「それ、企画課の仕事でしょ?」は今日で卒業!現場から仕掛ける“シン・行財政改革”
はじめに:「行財政改革」の主役は誰だ?
「行財政改革(行革)」や「事務事業評価」。
この言葉を聞くと、上層部や企画財政部門が「予算を〇億円削れ!」と号令をかけ、現場が切りやすい予算を泣く泣く削る……そんな後ろ向きなイメージを持っていませんか?
それは大きな間違いです。
本当の行財政改革とは、上から言われてやるものではなく、現場の最前線にいる皆さんが、日々のルーティンワークや「予算要求」を通じて仕掛けるものです。
現場の知恵と暗黙知を武器に、自分たちの業務をどうデザインし直すか。若手職員こそが知っておくべき、リアルな行革の進め方を解説します。
1. 君は「市長の分身」である:権限と責任のパラダイムシフト
まず、絶対に心に刻んでほしいマインドセットがあります。
それは、「たとえ新卒1年目であっても、その担当業務においては、あなたが『市長』である」ということです。
道路であれ、福祉であれ、市民から見れば窓口に座っているあなたが「弥富市の代表=市長」です。
「上に聞かないとわかりません」という態度は、プロの行政職員としてあり得ません。
市長がすべての現場の細部(暗黙知)を知っているはずがありません。
だからこそ、現場の目と耳、そして頭脳を持った「市長の分身」としてあなたがそこに座っているのです。
「今の仕事のやり方が最適だ」と思った瞬間、組織の進化は止まり、崩壊が始まります。
常に「何かおかしい」「もっと良くできるはずだ」という視点を持ち続けること。これが現場発の行財政改革の出発点です。
2. 製造業の「PDCA」から、対人支援の「OODA(ウーダ)」へ
業務改善といえば「PDCAサイクル(計画・実行・評価・改善)」が有名です。
しかし、数年単位で品質を安定させる製造業(車の開発など)には向いていても、市民の多様な悩みに寄り添う福祉などの「対人サービス」には、少ししっくりこない部分があります。
今、現場の公務員に求められているのは、「OODA(ウーダ)ループ」的な思考です。
-
Observe(観察): 目の前の市民や現場で何が起きているかを見る。
-
Orient(状況判断・方向づけ): 今ある制度で対応できるか、国や県のマニュアル(建前)と現場の実態(リアル)のズレは何かを判断する。
-
Decide(意思決定): どのように運用を工夫するか決める。
-
Act(実行): 実際に行動する。
「神(真理)は細部に宿る」と言われます。
会議室で作られたマニュアルのコピーだけでは、現場は絶対に回りません。
市民の相談案件の中に隠された真理を見抜き、柔軟に運用を改善し、必要なら新しい制度を作る。
この柔軟な対応力こそが、現場の職員にしかできない行革です。
3. 「3年ルール」で回す、自分だけの業務改善サイクル
公務員は、おおむね3年サイクルで異動します。この3年間を「ただ言われた通りにこなす」のではなく、戦略的な改善サイクルとして活用しましょう。
4. 最強の行革ツールは「毎年の予算要求」である
現場の職員が使える最も強力な行財政改革のツール、それが「秋の予算要求」です。
-
春〜夏(サマーレビュー): 今年度の業務を回しながら、前年度からの課題を整理し、大きな改善方針を立てる。
-
秋(予算要求): 新規事業の立ち上げ、既存事業の廃止・拡充、あるいはシステムの導入などを、予算要求資料として財政部門にぶつける。
上から言われた「コストカットの事務事業評価シート」の数字合わせに付き合うのではなく、現場の知恵(暗黙知)をもとに、「ここをこう変えれば、市民の満足度が上がり、中長期的にコストも下がる」という提案を予算要求に乗せていく。
これこそが、真のシステマチックな行政改革です。
5. 次の「市長の分身」へ。プロの引き継ぎ術
最後に、極めて実務的ですが最も重要なことを伝えます。
あなたが3年かけて積み上げた「マニュアルには書ききれない現場のコツ(暗黙知)」は、必ず書類やメモに残して次の担当者へ引き継いでください。
市民からすれば、担当者が変わろうが「弥富市(市長)」であることに変わりはありません。
「前の担当の時はやってくれたのに」「前任が何を約束したか私は知りません」——これは、市民に対する説明責任の完全な放棄です。
-
属人的なスキル(あなたにしかできない仕事)を、システムやルール(誰でもできる仕事)に落とし込むこと。
-
マニュアル化しきれない「暗黙知」を、次の「市長の分身」が読んで理解できる言葉で残すこと。
これを行うことで初めて、あなたの3年間の行財政改革は完成します。
おわりに
行財政改革は、決して上層部が会議室で決めるものではありません。
企画政策課や財政課は、あくまで全体のコーディネートや号令をかける存在に過ぎません。
実際の改革を起こすエンジンは、常に「現場」にあります。
あなたが「市長の分身」としての自覚を持ち、その目と耳と頭を使って働く限り、弥富市の行政サービスは確実にアップデートされていきます。
自信と誇りを持って、明日の業務、そして今年の予算要求に挑んでください!
