地方自治体議会における答弁拒否問題と実践的対抗戦略(サマリー)
1. 議会の機能不全と「答弁逃れ」の実態
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二元代表制の形骸化: 議会は執行部を監視する役割を担うが、「係争中」「監査中」を理由とした不当な答弁拒否(はぐらかし)が常態化している。
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議長の同調: 本来中立であるべき議長が、執行部を庇護して議員の質問を不当に制止する事態が散見され、議会自らが監視機能を放棄する自己矛盾に陥っている。
2. 執行部の答弁拒否に対する法的反論
地方自治法を根拠に、執行部の「逃げ口上」の違法性を突く。
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例外規定の不在(第121条): 長等の「出席説明義務」には、「係争中」や「監査中」を理由に答弁を免除する規定は一切存在しない。
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権力分立の詭弁を崩す: 議会は司法判断そのものを求めているのではなく、行政の「客観的事実」と「見解」を問うており、並行調査は法的に許容される。
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切り返しスクリプト: 議場にて「説明義務を免除する明文の法的根拠(条文)を示せ」と要求し、逃げ道を塞ぐ。
3. 議長の権限濫用に対する牽制
議事整理権を悪用した質問封殺に対する対抗策。
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「通告外」という形式主義の罠: 議長は地方自治法第104条(議事整理権)や「事前通告にない」ことを理由に質問を遮断するが、これは円滑な運営のための手続的権限の明白な濫用である。
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切り返しスクリプト: 「法的根拠のない答弁拒否への加担は、議会制民主主義を破壊する行為である」と議事録に残る形で強烈に抗議し、議長に政治的プレッシャーを与える。
4. 答弁逃れ(はぐらかし)のメカニズム:弥富市議会の実例
執行部は単なる沈黙ではなく、論点をすり替える高度な隠蔽工作を行う。
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比較検証の回避: 「A案とB案の比較」を求められているのに、「A案も最低基準を満たしている」と絶対評価にすり替え、組織的責任から逃れる(学校増改築の事例)。
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司法判断を盾にした過去の隠蔽: 最高裁判決が確定した事実を利用し、そこに至るまでの「過去の行政の不作為」や「ガバナンスの問題」に関する議論を強制終了させる。
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事実把握の怠慢: 基礎的な事実調査を行わず、「現在調査中」「配達途中」と曖昧な答弁に終始し、行政の無策を議会で明確にさせない(通知カードの事例)。
5. 現場での実践的追及戦術
執行部の強固な防御壁を突破するためには、質問の構成と事前の網張りが極めて重要となる。
【質問内容の峻別:事実関係への集中】
| 質問のアプローチ | 特徴と執行部側の反応 | 追及における有効性 |
| 法的評価を問う | 「違法か」「過失はあるか」等。司法判断の領域であるとして「係争中につき控える」と逃げられやすい。 | 回避推奨 |
| 客観的事実を問う | 「いつ」「誰が」「何をしたか」。過去の事象として確定しており、隠蔽する法的根拠がない。 | 徹底推奨 |
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事前封じ込め戦術: 質問の冒頭であらかじめ「第121条には係争中を理由とする例外規定はないため、客観的事実について誠実な答弁を求める」と宣言し、執行部が逃げた際の「違法な隠蔽姿勢」を議場や市民に強く印象付ける。
結論
行政の「はぐらかし」や議長の権限濫用を打ち砕くためには、議員個人の確固たる法的理論武装が不可欠である。
