官製談合事件の判決傍聴と「何も解決していない」という危機感
6月23日、今回の弥富市官製談合事件に関して、元建設部長に対する判決が言い渡されました。結果は懲役2年、執行猶予3年です。事件の概要については既に何度も書いていますので割愛しますが、私は判決言い渡しの傍聴に行ってきました。
元建設部長の後ろ姿を見ていると、判決理由にあったように(直接「懲戒免職」という言葉は使われませんでしたが)すでに社会的制裁を受けているという点が考慮され、執行猶予がついたのだと思います。
しかし、これを受けて私が抱いた率直な感想は、「何も解決していない」という強い危機感でした。
氷山の一角に過ぎない立件と、組織的談合の歴史
今回立件に至ったのはたった3件です。
しかし検察も繰り返し指摘しているように、遅くとも昭和50年以降(実際はその前からあったはずですが)、建設業に関する「協力会」と称する団体が作られて以来、談合が繰り返されてきました。
検察はこれを「極めて悪質である」と指弾しています。
改めて整理すると、業者サイドは会社名で処罰されているわけではありません。
談合の取りまとめ役であった弥富市建設業協力会のI氏(イニシャルにしておきます)が罰金100万円、2番目の人が70万円、残りの2人が50万円という処分です。
要するに、I氏が会長の建設協力会が、長年にわたり組織的に談合が繰り返されていたということです。
そして市役所サイドとしては、建設部長がそこに密接に関係し、一緒にやっていた「官製談合」ではないのか、というのが本質です。
しかし司法の限界として、今回は立件できるだけの証拠が揃った業者4人と市側1人以外は立件されませんでした。
「犯罪に問えなかった=法に抵触していない、潔白である」というわけではありません。
閉鎖的で談合を誘発する異常な入札制度
例えば、統合小学校の建設工事に至ってはもっと酷い状況です。
19億3500万円ほどの工事が、わずか数百万下がっただけの19億3000万円で落札されたりしています。
そもそも弥富市は、全国でも類を見ないほど「指名競争入札」に偏重しています。
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建築工事は1億円以下、土木工事は5000万円以下がすべて指名競争入札。
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指名対象は「明明白白に市内優先」とされ、実質的に弥富市および周辺市町村の同じ顔ぶれの業者しか指名されない。
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その上、予定価格が公表されている。
これでは「談合してください」と言っているようなものです。
また「一般競争入札」と言いながら、実際には「事後審査型(落札後に資格確認をする)」をとっており、参加できるのは海部(あま)地域(大治町、あま市、津島市、愛西市、弥富市、蟹江町、飛島村)に本社・営業所がある業者のみという極めて閉鎖的な条件をつけています。これほど閉鎖的な入札環境は、他ではあまり見られません。
行政の怠慢とトップの責任
今回の官製談合は、突発的に起きたわけではありません。昭和50年以降繰り返されてきたバックドア(裏口)とも言える入札環境を、大急ぎで他都市並みに改めなければならないはずです。
安藤市長は2月の記者会見で、「予定価格が事後公表だったため、業者が知りたがって部長が漏らした。
だから事前公表にすればこんなことにはならなかった」という趣旨の発言をしました。
一見もっともらしく聞こえますが、事前公表にしてしまえば、ますます談合がしやすくなるだけではないでしょうか(※三河地方などでは、130万円以上は一般競争入札にしています)。
不可解なのは、市側は昨年11月の段階で警察から事情聴取を受けている情報を把握していたはずなのに、そこから7ヶ月、逮捕からでも5ヶ月が経過している現在に至るまで、未だに入札の適正化ができていないことです。
予定価格を公表する・しないのレベルではなく、談合が起きやすい「指名競争入札」に未だに固執していることが問題なのです。
他都市が30年前から少しずつ透明化を進めてきたのに、あえてそこに逆らい、古い体制を維持してきました。「知らぬ存ぜぬ」で通すつもりかもしれませんが、市民の税金を預かる最終決定権者(市長)として、「知らなかった」は罪です。
99%に近い異常な落札率が続出していることに対し、「不思議と思わなかった」では済まされません。
結果として、他都市並みの適正な落札率になるような仕組みを作らなければならないのです。
身内(市長や副市長)が監視するような形ではなく、完全に独立した「入札監視委員会」等による透明化が不可欠です。
「個人の出来心」で終わらせてはならない
最初の話に戻りますが、元建設部長個人については懲戒免職となり、司法の一定の結論が出ました。
しかし、なぜ彼がこれをやってしまったのか。
これは一介の平職員や普通の課長にできることではありません。
彼が「財政課長」や「建設部長」という、入札制度そのものを設計・監督・執行し、問題があれば改善できる立場(要職)に就いていたからこそ、継続的・反復的に可能だったのです。
特定の職員がパスワードを盗み見たり、こっそり紙を見たといった次元の犯罪ではありません。
最も権限を持つ立場の人間が関与した「組織的な犯罪」であるにもかかわらず、現在の市長や副市長をはじめとする市役所側は、これを「元部長個人の出来心」という印象操作にすり替え、トカゲの尻尾切りで逃げ切ろうとしているように見えてなりません。