での女性・障がい者・外国人(人口比約2.92%)への配慮(やさしい日本語の活用など)を計画段階から組み込む 。 |
心理的安全性の確保とハラスメント対策
若手職員が能動的に課題を発見し、組織の枠を超えて行動(自己啓発)するためには、所属する組織内に「心理的安全性」が確保されていることが大前提となる 。
そのため、ハンドブックには職場のハラスメント(パワハラ、セクハラ、マタハラ等)に関する最新の法的定義と、それらを防ぐための具体的なコミュニケーション術(5Dのアプローチ等)を明記しなければならない 。
同時に、上司からの正当な業務指示を不当に拒絶する「逆パワハラ」や、日常会話に潜む無意識の偏見(マイクロアグレッション)のリスクについても啓発し、世代を問わず「ハラスメントはチーム全員で作る働きやすい環境を破壊する行為である」という共通認識を形成することが求められる 。
管理職層に対しては、かつての「OJTガチャ」を廃し、「やってみせ、説明し、やらせてみて、チェックする」という構造化された指導法と、若手の挑戦を後押しする「Why(目的)」ベースのフィードバック手法を徹底させることが、次世代育成エコシステムの鍵となる 。
結論:自律と共創へ向かう次世代の羅針盤
本報告書は、弥富市の若手職員向けオンライン職員ハンドブックの最終パートに込めるべき、次世代公務員のキャリアデザインと自己啓発のあり方について、多角的な視点から詳細な分析と提案を行った。
これからの時代を担う公務員は、与えられたマニュアルを無謬性をもって完璧にこなすだけの「歯車」であってはならない。
第一に、自らの成長を組織や上司に依存する「受動的マインド」から脱却し、あらゆる経験から自律的に学びを抽出する「能動的マインド」を持たなければならない 。
第二に、サイロ化された役所という狭い鳥籠から抜け出し、NPOやオンラインコミュニティ、先進自治体の職員といった「斜め上のメンター」との越境的なネットワークを構築し、絶えず自らの価値観を相対化する姿勢が求められる。
第三に、施設や制度という「手段」に縛られず、市民の幸福という「最上位目標」に向かってストレートに行動した「放し飼い公務員」の哲学を継承し、時に「黒衣(くろこ)」として市民活動を裏から支え、時にルールそのものを書き換えていく創造性が必要である 。
周囲の不理解や旧態依然とした組織風土に直面した際には、「自己啓発」という言葉を戦略的な盾として使い、自らの公共的使命を守り抜く強かさを持つべきである。
公務員としての真のプロフェッショナリズムとは、利益追求から解放された特権を最大限に活かし、目の前の市民を救うため、そして持続可能な社会を創るために、自らの人的資本を惜しみなく投資することにある。
この「シン・職員ハンドブック」が、若手職員たちが迷い、立ち止まった際に原点に立ち返り、誇りを持って歩み続けるための確固たる「羅針盤」として機能することを強く期待する。