弥富市の交通が生まれ変わる!未来の移動を支える5つのポイント
現在の弥富市南部地域(新設される「よつば小学校」エリア)が抱える「移動の不便さ」や「運転手不足」といった課題を解決するため、新しい法律やアイデアをフル活用した画期的な交通プランが計画されています。その全貌を分かりやすく解説します!
1. スクールバスが「地域の足」に大変身!
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地域のルールを柔軟に: 新しい法律により、弥富市南部エリアを「交通空白区域(交通手段が不足している地域)」としてピンポイントで指定し、新しい仕組みを導入しやすくなります。
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バスの「1台2役」シェアリング: 新しく導入されるよつば小学校の中型スクールバス(約9台)を、子どもたちの送迎がない「昼間の空き時間」に、一般市民向けの路線バスとして有効活用します。
2. 親の送迎はもう不要?夕方〜夜の「高頻度ピストン運行」
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失敗から学ぶ「本数の重要性」: 過去にバスの利用者が少なかった最大の理由は「1時間に1本以下」という不便さでした。
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夜21時台までしっかりカバー: お隣の木曽岬町の大成功をお手本に、夕方17時以降はスクールバスを駅と南部地域を行き来する「ピストン運行」に回します。「1時間に2〜3本」という待たずに乗れるダイヤで、部活や塾帰りの学生を確実に家まで送り届けます。
3. いつものバス × チョイソコの「いいとこ取り」
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予約制の弱点を克服: 過去の実証実験で、すべてを予約制(チョイソコ)にすると「予約が取りづらい」「時間が読めない」という声がありました。
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最強のハイブリッド方式: 駅やスーパーへ向かう太い道は「時間が決まっているスクールバス(定時運行)」にお任せし、バスが入れない細い道や、スクールバスが子どもを送迎している朝夕の時間は「チョイソコ」がカバーする、パズルのように無駄のない交通網を作ります。
4. プロが支える安心の「ご近所ライドシェア」
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深刻な運転手不足の切り札: バスやタクシーの運転手不足を解消するため、地域の住民が自家用車で送迎を助け合う「有償ボランティア」を活用します。
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地元のタクシー会社が安全管理: 「素人の運転で大丈夫?」という不安をなくすため、地元のタクシー会社がプロのノウハウと最新デジタル技術(DX)を使って、運行管理やアルコールチェックなどを徹底的にサポートします。
5. 学生の通学を全力応援!ずっと住み続けられるまちへ
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「交通難民」からの人口流出をストップ: 駅へのアクセスが悪いと、親の毎日の送迎負担が限界に達し、高校進学を機に市外へ引っ越してしまう原因になります。
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お財布に優しい補助金制度: 夜遅くまで走るバスの整備と合わせて、「高校生のバス定期券購入補助」などを導入します。子どもたちが自分の力で快適に通学できる環境を整え、若い世代が定住できる弥富市を目指します。
まとめ:みんなの力でつくるエコシステム
