現在進行中の「JR・名鉄弥富駅自由通路及び橋上駅舎化事業」。駅の南北が繋がり、まちが便利になる——そう期待される一方で、この数十億円規模にのぼる巨大プロジェクトには、私たちの「税金の使われ方」に関わる重大な問題が潜んでいます。
市と鉄道会社の間で結ばれた協定書を専門的な視点で紐解くと、「市が費用の98%を負担するのに完成した駅舎は鉄道会社のモノになる」「詳細な見積もりや検査がブラックボックス化している」「市にだけ極めて不利なペナルティがある」など、市民の財産を脅かしかねない異常な不平等契約の実態が見えてきました。
なぜこのような事態に陥っているのか?そして、このまま計画が進むと弥富市はどうなってしまうのか?市民の皆さんが今こそ知っておくべき「5つの不都合な真実」を、わかりやすく解説します。
🚨 【市民向けサマリー】弥富駅周辺整備プロジェクトの「ここがおかしい!」
〜私たちの税金はどう使われる? 協定書から見えた5つの問題点〜
弥富駅(JR・名鉄)の自由通路新設や駅舎の橋上化は、駅の南北をつなぎ、まちを便利にするための大型プロジェクトです。しかし、市と鉄道会社の間で結ばれた「協定書・覚書」を法的に詳しく読み解くと、市民の税金(数十億円)が極めて不透明かつ市に不利な形で使われているリスクが浮き彫りになりました。
本質的な問題点をわかりやすく5つにまとめました。
💸 1. 費用は「市が98%負担」、でも完成した駅舎は「鉄道会社のモノ」
このプロジェクトは「市と鉄道会社の共同事業」のように見えますが、実態は全く異なります。
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費用の偏り: JRの工事費(約29.5億円)のうち、市が約98%(約28.9億円)を負担し、JRの負担はわずか5,000万円台です。
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資産の行方: 市が莫大な税金を出して新しく建て替えるにもかかわらず、完成した「駅舎」は鉄道会社の所有物になります。市に残るのは「自由通路(道路)」だけで、その後の清掃やエレベーター保守などの維持管理費も永遠に市が払い続けることになります。
📦 2. 見積もりも検査もナシ?「どんぶり勘定」のブラックボックス
公共工事は本来、入札をして一番安く確実な業者を選ぶのがルールです。しかし今回は「線路の近くで危険だから」という理由で、鉄道会社に事実上「言い値」で丸投げ(随意契約)されています。
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市は工事の詳しい単価や内訳を知らされないまま、「一式〇〇円」という大雑把な請求書でお金を払う仕組みになっています。
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本来、市が厳しく行うべき「完了検査」も形骸化しており、無駄な工事や割高な請求が混ざっていても見抜けない危険な状態です。
⚖️ 3. 中止すればペナルティは2倍!? 異常な「不平等条項」
協定書には、一般的な公共工事ではあり得ないような「市にだけ不利なルール」が書かれています。
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もし市の都合(議会の決定や方針転換など)で事業を中止した場合、市はかかった実費だけでなく「損害額の2倍」の違約金を払わなければなりません。
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工事の設計も施工も鉄道会社が行うのに、工事による騒音や日照トラブルなどの「住民からの苦情対応・補償」は、すべて市が責任を負うことになっています。
🛤️ 4. そもそも「制度の選び方」が間違っている?
