愛知県弥富市において、平成18年の市町村合併以降、長年にわたり漫然と繰り返されてきた特定の法律事務所との「法律相談委託契約」。行政情報開示請求によって紐解かれたその実態は、複数見積りの不履行や随意契約理由の不記載にとどまらず、議会の統制を排除する「自動更新条項」の存在など、地方自治法や財務規則を根底から軽視するものでした。さらに、市の利益を代弁すべき顧問弁護士が、首長個人の訴訟代理人を務めるという深刻な「利益相反」の疑義も浮上しています。
本報告書は、市民の血税を原資とする公金支出の透明性を取り戻すため、行政コンプライアンス上の致命的な瑕疵を精緻に法的検証し、不透明な癒着構造を解体するための「住民監査請求」および「住民訴訟」に向けた包括的かつ実践的な理論戦略を提示するものです。
弥富市の法律相談委託契約に関する問題点と監査請求戦略(サマリー)
本報告書は、弥富市が平成18年の合併以降、特定の法律事務所(弁護士法人錦法律事務所等)と締結している年間60万円の法律相談委託契約について、深刻な法令違反およびコンプライアンス上の問題を指摘し、その是正に向けた法的アプローチを提示しています。
1. 契約における4つの重大な法的瑕疵
本件契約には、地方自治法および市の財務規則等に照らして、以下の重大な違法性や問題点が内包されています。
| 問題の所在 | 具体的な実態と法的評価 | 違反が疑われる法令・原則 |
| 見積り合わせ不履行 | 年間60万円の委託契約であり見積書省略要件(10万円以下等)を満たさないにもかかわらず、複数者からの見積りを徴取していない。 | 弥富市契約規則第27条 |
| 随意契約理由の不記載 | 競争入札の例外である随意契約とする際、起案書に「当該1者でなければならない合理的理由」が明記されておらず裁量権を逸脱している。 | 地方自治法第2条第14項(経済性・効率性の原則) |
| 自動更新条項の付与 | 議会の議決を経ずに「自動更新条項」で実質的な長期契約を反復しており、後年度予算を拘束している。契約自体が無効と評価され得る。 | 地方自治法第208条第2項(会計年度独立の原則)、第232条の3 |
| 顧問弁護士の利益相反 | 市の顧問弁護士が、住民訴訟において対立関係になり得る「首長個人」の訴訟代理人を務めている。監査の独立性も侵害される恐れがある。 | 弁護士法第25条、弁護士職務基本規程 |
2. 違法な公金支出(首長個人の防衛費用)の疑義
最高裁判例等に照らし、住民訴訟における首長個人の弁護士費用を地方自治体が公費で負担することは原則として違法とされています。本件の顧問契約料のなかに首長個人の防衛や政治的対応に関する費用が含まれ、それが公金から支出されているとすれば、実体的な違法支出(不当利得)を構成します。
3. 住民監査請求に向けた実践的戦略
監査請求を確実に受理させ、実効性のある是正措置を引き出すため、以下の戦略を用いて厳格な手続要件を突破します。
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「1年の出訴期間制限」の合法的な回避:
平成18年からの契約締結行為を対象とするのではなく、「直近1年以内に行われた委託料の支出行為」および「違法な自動更新条項を放置し、有利な価格で契約する義務を継続的に怠っている事実」を標的として請求を構成します。
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監査プロセスの公正性担保:
監査事務局が利益相反関係にある市の顧問弁護士に法的意見を求めることを厳格に禁じる上申書を提出し、必要に応じて「個別外部監査」の活用を強く求めます。
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住民訴訟(第4号請求)への移行準備:
市内部の監査による是正が期待できない場合を想定し、最終的には地方裁判所での司法審査(違法支出の是正と不当利得返還請求)へ移行する前提で、起案書等の事実証明書を添付した精緻な請求書を作成します。
結論
弥富市の本件契約は、手続の潜脱や会計原則の破壊のみならず、弁護士の利益相反による行政の機能不全を引き起こしています。住民監査請求およびそれに続く住民訴訟は、この不透明な癒着構造を解体し、市の行政運営における客観性と適法性を回復するための極めて重要かつ確実なアプローチとなります。
