名古屋市クビアカツヤカミキリ防除実施計画PDFはこちらから
以下 サマリーです
令和7年12月 名古屋市
目次
-
計画策定の背景及び目的
-
防除対象とする生物
-
防除を行う区域
-
計画期間
-
クビアカツヤカミキリの特徴
-
本市の被害状況と防除実施計画区域
-
防除の目標
-
防除体制
-
防除手法
-
防除実施の告示
-
関係法令
-
参考資料
1. 計画策定の背景及び目的
名古屋市は、近隣に国内有数の国際貿易港である名古屋港や中部国際空港を擁し、人やモノの交流が盛んであることから、これらに紛れて意図しない生物の侵入を受けやすい地理的環境にあります。
特定外来生物であるクビアカツヤカミキリは、梱包用木材などに幼虫が潜んだまま国内へ運ばれたものが羽化・繁殖したと考えられています。サクラやウメ、モモ、スモモなどバラ科樹木の内部に幼虫が寄生し、形成層周辺の水分や養分の通り道を食害して衰弱・枯死させることが知られています。
繁殖能力が非常に高いことから、日本各地に分布を拡げつつあり、農業被害や生態系被害のみならず、サクラの名所が被害を受けるといった文化面での被害も問題となっています。
市内には「日本さくら名所100選(公益財団法人日本さくらの会)」にも選出された鶴舞公園や山崎川をはじめ、数百から千本以上ものサクラを有する公園がいくつも存在します。
また、街路樹や学校などにも多くのサクラが花を咲かせ市民に親しまれています。農業面では、販売目的で栽培されているウメ、モモ及びスモモの栽培面積は6ha弱とされます(農林業センサス2020)。
市内のクビアカツヤカミキリによる樹木被害は、ほぼ全てをサクラ、ウメ、モモ及びスモモの4種が占めており、2019年の初確認以降徐々に拡がりつつあるものの、2023年までは被害地点数、被害樹木数とも微増に留まっていました。
しかし、2024年になると状況が一変し、過去5年間の被害総数を地点数・樹木数とも単年で超過するに至りました。
また、被害地域も当初被害が集中していた港・中川区から市域全体へと拡大の兆しを見せており、予断を許さない状況となっています。
これまでセンターでは、クビアカツヤカミキリの防除対策として、樹木の管理主体を問わず現地確認や初期対応、防除方法の助言などを行ってきました。
しかし、2024年の被害状況を鑑みると、今後は樹木管理者など各管理主体との一層積極的な連携が不可欠です。
そこで、センターや各管理主体それぞれの役割を示し、関係者が協力して効果的な防除を行うことを目的に、名古屋市クビアカツヤカミキリ防除実施計画を策定します。
2. 防除対象とする生物
クビアカツヤカミキリ(学名:Aromia bungii)
3. 防除を行う区域
名古屋市全域
4. 計画期間
令和7年12月25日から令和10年3月31日まで
本市における被害状況は、2019年から2023年までの緩やかな拡大傾向から2024年以降には急激に拡大しており、今後の動向を予測することは困難です。
そのためこの計画は、状況に応じて短期間で見直しを行うことを念頭に、上記のとおり3年間を計画期間とします。
5. クビアカツヤカミキリの特徴
-
分類: コウチュウ目 カミキリムシ科に属する昆虫
-
体長: 2〜4cm
-
自然分布: 中国、朝鮮半島、ベトナム等
-
寄生樹種: 主にサクラ、ウメ、モモ、スモモ等のバラ科の樹木
-
生態: 幼虫は2年間樹木を摂食し、3年目の6月頃から羽化する(2年1化の場合)。成虫は8月頃までみられ、1匹のメスが少なくとも300個程度は産卵する。
■ クビアカツヤカミキリの生活環(2年1化の場合)
| 年目 | 時期 | 状態・行動 | 樹木内での位置 |
| 1年目 | 夏(6〜8月) | 成虫が産卵、孵化 | 外樹皮 |
| 秋〜冬 | 摂食、活動休止 | 内樹皮 ⇒ 形成層・辺材部 | |