これからの弥富市南部地域の交通は、ただバスを走らせるだけではありません。「学校のバス」「地域の助け合い」「タクシー会社のプロの技」「デマンド交通」のすべてを一つに繋ぎ合わせることで、シニア層の買い物から学生の通学まで、誰もが自由に移動できる持続可能なまちづくりへと動き出しています。
地域公共交通の再構築と持続可能な輸送モデルの確立:弥富市南部地域における交通空白域解消と新制度活用に関する調査報告
1. 序論:改正地域公共交通活性化再生法と地方自治体のパラダイムシフト
日本の地方自治体は現在、人口減少、少子高齢化、そして深刻化する自動車運転手不足という複合的な構造課題に直面している。
これに伴い、地域住民の生活の足となる公共交通ネットワークの維持が全国的な急務となっており、国会で可決・成立した「改正地域公共交通活性化再生法」および関連する地域交通法の改正は、地方自治体における交通施策の根本的なパラダイムシフトを促すものである。
この法改正における最も画期的なポイントは、これまで特定の目的や利用者に限定されていた輸送資源、すなわち自治体が保有・手配するスクールバス、宿泊施設の送迎シャトルバス、病院の送迎車両などを、自治体が協力・斡旋することによって広く一般住民の輸送インフラとして合法的に活用できるようになった点にある。
これは、既存の限られたリソースを地域全体でシェアリングし、交通インフラが脆弱な地域における移動手段を確保しようとする極めて合理的なアプローチである。
しかしながら、この制度の適用には「交通空白区域」であるという厳格な前提条件が存在する。
本報告書では、愛知県弥富市、特に新たに統合される「よつば小学校」エリアをはじめとする南部地域をモデルケースとして取り上げる。
自治体のエリア分割による交通空白域の認定要件の法解釈、導入が予定されている中型スクールバスの有休時間帯を活用した多角的運行スキーム、夕方から夜間にかけての学生向け帰宅バスの適正な運行頻度の導出、デマンド交通(チョイソコやとみ)との最適な補完関係、そしてタクシー事業者等の既存交通事業者と連携した自家用有償旅客運送(住民の助け合いによる乗合交通)の最新事例を網羅的に分析する。
これにより、持続可能かつ住民ニーズに合致した次世代型の地域公共交通システムの構築に向けた実践的な洞察を提示する。
2. 交通空白区域の戦略的解釈と自治体によるエリア分割の実務
2.1. 面的評価から線的・時間的評価への転換と「空白」の再定義
改正法に基づく住民輸送の協力・斡旋事業、あるいは自家用有償旅客運送を導入する際、最初の法的・行政的な障壁となるのが「交通空白区域」の指定である。
弥富市全体を単一の行政区画として俯瞰した場合、北部には近鉄弥富駅やJR弥富駅といった広域鉄道路線が存在し、さらに市街化区域を中心に一定の路線バスやコミュニティバスが運行されている。
そのため、市全域を一括して「交通空白区域」と定義することは、既存の公共交通網の存在と矛盾するため極めて困難である。
しかし、交通空白の概念は単なる「地理的な鉄軌道やバス路線の有無」だけで判断されるべきではない。
現代の交通行政における第三次の洞察として、交通空白域は「空間的空白」「時間的空白」そして「機能的空白」という三つの側面から立体的に評価される。例えば、路線バスの停留所が物理的に近くにあっても、運行間隔が数時間に1本しかない場合や、住民の主要な移動目的(高校生の通学、高齢者の通院・買い物)に合致する時間帯に運行されていない場合、実質的には交通機能が喪失している「機能的空白域」となる。
全国の自治体において、自治体独自の実情判断により交通空白地と認定された地区が2000ヶ所を超えているという事実は、国が一律の距離基準を押し付けるのではなく、地域の実情に応じた弾力的な運用を認めていることの証左である。
2.2. よつば小学校エリア(南部地域)の局所的指定スキーム
国および各地方運輸局の運用ガイドラインを分析すると、自治体は市内を単一のエリアとして扱う義務はなく、生活圏、学区、あるいは市街化区域と市街化調整区域といった都市計画上の区分を用いてエリアを緻密に分割し、特定の地区を局所的に「交通空白区域」として認定することが実務上広く認められている。