愛知県弥富市における法律相談委託契約の実態と住民監査請求に向けた包括的法的考察
1. 序論
地方自治体における契約事務および公金支出は、住民の税金を原資とする以上、極めて厳格な法令遵守と透明性が要求される。
愛知県弥富市においては、平成18年の市町村合併以降、特定の法律事務所(現在は弁護士法人錦法律事務所等)との間で、年間60万円の法律相談委託契約が長年にわたり締結されている。
行政情報開示請求等の結果、この契約においては複数者による見積り合わせが不履行となっているだけでなく、随意契約とする合理的な理由が起案書に明記されていないこと、さらに「自動更新条項」が付与されることで、実質的な長期随意契約が市議会の統制を離れて漫然と繰り返されている実態が判明した。
加えて、当該顧問弁護士が、市長を被告とする住民訴訟等において市側(首長個人側)の訴訟代理人を務めているという事実が存在する。
地方公共団体の利益を代弁すべき顧問弁護士が、首長個人の損害賠償責任が問われる訴訟において首長側を代理することは、地方自治体と首長との間に生じる利益相反の観点から、深刻なコンプライアンス上の懸念を惹起する。
本報告書は、これらの問題(見積り合わせ不履行、随意契約理由の不記載、自動更新条項の違法性、および利益相反等)を法的根拠として住民監査請求(地方自治法第242条)を提起するため、地方自治法、同法施行令、弥富市の各種財務規則等の解釈を精緻に行い、他自治体での監査事例や最高裁判例を踏まえた高度な理論武装を構築するものである。
2. 随意契約の要件逸脱と見積り合わせ不履行の違法性
地方自治体の契約手続は、地方自治法第234条第2項に基づき、一般競争入札を大原則とする。随意契約は、地方自治法施行令第167条の2第1項各号に定められた極めて限定的な事由(性質または目的が競争入札に適しない場合、緊急性がある場合等)に該当する場合にのみ許容される例外措置である。
2.1 弥富市契約規則における予定価格と見積書徴取の法的義務
弥富市における契約事務の細則を規定する「弥富市契約規則」において、随意契約による場合の手続は厳格に規定されている。
同規則第26条の3では、「契約担当者は、随意契約によろうとするときは、あらかじめ第15条の規定に準じて予定価格を定めなければならない」と規定されており、契約の前提として客観的な価格基準の策定を義務付けている。
さらに、第27条(見積書の徴取)において「契約担当者は、随意契約によろうとするときは、なるべく、2人以上の者から見積書を徴さなければならない」と定めている。
一方で、行政の効率化の観点から見積書の省略を認める例外規定も存在する。
同規則第27条の2(見積書の省略)では、官公署との契約や法令により価格の定めがある場合、あるいは「契約金額が10万円を超えないとき(委託料及び工事請負費を除く)」等の特定条件下において見積書を省略できるとしている。
しかしながら、本件の法律相談委託契約は年間60万円の「委託料」に該当するため、この見積書省略の例外要件には明確に該当しない。
したがって、毎年の契約更新(または新規契約手続)にあたっては、本来であれば他の法律事務所等から複数者の見積り合わせを行い、価格の妥当性および役務提供内容の比較検討を行う法的義務が存在する。
2.2 随意契約理由の不記載と裁量権の逸脱
本件契約の起案書において、見積り合わせを行わずに1者のみを特定して随意契約とする合理的な理由が明記されていない点は、財務会計上の重大な瑕疵である。
他自治体の厳格な運用基準を参照すると、随意契約の運用に関する法的要請は明確である。
例えば群馬県富岡市の随意契約ガイドラインにおいては、「業務に精通している」「過去に受注実績がある」といった理由だけでは、随意契約の正当な理由とはならないことが明記されている。
また、弁護士との法律相談業務などの高度な専門的役務であっても、「1者による随意契約とした場合は、1者しかないと判断した理由を具体的に明らかにし、市民に対しての説明責任を明確にしておくこと」が契約担当者に強く求められている。