なぜこんなに市が負担させられているのでしょうか。それは、市が選んだ「整備のルール」に原因があります。
| 比較項目 | 過去の近鉄弥富駅(補助方式) | 今回のJR・名鉄(補償方式) |
| 整備の目的 | 鉄道の駅施設として整備 | 市の「道路(自由通路)」として整備 |
| 市の費用負担 | 約3割程度(残りは鉄道会社) | ほぼ全額(約98%以上) |
| 駅舎の建て替え | 鉄道会社が自費で更新 | 「通路の邪魔になる」として市が全額補償 |
| 完成後の維持管理 | 鉄道会社が営業施設として負担 | 「市道」として市が永遠に負担 |
過去の近鉄弥富駅の時は「鉄道会社の施設整備を市が手伝う(補助)」形だったため、負担は3割で済みました。しかし今回は、市が自ら「道路を通したい」と提案した形(補償方式)をとったため、鉄道会社が本来自分たちで負担すべき「老朽化した駅の建て替え費用」まで、合法的に市の税金に付け替えられている状態です。
💡 これからどうするべきか?(提言)
このまま「ブラックボックス」の中で事業を進めることは、無駄な税金支出(違法支出)として訴訟に発展するリスクすらあります。市民の財産を守るため、市は直ちに以下の行動をとるべきです。
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徹底的な情報開示の要求: 鉄道会社に対し、黒塗りのない「詳細な見積もり」と「工事の内訳」を提出させること。
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プロによる厳重な検査体制: 市の担当者だけでなく、外部の専門家(弁護士や公認会計士など)を入れて、請求書に嘘や水増しがないか厳しくチェックすること。
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計画の立ち止まりと再交渉: これまでに使ったお金(サンクコスト)を差し引いても、現在の市に不利すぎる契約のまま進むのは危険です。一度計画を凍結し、「補助方式(負担割合の見直し)」への変更を鉄道会社と再協議する決断が必要です。
愛知県弥富市における弥富駅自由通路及び橋上駅舎化事業に関する協定・覚書の法的・制度的検討
1. 序論:本件事業の全体像と提起された法的課題の所在
愛知県弥富市(以下「市」)において進行中である「JR・名鉄弥富駅自由通路及び橋上駅舎化事業」は、市が事業主体となり、東海旅客鉄道株式会社(以下「JR東海」)および名古屋鉄道株式会社(以下「名鉄」)との間で締結された協定書ならびに覚書(以下「本件協定等」)に基づいて施行されている極めて大規模な公共事業である。
本件は、地域住民の利便性向上や市街地分断の解消を目的とした自由通路の新設に加えて、それに伴う機能補償としての橋上駅舎化や駅前広場の整備を含むものであり、その総事業費は数十億円規模に達する巨大プロジェクトとなっている。
本件に関して提起された利用者の疑問は、地方自治制度における財務統制および公会計の根幹に関わる極めて本質的かつ鋭い指摘である。
すなわち、「鉄道事業者は私企業として契約自由の原則を背景に事業を主導する一方で、地方公共団体は地方自治法等により厳格な財務会計上の制約を受ける」という法治主義の前提のもと、本件協定等のような大雑把な枠組みのみで、鉄道事業者が事実上の設計・発注・施工を独占し、事後的に市へ費用を請求して精算するスキームが、果たして適法かつ妥当であるのかという点に尽きる。
特に、鉄道事業者が事実上勝手に設計や工事を行い、出来上がったものに対する請求書を付け回しのように市へ提出し、市がこれを事後的に支払うという「他機関委託工事」の構造は、地方自治法が求める契約の透明性や検査権の行使という観点から重大な疑義を生じさせている。
本報告書では、提示されたJR東海との協定書および名鉄との覚書の条文構造を解剖し、本事業スキームが地方自治法、地方自治法施行令、財務規則等の諸法令に照らしてどのような法的性質を有し、いかなる法的・制度的瑕疵のリスクを内包しているかについて、判例や監査実務の動向を踏まえながら網羅的かつ多角的に検証する。
2. 本件協定・覚書の法的性質:「共同事業」の否定と「他機関委託工事」への位置づけ
まず、本件協定等に基づく市と鉄道事業者(JR東海・名鉄)との関係性が、法的に「共同事業(ジョイント・ベンチャー:JV)」と呼べるものか否かを検討する。
利用者の疑問にある通り、この程度の協定書で共同事業者と言えるのかどうかは、事業の責任所在を明確にする上で極めて重要である。
一般的な共同事業(JV)においては、複数の事業者が共同で出資し、利益とリスク(損害)を相応の割合で共有する構造を持つ。