| 2年目 | 春〜夏 |
春になると幼虫は摂食を再開 蛹室と脱出予定孔の形成 |
形成層・辺材部 |
| 秋〜冬 | 樹幹内(蛹室内)で越冬 | 心材 | |
| 3年目 | 春〜夏(6月頃〜) | 蛹化、羽化、脱出 | 心材部 ⇒ 脱出 |
(参考)名古屋市におけるクビアカツヤカミキリに関する情報
国立研究開発法人森林研究・開発機構 森林総合研究所によるDNA分析では、日本国内には遺伝的に異なる個体群が複数存在し、愛知県周辺のものは関東地方や関西地方とは異なる個体群であることが明らかとなっています。
6. 本市の被害状況と防除実施計画区域
愛知県内では、2012年に海部地域で初めて確認され、現在までに飛島村、弥富市、名古屋市、愛西市、蟹江町、津島市、あま市及び大治町で樹木被害が確認されています。
市内では2019年6月に港区で被害樹木が初確認されましたが、この時点で既に現地で世代交代が行われていたことから、市内への侵入は少なくとも4年(2年1化×2世代)以上前であったと思われます。
同年の被害は13地点48本であり、以降2023年までは緩やかに被害が拡がっていましたが、2024年になると状況が一変し、過去5年間の被害総数を地点数・樹木数とも単年で超過するとともに、被害地域も市内各地に点在するに至りました(原因は不明)。
市全域に被害が拡大傾向にある背景から、本防除実施計画においては対象区域を全市とします。
樹木被害確認地点数/被害樹木数(年別)
| 年 | 被害地点数※ | 被害樹木数(本数) |
| 2019年 | 13 | 48 |
| 2020年 | 7 | 35 |
| 2021年 | 13 | 62 |
| 2022年 | 14 | 28 |
| 2023年 | 23 | 168 |
| 2024年 | 111 | 435 |
| 合計 | 181 | 776 |
※「地点数」は初年度のみ計上(同一地点で年々被害樹木が増えた場合、「本数」は増えた年度ごとに計上)
被害樹木数(樹種別)
| 樹種 | 本数 | 備考 |
| サクラ | 683 | ※サクランボ1本を含む |
| ウメ | 51 | |
| モモ | 33 | |
| スモモ | 8 | |
| その他 | 1 | ※カルシウムノキ |
| 合計 | 776 |
7. 防除の目標
クビアカツヤカミキリは幼虫の期間が長く、フラス(幼虫の排出物と木屑が混ざったもの)を大量に排出することから、その存在に気付くことは比較的容易です。
本計画では、早期に樹木被害に気付いて防除作業を行うことで成虫の発生を防ぎ、低密度管理により被害の拡大防止を図ります。また、中長期的にはクビアカツヤカミキリの根絶を目指します。
8. 防除体制
クビアカツヤカミキリの防除は、各主体の役割に応じて連携して行います。
防除従事者は、市職員、土地や施設等の所有者・管理者、およびそれらの防除作業を請負い防除作業に従事する者とします。
民有地における防除を実施する市職員については、センターにおいて防除従事者名簿を作成し、法に基づく防除を実施することを証する書類として環境省中部地方環境事務所が発行する確認証の写しを携帯します。
(1)国・県
-
補助金による資金援助
-
広域的な被害状況や防除手法等に関する情報の収集及び提供
-
連絡会議等による自治体間の連携強化
(2)名古屋市
ア. センター
-
市内における被害状況の集約
-
広域的な被害状況や新たな防除手法等に関する情報収集
-
各局室区や市民・事業者等に対する普及啓発
-
被害情報が寄せられた場合の現地確認、初期対応の実施及び防除方法の助言(緑政土木局など被害の多い部局等においては極力自律化を促す)
イ. 各局室区
-
市民・事業者等に対する普及啓発への協力
-
管理する樹木の定期点検
-
センターに対する樹木被害の報告