弥富市が平成18年以降、起案書に具体的根拠(なぜ他の法律事務所では代替できないのか、なぜ価格競争に付することが不利なのか等)を記載しないまま特定の弁護士法人と契約を継続している事態は、契約担当者および市長に与えられた裁量権の逸脱・濫用を構成する。
地方自治法第2条第14項が定める「最小の経費で最大の効果を挙げる」という経済性・効率性の原則に照らしても、外部の競争圧力を完全に排除し、特定の専門家に対する行政の過度な依存状態を形成している本件の実態は、行政の客観性と公平性を著しく損なうものである。
| 評価項目 | 地方自治法・一般的な財務規則の要請 | 弥富市における本件契約の実態 | 監査請求における法的評価 |
|---|---|---|---|
| 契約方式の原則 |
一般競争入札または指名競争入札 |
特命随意契約の反復 | 原則に対する例外規定の漫然たる恒常化 |
| 見積書の徴取 |
2者以上からの見積り合わせによる比較検討 |
見積り合わせ不履行(1者のみの見積り、または省略) | 弥富市契約規則第27条違反 |
| 見積書省略の要件 |
10万円以下の少額契約、官公署等 |
年間60万円の委託契約 | 省略要件(同規則第27条の2)に非該当 |
| 随契理由の明記 |
当該1者でなければならない具体的かつ客観的な理由の立証 |
起案書への合理的理由の不記載(白紙等) | 説明責任の放棄、首長および担当者の裁量権の逸脱 |
3. 自動更新条項による会計年度独立の原則違反と契約の無効性
本件の法律相談委託契約において極めて重大な法令違反を構成しているのが、契約書に「自動更新条項」が付与されている点である。
この条項により、議会の関与や適切な予算措置を経ることなく実質的な長期随意契約が繰り返されている。
3.1 会計年度独立の原則と地方自治法の規定
地方財政の基本原則として、地方自治法第208条第2項は「各会計年度における歳出は、その年度の歳入をもってこれに充てなければならない」と規定し、いわゆる「会計年度独立の原則」を厳格に定めている。
さらに、同法第232条の3においては、「普通地方公共団体の支出の原因となるべき契約その他の行為(支出負担行為)は、法令又は予算の定めるところに従い、これをしなければならない」と定めている。
この法的要請から導き出される結論として、地方公共団体は、次年度以降の支出を伴う複数年契約を締結する場合には、債務負担行為や継続費等の予算的裏付けに関する議会の議決を経るか、地方自治法第234条の3に基づく「長期継続契約」としての法定手続を踏まなければならない。
3.2 他自治体における自動更新条項の違法性認定と是正勧告
業務委託契約等において、「契約期間終了の○ヶ月前までに双方から申し出が無い場合は1年毎の自動更新とする」といった自動更新条項を設けることは、翌年度以降の契約の継続を前年度の段階で確定させる行為である。
これは、後年度予算の裏付けのない支払いを約束することになり、予算審議権を持つ議会の権能を形骸化させるため、明確に地方自治法違反と解されている。
全国の地方自治体における住民監査請求および定期監査の結果においても、この法的解釈は揺るぎない基準として定着しており、自動更新条項を含む契約は厳格に是正の対象となっている。
弥富市が平成18年から現在に至るまで、適法な債務負担行為の議決を経ることなく、単なる委託契約書内の自動更新条項によって実質的な複数年契約を維持してきたとすれば、それは毎年度の議会の予算審議権を侵害するのみならず、当該契約に基づく支出負担行為そのものが法的根拠を欠く無効なものと評価される。
住民監査請求においては、この自動更新条項による契約の無効性と、無効な契約に基づく公金支出(不当利得)の返還を強く主張することが可能である。
4. 顧問弁護士の利益相反と弁護士法違反の疑義
本件におけるもう一つの核心的課題は、当該顧問弁護士(弁護士法人)が、市の法律相談業務を受託しつつ、同時に市長を被告とする住民訴訟等において「市側(首長側)」の訴訟代理人を務めているという、構造的な利益相反(Conflict of Interest)の問題である。
4.1 弁護士法第25条および職務基本規程による規制
弁護士法第25条は、弁護士の職務の公正さと依頼者との信頼関係を保護するため、利益相反行為を厳格に禁止している。
具体的には、相手方の協議を受けて賛助し、または依頼を承諾した事件等については職務を行ってはならないと定めている。
