11月の弥富市長選を前に考える:「救世主」を待たない自治体経営論
1. リーダーに本当に必要なのは「価値創造」の対話力
都知事選などを眺めていると、私たちはどうしても「1人で何でも解決してくれそうなスーパーマン」を期待してしまいがちです。しかし、現実の政治や行政にそんなヒーローは存在しません。
いま、地方自治体の現場で本当に求められているのは、かつて挙げた飛騨市の都竹(つづく)市長や、杉並区の岸本聡子区長のような、「対話の力」「コミュニケーション能力」「人の力を引き出す力」「組織運営力」を持ったリーダーです。もちろん、地域への共感や地盤がない「落下傘」では意味がありませんが、こうした資質を持つリーダーは、どのような官公庁系組織に行っても素晴らしい業績――すなわち「価値創造」を残すことができます。
【エピソード:噛み合わない「価値創造」の議論】 先日、安藤市長への一般質問で「この約8年弱の間に、どういう価値を創造しましたか?」という問いを投げかけました。しかし残念ながら、「価値創造」という言葉の本質的な意味が伝わらず、答弁は全く噛み合いませんでした。これからの弥富市を考える上で、この「価値創造」こそが重要なキーワードになります。
市長が「大統領」のように1人で何もかも分析し、案を作って実行することなど不可能です。ただ、組織にお手本を示す意味で、何か一つ「象徴的な政策」を打ち出す必要はあるでしょう。しかし、それを実際に動かすのは300人もの職員です。1人のキャラクターだけで組織が動くわけがありません。
2. 「陽」の市長と「陰」の副市長:太陽と月の組織論
300人の組織を動かすには、絶対に「相棒(女房役)」が必要です。ざっくり言うならば「陰と陽」、あるいは「太陽と月」の関係です。
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市長(陽・太陽): 明るく、器が大きい「長者」のようなキャラクター。細かいことにとらわれず、全体の声を聴く。良い意味での「バカ殿(大局を見守る人物)」でいい。
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副市長(陰・月): 財政、制度、コンプライアンス、ガバナンスをきっちりと締められる実務派。
プロ野球の名将・野村克也さんのようなIDあふれる緻密なタイプを市長に選ぼうとしても、選挙という仕組み上、それはドダイ無理な話です。選挙では「明るいキャラ」が選ばれがちだからです。
だからこそ、今の弥富市にとって本当に重要なのは「適切なブレーキ役であり、財政をハンドリングできる副市長」なのです。 「あれもやります、これもやります」と耳障りの良いことばかりを並べ、破綻寸前にある今の弥富市。市長自らがコストカッターになってしまっては選挙に勝てませんから、そこを裏で冷徹にコントロールできる副市長の存在が、市長以上に決定的な意味を持ちます。
3. 利害関係を克服する「OS(オペレーティングシステム)」の刷新
さらに言えば、必要なのは副市長だけではありません。思いつきではない確かな政策を練り上げる「政策ブレーン(アドバイザー集団)」も必須です。
弥富市にとって何が正解かは、市長が就任した後に、職員と案を練り、議会と対話し、市民と対話する中でしか決まりません。その対話を回していくための「システムとしてのOS(オペレーティングシステム)」の立て直しが必要です。
現実の政治では、県議や国議、さまざまな業界団体(建設業界など)の利害関係が複雑に絡み合い、市長1人では何も決められない構造があります。この「裏の力関係」を上書きし、克服するためには、トップリーダーの下に優秀なサブリーダーが何人もつく「チーム戦」で乗り込むしか論理的にあり得ないのです。
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飛騨市・都竹市長の事例: 合併によって生まれた人口2万人の特例市で、職員を育てるのに6年かかったと言います。飛騨市が素晴らしいのは、関係人口(外の人)や地元のステークホルダー(NPO、社会福祉団体、個人)など、「危機感とやる気」を持つ人々が動きやすい環境を市役所が固め、改革を加速させた点です。これも完全に「チーム戦」の成果です。
結論:11月15日、私たちは「チーム」を選ぶ
過去を振り返っても、潰れかかっていた自治体を再建した名長長(おさ)たちは、多かれ少なかれこうした「チームを活かす能力」を持っていました。ワンマンで何もかも1人で切り回したリーダーなど、歴史上存在しません。そんなやり方では誰もついてこないからです。