しかし、提示された本件協定等の構造はこれと全く異なっており、実質的なリスクと費用の大部分を一方の当事者である市が負担する非対称的な関係となっている。
JR東海との協定書第4条第1項によれば、乙(JR東海)施行の工事に要する総額概算29億5,180万円のうち、甲(市)が28億9,730万円(全体の約98%)を負担し、乙(JR東海)はわずか5,450万円しか負担しないと規定されている。
名鉄との覚書においても、事業費概算総額10億9,247万円の負担割合に関する詳細は別紙に委ねられているものの、事業の性質上市の負担が大部分を占める構造であることは明白である。
さらに、事業完成後の財産帰属においても両者の関係の非対称性が現れている。
JR協定書第10条および名鉄覚書第12条により、市は莫大な費用を拠出しながらも、完成後に所有権を取得し保守管理の対象となるのは「道路施設(自由通路)」のみであり、新設される「橋上駅舎等の鉄道施設」の所有権は完成と同時に鉄道事業者に帰属することとされている。
鉄道事業者は自己資金をほとんど投入せずに老朽化した自社資産である駅舎等の更新を図ることができる一方、市は全額に近い建設費用に加え、自由通路に係る将来にわたる無限の維持管理責任(ライフサイクルコスト)を負うこととなる。
したがって、本件は対等な「共同事業」や「JV」ではなく、法的には市を「委託者(または負担金・補助金の資金拠出者)」、鉄道事業者を「受託者(施工・設計の権限代行者)」とする「他機関委託工事」としての性質を持つと断じるのが妥当である。
市が自ら工事を発注せず鉄道事業者に権限を代行させている根拠は、本件が「営業線近接作業」を伴う特殊工事であるためである。
列車の安全運行を最優先するため、軌道内や線路近接地の工事は当該路線を管轄する鉄道事業者にしか施工・管理させることができないという物理的および保安上の制約が存在することは事実である。
しかしながら、この「安全上の独占」を理由として、後述する地方自治法上の「契約手続きの厳格性」や「検査権」までもが白紙委任されるわけではない点に、本件スキームの最大の論点が存在する。
3. 地方自治法第234条の原則(契約の厳格性)と本件スキームの法的乖離
鉄道事業者は私企業として契約自由の原則に基づき、自社の系列企業や特定のゼネコンに随意に工事を下請け発注することができる。
しかし、地方公共団体は住民の血税を原資とする公金の適正な管理を厳格に義務付けられており、両者の論理が激突する点に本件の根本的な矛盾がある。
地方自治法第234条第2項は、地方公共団体の契約は原則として「一般競争入札」によらなければならないと規定している。
本件のように、特定の民間企業(鉄道事業者)に設計、積算、工事のすべてを一任する方式は、本来この大原則に反する行為である。
これを適法化するための法理的バイパスとして実務上用いられているのが、地方自治法施行令第167条の2に規定される「随意契約」の例外規定である。
同施行令第167条の2第1項第2号は「その性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき」、同第6号は「競争入札に付することが不利と認められるとき」に随意契約を締結できるとしている。
鉄道近接工事は、これらの条項(特に高度な特殊技術の必要性や、既存の鉄道運行システムとの不可分性、安全確保の観点)を援用することで、法的形式上は「随意契約」として処理されることが全国的な実務慣行となっている。
しかしながら、随意契約が法的に許容容されることと、「積算根拠の非開示」や「どんぶり勘定での事業発注」が許容されることは全く次元の異なる問題である。
地方公共団体は、随意契約であっても適正な「予定価格」を定め、その価格の妥当性を検証する義務を負っている。
本件においては、鉄道事業者側から提示された「言い値(概算見積もり)」がそのまま協定額となり、競争原理が働かない結果として、平米あたりの単価が通常の公共工事と比較して異常に高騰する構造的欠陥を有しているとの指摘が存在する。
情報公開請求に対して、市が「鉄道事業者の営業利益を侵害する」として設計金額や工事単価の詳細を黒塗りで非開示としている事態は、市が自らの適正価格審査能力を放棄していると解釈されかねない。
地方自治法第2条第14項は、「地方公共団体は、その事務を処理するに当つては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない」と規定しており、詳細な積算根拠の精査を伴わない巨額の随意契約は、首長および担当職員に課せられた善管注意義務(善良な管理者の注意義務)の著しい逸脱を構成するリスクを孕んでいる。
