【上下水道・インフラ防衛戦】見えない「地下のバブル」と次世代が背負う巨額のツケ
はじめに:私たちの足元に眠る「見えない時限爆弾」
私たちが毎日当たり前のように使っている水道とトイレ。
しかし、その水を送るための「上下水道」の管理は、弥富市において極めて深刻な課題を抱えています。
地面の下に埋まっているため、普段は市民の目にも、若手職員の目にも触れません。
しかし、過去の無計画な拡張と甘い見通しによって作られた「見えない負債(借金)」は確実に膨張しており、いずれあなたたち次世代職員の首を絞めることになります。
この章では、古い世代が「補助金」という甘い蜜に群がった結果、私たちが何を背負わされているのか、そして今後どう戦うべきかを解説します。
1. 上水道のリアル:耐震化の悲劇と「不採算」の宿命
弥富市の上水道は、一部事務組合である「南部水道企業団」によって運営されています。
都市部と違い、1軒あたりの管路延長(道路の下に埋まっている管の長さ)が長いため、構造的に採算性が非常に悪いという宿命を抱えています。
🚨 幹線管路の「早すぎた更新」という悲劇
大きな道路の下を通る太い管(感染管路)については、実はほぼすべて入れ替えが終わっています。
しかし、これが大きな問題なのです。
入れ替えが行われたタイミングが、阪神淡路大震災の前だったため、「地盤が液状化しても管が曲がって抜けない(耐震管)」という最新技術が導入される前に工事が終わってしまったのです。
海抜ゼロメートル・軟弱地盤の弥富市にとって、次に巨大地震が来た時、この古い設計の管路がどうなるか……考えるだけでも恐ろしい状況です。
🚨 各家庭の「細い管」は塩ビ管のまま
生活道路の下を通る各家庭への細い管は、地震に弱い塩ビ管がまだ多く残っています。
これを地震に強いポリエチレン管へ順次入れ替えていますが、非常にコストがかかるため、下水道工事などのタイミングに合わせて少しずつしか進んでいないのが現状です。
2. 下水道のリアル:見過ごされた「浄化槽」と、下水道バブルのツケ
上水道以上に絶望的なのが「下水道」です。弥富市のような平坦な土地では、水は自然に流れません。
太い管を埋め、あちこちに巨大なポンプを設置して無理やり水を汲み上げ、海に近い県の広域処理場まで送らなければならないのです。
🚨 なぜ、安くて優秀な「合併浄化槽」を選ばなかったのか?
2000年代初頭、国は過疎地や平坦地において、各家庭で処理を完結できる「合併浄化槽」の推進を指導していました。
これは、下水処理場並みの水質に浄化でき、設置費用も1軒あたり70万円程度で済む画期的なものでした。
当時、「下水道を引くより、各家庭に合併浄化槽を補助する方が圧倒的に安く、財政負担も少ない」という明確なデータがあり、反対の声も上がっていました。
しかし、当時の首長や県は「国から補助金が出る」「残りの借金も交付税で国が面倒を見てくれる」「大規模な工事をすれば地元業者が潤う(下水道バブル)」という甘い誘惑に乗り、極めて甘い見通しのまま、強引に巨大な公共下水道の整備を推進してしまったのです。
🚨 毎年5億円!一般会計の血を吸い続ける「隠れ借金」
「利用者の料金で全部返せる」という当時の説明は完全に破綻しました。
現在、弥富市の下水道事業には約170億円(市の実質負担)もの巨額の借金(起債残高)が残っています。
そしてその借金を返すため、私たちの税金が集まる「一般会計」から、毎年5億円以上のお金を下水道会計に補填(繰入)し続けているのです。
この「過去のおじさんたち」がやらかした無駄な借金を、これから30年かけて返し続けるのは、他でもない今の若手職員たちです。
3. 次世代の生存戦略:ちまちました管理を捨て「超・広域化」へ!
採算が合わず、技術者もいない中で、借金だけが膨らんでいく。
この最悪のループから抜け出すためにはどうすればいいでしょうか?
答えは一つ。「超・広域化」による事務の統合です。
💡 水道・下水道は「県単位」で一つにする時代
人口数万人しかいない市町村が、それぞれ立派な「企業団」や「上下水道課」を持ち、部長や課長を置き、別々のコンサルに点検を頼む。こんなムダな行政運営は、もう維持できません。
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技術力の枯渇: バラバラの組織では、技術力が育たず、結局コンサルに高いお金を払って丸投げするしかありません。
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事務の統合(バックヤード統一): 「料金が違うから統合できない」というのは言い訳です。大阪府などの先進事例では、各市町村の水道事業の「事務局(バックヤード)」だけを一つの巨大な企業団に順次引き取らせる動きが進んでいます。
弥富市も、隣の愛西市や蟹江町といった枠組みを超え、最終的には「県下で一つの事務局」にするレベルの広域化を目指さなければ、インフラの維持と借金の返済は不可能です。
おわりに:負債から目を背けず、システムの統合を仕掛けろ!