「2026年11月15日の市長選挙で、スーパーマンがやってきて全てを解決してくれる」などという幻想は、今すぐ捨てるべきです。
有権者である私たちが本当に見るべきなのは、候補者1人のキャラクターではなく、その背後にある「実務を締める副市長の構想」や「政策ブレーン」、そして「しがらみを打破できるチームの体制」があるかどうか。1人の救世主に頼る時代は、もう終わっているのです。
いかがでしょうか。音声入力の勢いと、語りきれなかった「弥富市が直面する構造的な課題」を、1本の筋が通ったコラムとして整えました。次回以降のまとめのベースとしてもご活用ください。
こんにちは!AIアシスタントのGeminiです。お預かりした専門的で骨太なレポートを、市民の皆様がスマートフォンなどでもサクッと読めて、かつ本質的な問題提起がしっかり伝わるよう、キャッチーでわかりやすいサマリーにまとめ直しました。
📝 【市民向けサマリー】「スーパーマン市長」の時代は終わった!私たちのまちを救う「チーム戦」とガバナンス
💡 結論:いま、地方自治体に求められていること
税収が右肩上がりだった時代、一人のカリスマ市長がトップダウンでハコモノ(公共施設)をバンバン建てる「ワンマン体制」でもまちは回りました。しかし、人口減少と財政難の現代において、たった一人で全てを解決できる「スーパーマン」は存在しません。
いま必要なのは、限られた予算の中で新しい価値を生み出す「価値創造」と、首長(トップ)・副市長(ナンバー2)・市民がガッチリとスクラムを組む「チーム戦」です!
☀️🌙 良いチームには「太陽」と「月」がいる
市役所という巨大な組織を動かすには、役割分担が不可欠です。
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市長は「太陽(陽)」:明るく市民の声を聴き、まちに希望と活力を与えるリーダー。対話力と包容力が命です。
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副市長・ブレーンは「月(陰)」:市長の「あれもこれもやりたい」という暴走にストップをかける、冷徹なブレーキ役。法律、コンプライアンス、財政を守るシステムの要です。
どんなに人柄の良い市長でも、周りが「イエスマン」ばかりでブレーキが壊れていれば、まちはあっという間に破綻の危機に陥ります。
🚨 【警告】ブレーキ役不在でピンチに陥る「弥富市」の現状
現在の愛知県弥富市は、この「ブレーキ役」が機能しておらず、深刻な機能不全に陥っていると指摘されています。
| 問題点 | 具体的なピンチの状況 |
| 隠れ財政難 | 表面上は黒字でも、実は「自由に使えるお金」が極めて乏しい(経常収支比率92.2%に悪化)。今後の公共施設修繕費の確保が後回しに。 |
| 巨大プロジェクトの暴走 | 総事業費約55.5億円の「弥富駅橋上化事業」。なんと市が費用の約98%を負担する不平等な契約。一世帯あたり約20万円の実質的な借金を背負う計算に。 |
| ガバナンスの崩壊 | 2024年に発覚した「違法な赤字決算補填」のドタバタ劇や、相次ぐ公金紛失・不祥事の隠蔽。チェック体制が全く機能していません。 |
✨ 【お手本】チーム戦でまちを劇的に変えた2つの成功事例
弥富市とは対照的に、トップが「対話」を重視し、優秀なチームを作って大成功しているまちがあります。
① 岐阜県飛騨市(都竹市長):「関係人口」でまちを盛り上げる
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市役所の意識改革: 職員を「怒る」のではなく「強みを活かす」配置へ。市役所を最強のチームに改造。
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よそ者を巻き込む: 市外の人が農家や文化財保全を手伝う「ヒダスケ!」や、18,000人を擁する「飛騨市ファンクラブ」を創設。お金をかけずに地域の活力を爆発させました。
② 東京都杉並区(岸本区長):「身の丈財政」と人への投資
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徹底した区民との対話: 一部の権力者ではなく、抽選で選ばれた一般区民と直接話し合って政策を決定。
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鉄壁のブレーキ: 不要なハコモノ開発を見直し、厳しい財政規律を貫いた結果、貯金(基金)を273億円も増やすことに成功!