【弥富市の未来を担うあなたへ】仕事の迷子にならないための「オンライン職員ハンドブック」はこちらから
愛知県弥富市若手職員向け実践ハンドブック:次世代型行財政改革と「市民と私達」の新たな関係性に関する総合的研究報告(自分の考えをAIで検証と補強)
1. 序論:転換期を迎える地方自治と弥富市の現状
現代の地方自治体は、人口減少、少子高齢化の急速な進展、社会インフラの老朽化、そして社会保障関係費(扶助費等)の増大という、未曾有の構造的課題に直面している。
愛知県弥富市においても、このマクロ環境の波は例外なく押し寄せており、一般財源充当額の義務的経費に占める割合が上昇を続け、財政の硬直化が急速に進んでいる状況にある。
さらに、コロナ禍からの脱却、物価高騰への対応、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進など、新たな行政課題への対応も迫られており、持続可能で安定的な財政運営の確立は市政における最重要課題となっている。
このような背景のもと、弥富市は令和6年度から令和10年度を計画期間とする「第5次行政改革大綱」およびその後期基本計画を策定した。
この大綱では、これまでの「選択と集中」や「スクラップ&ビルド」を基本としつつも、新たに「行政改革によって1億円/年の効果額を目指す」という極めて高い数値目標が設定された。
特筆すべきは、この目標達成に向けたスローガンとして「全ての職員が全ての事業を見つめ直す」という方針が掲げられた点である。
これは、行財政改革がもはや企画政策課や財政課といった一部の管理部門のみの専管事項ではなく、現場の最前線に立つすべての職員の日常業務と密接に結びついた全庁的なミッションへと昇華されたことを意味している。
本報告書は、新たに弥富市役所に入庁し、あるいは若手として現場の第一線で市民と向き合う職員に向けた「オンライン職員ハンドブック」の機能を持たせるべく構成されたものである。
特に「市民と私達」という関係性を基軸に据え、日々のルーチンワークに潜む改革の糸口、予算編成プロセスの戦略的活用、PDCAサイクルに代わる新たな意思決定フレームワーク(OODAループ)、暗黙知の組織的継承、そして「市長の分身」としての公務員の矜持について、徹底的かつ多角的に考察する。
現場の若手職員が、単なる「作業の執行者」から「行政経営の主体」へとパラダイムシフトを果たすための実践的・理論的指針を提示することが本稿の目的である。
2. 行財政改革のパラダイムシフト:トップダウンから「現場の知恵」の結集へ
2.1 従来型行政改革の限界と「切りやすいところを切る」弊害
過去の地方自治体において広く見られた行財政改革の手法は、企画財政部門や経営層が主導し、各部局に対して一律の予算削減(例えば「全課一律5%カット」など)を要求するトップダウン型のアプローチであった[User]。
しかし、現場の実態や事業の真の価値を捨象したまま数値目標だけが先行するこの手法は、結果として「切りやすいところを切る」という重大な弊害を生み出してきた[User]。
各部局は、市民生活にとって真に不要な事業を見直すのではなく、声の小さい市民層を対象とした事業、あるいは後から不満が出てもなんとかごまかせそうな事業を優先的に削減する傾向に陥りやすい[User]。
また、根本的な制度改革が必要な困難な課題については「とりあえず何とかなるから」と先延ばしにする事態も常態化していた[User]。
このようなプロセスが繰り返されることは、市民に対する行政の信頼を損なうだけでなく、組織内部のモラルハザードを引き起こす。
さらに、憲法第92条が定める「地方自治の本旨」のうち、住民自身の意思による運営(住民自治)の理念からも大きく乖離する結果となる。
2.2 ガバナンス不全とアカウンタビリティ(説明責任)の欠如