「法的評価」ではなく「客観的事実」の追及に徹し、明確な法的根拠をもって執行部の説明責任を迫ることこそが、地方議会の監視機能と二元代表制を再生するための唯一の道である。
地方自治体議会における執行部の答弁拒否と二元代表制の機能不全に関する包括的分析及び実践的対抗戦略
序論:二元代表制における議会の監視機能と「慣例的な逃げ口上」の蔓延
日本国憲法第93条に基づく地方自治の制度設計において、首長(執行機関)と議会(議決機関)はともに住民からの直接選挙によって選出される「二元代表制」を構成している。
この制度の根幹には、強大な権限と組織力を持つ執行機関に対し、住民の代表である議会が独立対等の立場で厳格な監視(チェック)と牽制を行うことで、行政権の肥大化や恣意的な権力行使を防ぎ、政策決定プロセスの透明性を担保するという権力分立の理念が存在する。
議会がその監視機能を最大限に発揮するための最も重要な舞台が、本会議等における質疑や一般質問である。
しかしながら、全国の地方自治体の議会において、市長や執行部が不祥事や政策的瑕疵、あるいは住民からの批判が強い事案について追及を受けた際、「現在、監査委員による審査中である」「当該事案については裁判所で係争中であるため、答弁を差し控える」といった理由を盾に取り、議会での実質的な説明を拒否する事態が常態化している。
執行部側は、議場での発言が監査や司法の判断に影響を与える可能性があるという配慮を装うが、その実態は不都合な事実の開示や政治的・道義的責任の追及から逃れるために多用される「慣例的な逃げ口上」に過ぎない。
さらに深刻な問題として、議場における秩序維持と議事進行の権限を持つ議長が、「裁判中であるから答弁できなくても仕方がない」「事前の通告にない」などと執行部側に寄り添う裁定を下し、質問を行う議員の発言を不当に制止するケースが散見される。
これは、議会自らが執行機関の防波堤となり、二元代表制の一翼を担う議会の存在意義を根底から否定する自己矛盾の極みである。
本報告書は、地方自治法をはじめとする関係法令の構造と限界を精緻に紐解き、弥富市議会等の具体的な事例分析を通じて行政の「答弁逃れ(はぐらかし)」のメカニズムを解明するとともに、議員が執行部および議長に対して講じるべき法的根拠に基づく強烈かつ実践的な対抗戦略(切り返し手法)を体系的に論証する。
執行部に対する切り返しの法理:地方自治法第121条と説明義務の絶対性
執行部による「係争中」「監査請求中」を理由とする答弁拒否が法的に正当化され得るのかを検証するためには、地方自治法における長等の議会に対する義務の構造を正確に把握する必要がある。その中核となるのが、地方自治法第121条の規定である。
地方自治法第121条における例外規定(答弁拒否権)の不在
地方自治法第121条は、普通地方公共団体の長、教育委員会委員長、選挙管理委員会委員長などの執行機関が、議会の審議において説明を求められた場合、議場に出席し説明しなければならないという「出席説明義務」を厳格に定めている。
この条文の最大の法的特徴は、出席と説明を絶対的な義務として課している点にあり、条文のどこにも「ただし、裁判で係争中である場合や監査委員の審査中である場合は、この限りではない(答弁を拒否できる)」といった例外規定や免責条項は一切存在しないことである。
したがって、市側が「係争中だから答弁しない」と主張することは、何ら法令上の根拠を持たない行政内部の勝手なルールの押し付けであり、明確な地方自治法第121条違反(法的義務の不履行)を構成する。
全国の議会では、町長や市長が「現在、この事件について係争中であります」と述べるだけで免罪符を得たかのように振る舞う場面が見られるが、これは主権者たる住民の意思を反映すべき議会に対する重大な背信行為である。
権力分立の誤用と議会の監視権限の優越
執行部側が答弁拒否の口実として頻繁に用いるのが、「議会での発言が司法の独立を侵す恐れがある」「裁判所の心証形成に影響を与える」という権力分立を逆手にとった詭弁である。
しかし、議会は行政を監視する最高意思決定機関であり、裁判所の権限を直接侵すような「司法判断そのもの(例:この事案で市に損害賠償義務は生じるか等の最終的な法的帰結)」を問う質問でない限り、客観的な事実関係や行政の基本姿勢を問うことは議員の正当かつ不可侵の権利である。