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人への投資: 浮いたお金を、非正規職員の待遇改善、給食費無償化など「コンクリートから人(ケア・教育)」へフルスイングで投資しました。
🚀 未来へ向けて〜2026年 弥富市長選挙への3つの提言〜
弥富市が今の危機から脱出し、豊かなまちへと生まれ変わるためには、以下の「OS(システム)のアップデート」が必要です。
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「ガラス張りの市役所」の実現
隠蔽体質をなくすため、徹底した情報公開と第三者による調査を実施。法令遵守のプロを新たな「陰の要(副市長・ブレーン)」として迎えること。
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ハコモノ事業の凍結と「身の丈財政」へ
巨額の駅前プロジェクトは一度ストップ。これまでに使ったお金(サンクコスト)に縛られず、市民の負担を減らす現実的な代替案を再交渉すること。
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「命」と「人」へのフル投資
海抜ゼロメートル地帯の弥富市では、見栄えよりも「人命第一の防災設計」が最優先。そして、見直した財源は「子育て・教育・福祉」といった未来のソフトウェアに投資すること。
結びに
私たちが次の選挙で選ぶべきは「耳触りの良い夢を語るだけのスーパーマン」ではありません。「誰を副市長に据え、どんな専門家チームで市役所を立て直すのか」という現実的な青写真を描けるリーダーです。真の価値あるまちは、ごまかしのない対話と、妥協のない厳しいルール(規律)の中からしか生まれないのです。
地方自治体における「価値創造」とガバナンスの再構築——「スーパーマン首長」幻想の終焉とチームマネジメントの必須性
序論:地方行政における「価値創造」の要請とワンマン体制の限界
高度経済成長期やインフレーションを前提とした右肩上がりの時代において、地方自治体の首長に求められる役割は、増え続ける税収を背景としたインフラ整備や公共施設の拡充といった「足し算の行政」であった。
このような時代においては、首長が大統領的なトップダウン型の権力を振るい、単独で状況を分析し、政策を立案して実行に移すワンマン体制でもある程度の成果を上げることが可能であった。
しかし、人口減少、少子高齢化、そして財政の硬直化という未曾有の構造的課題に直面する現代の地方自治において、首長に求められる役割は根本的に変質している。現在求められているのは、限られた資源の中で新たな社会的・経済的・市民的資本を生み出す「価値創造(Value Creation)」である。
この「価値創造」とは、単に歳出を削減するコストカットや、旧来型のハコモノを建設することではない。
地域住民との対話を通じて潜在的な課題を発見し、市役所内部の組織能力を引き出し、さらには外部の多様なステークホルダー(NPO、民間企業、市民団体、関係人口など)を巻き込んで、地域社会全体の持続可能性を高めるオペレーティングシステム(OS)を構築することである。
現代の地方行政には、国や県、議会、建設業界をはじめとする多様な利害関係者が複雑に絡み合っている。
たった一人の卓越した能力を持つ「スーパーマン」たる首長が落下傘的に着任し、独力で全てを解決するという幻想は、論理的にも実務的にも成立しない。
地域の地盤や市民の支持、共感がなければ、いかに優秀な人材であっても既存の力関係の中で身動きが取れなくなるのが現実である。
本報告書は、地方自治体におけるガバナンスと価値創造のあり方について、首長と副市長、さらには政策ブレーンによる「チーム戦」の重要性に焦点を当てて分析する。
現在、深刻な財政・ガバナンス危機に直面している愛知県弥富市の事例を構造的な反面教師として検証しつつ、対話と組織マネジメントによって価値創造を実現している先進事例(岐阜県飛騨市、東京都杉並区)を比較対象として詳細に考察する。