行財政改革が適切に機能しない組織では、深刻なガバナンス不全が発生する。行政が負うべき「3つの責任」として、事業を最後までやり遂げる「レスポンシビリティ(遂行責任)」、プロセスや経費の妥当性を客観的根拠に基づき説明する「アカウンタビリティ(説明責任)」、そして違法行為や重大な過失に対する「ライアビリティ(法的責任)」が存在する。
一部の識者や市民による市政への提言では、現在の弥富市において巨大プロジェクト(JR・名鉄弥富駅自由通路及び橋上駅舎化事業など)を進めるにあたり、このアカウンタビリティが著しく欠如しているとの厳しい指摘もなされている。
情報公開の機能不全や、客観的データ(エビデンス)に基づく費用対効果の比較検討が行われていないという批判は、行政が「遂行責任」にのみ固執し「説明責任」を軽視した結果生じる典型的な病理である。
若手職員は、こうした厳しい市民の目があることを深く認識し、自らが担当する事業が国や事業者の「下請け」になっていないか、市民に対して明確な根拠を持って説明できるかを常に問い直す証拠に基づく政策立案(EBPM: Evidence-Based Policy Making)の視点を持たなければならない。
2.3 第5次行政改革大綱が求める「現場起点の価値創出」
このような従来型の弊害を打破するために、弥富市の第5次行政改革大綱は『全ての職員が全ての事業を見つめ直す』というスローガンを掲げた。
年間1億円の削減目標は、単に予算を削り取るのではなく、事業の廃止や効率化によって生み出された累積的な効果額として評価される。
現場の知恵こそが、真の行財政改革のキーワードである[User]。
企画政策課や財政課の役割は、現場にコストカットを強要することではなく、現場から湧き上がる改善の知恵を全庁的なシステムとしてコーディネートし、推進することへと変化している[User]。
若手職員であっても、事務事業評価シートを作成する際には、上意下達の書類仕事と捉えるのではなく、現場の暗黙知をエビデンスとして言語化し、不要な業務のスクラップや新しい市民価値のビルドを提案する最大の好機として活用すべきである。
3. 予算編成プロセスを通じた「日常的な改革」の実践
行政の業務は、多くの場合、あらかじめ決められた法令や要綱に基づくルーチンワークであると認識されがちである[User]。
確かに、企画部門や財政部門に配属されない限り、通常の業務はある種の決められた予算を適正に執行することが主眼となる[User]。
しかし、そのルーチンワークの連続の中にこそ、行財政改革の最も確実な実践の場が隠されている。
3.1 「サマーレビュー」の戦略的活用
地方自治体の1年間は、予算の執行と並行して翌年度の予算編成が行われるという「双発エンジン」のような構造で進む。
4月に新年度の予算執行を開始し、日々の業務を通じて現行制度の限界や市民ニーズとのズレ(問題点)を発見していく[User]。
そして、夏頃には「サマーレビュー」と呼ばれる極めて重要なプロセスを迎える。
サマーレビューとは、秋口からの本格的な予算要求(各局要求)に先立ち、あらかじめ中長期的に見直さなければならない事業や、新規に立ち上げるべき事業について、庁内で大きな方針や方向性を検討する事前評価の場である。
優秀な自治体は、このサマーレビューの段階で「存在意義(時代の要請に合致しているか)」「役割分担(民間や他主体が担うべきではないか)」「費用対効果(投入資源に対する効果が発揮されているか)」といった厳しい視点で既存事業を洗い直す。
若手職員にとって、夏は「今年度の仕事をこなしながら、昨年度の仕事を評価し、翌年度をどう改善するかを構想する」という高度な並行処理が求められる時期である[User]。
現場の強みとは、まさしくこの「現実のトラブルや市民の生の声を、即座に翌年度の制度設計に反映できる」点にある[User]。
予算の拡充、廃止、あるいは新規事業の立ち上げに関するアイデアは、このサマーレビューの段階である程度の理論武装(エビデンスの構築)を行い、課内で合意形成を図っておく必要がある[User]。