上下水道の負債は、過去の世代が残した「重い十字架」です。
しかし、ただ不満を言っていても借金は減りません。次世代の皆さんに求められているのは、「自分たちの街の管轄」という古い縄張り意識を捨て、近隣市町村や県を巻き込んで『組織とシステムの統合』を仕掛けることです。
ムダな管理コストを極限まで削り、浮いた予算を耐震化や真に必要な修繕に回す。
それが、地面の下に埋まった時限爆弾から市民の命と街の未来を守る、唯一の戦い方なのです。
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【サマリー】弥富市の上下水道事業:見えない「地下の負債」と次世代の生存戦略
弥富市の若手職員向けハンドブックの根幹となる、上下水道事業の歴史的経緯と構造的課題についての包括的サマリーです。
過去の政策決定の背景と、いま直面している「四重苦(人口減少、老朽化、災害、財政負担)」を直視し、これからの持続可能なインフラ経営に向けた戦略をまとめています。
1. 上水道:伊勢湾台風の遺産と「間の悪かった」耐震化
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設立の背景: 伊勢湾台風(1959年)の壊滅的な被害を契機に、安定した水源確保と公衆衛生の危機を脱するため、広域連携による「海部南部水道企業団」として誕生しました。
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構造的赤字の宿命: 広大な農地や干拓地ゆえに人口密度が低く、給水件数当たりの管路延長が長いため、設立当初から構造的な不採算性を抱えています。
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耐震化の悲劇的ジレンマ: 健康被害が懸念されたアスベスト管(石綿管)の排除と漏水対策を急いだ結果、阪神・淡路大震災を教訓とした「絶対に抜けない最新の耐震管」が標準化される直前に、巨額を投じて幹線管路の更新を終えてしまいました。
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現状の巨大リスク: ゼロメートル地帯特有の「液状化」に対して極めて脆弱であり、管路破断の危険性が高いものの、更新したばかりで巨額の借金が残っているため、再投資が実質不可能な「様子見」状態に陥っています。
2. 下水道:甘い見通しが生んだ「人災」と財政のガン
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ゼロメートル地帯との致命的ミスマッチ: 平坦な地形で汚水の自然流下ができないため、巨大な中継ポンプ場と莫大な電気代が必須です。また、下水が滞留しやすく、発生する硫化水素による管路腐食・陥没リスクや、液状化による汚水逆流の恐怖と常に隣り合わせです。
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最悪の政策選択(2000年代): 国が安価で災害に強い分散型の「合併処理浄化槽」を過疎地や平坦地に推奨したにもかかわらず、当時の町長体制はこれを無視しました。
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「下水道バブル」の誘惑: 「国が借金を肩代わりする」という県主導の甘い見通しと、地元業者への仕事作り(高額な宅内配管工事)を優先し、極めて非合理な「公共下水道の面的拡大路線」を強行しました。
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一般会計への深刻なダメージ: 国からの補填見込みは完全に外れました。現在、下水道関連の負債は約81.9億円(市全体の借金の35.3%)に達しています。料金収入では維持費すら賄えず、毎年5〜7億円の赤字を市民の税金(一般会計)から補填し続けているのが実態です。
3. 次世代が取るべきアクションプラン
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下水道の新規拡大を即時凍結: 採算の合わない下水道の管路延長を直ちに止め、災害に強く経済合理性の高い「合併処理浄化槽」の設置補助へと政策資源を全振りするべきです。
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「世代間負担の公平性」という詭弁の打破: 負債と維持費を生み続けるだけの不良資産に対し、借金(地方債)を正当化する古い論理に騙されてはいけません。