さらに、日本弁護士連合会の「弁護士職務基本規程」においても、複数の依頼者間の利益相反や、共同事務所内での利益相反ルール(第57条等)が詳細に規定されている。
地方自治体の顧問弁護士は、本来「地方公共団体という法人そのもの」、ひいては市民全体の利益に対して忠実義務を負うべき存在である。
しかし、地方自治法第242条の2に基づく住民訴訟(特に第4号請求)においては、市長等の執行機関の財務会計上の違法行為や損害賠償責任が追及される。
このような訴訟において、被害者となりうる「自治体」の顧問弁護士が、加害者として責任を問われている「首長個人」の訴訟代理人に就任することは、双方の利益が真正面から対立する重大な利益相反を引き起こす。
4.2 監査事務局の独立性侵害と癒着構造の連鎖
この利益相反が最も深刻な弊害をもたらすのが、住民監査請求における監査プロセスの歪曲である。
監査委員および監査事務局は、首長等の執行機関から独立して客観的な監査を行う権能を有する。
しかし、多くの自治体において、監査事務局が法的判断に直面した際、「市の顧問弁護士」に法的見解を求める実態がある。
愛知県半田市などの事例で指摘されているように、監査事務局の職員が顧問弁護士に相談する構造がある中で、その顧問弁護士自身が市長側の代理人として活動している、あるいは市長と強い契約関係(自動更新による不透明な随契)にある場合、監査結果には構造的に首長を擁護するバイアスがかかる。
市民から提出された正当な住民監査請求が、利害関係を有する弁護士の助言によって不当に却下・棄却される事態は、地方自治法が予定する監査委員制度の独立性を根底から破壊する行為である。
5. 首長個人への公金支出を巡る最高裁判例と司法の動向
本件において、顧問契約に基づく月額報酬や別途の訴訟委任契約のなかに、首長個人の防衛や議会対応に関する訴訟対応の費用が含まれ、それが公金から支出されているとすれば、これは単なる手続違反を超えた実体的な違法支出を構成する。
住民訴訟における首長側の弁護士費用の公費負担については、これまで最高裁判所等で厳格な基準が示されてきた。
5.1 弁護士費用の公費負担に関する判例の変遷
住民訴訟において首長個人が被告となった際の弁護士費用を、地方自治体が公費で負担することの適法性は、長らく争いの的となってきた。
過去の判例(例えば大津地裁平成8年11月25日判決など)では、公務員が職務に関して被告とされた際に自己負担で応訴せねばならないことの弊害も議論されたが、当該首長等の行為に違法性が認定されたり、自治体の利益に反する結果となった場合、その弁護士費用を公費で負担することは地方自治法上違法(違法な公金支出)とされている。
最高裁判所第一小法廷判決(平成18年等)をはじめとする近年の司法判断においても、首長個人に対する訴訟支援を自治体が丸抱えすることへの目は極めて厳しい。
愛知県半田市の事例では、元市長らが勝訴した住民訴訟に関連して市が弁護士報酬の一部を支払ったことに対し、その支払は違法であるとして、関与した市長等個人に支払額相当の損害賠償を請求する新たな住民訴訟が提起されている。
青森県弘前市の除雪業務委託談合事件に関わる訴訟費用負担の問題や、愛知県岩倉市における議員辞職勧告決議に関連する市長の弁護士費用支出(約81万円)に対する監査請求等、首長の個人的な政治的対立や防衛に由来する弁護士費用への公金投入は、全国的に住民からの厳しい監査・訴訟の対象となっている。
5.2 住民側の勝訴と弁護士費用の請求権
逆に、住民側が監査請求や住民訴訟を提起し、結果として自治体に損害の回復や不当利得の返還等の利益をもたらした場合(実質的勝訴を含む)、住民は地方自治法第242条の2第12項に基づき、自治体に対して自身の弁護士費用の負担を請求することが可能である。
最高裁の判例動向によれば、市側が請求を認諾した場合や、長が自発的に損害額を支払って訴えが取り下げられた場合等の「実質的勝訴」においても、客観的に明確な基準に基づいて弁護士報酬相当額の請求が認められるケースが存在する。
弥富市における本件監査請求が訴訟に発展し、自動更新条項の無効確認や違法な随契に基づく支出の是正が司法によって命じられた場合、原告住民の弁護士費用は最終的に市側の負担として回収し得る道筋が法的に担保されている。