さらに、利用者が疑問視している「年度協定」のあり方にも重大な法的疑義が存在する。
JR協定書第6条において、各年度の工事実施に際して「当該年度毎の工事の施行に関する年度協定を別途締結する」とされているが、この年度協定が具体的な「工事設計書」や詳細な「工事請負契約条項」を伴わず、単なる大雑把な金額の割り当てに終始しているとすれば、それは行政契約としての体をなしていない。
公共工事においては、年度ごとに施工範囲、仕様、単価、数量が明確に定義された設計図書に基づく契約が不可欠であり、これらを欠いたまま巨額の公金を動かすことは、予算執行の透明性を確保するという地方財政法の基本理念に抵触する。
4. 財務会計手続きにおける「予納」と「事後精算」の違法性リスク
本件協定等の財務会計手続きにおけるもう一つの重大な論点は、公金の支払いタイミングと精算のプロセスにある。
JR協定書第4条第2項では、市が負担する工事費を、乙(JR東海)が提出する工事費納入計画書に基づく請求書により「予納」するものと規定されている。
また、第9条では年度ごとの実績報告に基づく出来形の確認と、工事しゅん功後の「事後精算」が規定されている。名鉄覚書第11条においても、同様に完了後の事業費精算が定められている。
地方自治法および地方財政法上、公金の支出は反対給付の完了を確認した「債務確定後」に行うのが大原則である。
事前に資金を交付する前渡し(資金前渡や概算払等)は、地方自治法施行令第161条等で厳格に要件が定められた例外中の例外としての措置である。
鉄道工事の負担金等において概算払いや予納が許容される場合であっても、例えば「着工時に50%、完了時に50%の支払」といったように、資金の流出を防ぐための厳格な進捗管理ルールに準拠することが求められる。
利用者が指摘する「出来上がったものについて、請求書を付け回しのように出し、事後的に払う」という状況は、まさにこの概算払いと事後精算のプロセスが行政の統制を離れて形骸化していることを意味する。
本来であれば、予納された資金が目的外に使用されていないか、進捗に見合った適正な支出が行われているかを市が随時確認すべきであるが、協定書上はその詳細な中間確認プロセスが鉄道事業者側に委ねられている。
年度協定に基づく詳細な工事設計書の不在と相まって、鉄道会社からの「事業完了報告」と称する総括的な請求書を市が事後的に追認して支払うのみのスキームは、会計規則上、予算の適正執行の原則から著しく乖離しており、不当な公金支出(違法支出)と認定されるリスクを常に抱えている。
5. 地方自治法第234条の2に基づく「監督・検査義務」の絶対性と形骸化の実態
本件のような鉄道事業者に対する他機関委託工事スキームにおいて、法的・制度的に最も脆弱であり、かつ住民監査請求や住民訴訟等で違法性を問われやすいのが、自治体側による「検査権の行使」に関する領域である。
地方自治法第234条の2第1項は、「普通地方公共団体が工事若しくは製造その他についての請負契約又は物件の買入れその他の契約を締結した場合においては、当該普通地方公共団体の長又はその委任を受けた職員は、契約の適正な履行を確保するため又はその受ける給付の完了の確認をするため、必要な監督又は検査をしなければならない」と定めている。
この規定は強行法規であり、「契約の相手方がJRや名鉄という巨大インフラ企業であるから」あるいは「鉄道敷地内への立ち入りが極めて危険であるから」といった物理的・相対的な理由によって免除される性質のものではない。
鉄道営業線に近接する工事であるため、日々の工程管理や安全確保といった「技術的監督」を鉄道事業者に委ねることは、実務上の必要性から妥当と解される。
しかしながら、工事が設計通りに完了したかを確認する「完了検査」や、請求された金額が適正に下請け業者等に支払われ、不要な工事が含まれていないかを確認する「精算検査(財務会計上の検査)」の権限と義務は、最終的な資金拠出者である市に完全に留保されている。
現場への立ち入りが制限される場合であっても、市は鉄道事業者に対して、工事写真、出来形管理図、下請け業者への発注内訳書、材料の品質証明書等の詳細な客観的データの提出を求め、これらを基に厳密な「書類検査」を実施する明確な権限と義務を有している。
弥富市における本件事業の実態に関しては、令和7年度(2025年度)に「雨量計設備移設工事」に関する不透明な支出を巡って住民監査請求が行われた記録が存在する。
この監査結果の通知書からは、本件協定に基づく検査実務が著しく形骸化している現状が浮き彫りとなっている。
第一に、JR東海と共同企業体(JV)との契約において、工事内訳が「一式」と表記されており、市に対しても詳細な積算根拠が提示されていないことが監査過程で確認された。