弥富市の南部地域(大藤学区や栄南学区など)、すなわち新しい「よつば小学校」の統合エリアは、市街化調整区域が多くを占め、一次産業や住居が混在する地域特性を持ち、駅からの物理的距離も遠い。
この南部エリアを、駅周辺のインフラが整った北部(市街化区域)から明確に切り離し、独立した交通計画ゾーンとして位置づけることで、同エリアを「交通空白区域」として認定するロジックは十分に成立する。
この認定プロセスにおいては、道路運送法に基づく「地域公共交通会議」の場を活用することが必須となる。
自治体が主導し、地方運輸局、既存のバス事業者、タクシー事業者、住民代表等が一堂に会し、南部地域の移動制約の実態(ケアマネージャーや保健師等の現場の声を反映させること)を共有することで、関係者間の合意形成を図る。北部と南部のエリア分割による局所指定が承認されれば、後述するスクールバスへの一般住民の相乗り(混乗)や、住民ドライバーによる自家用有償旅客運送の導入要件を完全にクリアすることが可能となる。
3. スクールバス等の既存輸送資源の有効活用と「1台2役」の運用スキーム
3.1. スクールバスの「有休時間」を活用した地域輸送と中型バスの特性
弥富市では、統合されるよつば小学校の児童の通学支援として、中型以上のスクールバス約9台の導入が検討されている。
通常、スクールバスの稼働時間は朝の登校時(おおむね7:00〜8:30)と夕方の下校時(おおむね15:00〜16:30)に限定され、日中(9:00〜14:00)は完全に車両と運転手が遊休化する。
この時間帯におけるリソースの有効活用は、事業の費用対効果(ROI)を飛躍的に高めるだけでなく、日中の高齢者の移動ニーズを満たす鍵となる。
全国の事例を分析すると、日中の遊休時間帯にスクールバスを「コミュニティバス」として一般住民に開放する「時間帯分離型」の運用が始まっている。
ここで考慮すべき重要なインサイトは、車両サイズと運行ルートの最適化である。
導入予定のバスは「中型以上」であるため、南部地域の細い生活道路(毛細血管的ルート)への進入は物理的に困難である。
したがって、スクールバスを利用した日中運行は、南部地域の主要施設(公民館、大規模スーパー、病院等)と弥富駅等のハブ拠点を結ぶ「幹線(ストレート)ルート」に特化すべきである。
中型バスの輸送力を活かし、駅へ向かう太い動線を確保することが、車両の使い勝手を最大化する。
3.2. 運行業務委託と複数事業者による「車両の共同利用(シェアリング)」
バスの調達(自治体が購入するのか、5年程度のリース契約を結ぶのか)と、実際の運行業務は分離されるのが全国的な主流であり、弥富市においても別途「運行業務委託」の契約が結ばれることが想定される。
近年注目されている革新的なスキームとして、1台の車両を複数の事業者が時間帯を分けて共用するモデルが存在する。
例えば、朝夕の児童の通学時間帯は「A社(例えば貸切バス事業者)」がスクールバスとして運行管理を行い、児童が乗らない日中の一般住民向け路線バスとしての運行は「B社(例えば三重交通のような地域の乗合バス事業者、あるいは地元のタクシー事業者)」が同じ車両を利用して行うという手法である。
この「1台のバスを二つの事業者が使う」という共同利用は、車両という固定資産の回転率を最大化するだけでなく、各事業者の得意分野を組み合わせる相乗効果を生む。
行政が主導して関係者間の権利関係、自動車保険の按分、整備責任の所在、そして運賃収受のシステムを明確にする協定を結ぶことで、導入のハードルは大幅に下がる。車両の所有権またはリース権が自治体にあるからこそ、このような柔軟なアセットシェアリングが実現可能となる。
4. 夕方・夜間帯における帰宅バスの運行頻度と近隣自治体の比較分析
南部地域の最大の課題の一つは、夕方から夜間にかけて、近鉄弥富駅やJR弥富駅などから南部へ帰宅するための交通手段の欠如である。
過去に行われた実証実験では、夕方から夜にかけての帰宅バスを運行したものの、利用者が少なく中止となった経緯がある。
しかし、その根本的な原因は「需要がなかったから」ではなく、「1時間に1本程度、あるいはそれ以上の間隔が空く」という運行頻度の低さに起因する「交通手段としての当てにならなさ」であると推測される。
4.1. 運行頻度と住民の行動変容の相関関係