6. 住民監査請求手続の要件審査突破と実践的理論構築
上記の重層的な法的瑕疵を踏まえ、弥富市監査委員に対して住民監査請求(地方自治法第242条)を提起し、実効性のある勧告を引き出すための具体的なプロセスと理論戦略を提示する。
監査請求は厳格な要件と短期間のスケジュール(原則60日以内)で進行するため、事前の精緻な準備が不可欠である。
6.1 監査請求の要件と「1年の期間制限」の回避戦略
住民監査請求における最大の障壁は、地方自治法第242条第2項が規定する「当該行為のあった日又は終わった日から1年を経過したときは、これをすることができない」という出訴期間の制限である。
本件の法律相談委託契約の起点が「平成18年の合併以降」と極めて古いことから、契約締結行為そのものを対象とすると、1年の期間制限を徒過しているとして門前払い(却下)されるリスクが極めて高い。
この制限を合法的に突破するためには、以下の2つの理論的アプローチを併用して請求書を構成する必要がある。
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直近1年以内の新たな公金支出(支出負担行為)への着眼: 自動更新条項によって継続している契約であっても、毎年(あるいは毎月)の顧問料の支払いは、それぞれが独立した「新たな公金支出(財務会計上の行為)」を構成する。したがって、監査請求書を提出する日から逆算して「直近1年以内に行われた弁護士法人錦法律事務所等への委託料支出」に標的を絞ることで、期間制限に関する形式的要件を完全にクリアすることが可能となる。
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財産管理を怠る事実(不作為の継続)の主張: 地方自治法上、公金の賦課・徴収を怠る事実や、財産の管理を怠る事実については、その怠る状態が継続している限り、1年の期間制限の適用を受けず、いつでも監査請求を行うことができる。本件において、無効な自動更新条項を放置し、適法な見積り合わせを実施して有利な価格で契約する義務(市の財産を保全する義務)を市長が継続的に怠っている事実として構成し、不作為の違法性を主張する。
6.2 監査請求書の記載事項と事実証明書の添付
監査請求書は、地方自治法施行規則第13条の指定様式に従い、以下の要件を満たすよう論理的に記載しなければならない。
| 法定記載事項(地方自治法第242条等) | 本件における具体的な記載戦略および内容 |
|---|---|
| 対象機関(だれについて) |
弥富市長および本件契約の専決権限を有する契約担当責任者 |
| 財務会計行為等の特定 |
1. 直近1年以内の弁護士法人に対する顧問料(年間60万円等)の支出行為 2. 違法な自動更新条項を放置し、競争性のある適法な契約手続を怠る事実 |
| 違法または不当とする理由 |
① 弥富市契約規則第26条の3・第27条違反(予定価格設定と複数者見積りの不履行) ② 地方自治法第208条・第232条の3違反(自動更新による会計年度独立原則の潜脱) ③ 弁護士法第25条違反を看過した利益相反状態での公金支出の違法性 |
| 生じている財産的損害 |
競争的見積りを排除したことによる適正価格との差額相当分の損害、または無効な契約に基づく公金支出全額(不当利得) |
| 求める是正措置 |
1. 当該法律相談委託契約の即時解除および自動更新の全廃 2. 違法な支出と認定された弁護士報酬等の不当利得返還請求 3. 弁護士選定における複数者見積り・プロポーザル方式の義務化 |
提出の際には、行政情報開示請求によって入手した起案書、契約書の写し、支出負担行為伺い等の「事実証明書」を必ず添付し、違法の事実を客観的に裏付ける必要がある。
6.3 監査プロセスの公正性担保と個別外部監査の活用
前述した通り、監査事務局が本件の審査過程で、利益相反関係にある市の顧問弁護士に対して法的意見を求める事態は絶対に阻止しなければならない。
そのため、監査請求書の提出と同時に、「本件監査の審査において、利害関係人である市の顧問弁護士(または同一法人の弁護士)に対し法的照会を行うことは、監査の独立性と公正性を著しく毀損する利益相反行為であるため、これを厳に禁じる」旨を記載した上申書または抗議書を提出することが、極めて有効な防衛策となる。