-
センターの助言に基づく防除作業の実施
(3)市民・事業者等
-
自身が管理する樹木の定期点検
-
公園や街路樹など公共的な場所における樹木点検への協力
-
センターに対する樹木被害の報告
-
センターの助言に基づく防除作業の実施
9. 防除手法
本市におけるクビアカツヤカミキリの防除においては、樹木の定期点検により被害樹の早期発見及び幼虫期の防除実施により、成虫の発生防止を図ります。
具体的な点検や防除方法については、クビアカツヤカミキリコンソーシアムによる「クビアカツヤカミキリの防除法(2022年3月31日発行)」に準拠するものとします。
被害の進行状況や費用対効果、シンボルツリーなど文化的重要度の高さなども勘案し、以下の防除方法を実施します。
(1)樹木の定期点検
本市におけるフラスの発生は4月から10月頃に多く、特にゴールデンウィーク明けから顕著となります。
そのため、樹木を残す(伐採しない)ことを前提とするのであれば、少なくとも春と秋の2回は点検もしくは巡視を実施します。
被害が疑われる場合は、ただちにセンターへ連絡し、確認と助言を受けた上で処置を実施します。
(2)物理的防除
-
ア. 掘り取り
幼虫の数が少ない場合(樹木1本あたり1〜5匹程度)に有効です。
-
イ. 伐採
フラスが大量に排出され、被害が甚大である場合は枯死する可能性が高いため伐採を行います。
-
伐倒時に目視できる個体(幼虫、蛹、成虫)はその場で捕殺。
-
内部に残留する場合は、ビニール被覆等で逸出防止措置を講じた上で処分場へ持ち込む。
-
処分方法は、焼却、燻蒸、木材のチップ化等により確実に殺虫する。
-
根に寄生する可能性がある場合は原則抜根する。困難な場合は、厚手のシートやモルタル、樹脂等で隙間なく被覆し逸出防止処理を行う。
(参考)本市におけるチップ化対応が可能な事業者(令和7年12月現在)
名古屋港木材倉庫株式会社(南区加福町2丁目)
-
-
ウ. ネット被覆
産卵を予防する目的、又は既に樹木内部で蛹化や羽化している可能性があり成虫の脱出が予想される樹木に対して成虫拡散防止の目的で実施します。
(3)化学的防除
本種に適用のある農薬・殺虫剤として、エアゾール剤、樹幹注入剤、散布剤等を使用します。
(4)捕獲個体の処分方法
捕獲等をした個体は防除実施者の責任の下、原則その場で適切に殺処分(踏みつぶし、殺虫剤、燻蒸剤等)を行うこととし、個人的な持ち帰り及び野外への放置は禁止とします。
10. 防除実施の告示
防除従事者は、被害樹木に関して伐倒及び樹幹注入剤、散布剤等による防除を実施する場合には事前に施設利用者及び周辺住民へ告示を行います。
告示方法は、状況に応じて掲示場所や当該樹木への張紙、回覧板での回付やポスティングによる通知、広報紙、ウェブサイトへの掲載等のいずれかにより実施します。
11. 関係法令
防除を実施するにあたっては、下記の関係法令を遵守すること。
-
種の保存法
-
自然公園法
-
自然環境保全法
-
文化財保護法
-
廃棄物処理法
-
農薬取締法
その他、本市では「名古屋市の施設等における農薬・殺虫剤等薬剤の適正使用に係る基本指針」を定めていることから、同指針に基づき薬剤の適正使用に努めます。
特に散布剤の使用を検討する場合は周辺環境、生態系への影響も考慮し、慎重に判断してください。
12. 参考資料
-
防除に関する手引き(防除マニュアル)【環境省】
環境省がとりまとめたリンクの一覧:https://www.env.go.jp/nature/intro/3control/tebiki.html
-
クビアカツヤカミキリの防除法【クビアカツヤカミキリコンソーシアム(森林総合研究所)】(別添1)
-
名古屋市の施設等における農薬・殺虫剤等薬剤の適正使用に係る基本指針(別添2)
-
啓発チラシ(別添3)