3.2 予算要求を通じたシステマチックな改善の連鎖
秋口になれば、サマーレビューでの方針に基づき、企画財政部門に対する具体的な予算要求書を提出する。
この予算要求こそが、行財政改革をルーチン化・システマチックに機能させるための要である[User]。
予算要求の資料には、「現状の何が問題であり」「それをどのような手法で改善し」「結果として市民にどのような価値をもたらすのか」が論理的に記述されていなければならない[User]。
担当者が起案した改善案が、係長、課長、部長、副市長、市長へと階層を上がるごとにブラッシュアップされ、市の公式な予算案として結実していくプロセスは、行政組織が有する最も強力な課題解決システムである[User]。
したがって、日常のすべての業務において不足する点やまずい点があるにもかかわらず、それを予算要求や制度改正の形で改善しようとしない姿勢は、公務員としての職責放棄に等しいと言わざるを得ない[User]。
4. 意思決定フレームワークの再構築:PDCAからOODAループへの進化
前項で述べたような、年間を通じた予算編成プロセスや事業評価は、典型的な「PDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクル」の体現である。
過去数十年にわたり、行政の現場でもこのPDCAサイクルが絶対的な業務改善の手法として推奨されてきた[User]。
しかし、現代の多様性に満ちた行政現場においては、このPDCAサイクルだけでは対応しきれない局面が急速に増加している。
4.1 対人援助・ソフト系職場におけるPDCAの限界
PDCAサイクルは元来、トヨタ自動車に代表されるような製造業の生産現場において、品質の安定化やコスト削減を図るために構築された概念である。
自動車開発のように「4年後の顧客ニーズを見据え、全体パッケージングからエンジン、内装、AI制御に至るまでを極めて精緻に体系化し、4年間かけて計画的に開発を進める」といった、中長期的で変数の少ない環境下では、PDCAサイクルは完璧に機能する[User]。
しかし、市役所の業務の大半は製造業ではなくサービス業であり、特に福祉、子育て支援、生活困窮者支援といった対人援助(対人福祉)の現場では事情が全く異なる[User]。
窓口に持ち込まれる市民の相談案件は、定型化されたトラブルではなく、個々の心理的背景や複雑な家庭環境が絡み合ったものである[User]。
このような「ソフト系・対人援助職場」において、綿密な計画(Plan)を立ててから実行(Do)に移すというPDCAのアプローチは、スピード感が致命的に遅く、目の前の市民に寄り添う上で「しっくりこない」という違和感を多くの現場職員が抱いている。
4.2 機動力と柔軟性を生む「OODAループ」の導入
そこで近年、地方自治体の現場でPDCAを補完する新たな意思決定フレームワークとして導入が進んでいるのが「OODA(ウーダ)ループ」である。
OODAループは、先行きが不透明で変化の激しい状況下において、現状から最善の判断を下し、即座に行動を起こすための手法であり、以下の4つのプロセスから構成される。
-
Observe(観察): 目の前の市民の表情や言葉の裏にある真意、社会情勢の変化、現場で起きているトラブルの兆候など、生きた情報を先入観なく収集・観察する。
-
Orient(状況判断・方向付け): 観察した情報に基づき、「今、何が起きているのか」「既にある制度でどう対応できるか」「どのような運用上の工夫が必要か」を、自身の経験値や暗黙知と照らし合わせて判断する。
-
Decide(意思決定): 最適な解決策や行動方針を決定する。ない制度があれば作る、あるいは代替案を提示するといった判断を下す[User]。
-