第二に、市は事後精算時に鉄道事業者から「透明性資料」を提出させているが、監査委員すら「透明性資料は詳細な完了検査をするための資料ではない」と認定してしまっている。
会計検査院は過去に、道路・鉄道交差工事や委託事業において、自治体側が委託費の精算確認や管理費の根拠資料の提出を怠り、結果として巨額の不適切な公金支出(過大請求や二重計上等)が行われていた事態を厳しく指摘し、抜本的な是正措置を求めている。
詳細な内訳を伴わない「一式請求」を受け入れ、受託者(鉄道事業者)の報告を鵜呑みにした形式的な決裁(いわゆるゴム印行政)に留まっている現状は、会計検査院が指摘した自治体の検査体制の機能不全と全く同じ構図であり、市の担当職員および首長が財務会計上の違法行為の責任を問われる重大な火種となっている。
6. 協定書における不平等条項の分析:行政の裁量権放棄と「奴隷的契約」
本件協定書の条文を精査すると、契約当事者間(市と鉄道事業者)の極端な非対称性を示す「不平等条項」が複数散見される。
地方公共団体が締結する行政契約として、これらの条項が公序良俗や法の一般原則に照らして適当であるか否かは極めて疑わしい。
最も特筆すべき異常性は、JR協定書第16条(損害の負担)に規定された損害賠償の予定条項である。同条第1項および第2項には、甲(市)の責めに帰すべき事由により工事が中止(停止、中断、凍結、延期等)された場合において、「原状回復に要する一切の費用及びその他本件事業が中止に至らないものと相手方が信頼したことに伴う全ての損害額の合計額を2倍した金額を損害賠償の予定額として負担するものとする」と明記されている。
一般的な公共工事の標準請負契約約款や地方自治法に基づく契約実務において、発注者(行政)の都合による事業の中止に伴う補償は、「通常生ずべき損害(既済部分の工事費、現地への搬入済材料費、撤収費用等の実費)」に限定されるのが通例である。
行政は、議会決議の変更、首長の交代、あるいは住民意向の劇的な変化によって、やむを得ず政策や事業計画を見直す「裁量権」を有していなければならない。
それにもかかわらず、市に対してのみ莫大な懲罰的違約金(サンクコストの実費に加えてその2倍の賠償)を課す条項は、市から政策決定の裁量権を決定的に奪い、将来世代へ無限の負債を強要する「奴隷的契約」とも評すべき内容である。
このような過剰な賠償予定額の設定は、行政の公益性の確保という観点から民法第90条(公序良俗)に反し無効と解釈される余地が存在する。
また、JR協定書第14条・第15条および名鉄覚書第15条・第17条によれば、鉄道事業法に基づく特定の手続きを除き、事業に必要となる行政上の諸手続き並びに「第三者からの苦情等の処理」はすべて市が行うこととされている。
設計も施工も鉄道事業者が独占的かつブラックボックスの中で行いながら、それによって生じる周辺住民への騒音・振動、日照障害等の苦情対応や補償リスクはすべて市に転嫁される構造となっており、権利と義務の著しいアンバランスが生じている。
7. 国土交通省「要綱」の適用による構造的歪みと利益相反
そもそも、なぜ市が全額に近い費用を負担し、かつ完成した鉄道施設の所有権を放棄するという、一見して市に極めて不利な協定を結ばざるを得ないのか。
その背景には、国土交通省が定めた「自由通路の整備及び管理に関する要綱」の存在と、その制度設計に潜む罠がある。
本要綱は、自由通路をどのような位置づけで整備するかにより、整備主体と費用負担のルールを明確に分けている。
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道路として整備する場合(補償方式): 自由通路を都市計画上の「市道」として位置づけ、都市基盤事業者(市)が市街地分断の解消等のまちづくりの一環として整備する場合、原則として市が自由通路整備費の全額を負担する。
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鉄道事業者の施設として整備する場合(補助方式): 自由通路を駅施設の一部として鉄道事業者が整備する場合、不特定多数の利用を前提とする部分について、市の費用負担は整備費の3分の2以内に留まり、鉄道事業者が応分の負担を行う。
弥富市における過去の事例である近鉄弥富駅の橋上化整備(平成初期)においては、後者の「鉄道施設としての整備(補助方式)」が採用され、市の負担は約3割強で済んでいた。
しかし、今回のJR・名鉄弥富駅整備事業においては、前者の市主体の「市道(自由通路)」として整備するスキーム(補償方式)が選択された。