第1章:首長と副市長・ブレーンの「陰陽」構造論
地方自治体という巨大な組織(数百人から数千人の職員を擁する行政機関)を動かすためには、首長個人の資質と、それを補完するナンバー2(副市長)および政策ブレーンとの明確な役割分担が不可欠である。
この関係性は、組織運営における「陽(太陽)」と「陰(月)」のダイナミズムとして説明できる。
1.1 首長に求められる「陽」のキャラクターと対話力
選挙という民主的プロセスを経て選ばれる首長には、市民からの共感を集め、組織に希望と活力を与える「明るさ」や「器の大きさ」が求められる。
プロ野球の監督に例えるならば、野村克也氏のような極めて緻密で論理的、かつ時にシニカルな戦術家(陰の性質が強い人物)は、参謀としては最高峰であっても、不特定多数の有権者から広く支持を集める「顔」としての首長選挙においては、必ずしも適任とはならない場合がある。
首長には、あまり細かい実務的瑕疵に固執せず、全体を俯瞰し、市民の多様な声に耳を傾ける包容力が必要である。
同時に、外部から飛騨市の都竹淳也市長や杉並区の岸本聡子区長のように、対話の力、コミュニケーション能力、そして「人の力を引き出す力」を発揮することが、現代のリーダーシップの要諦である。
しかし、この「明るさ」や「包容力」だけで組織が機能するわけではない。
イエスマンばかりを周囲に配置し、全てを肯定するだけの行政運営を行えば、組織はたちまち規律を失い、財政破綻や不祥事の温床となる。
1.2 副市長と政策ブレーンが担う「陰」のブレーキ役
トップが「陽」の役割を担うからこそ、その裏で組織を冷徹に引き締める「陰」の役割、すなわち副市長や政策アドバイザーからなるブレーン集団が極めて重要になる。
地方自治法において確立された副市長制度は、市長の補佐、政策及び企画の立案、職員の担任する事務の監督、そして市長の権限に属する事務の一部執行を担うと明文化されている。
実務上は、条例や規則の制定等の自治立法、国の法令等の自主的解釈と運用、訴訟対応など、高度に専門的かつ法的なガバナンスの維持が求められる。
インフレの進行やインフラの老朽化、財政の硬直化といった厳しい局面において、自治体を破綻から救うのは、首長の「あれもこれもやります」という肥大化しがちな政策意欲に対し、財政面、制度面、コンプライアンス面、ガバナンス面から厳しくストップをかける適切な「ブレーキ役」である。
単にコストカッターとして振る舞うだけでなく、真の「価値創造」に向けて限られたリソースを最適配分するためのシステム(OS)を構築・保守する役割を、この副市長や政策ブレーンが担う。
選挙において有権者が真に見極めるべきは、首長候補者の個人的なカリスマ性ではなく、その候補者がどのようなブレーンを連れ、どのような副市長を登用し、組織を回すためのチームを構成できるかという「チーム戦」の青写真である。
第2章:弥富市に見る「ブレーキ役不在」の構造的危機とガバナンス崩壊
愛知県の南西部に位置し、海抜ゼロメートル地帯に広がる弥富市(人口約4.3万人)は、現在、財政的硬直化と組織的ガバナンスの欠如という複合的な危機に直面している。
2018年より市政を担う安藤正明市長の体制下で露呈した一連の諸問題は、適切な「ブレーキ役」としての副市長や政策ブレーンが機能していない場合に、地方自治体がどのような機能不全に陥るかを示す典型的な事例といえる。
2.1 表面的な黒字に隠された財政の硬直化
弥富市の公式な決算資料を精査すると、同市の財政が深刻な硬直化に陥っている実態が浮き彫りになる。
令和5年度(2023年度)の一般会計決算において、歳入総額は179億8,857.6万円(前年度比0.6%減)、歳出総額は173億1,502.2万円(前年度比0.9%増)となっており、形式的な収支は黒字を保っているように見える。
しかし、令和5年度のみの収支を示す単年度収支は3億701.6万円の赤字に転落している。
さらに、その額に実質的な黒字・赤字の要素である当該年度中の財政調整基金への積み立てや取り崩しを加味した「実質単年度収支」においても、9,220万円の赤字を記録している。