最高裁判所の判例等においても、議会の有する国政調査権・市政調査権の重要性は広く認められており、他の国家機関(司法機関を含む)の手続きが進行中であっても、目的や対象が異なる並行調査を行うことは原則として許容されている。「裁判に影響を与える可能性がある」というのは執行部の過剰な防衛本能と勝手な忖度であり、現在進行形の行政責任の所在を明らかにするという議会の役割を不当に制限する理由にはならない。
執行部への強烈な対抗スクリプトと現場での実践的アプローチ
このような法的根拠の欠如を突き、執行部の逃げ道を塞ぐためには、議場において極めて論理的かつ冷徹な切り返しを行う必要がある。以下のトークスクリプトは、法理に基づき執行部を追い詰めるための実践的かつ極めて有効な定型文である。
【執行部に対する切り返しのトークスクリプト】
「ただいま執行部より『監査請求中(または係争中)につき答弁を控える』旨の不誠実な答弁がありましたが、地方自治法をはじめとする関係法令のどこに『係争中・審査中であれば議会に対する説明義務が免除される』という明文の規定があるのでしょうか。明確な条文の根拠を直ちにお示しください。」
「監査委員や裁判所が最終的にどのような法的判断を下すかということと、現在、執行機関としてどのような事実認識を持ち、自らの行政責任をどう捉えているのかをこの主権者の代表たる議会で説明することは、全く次元の異なる別の問題です。私は司法の判断を求めているのではなく、市の見解と客観的な事実関係を問うています。地方自治法第121条に基づく説明義務を放棄する明確な法的根拠がない以上、誠実に答弁することを強く求めます。」
このスクリプトの最大の強みは、「条文の根拠を示せ」と要求することで、執行部側に存在しない法律を提示させるという不可能なタスクを課す点にある。
法令に基づかない答弁拒否であることを自白させるか、あるいは答弁に応じるかの二者択一を迫ることで、議会での主導権を完全に掌握することができる。
議長の議事整理権の濫用と議会権威の自己否定
執行部が答弁拒否という違法状態に陥った際、その議場の力学を決定づけるのが議長の実務的対応である。
しかし、現実の議会においては、議長が執行部に助け舟を出し、議員の正当な質問権を制止するという倒錯した事態が発生している。
地方自治法第104条(議事整理権)の本来の目的と限界
地方自治法第104条は、議長に対して議場の秩序を保持し、議事を整理する権限(議事整理権・秩序保持権)を与えている。
この権限は、あくまで会議を「ルール(会議規則)に則って公正かつ円滑に運営」するための手続的権限である。
例えば、弥富市議会会議規則第35条において「議長は、必要があると認めるときは、2件以上の事件を一括して議題とすることができる」と規定されているように、議事進行の効率化を図ることは議長の正当な職務である。
また、同規則第16条が委員会の定数に関する要件を定めているように、議会は厳格な形式的要件の下で運営される。
しかし、適法な手続きを経て受理された議員の質問内容に対して、議長が「裁判中だから仕方ない」「質問の方向を変えてください」と実体的な内容に介入し、市長側の勝手な都合(慣例)を擁護して質問を制止することは、地方自治法第104条が定める議事整理権の明白な濫用である。
一般質問の法的性質と「通告外」という形式主義の罠
議長が議員の質問を封じる際に最も多用される詭弁が、「事前の通告書に記載がない(通告外である)」という形式主義の適用である。
弥富市議会会議規則第62条は、一般質問について「議員は、市の一般事務について、議長の許可を得て質問することができる」「質問者は、議長の定めた期間内に、議長にその要旨を文書で通告しなければならない」と定めている。
一般質問が通告制とされている趣旨は、執行部側に事前の調査とデータ収集の機会を与え、より充実した実質的な議論を本会議で展開することにある。
内容が市の事務から著しく逸脱していない限り、要旨の通告が適法に受理された時点で、本会議における議員の質問権は法的に成立している。
実際の弥富市議会における事例では、議員が市の職員の答弁姿勢(通告書ばかり見ており対話が欠けている)や、市長のリーダーシップの欠如(部下の作った原稿を棒読みしているだけではないか)といった、議会運営の根幹に関わる重要な疑問を投げかけた際、議長は即座に「通告に入っておりませんので。通告に従って質問してください」と介入し、発言を遮断している。
この場面において市長は、議員の問いかけに対して聞こえる程度の小声で「失礼な」と発言したのち沈黙するという、著しく不誠実な対応をとった。