さらに、事案の客観的評価を担保するため、地方自治法第252条の43に基づく「個別外部監査」による監査を求める旨を請求書に明記し、第三者である公認会計士や別の独立した弁護士に監査を委ねる特例手続の活用を強く主張すべきである。
6.4 住民訴訟(第4号請求)への移行を見据えた戦略
監査委員は請求書の受付から60日以内に監査・勧告を行わなければならないが、事案の性質上、自治体内部の監査機関が自ら違法性を認定することには消極的となる可能性(棄却や期間徒過)が常に付き纏う。
監査委員による結果に不服がある場合、あるいは60日以内に結果が出ない場合、請求人は通知等から30日以内に、地方裁判所に対して住民訴訟を提起することができる。
訴訟類型としては、市長の違法行為による損害の賠償や、弁護士法人に対する不当利得の返還を市に代位して求める「第4号訴訟(地方自治法第242条の2第1項第4号)」が中心となる。
この司法審査の場において、起案書における随意契約理由の欠如や自動更新条項の無効性が厳格に争われることとなる。
7. 結論
愛知県弥富市において平成18年の合併以降、長期間にわたり継続されてきた顧問弁護士との法律相談委託契約は、地方自治法および同市の契約規則が要求する厳格な手続を複数にわたり潜脱している。
具体的には、予定価格の作成や2者以上の見積り合わせを怠り、随契理由を明記せずに特命発注を繰り返す裁量権の逸脱、ならびに「自動更新条項」によって会計年度独立の原則を破壊し議会の関与を排除している点において、極めて重大な違法性と無効性を内包している。
さらに、当該弁護士法人が住民訴訟において首長個人の防衛に回りつつ市の顧問としての地位を維持する構造は、弁護士法が禁ずる利益相反行為に抵触する疑義が強いだけでなく、監査委員制度を機能不全に陥れる行政コンプライアンス上の致命的な欠陥である。
住民監査請求の提起にあたっては、1年の出訴期間制限を回避するため「直近1年以内の公金支出」および「違法状態を是正する義務の不履行(怠る事実)」に焦点を絞り、精緻な理論構築の下で請求書を作成する必要がある。
監査プロセスにおける顧問弁護士の不当な介入を事前牽制するとともに、最終的には地方裁判所での住民訴訟(第4号請求)による司法判断を仰ぐ覚悟で臨むことが、癒着構造を解体し、弥富市の行政運営における客観性、透明性、および適法性を回復するための最も確実な法的アプローチである。
これまでの課題(実質的な長期随意契約化、自動更新条項による会計年度独立原則の潜脱、首長個人との利益相反など)を踏まえ、「地方公共団体の利益(市民の利益)を真に守るための、透明性と適法性を備えた顧問弁護士契約書のひな型」を作成しました。
このひな型は、特定の首長への忖度を防ぎ、議会の予算統制を尊重する「本来の自治体の姿」を体現するよう設計しています。
法律顧問委託契約書(ひな型)
○○市(以下「甲」という。)と、弁護士法人○○(又は弁護士○○)(以下「乙」という。)は、法律顧問委託に関し、以下のとおり契約を締結する。
第1条(目的及び基本原則)
甲は、地方自治法をはじめとする関係法令を遵守し、市民全体の利益に奉仕する行政運営を行うため、その法的課題等に関する助言及び指導等の業務(以下「顧問業務」という。)を乙に委託し、乙はこれを受託する。
2. 乙は、本契約が市民の税金を原資とする公金によって賄われることを深く認識し、甲の執行機関(首長等)個人の利益ではなく、地方公共団体としての甲の正当な利益を擁護する立場から、独立かつ公正な専門的見地に基づき職務を遂行しなければならない。
第2条(委託業務の範囲)
乙が甲に提供する顧問業務の内容は、次の各号に掲げるとおりとする。
(1) 甲の行政運営、契約事務、条例・規則の解釈等に関する法的助言及び指導
(2) 甲が作成または受領する契約書、協定書その他の法律的文書の審査
(3) 甲の職員に対する法令遵守(コンプライアンス)に関する研修の実施
(4) その他、甲乙協議の上、顧問業務として適当と認める事項
2. 前項の業務を超えて、訴訟代理、調停、示談交渉等の個別具体的な事件の処理を乙に委任する場合は、本契約とは別に、法令及び甲の財務規則に従い、適正な見積り及び予算措置を経た上で個別の委任契約を締結するものとする。