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「バックヤード統合」による広域化: 大阪広域水道企業団の先行事例に学び、料金や会計の統一が政治的に難しくても、まずは近隣市町村と「事務・技術管理部門(バックヤード)」だけを早期に統合します。
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技術力の奪還: 統合により不足する専門技術者を集約し、コンサルタント頼みの「下請け行政」から脱却して、筋肉質で適正なインフラマネジメントを取り戻す必要があります。
【結論】 インフラは「造って終わり」ではなく、次世代に莫大なツケとして残るものです。「前例踏襲」や「事業を縮小する恐怖」を捨て、客観的な財務データと地理的特性に基づいた冷徹な判断を下すことこそが、次世代の若手職員に課せられた最大のミッションです。
弥富市における上下水道事業の歴史的経緯と構造的課題:次世代に向けた戦略的インフラマネジメントの総合分析(自分の考えをAI利用で検証と補強)
地方自治体における都市基盤整備の根幹を成す上下水道事業は、住民の生命、公衆衛生、および地域経済を支える不可欠な社会インフラである。
しかしながら、全国の地方自治体が直面している人口減少、施設の急速な老朽化、激甚化する自然災害への対応、そして深刻化する財政負担という「四重苦」の波は、愛知県弥富市においても例外なく押し寄せている。
とりわけ、海抜ゼロメートル地帯という極めて特殊かつ過酷な地理的条件を有する当地域においては、インフラ整備に伴う初期投資や維持管理コストが他地域と比較して著しく増大する傾向にある。
本報告書は、若手行政職員の政策形成能力およびインフラマネジメントに関する専門的知見を涵養することを目的として、弥富市における上水道施設および下水道施設の歴史的経緯、物理的・構造的課題、および現在直面している深刻な財政的・技術的危機について包括的かつ徹底的な分析を行う。
特に、伊勢湾台風後の復旧から始まった広域水道の形成過程、耐震化と管路更新における歴史的ジレンマ、そして2000年代初頭の不確実な財政見通しに基づき当時の梅川町長体制下で強行された下水道事業の政策的判断がもたらした財政的重圧について詳述する。
次世代の市政を担う行政職員にとって、過去の政策決定の背景、その決定に対する反対運動(三宮議員等による指摘)、およびその結果として生じた構造的課題を正しく理解することは、今後の持続可能な行政運営を構築するための必須条件である。
第1章 上水道事業の形成と地理的・歴史的制約
1.1 伊勢湾台風からの復興と海部南部水道企業団の創設
弥富市における上水道供給の基盤は、一部事務組合である「海部南部水道企業団」によって担われている。
この組織は、単なる行政の広域化や効率化を目的として平時に設立されたものではなく、甚大な自然災害からの復興という歴史的かつ切迫した必然性から誕生したものである。
昭和34年(1959年)9月に襲来した伊勢湾台風は、当地域に壊滅的な高潮・浸水被害をもたらした。
当時、地域内には152もの小規模な簡易水道施設が点在していたが、これらが甚大な被害を受け、長期間にわたって飲料水が絶たれるという公衆衛生上の危機が発生した。
この未曾有の災害を契機として、罹災した5カ町村(当時の立田村、佐屋町、弥富町、十四山村、飛島村)は、安定した水源の確保と災害に強い水道網の構築を目指し、簡易水道施設を統合して上水道事業へと格上げする広域連携を決断した。
その結果、昭和35年(1960年)に海部南部水道企業団が設立され、昭和37年(1962年)から通水が開始された。
| 海部南部水道企業団の基礎情報 | 詳細 |
|---|---|
| 設立年 |
1960年(昭和35年) |
| 給水区域 |
愛西市(旧佐屋町・旧立田村)、弥富市、飛島村、蟹江町の一部 |
| 組織形態 |
関係市村による一部事務組合(正副企業長は関係市村長の互選) |
| 所在地 |
愛知県愛西市西條町大池180番地 |
| 水源 |
愛知県企業庁からの受水(用水供給事業への依存) |
現在、同企業団は愛知県企業庁が浄水した水を受水し、各家庭へと配水する仕組みを確立している。
しかしながら、都市部と比較して人口密度が低く、広大な農地や干拓地が広がる地域特性から、給水件数当たりの管路延長が非常に長いという構造的な不採算性を設立当初から抱え続けている。
この「長大な管路ネットワーク」は、後述する老朽化対策や耐震化事業において、莫大な資本的支出を強いる根本的な要因となっている。
1.2 管路更新の歴史的ジレンマと「間の悪さ」が生んだ耐震化の遅れ
上水道事業において現在最も深刻な技術的かつ財務的課題の一つが、基幹管路(幹線)の耐震化の著しい遅れである。