最も警戒すべきは、自治体の財政構造の弾力性を判断する指標である「経常収支比率」の急激な悪化である。
この比率は、人件費や扶助費、公債費などの経常的経費に対し、市税や地方交付税などの経常的な一般財源がどの程度充当されているかを示すものであり、一般に80%を超えると財政の弾力性を失いつつあるとされる。
上記の表が示す通り、令和5年度の弥富市の経常収支比率は92.2%に達しており、新たな政策課題(価値創造)に投資するための自由な財源が極めて乏しい状況に陥っている。
今後40年間で学校や公民館などの公共施設の老朽化対策に約400億円が必要と試算されている中、これらの基盤整備に充てるべき財源の確保は後回しにされており、硬直化した財政構造が表面上の「黒字」によって覆い隠されているのが実態である。
2.2 巨額プロジェクトの推進と失われたブレーキ機能
このような硬直化した財政状況の只中において、弥富市は「JR・名鉄弥富駅自由通路整備および橋上駅舎化事業」という極めて巨大なプロジェクトを推進している。
この事業は、延長約90メートルの自由通路と橋上駅舎の新設、および南北の駅前広場の再編整備を行うものであり、令和11年度(2029年度)の供用開始を目指している。
問題は、その異常なまでの投資規模と、市に著しく不当な負担割合である。
総事業費は約55.5億円と想定されているが、事業主体となる市と鉄道事業者(JR東海・名鉄)が結んだ協定を分析すると、市が費用の約98%を負担し、鉄道事業者の負担は約2%に留まるという極端に不平等な構造となっている。
さらに、完成後の所有権について、市は清掃・修理費を恒久的に負担しなければならない自由通路のみを所有し、新しい駅舎などの鉄道施設は鉄道事業者の所有となる。
直近では、JR東海が主導する工事において協定額が8億3,000万円も増額され、総事業費は膨張を続けている。
この増額分だけでも、弥富市民一世帯あたり約4万円の新たな負担増となり、総額では一世帯あたり20万円を超える実質的な借金(債務負担)を強いる計算となる。
本来であれば、副市長や財政を司る政策ブレーンが、市民の税金を守るための「ブレーキ役」として機能し、鉄道事業者との協定内容の抜本的な見直しや、事業規模の縮小(橋上化ではなく地平駅でのバリアフリー整備への代替案など)を進言・実行しなければならない。
しかし、首長の「足し算の行政」に対する牽制機能が市役所内部に存在せず、サンクコスト(これまでに使った埋没費用)に縛られたまま事業が強行されている現状は、弥富市のチームマネジメントが完全に機能不全に陥っていることを証明している。
2.3 令和6年(2024年)の赤字決算問題とガバナンスの崩壊
弥富市の市役所内部におけるコンプライアンス意識の欠如とガバナンスの崩壊を最も象徴的に示したのが、2024年6月に発覚した特別会計の赤字決算と、それに伴う違法な補正予算案の提出・撤回という前代未聞のドタバタ劇である。
事の発端は、令和5年度(2023年度)の国民健康保険特別会計において、県からの交付金収入が市の予算見込みを下回ったことにより、約1,260万円の赤字が発生したことにある。
地方自治法の厳格な規定(地方自治法施行令第166条の2)によれば、前年度の赤字は、翌年度の5月末までの「出納整理期間」内に補填する手続きを完了させなければならない。しかし、弥富市当局はこの制度への理解を欠き、法的な期限を徒過した。
この法的違反に気づいた後の行政トップの対応は、事態をさらに悪化させる隠蔽と欺瞞に満ちたものであった。
市長と副市長は、期限切れ後の6月17日、議会に対して令和6年度の歳入を令和5年度に繰り上げて充当するという「違法な補正予算案」を平然と提出したのである。
市側は、2023年9月に沖縄県議会で同様の違法な補正予算案が否決された重大な先行事例を把握していたにもかかわらず、その事実を弥富市議会に伏せ、議会が法的瑕疵に気づかずに承認することを期待して議案を提出したと指摘されている。
しかし、議員からの厳しい追及により違法性が露呈し、「議会を欺こうとした」との激しい批判を浴びた市長は、6月27日に同議案を撤回せざるを得なくなった。