議長がこの市長の対話拒絶(沈黙)を是認し、議論の深化に伴って必然的に生じる関連質問や派生質問を「通告外」を理由に封絶することは、議長としての公正・中立な立場を放棄し、執行部の防衛装置へと成り下がる行為である。市側に法的根拠のない答弁を拒否させる実体的な権限は、議長には一切存在しない。
議長に対する強烈な牽制と権限の適正行使の要求
議長が執行部に同調し、議事整理権の濫用によって質問権を侵害しようとした場合、議員は直ちに議事録に残る形で議長に対する強烈な抗議と牽制を行わなければならない。
【議長への強烈なトークスクリプト】
「議長に申し上げます。今の執行部の答弁拒否は、なんら法的根拠を持たない単なる説明逃れです。それを議長が容認するということは、二元代表制の一翼を担う議会の『行政への監視機能』を、議長自らが放棄し、議会の権威と機能を自ら貶めることに他なりません。」
「私の一般質問は、所定の手続きを経て通告し、議長によって適法に受理されたものです。議長の持つ議事整理権(地方自治法第104条)は、会議を円滑に進めるためのものであり、法的根拠なく執行部の答弁拒否に加担し、議員の正当な発言権・質問権を封殺するためのものではありません。議会としての矜持を持ち、執行部に対して地方自治法第121条に基づく明確な答弁を直ちに命じてください。」
この発言は、議場における空気の支配権を議長から奪い返し、議長自身が「議会制民主主義を破壊する片棒を担いでいる」という歴史的な汚名を議事録に残すリスクを突きつけるものである。
に示されるように、本会議の顛末を記載した議事録には最終的に議長が署名を行う義務があるが、議長自身の違法性の高い議事運営が議事録に克明に刻まれることは、議長にとって極めて強い政治的プレッシャーとなる。
行政の「はぐらかし」のメカニズム:弥富市議会の実例検証
執行部の答弁拒否は、単なる「沈黙」や「係争中の主張」にとどまらず、論点を巧みにすり替え、表面的には答弁しているように見せかけながら実質的な対話を拒絶する「はぐらかし」という高度な形態をとることが多い。
ここでは、複数の具体的な事例を通じて、その隠蔽のメカニズムを検証する。
事例1:安全基準の比較回避と「組織的責任」からの逃亡
弥富市議会における十四山中学校跡地と既存小学校の増改築を巡る一般質問は、行政による「比較の拒否」という典型的な詭弁の構造を浮き彫りにしている。
この事案では、水害リスクの低い十四山中学校跡地での新築を求める3,300人を超える市民の署名と、議会からの全会一致の提案が存在していたにもかかわらず、市側は既存の小学校での増改築を強行する姿勢を貫いた。
議員が「広さ、標高、交通の便で優れている中学校跡地を選ばない本当の理由は何か」「どちらがより安全か」と、相対的な比較検証を求めたのに対し、市側の答弁は「小学校も危険な場所ではない」「既存校舎も耐震工事済みで倒壊の危険性は低い」という、単体での絶対評価へと論点をすり替えるものであった。
市民が求めているのは「A案とB案のどちらがより最善か」という比較考量であるのに対し、行政は「A案も最低限の基準を満たしている」と答えることで、意図的に対話のレイヤーをずらしている。
過去の高潮災害の教訓を踏まえ、救助・復興拠点としての「機能性」を重視する指摘に対しても、市側は「2階床高が4.15mあるから安心」「垂直避難で命は守れる」と、最低限の「命が助かる」対策へと議論の焦点を矮小化させた。
子どもには通う学校を自ら選ぶ権利がない以上、行政には最低基準を満たすだけでなく、可能な限り最善の安全環境を提供する「組織的責任」がある。
しかし市側は「新築校舎は新耐震基準で設計を進めており、安全安心な校舎です」と述べ、より安全な場所との安全格差の存在を一切認めようとしなかった。
さらに、「間に合わない」というスケジュールの問題を理由に計画変更を拒否したが、専門家から工期に問題がないと指摘されても態度を硬化させた背景には、市長の事件に関する発言など、表に出せない「隠された理由」の存在が強く疑われている。
これは、結論ありきで事実の検証を封じる、極めて悪質な説明義務の放棄である。
事例2:最高裁判決を盾にした過去の行政不作為の隠蔽
係争中であることを理由にするだけでなく、裁判が「確定した後」であっても、その司法判断を盾にして実質的な答弁を回避するケースが存在する。令和6年の弥富市議会において、加藤明由議員が行った一般質問がその典型である。
この事案では、弥富市の水路敷における不法占拠問題に対し、最高裁判所で市の勝訴(不法占拠の確定)が確定したことを受け、加藤議員が「なぜ市はこれまで適切な対応(過料の適用、速やかな原状回復命令など)を怠ってきたのか」を厳しく追及した。