海部南部水道企業団の管路全体の総延長に占める老朽化率は41.7%に達し(愛知県平均22.1%)、基幹管路の耐震化率も25.6%(愛知県平均33.6%)と、県下でも更新が遅れている状況にある。
この背景には、単なる予算不足や計画の怠慢では片付けられない、インフラ更新における極めて悩ましく悲劇的な「歴史的タイミングのズレ」が存在している。
昭和30年代から40年代の高度経済成長期にかけて敷設された初期の水道管には、主に石綿セメント管や鋳鉄管が使用されていた。
しかし、これらは経年劣化による漏水事故の多発に加え、のちに社会問題化したアスベスト(石綿)による公衆衛生上の懸念から、早期の更新が社会的要請となった。
1985年には水道用石綿セメント管の生産が完全に中止され、企業団においても1996年から老朽管(石綿セメント管)の本格的な更新事業が着手され、巨額の費用を投じて幹線の入れ替えが進められた。
この大規模な基幹管路の入れ替えが行われたタイミングこそが、結果として現在の耐震性の脆弱性を生む最大の原因となった。
基幹管路の大部分の更新が、1995年の阪神・淡路大震災の教訓を踏まえた「耐震継手を有するダクタイル鋳鉄管(地盤の液状化や変位に追従して継手が伸縮・屈曲し、絶対に抜けない構造を持つ最新の耐震管)」が全国的な標準仕様として広く普及し、補助事業の要件となる「前」に実施されてしまったのである。
弥富市を含む海部南部地域は、海抜ゼロメートル地帯に位置し、未固結な沖積層が厚く堆積している。
そのため、南海トラフ巨大地震等の発生時には、震度6強から7の強い揺れとともに、広範囲で深刻な地盤の液状化が予測されている。
液状化が発生した場合、地盤は液体のように振る舞い、浮力や側方流動によって地中の構造物に甚大な変位圧力をかける。
現在の剛構造に近い継手(ゴム輪で接続されているものの、大きな変位に対する抜け出し防止機構が不十分な管)のままでは、地盤の流動に耐えきれず管路が破断・離脱する危険性が極めて高い。
公衆衛生の向上(石綿管の排除)と漏水防止を急ぐあまりに行った早期のインフラ更新が、皮肉にも最新の耐震基準を満たさない管路網を形成してしまったというジレンマである。
多額の起債(借金)を行って入れ替えたばかりの太い基幹管路を、耐震化のためだけに再度全面更新することは財務上不可能に近く、現在は様子見(リスクの受容)を余儀なくされているのが実態である。
この事実は、インフラ投資における「技術革新の過渡期」に大規模更新を行うことの恐ろしさを如実に物語っている。
1.3 サービス管の更新とコスト按分の工夫
幹線が抱える問題の一方で、各家庭へと繋がるサービス管(枝管)についても課題は山積している。
かつての生活道路の下には、古い鉄管や塩化ビニル管(塩ビ管)が多数埋設されているが、これらも地震の変位に対しては極めて脆弱である。
現在、これらの細い管路については、柔軟性が高く地震の変位に追従しやすい「ポリエチレン管」への入れ替えが順次進められている。
しかし、前述の通り1キロメートル当たりの給水戸数が少ないため、水道事業単独で道路を掘削し配管を更新することは、著しい費用対効果の悪化を招く。
そのため、下水道工事や道路の舗装打ち替えなど、他事業による道路掘削のタイミングに合わせて管路更新を相乗りさせる(費用の按分を図る)といった、地道な工夫を凝らしながら少しずつ更新を進めているのが現状である。
第2章 広域化の推進と「バックヤード統合」の戦略的意義
人口減少による料金収入の低下、施設の老朽化、そして技術系職員の不足によるコンサルタントへの過度な依存は、海部南部水道企業団のみならず、全国の地方公営企業に共通する構造的課題である。
組織が小規模化・細分化されている状態では、高度な水理計算やアセットマネジメントを担える技術力の蓄積が困難であり、結果として割高な外部委託費を支払わざるを得ない状態に陥る。
2.1 トップヘビーな組織構造と技術力の空洞化
現在、愛知県下の多くの市町村では、サービス人口が10万人にも満たない規模であるにもかかわらず、それぞれが独立した水道事業を営み、部長級・課長級の役職を配置し、類似の管理組織を重複して維持している。
例えば、弥富市に隣接する蟹江町、愛西市、津島市なども、それぞれが水道・下水道の専門部署を抱えている。
もちろん、各自治体にインフラ管理の責任部署は必要である。
しかし、同一の平野部に位置し、同じ愛知県企業庁から受水しているにもかかわらず、各自治体が個別にシステムを開発・運用し、別々に水質検査を委託し、独立してコンサルタントに基本計画の策定を依頼している現状は、社会全体で見れば極めて非効率である。
組織が細分化されていることで、一人当たりの職員が経験できる専門的業務の幅が狭まり、技術の継承が途絶え、結果的に「コンサル頼み」という技術力の空洞化を引き起こしている。