交通工学や都市行動学の分野において、公共交通の運行間隔(ヘッドウェイ)が住民の選択行動に与える影響は極めて大きい。1時間以上の待ち時間が発生するバス路線は、部活動や予備校、残業などで帰宅時間が不規則になる高校生や通勤者にとって致命的である。
駅での長時間のロスを避けるため、結果として「親に自家用車で迎えに来てもらう」という選択が定着してしまう。
一度この送迎習慣が定着すると、バスの利用者は激減し、減便・廃止という負のスパイラルに陥る。
4.2. 隣接自治体(木曽岬町・飛島村)との徹底比較検証
これに対し、地理的条件や人口規模が類似している隣接自治体では、一定以上の運行頻度と遅い時間帯までのダイヤを確保することで、路線バスを成立させている。
木曽岬町と飛島村の近鉄弥富駅(またはその周辺)を発車するバスダイヤを比較分析した。
表1: 飛島公共交通バス・蟹江線(近鉄弥富駅南口発)の運行状況 飛島村のバスは、日中から夕方にかけて等間隔で運行されているが、運行の終了時間が比較的早い特徴がある。
| 時間帯 | 発車時刻 | 路線名・経由 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 午前 | 09:45, 11:15 | 飛島公共交通バス 蟹江線 |
近鉄弥富駅南口発 |
| 午後 | 12:45, 14:15 | 飛島公共交通バス 蟹江線 |
買い物・通院等の日中需要に対応 |
| 夕方 | 15:45, 17:00 | 飛島公共交通バス 蟹江線 |
17:00が最終であり、夜間の帰宅需要には非対応 |
飛島村のケースは、日中の移動には適しているものの、17:00で近鉄弥富駅からの便が終了してしまうため、名古屋市内の高校に通う学生が部活動を終えて帰宅する時間帯(18時以降)をカバーできていないという明確な限界が見られる。
表2: 木曽岬町自主運行バス(弥富駅周辺発)の運行状況 一方、木曽岬町の自主運行バスは、朝の通勤・通学時間帯から深夜に至るまで、極めて実践的なダイヤ編成を行っている。
| 時間帯 | 発車時刻の例示 | 備考・需要層 |
|---|---|---|
| 朝(通学・通勤) | 06:38, 08:33, 09:09, 09:18 |
始発から通勤・通学客を確実に輸送 |
| 日中 | 10:18, 11:18, 11:41 等 |
高齢者の通院・買い物需要 |
| 午後・夕方(下校) | 14:54, 15:36, 16:51 |
小中学生や早い時間帯の帰宅者に対応 |
| 夜間前半(ラッシュ) | 18:06, 18:39, 18:41, 18:42 |
通勤客・部活後の学生の帰宅ピークをカバー |
| 夜間中盤 | 19:57, 19:59, 20:00 |
比較的遅い帰宅者に対応 |
| 深夜帯(最終便) | 21:11, 21:13, 21:14 |
残業や塾帰りの最終便として機能し、親の送迎負担をゼロに |
4.3. 比較から導き出される適正頻度とダイヤ編成の最適化
木曽岬町の実績が雄弁に物語る通り、夕方18時台に複数本、19時台、20時台、さらには21時台まで運行を確保している点が、住民(特に学生や通勤者とその保護者)の絶対的な信頼を勝ち得ている最大の要因である。
利用者が少ないから減便するのではなく、「安心できる頻度(18時台などのピーク時は最低でも1時間に2本〜3本程度)と、21時過ぎまでの遅い時間帯のカバー」が先行投資として存在しなければ、路線バスは本来の機能を発揮しない。
弥富市南部地域においても、中型バスを用いた駅へのピストン輸送(ストレートな往復運行)であれば、複雑な経路を巡回するよりも走行距離と所要時間を大幅に短縮できる。
これにより、少ない車両数であっても「1時間に2〜3本」という高頻度を実現できる可能性が高い。
スクールバスの児童向け夕方運行が終了した後の時間帯(17:00以降)において、これらの車両を駅・南部間の高頻度ピストン輸送にスライド投入することが、帰宅難民化する学生を救い、過去の失敗を乗り越える決定的な施策となる。
5. デマンド交通「チョイソコやとみ」との棲み分けと時間的・空間的補完