この質問の核心は、最高裁の判決結果そのものを問うものではなく、判決に至るまでの長期間にわたり、市がなぜ違法状態を放置・容認してきたのかという「過去の行政不作為」や、「特定業者に対する優遇疑惑」、そして「今後の具体的な原状回復への対応」という行政内部のガバナンスと公平性の問題である。
しかし市側の答弁は、裁判結果という確定事項や条例の一般的な運用論を並べ立てることに終始し、議員が真に問うている「過去の不適切な行政判断(不作為の責任)」という核心部分を見事にはぐらかした。
司法判断が確定したことを「全ての法的・政治的責任が清算された」ことと同義であるかのように扱い、「裁判は終了したためこれ以上の議論は不要である」という態度をとることは、市民の利益を守るべき監視役としての議会の役割を無力化する狡猾な手法である。
事例3:事実把握の怠慢と「調査中」を理由とする曖昧化
明確な答弁拒否ではないものの、行政が基礎的な事実関係の把握すら怠ったまま議会に臨み、曖昧な答弁で煙に巻くことも広義の「答弁逃れ」に該当する。マイナンバーの通知カードに関する一般質問において、「現在で通知カードの受け取りを拒否している実例はあるのか」という問いに対し、市側は「数件拒否の実例があります」と回答した。
しかし、さらに「未送達者に対する対策は」と問われると、「配達途中の段階であるが、約700から800通が受け取られていません」という極めて大雑把で現状把握の甘い答弁にとどまった。
このように、事実関係の精緻な調査を行わずに「配達途中である」「現在調査中である」と逃げる手法も、不都合な実態(行政の対応の遅れや無策)を議会の場において明確にさせないための常套手段となっている。
現場での高度な追及戦術:「事実関係」と「法的評価」の峻別
以上の分析から明らかなように、市側(市長・執行部)が「係争中」や「監査中」を理由に最も避けたい事態とは、「議場での発言が言質(げんち)となり、後の裁判や監査で市側に不利な証拠として採用されること」である。
仮に議会で「あの時の手続きには不備があったかもしれない」と少しでも認めれば、それが民事訴訟における国家賠償責任や不法行為責任を認める自白として扱われかねないという強迫観念が、行政側を頑なな答弁拒否へと駆り立てている。
この強固な防御壁を突破するための戦術的ポイントは、質問の構成において「事実関係」と「法的評価」を完全に切り分けることである。
「評価」を問う質問の危険性と「事実」に絞る戦術の優位性
議員が「このような手続きを進めたことは、違法だと思いますか?」「この対応には過失があったと認めますか?」といった、行政の行為に対する『法的評価』を問う質問を行った場合、市側は「その点については現在裁判所で争われているところであり、司法の判断を待つべきであるため、見解を差し控える」という、一見すると論理的な逃げ道を確保してしまう。
これを封じるためには、質問から評価の要素を一切排除し、「Who(誰が)」「What(何を)」「When(いつ)」「Where(どこで)」という『客観的な事実関係』の確認(マイクロ・クエスチョニング)に徹することが極めて有効である。
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「〇年〇月〇日に、A社に対して文書を交付したのは事実ですか?」
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「その際の最終決裁者は誰ですか?」
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「決裁の過程において、弁護士等の専門家の意見は聴取しましたか?」
事実は裁判中であっても、監査中であっても、過去に起きた客観的事象として確定しており変動することはない。
したがって、これらの「単純な事実」に絞って矢継ぎ早に問うた場合、市側が「係争中」を理由に事実の存在そのものを否定・秘匿することは、論理的にも法的にも不可能となる。
もし事実関係の確認すら「係争中につき」と逃げた場合、それは「裁判に影響するから」ではなく、「不祥事を議会で隠蔽している」という意図を明確に自白したに等しくなり、傍聴席やメディアに対しても「市が不当に逃げている」という印象を決定づけることができる。
以下の表は、議会での追及において議員が用いるべき「事実への追及」と、回避すべき「評価への追及」の構造的差異を整理したものである。