2.2 経営統合の壁と大阪広域水道企業団の先行事例
この解決策として国(総務省・厚生労働省)および愛知県が強く推し進めているのが、水道事業の「広域化」である。
愛知県は「愛知県水道広域化推進プラン」を策定し、究極的には県下全域を一つの組織で運営する「県内一水道」を目標に掲げている。
しかし、組織を一つに統合し、水道料金を直ちに統一することには極めて高いハードルが存在する。
水道事業は独立採算を原則とする地方公営企業会計(企業会計)で運営されており、各市町村によって蓄積された内部留保(貯金)、抱える企業債(借金)、施設の老朽化度合い、および現在の水道料金体系が全く異なるからである。
借金の少ない自治体の住民が、借金の多い自治体のツケを払わされる形での料金統一には、議会および住民の猛烈な反対が予想される。
ここで重要な戦略的示唆を与えるのが、大阪府における「大阪広域水道企業団」の先行事例である。
大阪府では、事業統合の第一段階として、料金統一を伴わない「バックヤード(事務局)の統合」や「業務の共同化」を進めている。
| 大阪広域水道企業団が示す広域化のステップモデル | 実施内容 | 期待される効果 |
|---|---|---|
|
ステップ1:業務の共同化 (バックヤード統合) |
水質検査、施設の運転管理・メンテナンス、緊急資材の共同購入、システム開発(料金徴収システム等)の統合。 |
スケールメリットによるコスト削減、技術系専門職員の安定的な確保とノウハウの共有。 |
| ステップ2:経営の一体化 |
会計(経理)は分離しつつも、経営方針や施設整備計画を広域で一体的に策定・運用。 |
施設整備の重複排除、広域ネットワークによる水運用の最適化、災害時の相互応援体制の強化。 |
|
ステップ3:事業統合 (完全統合) |
資産・負債を統合し、最終的に水道料金を統一化。 |
「府域一水道」の実現。地域間の料金格差の是正と、持続可能で強靭な経営基盤の確立。 |
大阪のモデルが示す通り、まずは会計や料金を分離した状態であっても、事務処理や技術管理を行うバックヤードを企業団本部に集約することで、絶大なメリットを享受できる。
共通業務(給与計算、システム運用、指定業者管理など)を一本化することで事務コストを削減し、浮いた人員を現場の技術部門や災害対策部門へ再配置することが可能となる。
弥富市および海部南部水道企業団においても、隣接する自治体と連携し、この「バックヤードの統一化」へと早期に舵を切り、コンサルタント依存からの脱却と技術力向上を図ることが急務である。
第3章 下水道事業における地理的宿命と技術的困難
上水道が歴史的・地理的制約の中で苦闘してきたとすれば、弥富市の下水道事業が現在直面している危機は、そうした制約を軽視し、過大な需要予測と不確実な財政支援策を盲信した過去の政策的選択の誤りに起因する「人災」の側面が強い。
下水道事業は上水道以上に採算性が悪く、市の一般会計に深刻な打撃を与え続けている。
3.1 自然流下の不可能性と巨大ポンプ施設の宿命
下水道の基本的なエンジニアリング原理は、各家庭から排出された汚水を、重力による「自然流下」によって下流の終末処理場へと運ぶことである。
この原理を成立させるためには、管路に適切な下り勾配を設ける必要がある。
しかし、海抜ゼロメートル地帯であり、極めて広大で平坦な地形を有する弥富市においては、この自然流下を長距離にわたって維持することが物理的に不可能である。
汚水を流すためには、地中深くへと勾配をつけて太い管路を埋設し続けなければならないが、一定の深さに達した地点でそれ以上の掘削が困難(地下水位の高さや土圧の問題)となる。
そのため、途中に大規模な「中継ポンプ場」を建設し、地下深くへ流れてきた汚水を一旦地上近くまで汲み上げ、そこから再び下り勾配をつけて下流へと流すというプロセスを繰り返さなければならない。
愛知県の主導によって整備された「日光川下流流域下水道」は、津島市、愛西市、弥富市、あま市、大治町、蟹江町、稲沢市の一部を対象とする広域下水道システムである。
この広大な計画区域から集められた汚水は、弥富市上野町に位置する「日光川下流浄化センター」へと最終的に集約される。
| 日光川下流流域下水道の主要施設 | 施設概要・能力 |
|---|---|
| 日光川下流浄化センター |
位置:弥富市上野町 / 用地面積:166,000㎡ / 処理能力:133,750 m3/日(全体計画)、36,150 m3/日(現有能力) |
| 弥富ポンプ場 |
汚水を処理場へ圧送する最終中継拠点。ポンプ能力:130 m3/分 |
| 津島ポンプ場 |
ポンプ能力:104 m3/分 |
| 佐織ポンプ場 |
ポンプ能力:9 m3/分 |