Act(行動): 決定した方針を即座に実行に移す。そして、行動の結果として生じた新たな状況を再び「Observe(観察)」し、ループを高速で回し続ける。
福島県国見町や静岡県焼津市などの先進自治体では、総合計画の進行管理や日常の行政運営において、長期的な改善に向くPDCAサイクルと、迅速な意思決定に特化したOODAループをハイブリッドで活用している。
若手職員は、窓口での市民対応や突発的なトラブル処理においてはOODAループを高速で回して機動的に対応し、そこで得た気づきや発見を、秋の予算要求に向けた中長期的なPDCAサイクルへと接続していくという、二段構えの思考法を身につける必要がある。
お客様から持ち込まれた相談案件の中に「真理」を見出し、それを運用や制度へと昇華させていくことこそが、多様性(ダイバーシティ)が重視される現代における行政サービスの真髄である[User]。
5. ナレッジマネジメントと暗黙知の継承:3年周期のジョブローテーションを活かす
地方公務員の人事制度において特徴的なのが、おおむね3年ごとに部署を異動するジョブローテーションの仕組みである。
この制度は、広範な行政知識を持ったゼネラリストを育成し、組織内の癒着を防ぐ目的がある一方で、専門性の蓄積を阻害し、事業の過去の経緯やノウハウが異動のたびに失われる「組織の記憶喪失」を引き起こす原因として批判されることも多い。
5.1 マニュアルの形骸化と「暗黙知」の正体
異動に伴う引き継ぎ不足を補うためにマニュアルの整備が叫ばれるが、国や県から降りてきたマニュアルをコピーして市役所用に体裁を整えただけのものは、得てして現場では形骸化してしまう[User]。
マニュアルだけでは現場が回らない最大の理由は、行政の現場には明文化しきれない「暗黙知(Tacit Knowledge)」が無数に存在するためである。
暗黙知とは、ベテラン職員が長年の経験で培った「この地域特有の住民対応の勘所」「記録に残らない補助金事務のチェック方法」「他部署との非公式な調整ノウハウ」などである。
これらは決して不正なものではなく、市民の幸せや福祉を最大化するために不可欠な、ある意味で「正しい、本当に必要な運用ルール」である[User]。
しかし、この暗黙知が特定の職員に属人化したまま引き継がれないと、担当者が変わるたびに市民へのサービスレベルが低下し、同じミスが繰り返されることになる。
5.2 3年サイクルを「改革のプロジェクト期間」と捉える
この課題を克服するためには、若手職員自身が「3年間の在籍期間」を一つの業務改善プロジェクトとして戦略的にデザインする必要がある[User]。
-
1年目(問題発見・点検期間): 新卒であれ異動直後であれ、1年目は前任者が行ってきた業務をしっかりと点検し、着実に執行することに専念する。その過程で、前任者のやり方にどのような問題があるか、制度と市民ニーズの間にどのような摩擦が生じているか(暗黙知のブラックボックス化を含め)を「観察(Observe)」し、課題を見つけ出す期間とする[User]。
-
2年目(改善・移行期間): 1年目に発見した課題に基づき、実際に運用を改善し、必要であればサマーレビューや予算要求を通じて制度の改革を行う。役所の仕事は単年度ですぐに変えられるものばかりではないため、この2年目を実質的な改革の移行期間として位置づける[User]。
-
3年目(効果検証・形式知化・引継ぎ期間): 実施した改善案が適切に機能しているかを検証する。そして最も重要なのは、自分が蓄積した「暗黙知」をメモや報告書といった目に見える形(形式知)に変換し、次の担当者が迷わず業務を遂行できるように着実に引き継ぐことである。
5.3 市民に対する説明責任と引き継ぎの義務
なぜこれほどまでに引き継ぎと書類化が重要なのか。それは、市民に対するアカウンタビリティ(説明責任)に直結するからである。