| 質問のアプローチ | 質問の具体例 | 執行部側の対応しやすさ | 逃げられた際の法的・政治的リスク(市側) |
|---|---|---|---|
| 法的評価を問う質問(回避推奨) | 「この対応は条例違反にあたるとお考えですか?」 | 容易。「裁判所の判断を待つ」「係争中につき見解を控える」と正当化しやすい。 | 低い。司法の領域を尊重するという建前が通用するため。 |
| 客観的事実を問う質問(徹底推奨) | 「令和5年4月1日に、当該業者と市役所内で面会した事実はありますか?」 | 極めて困難。事実は不変であり、事実を隠蔽する法的根拠が存在しない。 | 極めて高い。事実の確認すら拒むことは、地方自治法121条違反の明確な隠蔽行為とみなされる。 |
| 相対的比較を問う質問(対はぐらかし) | 「A案とB案の比較検討を行った議事録は存在しますか?」 |
困難。「A案も基準を満たしている」というすり替え(等)が通用しない。 |
高い。比較検討を行っていないという「プロセスの瑕疵」が露呈する。 |
根拠条文をあらかじめ突きつける「事前封じ込め」戦術
もう一つの重要な現場でのポイントは、「最初の質問の段階で法的な網を張る(事前封じ込め)」ことである。
市側が答弁を拒否した「後」から「それはおかしい」と反論するのではなく、質問の冒頭で以下のように宣言する。
「本件については現在監査請求中(または係争中)であることは承知しているが、地方自治法第121条に基づく長等の出席説明義務には、係争中を理由とした答弁拒否の例外規定は一切存在しないことを事前に申し添えておく。
したがって、司法判断に関わらない客観的事実関係について、同条に基づく誠実な答弁を求める」
あらかじめ根拠条文(第121条)を突きつけ、逃げ道を塞ぐ「釘を刺しておく」ことで、それでもなお市側が「係争中だから」と逃げた際のコントラストが強烈に際立つ。
議場全体に「市側は法律(第121条)を明確に無視して不当に逃げている」という共通認識を形成することができ、議長の不当な介入(のような通告外を理由とした擁護)に対する強力な抑止力ともなる。
結論:議会制民主主義の再生と監視機能の再構築に向けて
地方自治体議会における執行部の「係争中」「監査中」を理由とする答弁拒否は、法令上の根拠を全く持たない行政側の「慣例的な逃げ口上」に過ぎない。
地方自治法第121条は長等に対して議会での説明義務を絶対的なものとして課しており、司法への配慮を口実とした客観的事実の隠蔽は、主権者たる住民の知る権利を不当に侵害し、二元代表制の根幹を破壊する違法かつ不当な行為である。
弥富市議会の複数の事例分析が克明に示しているように、市長の沈黙や「失礼な」という対話拒絶の態度、安全基準の比較を拒み最低基準へと論点を矮小化するすり替え、そして最高裁の確定判決を盾にした過去の行政不作為の隠蔽など、行政の「はぐらかし」の手法は極めて巧妙化かつ悪質化している。
さらに、本来中立公正であるべき議長が、「通告外」という形式主義(議事整理権の濫用)を振りかざして執行部を庇護し、議員の正当な質問を封殺する事態は、議会自らがその監視機能を放棄する自殺行為に他ならない。
この構造的な議会の機能不全を打破するためには、個々の議員が確固たる法的根拠(地方自治法第121条、第104条の本来の趣旨等)を背景に、極めて論理的かつ戦略的な質問を展開するしかない。
「法的評価」ではなく「客観的事実関係」に焦点を絞ってマイクロ・クエスチョニングを徹底し、事前通告の段階から法的根拠を突きつけることで、執行部から「係争中」という隠れ蓑を完全に剥奪する必要がある。
同時に、執行部に同調しようとする議長に対しては、「議会の権威と機能を自ら貶めている」事実を議事録に残す覚悟で鋭く牽制し、中立的な議事運営へと引き戻さなければならない。
議場における真摯な対話と事実の開示の喪失は、地方自治の死を意味する。執行部の不誠実な答弁拒否と議長の権限濫用を、議場における徹底した法的・論理的追及によって打ち砕き、行政プロセスの全容を白日の下に晒すことこそが、有権者の信託に応える議員の最大の責務であり、形骸化した二元代表制を再構築し、民主的統制を取り戻すための唯一にして不可欠な道程である。
本分析で提示した精緻な法的解釈と実践的トークスクリプトが、全国の地方議会において執行部の説明責任を強烈に迫り、議会本来の圧倒的な権威と監視機能を取り戻すための強固な理論的武装となることを確信する。