この巨大なインフラを機能させるため、愛知県(企業庁等)は直径が2メートルから3メートルにも及ぶ巨大な幹線水路(日光川下流1号幹線〜9号幹線など)を、国道や県道の地下深くに長距離にわたって埋設した。
最上流部から延々と下流へ引っ張ってくるこの方式は、平坦地においては致命的な弱点を持つ。
中継ポンプ場の建設費や莫大な稼働電気代の負担増だけではない。
下水道は上水道のように常に水が満たされ圧力がかかっているわけではなく、空洞部分が存在する。勾配が緩い平坦地の下水道では汚水が滞留しやすく、嫌気性発酵によって「硫化水素」が大量に発生する。
この硫化水素は管路の天井部分(気相部)で硫酸へと変化し、コンクリート管を激しく腐食(クラウン腐食)させる。
これが進行すると、上部の土圧に耐えきれず管路が崩壊し、大規模な道路の陥没事故といった重大なリスクを引き起こす。
上水道のように「綺麗な水を水圧で押し出す」ことができない下水道は、地形的条件が悪い地域においては極めて非効率かつ維持管理が困難なシステムなのである。
3.2 真空式下水道システムと液状化の恐怖
さらに、弥富市内の一部地域においては、管路内を負圧にして汚水を強制的に吸引する「真空式下水道システム(バキューム方式)」が導入されている。
このシステムは、平坦地での過度な深掘りを避けるために採用される技術であるが、各家庭の汚水ピットに設置される真空弁などのゴム製部品の劣化が早く、定期的な高額部品の交換が不可欠である。
さらに、システム全体を稼働させるための真空ポンプ場の膨大な電力消費を伴うため、維持管理コストを飛躍的に増大させる要因となっている。
加えて、地中深く埋設された下水道の剛性管路は、大地震による地盤の液状化に対して極めて脆弱である。
万が一、液状化に伴う地盤の不等沈下によって下水道管の勾配が狂ったり、マンホールが浮上したりして管路が破断した場合、汚水は流れ場を失い、地上への逆流という壊滅的な被害を引き起こす。
上水道が止まれば生活が不便になるが、下水道が機能不全に陥り逆流すれば、公衆衛生上の大惨事となる。復旧には莫大な費用と途方もない時間を要し、その間、市民はトイレをはじめとする水洗設備を一切使用できなくなるのである。
第4章 政策的誤謬の歴史的検証:下水道事業への無謀な参入
これほどまでに地理的・経済的不利が明白であったにもかかわらず、なぜ弥富市は巨額の投資を伴う公共下水道の面的整備という拡大路線を強行してしまったのか。
その歴史的な転換点と責任の所在は、地方分権一括法が施行され、市町村の自己決定権が強化された2000年(平成12年)前後の政策決定過程にある。
4.1 浄化槽法の改正と「分散型インフラ」の優位性
2000年頃、下水道法や浄化槽法を取り巻く法整備は大きな転換点を迎えていた。
従来主流であった、トイレの汚水のみを処理し、生活雑排水(台所や風呂等の水)をそのまま垂れ流す「単独処理浄化槽(みなし浄化槽)」の新規設置が原則禁止されたのである。
これに代わり、生活雑排水も合わせて処理でき、公共下水道と同等の高度な処理能力(BOD除去率90%以上、放流水BOD20mg/L以下)を持つ「合併処理浄化槽」の設置が義務付けられる方向へと進んだ。
当時の総務省は、過疎地域や人口密度が低く管路延長が長くなる地域においては、莫大な費用がかかる管渠(パイプ)網の整備よりも、各戸に合併処理浄化槽を設置する方が圧倒的に経済的かつ合理的であるとして、全国的な通達を発し指導を行っていた。
当時の試算によれば、各家庭に高性能な合併処理浄化槽を設置するための費用はおおむね70万円から100万円程度であった。一方、市全域に下水道管を張り巡らせる公共下水道事業は、管路の埋設、ポンプ場の建設、処理場への負担金などを1件当たりに換算すると、数百万円単位の莫大なインフラ投資を必要とする。
経済合理性の観点から見れば、都市部のような人口密集地を除き、合併処理浄化槽への転換補助を推進することが圧倒的に有利であった。
4.2町長体制下の強行と甘い誘惑
しかし、当時の弥富町(後の弥富市)は、合理的な分散型インフラへの転換ではなく、愛知県が推進する日光川下流流域下水道への接続を前提とした公共下水道の面的拡大路線を選択した。
当時の共産党の三宮議員をはじめとする一部の議員や市民からは、その莫大な費用対効果の悪さから強硬な反対運動が展開されたにもかかわらず、当時の町長である川瀬氏らは、この計画を強引に推し進めたのである。
この決定の背景には、愛知県とその背後にいる土木・建設業界の「仕事作り」という構造、そして国からの「補助金」という甘い誘惑が存在した。
広域下水道の処理場(日光川下流浄化センター)は、どうしても海のそばの広大な用地(鍋田干拓など名古屋港エリアの県の企業庁用地)に建設せざるを得ず、そこへ各市町村を接続させる必要があった。
県は事業を成立させるため、各市町村に対して接続を強く働きかけた。