市民から見れば、担当者が誰であろうと「弥富市役所の〇〇部門の担当者(=市長の権限を委任された者)」という同一の人格である[User]。
年度替わりで人が変わったからといって、前任者が行った決定を知らなかったり、個人的な感覚で違う運用を行ったりすることは、行政としての連続性を破壊する「あり得ない話」である[User]。
引き継ぎ書を作成する際は、単なる作業手順だけでなく、「なぜこの運用を行っているのか」「過去にどのような問題があり、どう改善したのか」という背景(Why)を必ず書き残さなければならない。
近年では、横須賀市やつくば市などの先進自治体において、過去の起案文書やマニュアル、ベテラン職員の暗黙知をAI(生成AIやRAG技術)に学習させ、対話型のチャットボットとして若手職員の判断を支援するナレッジマネジメントの取り組みも始まっている。
弥富市の若手職員も、DX時代を見据え、自身の経験をデジタルな形式知として組織に還元していく意識が求められる。
6. 公務員としてのパラダイム転換:真の「市長の分身」としての矜持
本ハンドブックの結びとして、地方公務員として働く上で最も根源的かつ決定的なマインドセットについて言及する。
それは、新卒であれ若手であれ、職員は一人ひとりが「市長の分身」として市民に対峙しなければならないという厳然たる事実である。
6.1 権限の委任と「私が市長である」という覚悟
地方自治法上、市の広範な権限と責任は市長に帰属する。
しかし、現実にはその膨大な権限は、規則や要綱に基づき、各部局の職員に委任(専決)されて執行されている。
したがって、福祉の窓口対応を行う職員は「福祉に関する市長」であり、道路の補修を担当する職員は「道路に関する市長」として機能しているのである[User]。
市民から厳しい指摘を受けた際に、「上に聞かなきゃわかりません」「私は担当者なので決裁権がありません」と逃げることは、本来の行政職員としては許されない態度である[User]。
山形市が全職員1,500人を対象に実施した「未来創造会議」研修においても、「職員一人一人が市役所全所属の担当者であり、市長の分身である」という理念の徹底が図られている。
若手職員は、試験を突破し、法令に基づき採用された「全体の奉仕者」として、自分の担当領域においては「俺(私)が市長だ」という圧倒的な当事者意識とプロフェッショナリズムを持たなければならない。
市長がいちいち現場の細かい暗黙知まで把握しているはずはない。だからこそ、現場の最前線に立つ職員が、市長の「目」となり、「耳」となり、「口」と「頭脳」となって働き、最適な判断を下す必要がある[User]。
6.2 「最適化」の錯覚を打破し、永遠の改善を続ける
最後に銘記すべきは、「現在の業務は最適化されている」と宣言した瞬間に、その組織は成長を止め、崩壊への道を歩み始めるということである[User]。
社会は常に変動しており、昨日までの最適解が今日も最適である保証はどこにもない。
「何が最適ではないか」「何を改善すべきか」を絶えず問い続けること。
これが、行財政改革の核心である[User]。
改革とは、企画政策課や財政課といった上層部から降ってくるものではなく、現場の職員が自らの業務の中から問題点を発見し、OODAループを回して即座に対応し、サマーレビューや予算要求を通じて制度化していくボトムアップの連続的な営みである[User]。
「審美は細部に宿る」[User]。日々の何気ないルーチンワーク、市民からの些細な相談案件、そして一枚の起案書の中にこそ、弥富市をより良くするための真理が隠されている。
あなたたち若手職員一人ひとりが「市長の分身」としての自覚を持ち、市民の幸福を最大化するために知恵を絞り続ける限り、弥富市の行財政改革は必ず素晴らしい成果を生み出し、持続可能な未来を築き上げることができるはずである。
本ハンドブックが、その長く困難な、しかし極めてやりがいのある公務員生活の確固たる羅針盤となることを期待する。