最終的に市側は、議会の承認を要しない市長の「専決処分」という強権的な手法を用いて、7月9日に一般財源から約1,260万円の繰上充用を行い、事態を強制的に収拾した。
この一連の不祥事は、単なる一担当者の事務的ミスではない。弥富市では過去にも、2022年の生涯学習課における公金紛失(情報の隠蔽)、2024年の子育て補助金(約730万円)の請求漏れとその1年以上にわたる組織的隠蔽など、不祥事が相次いで発生している。
副市長である村瀬美樹氏は報道機関に対し、「制度の理解を徹底し、再発防止に努める」と釈明したが、チェック体制の強化といった表面的な対策を講じるにとどまっている。
一つの重大な事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300の異常が存在するという「ハインリッヒの法則」が示す通り、弥富市役所はことなかれ主義と隠蔽体質に深く蝕まれている。
首長が「陽」として振る舞ったとしても、ナンバー2である副市長が「陰」として法令遵守と財務規律を厳格に管理する機能が欠如していれば、多重防御の仕組みは崩れ去り、ガバナンスは完全に崩壊する。これこそが、弥富市が直面している真の危機である。
第3章:チーム戦による「価値創造」の具現化①——飛騨市・都竹淳也市長の事例
弥富市の事例とは対照的に、首長が外部の力を活用し、市役所内部のOSを書き換えることで劇的な価値創造を遂げた先進事例として、岐阜県飛騨市の都竹淳也市長のアプローチを検証する。
飛騨市は人口約2万2千人、高齢化率が40%を超える、いわゆる「人口減少先進地」である。
本来であれば最も条件の厳しい過疎地域の一つであるが、都竹市長は就任以来、市役所という内部組織の育成と、関係人口という外部ステークホルダーの巻き込みを連動させた、極めて秀逸なチームマネジメントを展開している。
3.1 内部組織の変革:「叱責」からの卒業と行政OSの再定義
都竹市長の組織マネジメントの根幹は、「努力不足」を責める古い精神論から脱却し、職員個々の「強みを見つけ、組み合わせる」ことにある。
市長自身が係長級・課長補佐級の職員研修の講師として直接教壇に立ち、「部下の強みをいかに引き出し、活かすか」というリーダーシップ論を徹底的に浸透させることで、市役所の組織文化を根本から改革した。
人事配置においても、画一的なゼネラリスト育成ではなく、職員個々の適性を見極めるための戦略的なローテーションを実施している。
最初は前職やこれまでの経験が生かせる部署に配属し、その後は窓口業務、農業系、観光系といった全く異なるタイプの業務を経験させる。
その過程で適性が見出された職員は、自身の強みを最大限に発揮できる部署に7〜8年という長期スパンで配置し、専門性と実行力を高めさせるという育成システムを構築している。
さらに、地方自治体において形骸化しがちな「総合政策審議会」を、真のブレーン集団(チームの要)として機能させている。
各分野の有識者からなる18名の委員と年4回、行政の予算や組織、地方創生に関するガチンコの議論を行い、その結果を直接予算編成に反映させることで、行政の足腰を徹底的に鍛え上げている。
都竹市長は「調べて、対話し、実行し、手直しする」という基本サイクルを行政機能として再定義し、市役所のOSを堅牢なものへと書き換えたのである。
3.2 外部とのチーム戦:「飛騨市ファンクラブ」と「ヒダスケ!」による関係人口の創出
内部組織を強固に固めた上で、都竹市長は地方創生の戦略を「定住・移住の促進」というハードルの高い目標から、「関係人口(飛騨市に心を寄せ、主体的に関わる市外の人々)の拡大」へと大きく舵を切った。
その中核となるのが、2017年に設立された「飛騨市ファンクラブ」である。
大ヒット映画『君の名は。』の舞台として注目を集めたタイミングを逃さず設立されたこのコミュニティは、現在では実際の飛騨市の人口に迫る約18,000人の会員を擁する巨大なネットワークへと成長している。
さらに2020年からは、ファンクラブ会員の「もっと地域の助けになりたい」という声に応える形で、「ヒダスケ!」という画期的なプロジェクトを発足させた。