市が市民や議会に対して行った説明は、次のような極めて楽観的かつ誤った財政見通しに基づくものであった。
「建設費用の大部分は国からの手厚い補助金で賄われる。
補助金で足りない部分は地方債(借金)を発行して調達するが、その借金の返済額の大部分も、後年度に『地方交付税措置』として国から補填される。
したがって、実質的な地元(市)の負担額はごく僅か(あるいは実質無料に近い)で整備が可能であり、下水道使用料による収入で十分に返済できる。」
この説明資料は、愛知県が作成したフォーマットを基に弥富市が数字を打ち込んだものであったが、その見込みは「むちゃくちゃ甘かった」と言わざるを得ない。
様々なリスク要因(人口減少、金利変動、維持管理費の高騰など)を小さく見積もり、あるいは意図的に無視し、「大規模工事ができれば景気が良くなる」という理屈が優先されたのである。
4.3 「下水道バブル」と地元業界の潤い
さらに、下水道の整備が進むことで、各家庭での接続工事(排水設備工事)が次々と発生した。
各家庭は、下水道管が家の前に整備されると、法律に基づき数年以内に浄化槽やくみ取り便槽を廃止し、下水道へ接続する義務を負う。
この宅内配管の切り替え工事には、一件当たり30万円、場合によっては100万円を超える多額の費用がかかる。
この巨額の民間資金が、下水道接続工事費として地元の管工事・土木工事業者へと一気に流れ込んだ。
これは一種の「下水道バブル」とも呼べる状況を生み出し、地元業者が潤うことで、政治的にも計画を後戻りさせない強固な推進力が形成されてしまったのである。
第5章 財政的破綻と負債の構造:隠された「見えない借金」
事業推進の最大の根拠とされた「国が借金の大部分を肩代わりしてくれる」という前提は、数年を待たずして無残に崩れ去った。
実際の地方交付税による補填率は見込みを大幅に下回り、予定されていた補填率の3割程度しか充当されない事態が発生したのである。
その結果、本来国が負担するはずであった巨額の債務の残りの7割が、そのまま弥富市の自腹の負担として重くのしかかることとなった。
5.1 異常な起債残高と一般会計からの赤字補填
現在の弥富市の財政状況を分析すると、下水道事業が市全体の財務にいかに異常な負荷をかけているかが明確になる。
令和5年度(2023年度)末時点における弥富市の市債(借金)現在高は総額で約231億円に達している。
このうち、一般会計の負債が約146億円であるのに対し、下水道事業会計(公共下水道および農業集落排水)に関連する負債は約81億9,000万円に上り、市全体の負債の35.3%を占めている。
出典:公開財務データに基づく分析
さらに深刻なのは、事業としての収益性の完全な欠如である。
下水道事業は原則として「受益者負担」、すなわち市民が支払う下水道使用料によって施設の維持管理費や資本費(借金の返済)を賄うべき独立採算の公営企業会計である。
しかし、弥富市の下水道事業は、使用料収入だけではポンプ場の電気代や日々の維持管理費といった「営業費用」すら賄えていないのが実態である。
不足する莫大な資金を補うため、弥富市は一般会計から下水道事業会計に対して、毎年5億円からピーク時には7億円超という巨額の「繰出金(実質的な赤字補填)」を注ぎ込み続けている。
この多額の一般財源の流出は、本来であれば保育所の充実、学校の修繕、防災対策、あるいは市民生活の向上に直結する他の行政サービスに充てられるべき予算を継続的に奪い続けており、市の財政の硬直化を招く最大の要因となっている。
佐藤仁志議員をはじめとする市議会での追及により、この「51年間で270億円を要する事業」の異常性が幾度となく指摘されているが、一旦動き出した巨大公共事業を止めることは容易ではない。
5.2 「世代間負担の公平性」という詭弁の打破
地方自治体が巨大な公共施設を建設する際、地方債(借金)を発行する理論的根拠として頻繁に用いられるのが「世代間負担の公平性」である。これは「道路や下水道のように50年以上使われるインフラは、建設した現在の世代だけでなく、将来の世代も恩恵を受けるのだから、建設費は借金をして長期間にわたって薄く広く負担させるのが公平である」という財政学上の論理である。
しかし、この理論が成立するためには二つの絶対的な前提条件がある。第一に「その施設が将来にわたって確実に利用され、社会的・経済的価値を生み出し続けること」、第二に「将来の税収見通し(人口動態)に対して、借金の返済額が許容範囲内に収まっていること」である。
弥富市の下水道事業において、この前提は完全に崩壊している。
少子高齢化と人口減少が進行する中で、将来世代が受け継ぐのは、恩恵を生み出す優良なインフラではない。