第3条(契約期間と自動更新の禁止)
本契約の期間は、令和〇年〇月〇日から令和〇年3月31日まで(※当該会計年度末まで)とする。
2. 地方自治法第208条第2項に定める会計年度独立の原則に基づき、本契約の自動更新は一切認めないものとする。
3. 次年度以降も継続して顧問業務を委託する必要がある場合は、甲は、複数者による見積り合わせ等の適正な競争性及び透明性を確保した手続を経た上で、新たに契約を締結しなければならない。
第4条(委託料及び支払方法)
甲は、乙に対し、第2条第1項に定める顧問業務の対価として、月額〇〇〇,〇〇〇円(消費税及び地方消費税を含む。)を支払うものとする。
2. 乙は、毎月〇日までに前月分の委託料について甲に請求書を提出し、甲は適法な請求を受けた日から30日以内に、乙が指定する銀行口座に振り込んで支払うものとする。
第5条(利益相反行為の禁止)
乙(乙が所属する法律事務所の他の弁護士を含む。以下本条において同じ。)は、弁護士法第25条及び弁護士職務基本規程を厳守し、甲の利益と相反する行為を行ってはならない。
2. 乙は、次の各号に掲げる事件等について、依頼の承諾又は助言を行ってはならない。
(1) 甲を相手方とする民事訴訟、行政訴訟、国家賠償請求訴訟等
(2) 地方自治法第242条に基づく住民監査請求、及び同法第242条の2に基づく住民訴訟において、甲の首長、職員又は元職等の個人を代理・擁護する行為(これらの者が甲の利益と対立する立場に置かれる場合に限る)
(3) その他、客観的に甲の利益を害するおそれがあると認められる事件
3. 前項の疑義が生じた場合、乙は直ちに甲に報告し、対応について協議しなければならない。
第6条(守秘義務)
乙は、本契約に関連して知り得た甲の秘密を、契約期間中はもとより契約終了後においても、第三者に漏洩し、又は本契約の目的以外の目的のために使用してはならない。
第7条(契約の解除)
甲又は乙は、相手方が本契約の条項に違反したときは、相当の期間を定めて催告し、その期間内に是正されない場合は、本契約を解除することができる。
2. 甲は、乙が第5条(利益相反行為の禁止)の規定に違反したと認めたときは、前項の規定にかかわらず、何らの催告を要せず直ちに本契約を解除することができる。この場合において、甲に損害が生じたときは、乙はその損害を賠償しなければならない。
第8条(協議事項等)
本契約に定めのない事項、又は本契約の解釈に疑義が生じた事項については、関係法令及び甲の財務規則等に従い、甲乙誠意をもって協議して決定する。
本契約の成立を証するため、本書2通を作成し、甲乙記名押印の上、各1通を保有する。
令和〇年〇月〇日
(甲) 住所:○○県○○市○○町〇丁目〇番地 氏名:○○市 ○○市長 〇〇 〇〇 印
(乙) 住所:○○県○○市○○町〇丁目〇番地 氏名:弁護士法人○○(又は弁護士○○) 代表社員弁護士 〇〇 〇〇 印
【解説:本ひな型における重要ポイント】
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「自動更新の禁止」の明文化(第3条第2項・第3項) これまでの違法状態の温床となっていた「自動更新」を明確に否定しました。会計年度独立の原則を守り、毎年度ごとに予算措置と「複数者による見積り合わせ(競争性)」の手続をやり直すことを契約上も義務付けています。
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「利益相反」の厳格な定義と首長個人の代理禁止(第5条第2項第2号) もっとも重要なポイントです。顧問弁護士は「市(法人)」の弁護士であり、「市長(個人)」の弁護士ではありません。住民訴訟等において市長個人が被告となる際、顧問弁護士が市長側につくことを契約上明確に禁止し、監査等の独立性を守る防波堤としています。
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「個別案件の別契約」の明記(第2条第2項) 月額・年額の「顧問料(委託料)」の中に、訴訟対応などの別費用が不透明に紛れ込むことを防ぎます。個別の訴訟委任にはその都度、市の財務規則に基づいた見積りと契約が必要であるとし、公金支出の透明性を確保しています。