この選択が、市に致命的な財政的負担をもたらしている。自由通路を「市道」として整備する場合、市は通路自体の建設費全額を負担するだけでなく、通路の新設によって物理的に支障となる既存の駅舎や鉄道施設の「移転補償費(実質的な建替え費用)」までも「支障物件の移転等」という名目で全額負担させられる構造となっている。
さらに、完成後の通路部分に設置されるエレベーターの保守、照明、清掃、大規模修繕といった維持管理費(ランニングコスト)は、道路管理者である市が永久に負担し続けることとなる。
本来、交通バリアフリー法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)に基づく駅舎のバリアフリー化や老朽化対策は、鉄道事業者自身が経営判断として行うべき努力義務である。
しかし、市が自発的に「南北の回遊性向上等のため自由通路を作りたい」という名目を立てて道路方式を選択することで、鉄道事業者が自己負担すべき老朽化駅舎の更新費用やバリアフリー化費用を、全額市民の税金(公費)に合法的に付け替えるという「利益の還流」が生じている。
全国の自治体で駅周辺整備事業が「鉄道事業者のための公金マネーロンダリング」や「鉄道委託事業の闇」と批判されている根本原因は、この制度的ハシゴ外しと利益相反の構造にある。
8. 結論および制度的改善に向けた提言
現在の所在地である愛知県弥富市に関連して提示された協定書・覚書の条文、およびそれに付随する財務会計上の様々な疑問について、法的・制度的検討を行った結果、以下の結論に達した。
第一に、本件協定等は法的に「共同事業(JV)」ではなく、市を資金拠出者とする「他機関委託工事(実質的な特命随意契約)」である。
鉄道事業者の営業権や保安上の理由を盾にして、地方自治法第234条の原則である競争性を回避し、さらに設計書の詳細や積算根拠を非開示としたまま言い値で公金を支出させる現状は、地方自治法が求める「最少の経費で最大の効果」原則(同法第2条第14項)に著しく反する。
このまま漫然と事業を継続すれば、首長および担当職員の善管注意義務違反が問われかねない重大なリスクを孕んでいる。
第二に、自治体の生命線である「検査義務」の不履行リスクである。
いかに包括的で安全保障上の理由がある協定や覚書を結ぼうとも、地方自治法第234条の2に基づく「完了検査」および「精算検査」の義務は絶対に免除されない。
鉄道事業者からの詳細を欠く「一式請求」や形式的な「透明性資料」のみをもって支払いを決裁する行為は、行政の財務統制機能の完全な放棄に等しい。
万が一、請求内容に過大請求や不要な工事が含まれていた場合、これを見逃した市は過去の会計検査院の指摘事例と同様に厳しい処分の対象となり、住民訴訟を通じて数千万円から数億円規模の個人賠償責任を負う可能性がある。
第三に、市に対してのみ損害額の「2倍」を違約金として負担させるような異常な不平等条項(第16条)の存在である。
このような条項は、地方公共団体の自律的な政策決定権を著しく縛る不当条項であり、行政の裁量を私企業が法外なペナルティで縛るという点で公序良俗に反する疑いが強い。
制度的改善に向けた提言
地方公共団体が巨大な私企業である鉄道事業者と対峙する際には、「協定書」や「覚書」という名のブラックボックスに逃げ込むのではなく、法治主義と財務規則の原則に立ち返る必要がある。
市は直ちに、鉄道事業者に対して工事費の詳細な積算根拠、設計図書、および下請け発注単価の完全な開示を強く要求すべきである。
同時に、市長や一部の担当課長のみによる属人的な確認ではなく、外部の専門家(技術士、公認会計士、弁護士等)を交えた厳格な組織的・専門的監査体制(ピアレビュー)を導入し、「精算検査」を実質化しなければならない。
さらに、維持管理の無限の負担と不平等な違約金条項の存在、そして国土交通省の要綱を隠れ蓑にした「いびつな費用負担構造」を鑑みれば、法廷闘争(住民訴訟)のリスクを抱えたまま現在のスキームで事業を強行することは極めて危険である。
既に投入されたサンクコスト(埋没費用)を許容してでも、事業を一時凍結し、「鉄道施設としての整備(補助方式)」への抜本的なスキーム変更を求めて鉄道事業者と再協議を行う決断を下すことが、地方自治法本来の趣旨に合致する適法かつ合理的な裁量権の行使であると評価できる。
This is for informational purposes only. For legal decisions regarding litigation, contract cancellation, or municipal finance procedures, consult a qualified legal professional or public administration expert.