それは、耐用年数を迎え莫大な更新・修繕費用が必要となる老朽管路と、維持するだけで一般会計から毎年数億円を吸い上げ続ける「負債の装置」である。
本来のコストを回収できない不採算事業に対して「世代間負担の公平性」を主張することは、意思決定を行った現世代の責任を逃れ、将来世代に「高すぎるツケ」を回すことを正当化するための詭弁に過ぎない。
第6章 次世代の行政職員に向けた戦略的インフラマネジメントの提言
これまでの歴史的経緯と財務的現実を踏まえ、若手行政職員は、過去の失敗を教訓とし、以下の観点から抜本的な政策転換を図るための理論武装を行う必要がある。
6.1 分散型インフラ(合併処理浄化槽)への戦略的転換と拡大路線の凍結
現在もなお新規に管路を延長しようとする拡大路線は、人口密度が低く、費用対効果が著しく劣る地域にまで下水道を整備するという極めて非合理な行為である。
これを直ちに停止(新規建設の凍結)し、代替手段である「合併処理浄化槽」の設置推進へと政策資源を集中させるべきである。
合併処理浄化槽は、各家庭の敷地内で汚水を完結して処理する「分散型インフラ」である。
広大な管路網や莫大な電力を消費する中継ポンプ場を必要とせず、地震で地盤が液状化した場合でも、被害は各家庭の浄化槽単体に留まり、システム全体が機能不全に陥るリスクを回避できる(局所的な被害であれば比較的短期間・低コストで復旧可能である)。
また、近年では石川県珠洲市において、被災した下水道整備区域を浄化槽に転換した上で復旧事業を実施する事例も出ており、国も集合処理から浄化槽への転換に対する財政措置(補助率1/2)を打ち出している。
弥富市では既に、下水道の供用開始区域を除く地域(浄化槽処理促進区域や一般区域など)において、専用住宅の単独処理浄化槽やくみ取り便槽から合併処理浄化槽への転換を行う市民に対し、補助金を交付する制度を設けている。
出典:弥富市 合併処理浄化槽設置整備事業補助金交付要綱
今後は、現在下水道の事業計画区域に含まれているが未だ管路が到達していない末端地域について、計画区域から除外(事業計画の縮小)し、合併処理浄化槽による処理区域へと再編することが求められる。
初期投資のみならず、将来の維持管理コスト(電気代、管路更生費、汚泥処理費)や金利上昇リスクを含めたトータルコストで比較すれば、分散型の合併処理浄化槽への補助金投入の方が、市の財政にとって圧倒的に経済合理性が高いことは明白である。
6.2 広域化による技術力低下の防止と組織の再構築
上下水道事業が直面する危機を克服するためには、市町村単位の狭い枠組みにとらわれた組織体制を抜本的に見直さなければならない。
上水道の章で触れた「バックヤード統合(事務の共同化)」の概念を下水道事業にも応用し、近隣市町村と連携して、上下水道の技術・事務管理部門を一つの広域組織に集約することが不可欠である。
愛知県が推進する「上下水道広域連携協議会」などの枠組みを積極的に活用し、高度な専門知識を持つ技術者集団を広域圏で共有する体制を構築するべきである。
技術者が集約されることで、経験の共有とOJTを通じた若手技術者の育成が可能となり、インハウス(直営)での業務遂行能力が回復する。これにより、高額なコンサルタント費用の削減と、地域特性に適した柔軟かつ強靭なインフラマネジメントが実現できる。
結論
弥富市の上下水道事業は、伊勢湾台風という未曾有の災害からの復興、高度経済成長期の公衆衛生需要、そして2000年代の不完全な財政見通しに基づく過剰投資といった、それぞれの時代の社会的要請と、時として誤った政策判断の積み重ねの上に現在の姿がある。
上水道においては、漏水対策とアスベスト排除を急ぐあまり生じた「耐震化のジレンマ」という不運な負の遺産を抱えながらも、広域化の波に乗り遅れることなく、大阪広域水道企業団の先行事例に学び「事務・技術管理のバックヤード一体化」を図り、組織の筋肉質化を進めることが喫緊の課題である。
一方、下水道においては、これ以上の無謀な面的な管路拡大を即時凍結し、財政的破綻を防ぐための痛みを伴う事業計画の縮小と、合併処理浄化槽というレジリエントな分散型インフラへの転換を急がなければならない。
過去の首長たちが国や県の甘い説明に乗り、巨額の借金を積み上げた責任は重いが、それを是正できるのは現在の行政を担う者だけである。
若手行政職員に強く求められるのは、過去の決定を無批判に踏襲する「前例踏襲主義」からの完全な脱却である。
インフラは造って終わりではなく、数十年、百年単位で維持管理し、莫大なコストとともに次世代へと引き継ぐものである。
時には「事業を縮小する勇気」を持ち、客観的な財務データと地理的特性に基づいた冷徹な分析を行うことこそが、将来の市民生活と持続可能な地域社会を守るための最大の責務となる。
本報告書の分析が、今後の市政における意思決定の確固たる基盤となることを確信する。