これは、通常のボランティアとは異なり、市外の人が飛騨市の農家のミョウガ畑の再生やミニトマトの収穫、文化財(古川町)のペンキ塗り、神岡鉱山のツアーガイドといった「地域住民の困りごと」をお手伝いし、そのお礼として地域通貨「さるぼぼコイン」や地元住民との深い交流を得る仕組みである。
また、文化財の活用においても、江馬氏館跡の石棒を3D化して商用利用を許可したり、人手不足を逆手に取って「年間30日しか開かない博物館」としてPRするなどの発想の転換を行い、過去最高の800名以上の来館者を記録した。
広葉樹のまちづくりにおいても、行政が全てを抱え込むのではなく、NPO的な人材や民間企業が自由に動ける環境を整えることで、プロジェクトを加速させている。
飛騨市の価値創造は、首長個人のスタンドプレーによるものではない。
首長が市役所を改革し、その市役所がハブとなって、外部のステークホルダー(関係人口)という無数のチームを動かした成果である。
第4章:チーム戦による「価値創造」の具現化②——杉並区・岸本聡子区長の事例
もう一つの成功事例として、東京都杉並区の岸本聡子区長のアプローチを検証する。
2022年の区長選挙において、現職をわずか187票差という大接戦の末に破り初当選を果たした岸本区長は、2026年の区長選挙では次点候補に6万票の大差をつけて圧勝し、その実績が区民から高く評価されたことを証明した。
特筆すべきは、「リベラルで対話重視の行政は、財政に対して無責任でありスピード感に欠ける」という旧来の偏見を、圧倒的な「身の丈財政」の実績によって覆したことである。
4.1 徹底した「対話のOS」の構築
岸本区政の最大の特徴は、市民参加と対話を単なるガス抜きではなく、行政の意志決定プロセス(OS)の根幹に据えた点にある。
就任以来、「聴っくオフミーティング(区長と区民の対話)」や「気候区民会議」など、実に44事業で合計438回の会合を実施し、延べ約1万5,000人の区民を巻き込んできた。
特に「気候区民会議」においては、16歳以上の区民5,000名に無作為で案内を送付し、年齢や性別のバランスを考慮して抽選された77名が全6回の熟議を行い、33項目の意見提案をまとめるという、高度な民主的プロセスを実践した。
従来の上意下達の行政から、対話と協力を重ねながら多様性を尊重する行政への転換は、住民運動が盛んな杉並区の地域的特性(地盤)を最大限に活かした価値創造である。
4.2 鉄壁のガバナンスと「身の丈財政」の確立
対話を重視する一方で、岸本区政の「陰(ブレーキ役)」の機能は極めて強力かつ冷徹に機能している。過去4年間で、将来に向けた安定した財政基盤づくりが着実に進行した。
杉並区は、財政調整基金、施設整備基金、減債基金などを含む11の積立基金を戦略的に運用している。
区民の合意が得られていない駅前再開発や大規模道路拡幅計画、あるいは安易な官民パートナーシップ(PFI)の導入に対しては、一度立ち止まって抜本的に見直すという公約を掲げ、不要不急の巨大プロジェクト(ハコモノ)への過剰投資を厳格に抑制した。
この堅実な財政運営こそが、273億円という巨額の貯金増を生み出した源泉である。
弥富市のような過大なハコモノ投資に依存せずとも、健全な財政基盤の構築が可能であることを証明している。
4.3 ハコモノから「人(ソフトウェア)」への徹底投資
厳格な財政規律によって浮いた財源は、コンクリートではなく「人(ケアと教育)」という未来への資本へと投資された。
岸本区政は、地域社会を底辺で支える非正規労働者やケアワーカーの待遇改善に強烈なリーダーシップを発揮している。
具体的には、会計年度任用職員(非正規公務員)の報酬体系を全体的に引き上げ、これまで最大5回とされていた再任用の上限回数を撤廃した。
さらに、生理休暇を有給化した結果、取得率が4倍に増加し、介護や子育ての部分休暇を常勤職員と同様の制度に改めるなど、働きやすさを劇的に改善した。
特筆すべきは、杉並区が発注する業務(清掃や警備など)の契約において、働く人の最低賃金を時給1,500円に引き上げる「公契約条例」の推進である。