スクールバスを活用した定時定路線(幹線)インフラを構築する上で、必然的に生じるのが「時間的空白」と「空間的空白」である。児童の送迎にバスが専念する朝夕の時間帯や、中型バスが進入できない細街路の移動については、別の手段でカバーする必要がある。
ここで重要な役割を果たすのが、弥富市が実証実験を行ったデマンド型交通「チョイソコやとみ」および既存の「きんちゃんバス」の知見である。
5.1. 実証実験からの教訓と課題抽出
弥富市では、令和5年(2023年)6月2日から11月28日にかけて、大藤・栄南学区(南部地域)等全域を対象に、オンデマンド型交通「チョイソコやとみ」の社会実験運行を実施した。
この事業は、事業主体を弥富市とし、デマンド運行システムや市民情報管理の提供を株式会社アイシンが担い、実際のチョイソコ運行や運賃収受の現場実務を株式会社あんしんネット21が行うという、三者協定による明確な役割分担のもとで実施された。
表3: 弥富市社会実験運行(チョイソコやとみ)における実施体制
| 役割・機能 | 担当機関 | 業務内容 |
|---|---|---|
| 事業主体 | 弥富市 |
事業全体の統括、広報(チョイソコ通信の月1回程度の送付等)、各種アンケート調査と効果検証 |
| 運営主体・システム | 株式会社アイシン |
デマンド運行システム提供、会員情報管理、オペレーター配置、データ集計 |
| 運行事業者 | 株式会社あんしんネット21 |
実際の運行業務、運賃の収受等の現場業務 |
この実証実験から得られた極めて重要な分析結果は、「デマンド化(予約制)」が必ずしもすべての層にとって「利便性の向上」に直結するわけではないという事実である。
利用者の約8割が高齢者であったが、住まいから遠い施設への移動ニーズに対応する目的であったにもかかわらず、デマンド特有の「事前予約の難しさ」や「乗り合いによる到着時間の不確実性」が敬遠された。
結果として、予約が全く取れないという不満や、「きんちゃんバス」の減便に対する住民の行き場のない怒りの声が上がっていることが報告されている。
5.2. 幹線(スクールバス)と支線(チョイソコ)のハイブリッドモデル
この教訓は、交通網の再構築において「全路線をデマンド型に移行する」という極端なアプローチが危険であることを示唆している。
高校生や定時で動きたい住民にとっては、「決まった時間に、決まった場所に行けば必ず乗れる」という定時定路線の安心感が絶対条件である。
したがって、解決策は「棲み分け」である。
前述の「スクールバスの空き時間を活用した定時定路線(中型バスによる駅へのピストン運行)」をメインの骨格(幹線)とし、「チョイソコやとみ」のような小型車両を用いたデマンド交通は、その骨格にアクセスするための支線(フィーダー)として機能させる。
また、スクールバスが児童輸送に専念していて一般住民が利用できない朝(7:00〜8:30)や夕方(15:00〜16:30)の「時間的空白」を、チョイソコやとみがカバーするという時間的なパズルを組み合わせることで、地域全体として切れ目のないモビリティサービスを提供することが可能となる。
6. 運転手不足を打破する「タクシー事業者協力型・自家用有償旅客運送」の導入
夕方・夜間帯の高頻度運行や、細街路を埋めるデマンド交通の充実を図る上で最大の障壁となるのが、全国的な「バス・タクシー運転手不足」である。
この致命的な課題をブレイクスルーするための切り札が、白ナンバーの自家用車と地域住民ドライバー(助け合い)を活用する「自家用有償旅客運送」の最新形態である。
6.1. 事業者協力型自家用有償旅客運送への進化と安全性担保
かつて、中山間地域等で行われてきたNPO等による自家用有償旅客運送(いわゆる住民の助け合いによる乗合運送)は、運行管理のプロフェッショナルが不在であることによる「安全性への懸念・事故時の責任所在の不明確さ」や、地元のタクシー事業者との「民業圧迫(競合)」という対立構造から、導入に慎重な声が多かった。
しかし、2020年の道路運送法等の制度改正により、これらの懸念を払拭する「事業者協力型自家用有償旅客運送(道路運送法第78条第2号に基づく)」が制度化された。
これは、市町村やNPOが運営主体となりつつ、実際の「運行管理(点呼等)」や「車両整備管理」を地元のタクシー事業者やバス事業者に委託・協力してもらう仕組みである。
これにより、タクシー事業者は自社の運転手不足に悩まされることなく、長年培ってきた「安全運行のノウハウ、アルコールチェック、配車システム」などのマネジメント機能を提供する対価として委託料を得ることができる。
まさに「三方よし」のエコシステムである。
6.2. デジタルトランスフォーメーション(DX)による運行管理支援
この仕組みをさらに強力に後押ししているのが、民間企業による自治体・タクシー事業者向けのDX支援サービスである。
例えば、タクシーアプリで国内最大手のGO株式会社は、タクシー事業者が運行管理・車両整備管理を担う自家用有償旅客運送向けの「自治体向け導入支援サービス」を開始している。
これには、タクシーアプリ『GO』を通じた注文機能の開発、自家用車ドライバー向けの専用アプリ、そして自治体・タクシー事業者向けの管理システムの提供が含まれる。
これにより、タクシー会社は既存のリソースをDX化することで、地域の自家用車ドライバーを安全かつ効率的に遠隔管理することが可能となる。
また、日野自動車等の企業も、自家用有償旅客運送向けの「遠隔による運行管理受託サービス」を展開している。
このようなシステムを利用すれば、点呼や安全確認をデジタル上で厳密に実施でき、タクシー事業者の業務負担を軽減しつつ、安全水準をプロレベルに保つことが可能である。
6.3. 全国における成功事例と弥富市への適用可能性
宮城県加美町などでは、タクシー事業者との入念な協議を経て棲み分けを行い、高齢者向けのデマンドバスや、高校生向けの定時定路線型バスにこの仕組みを応用し、年間約49,000人の利用実績(平成30年度)を上げている。
弥富市においても、南部地域の高齢者の買い物・通院需要に対応するためだけでなく、夕方から夜間にかけて駅に向かう(あるいは駅から帰る)高校生の輸送手段として、この自家用有償旅客運送を活用することが極めて有効である。
地域の定年退職者や主婦などの自家用車ドライバーを担い手として登録し、地元のタクシー事業者に運行管理を委託する体制を構築すれば、中型バスでは採算が合わない時間帯やルートであっても、機動的かつ安全な「乗り合い」が実現する。
7. 高校生・大学生をターゲットとした定住促進と通学支援政策の融合
本報告書の最後に強く提言すべきは、弥富市南部地域における「若年層(高校生・大学生)の交通確保」が、単なる移動手段の提供という福祉的課題を超えて、「地域消滅を防ぎ、持続可能性を担保するための最重要の都市戦略」であるという点である。
7.1. 「交通難民化」が引き起こす南部地域からの人口流出のメカニズム
高校生になると、多くは名古屋市や近隣市町村の高校へ進学するため、毎日の近鉄弥富駅やJR弥富駅への安定したアクセスが必須となる。
現状のように、1時間に1本以下のバスしかなく、事実上「親の自家用車による送迎」が前提となると、親の負担(朝の出勤前の慌ただしい送迎、夜遅い時間の駅での待機)は限界に達する。
これが直接的な引き金となり、進学を機に「駅の近く、あるいは名古屋市内への転居」という形で、南部地域から子育て世代・現役世代の流出を引き起こしている。
この致命的な構造的課題を解決しなければ、いかに多額の税金を投じてよつば小学校という立派なハード(施設)を整備しても、児童数は減少し続け、地域の維持は不可能となる。
7.2. 自治体による強力な通学費補助と公共交通利用のインセンティブ
全国の先進的な自治体では、若年層の公共交通利用を促し、親の送迎負担をゼロにするための直接的な家計支援策が拡大している。
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愛知県豊田市:高校生バス通学定期券購入費補助金を交付し、申請書等を提出することで定期券の利用を強力に後押ししている。
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新潟県長岡市:市内を運行する路線バスやコミュニティバスを利用する高校生等に対して、遠距離通学費補助金(実績報告後に指定口座へ振り込み)を支給し、高速バス以外の地域交通の利用を促進している。
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愛媛県砥部町:高校生のバス通学用定期券購入費や、通学用自転車の修理費に対する補助制度(併用は不可)を設け、在学証明書等の提出をもって公共交通と自転車の活用を地域振興の観点から支援している。
弥富市においても、南部から駅へ向かう中型バスのピストン運行(木曽岬町のように21時台までカバーするダイヤ)の整備と並行して、こうした高校生向けの「バス通学定期券購入補助」や「定額乗り放題パス」を導入すべきである。
補助金によって学生のバス利用が習慣化されれば、路線の基礎的な需要(ベースロード)が安定的に底上げされ、公共交通網全体の収支改善・維持に直結する。
8. 総合的戦略の提言と結論
以上の網羅的な法的要件の解釈、運行頻度のデータ比較、DX技術の動向、および先進事例の分析に基づく、弥富市南部地域における交通戦略の提言は以下の通りである。
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「交通空白区域」の戦略的かつ局所的な指定:市全域を対象とするのではなく、地域公共交通会議を通じて統合される「よつば小学校」エリア(大藤・栄南学区等の南部地域)を法的な交通空白区域として限定的に認定する。これにより、改正法に基づくスクールバス等の一般住民利用や、自家用有償旅客運送の導入ハードルを迅速にクリアする。
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スクールバスのアセット・シェアリング(複数事業者での共同利用):導入される約9台の中型スクールバスについて、児童輸送を行わない日中の時間帯を「定時定路線の幹線バス」として活用する。その際、朝夕の児童輸送と日中の住民輸送で運行委託先を切り替える(例:タクシー会社や地元乗合バス事業者との共同利用)スキームを構築し、車両稼働率を極限まで高める。
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夜間帯における「高頻度ピストン運行」への投資:木曽岬町(21時台まで運行)の成功事例と飛島村(17時終了)の限界をベンチマークとし、「1時間に1本」という過去の失敗を繰り返さない。スクールバスの夕方業務終了後、17時から21時過ぎにかけて駅と南部を結ぶ中型バスの直線的なピストン運行(1時間に最低2〜3本)を実施し、高校生等の確実な帰宅インフラとする。
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タクシー事業者の運行管理ノウハウを活用した「安全な自家用有償運送」の展開:中型バスが入れない細街路や、スクールバス稼働中の時間的空白は、地元住民の自家用車を用いた有償運送でカバーする。その際、地域のタクシー事業者に運行管理(点呼等)を委託し、最新のDX配車・遠隔管理システムを導入することで、安全性への懸念を完全に払拭し、タクシー業界との共存共栄を図る。
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定住促進を目的とした「通学支援パッケージ」の導入:他市の事例に倣い、バスを利用する高校生に対する定期券購入補助を制度化する。「南部に住んでいても、親の送迎なしで不自由なく名古屋の高校に通える」という環境を確固たるものにすることで、人口流出の最大の要因を根絶する。
改正地域公共交通活性化再生法は、自治体に対して単なる「補助金の出し手」から、地域のモビリティをデザインする「プロデューサー」への進化を求めている。
教育的リソース(スクールバス)、福祉・生活的リソース(デマンド交通)、民間ノウハウ(タクシー会社の運行管理)、そして地域住民の助け合いの力を一つのエコシステムとしてシームレスに統合することこそが、弥富市南部地域における持続可能な交通網の確立と、未来に向けた地域活力の再生を約束する唯一の道である。