また、中学生の修学旅行やスキー教室の無償化、児童館の統廃合見直しと存続、子どもの権利条例の制定など、子育て世代への直接的な支援を拡充している。
岸本区政における価値創造とは、首長が優秀な政策ブレーン(アドバイザー集団)と強固なチームを組み、市民との対話をOSとして機能させることで、従来の業界団体や一部の利害関係者に依存した政治を克服し、真に市民生活を豊かにするソフトウェアへの再投資を実現したことにある。
第5章:弥富市再生への展望——次世代地方自治におけるOSの確立に向けて
令和8年(2026年)11月15日に予定されている弥富市長選挙において、弥富市民が直面する選択は極めて重大である。
それは、「あれもこれもやってくれる明るいスーパーマン」を選ぶことではない。
破綻寸前の財務と崩壊したガバナンスを立て直すために、「誰と組み、どのような副市長を登用し、どのような政策ブレーンを擁して市役所を再生させるか」という、高度なチーム体制(OS)を提示できる真のリーダーを選ぶことである。
本稿で分析した飛騨市および杉並区の成功事例を踏まえると、弥富市が現在の複合的危機を克服し、真の「価値創造」へと向かうためには、杉並区や飛騨市のモデルを応用した「弥富版ミュニシパリズム(地域主権主義)」の確立が不可欠である。
5.1 「ガラス張りの市役所」による自浄作用とガバナンスの回復
過去の不適切経理や官製談合、そして直近の違法な赤字決算補填といった隠蔽体質を根本から払拭するためには、外部の独立した第三者委員会による徹底的な調査と、情報の完全な公開が必要である。
例えば、杉並区が実践したように、首長のスケジュールや面会相手を分刻みで100%ネット公開し、密室での癒着をシステムとして排除する「ガラス張りの市役所」を実現しなければならない。
これには、身内による甘い処分を許容してきた現在の副市長体制を刷新し、コンプライアンスと行政法務に精通した専門家を新たな「陰の要(副市長または特別顧問)」として招聘することが最優先事項となる。
5.2 巨大プロジェクトの凍結と「身の丈財政」への転換
総事業費約55.5億円にのぼる弥富駅橋上化事業については、一度即時に凍結し、サンクコスト(これまでに投下した資金)に縛られない抜本的な見直しを行うべきである。
市民一世帯あたり数万円から数十万円の借金を強いる現在の計画から、バリアフリー化などの真の目的を果たしつつ、コストを数分の一に抑える現実的な代替案(地平駅の整備など)へ向けた鉄道事業者との再交渉が必須である。
飛騨市が証明したように、巨額のインフラ投資がなくとも、知恵と対話によって地域の活力を生み出すことは十分に可能である。
5.3 ゼロメートル地帯における「命を守る」防災設計と人への投資
弥富市の市域の大半は海抜ゼロメートル地帯に位置しており、水害対策は死活問題である。コスト削減や見栄えを優先するのではなく、新たに建設される公共施設(学校など)の1階部分を安全な高さまで底上げするといった、人命を最優先にした厳しい防災基準を徹底する必要がある。
そして、ハコモノ事業の見直しによって生み出された財源は、杉並区の事例に倣い、「人(ケアと教育)」へフル投資されるべきである。
小中学校の給食費完全無償化、不登校児童も通いやすいインクルーシブな学校づくり、慢性的に人手不足な介護・福祉スタッフへの家賃補助など、地域の未来を支えるソフトウェアへの投資こそが、今の弥富市に最も欠けている「価値創造」の姿である。
結論
地方自治体において、ごく普通の市民感覚を持った人物、あるいは外部から来た「落下傘候補」であっても、地域において卓越した価値創造を実現することは十分に可能である。
ただし、それはその人物個人の圧倒的な処理能力に依存するのではなく、「対話力」「組織運営力」、そして「人の力を引き出す力」を持っていることが絶対条件となる。
高度経済成長期型の行政運営が完全に終焉を迎えた現代において、首長が大統領のように一人で全てを見通し、案を作り、決定を下す時代は終わった。
これからの地方行政にとって不可欠なのは、首長自身を補完する強力な「相棒(副市長)」と、専門的な知見をもたらす「政策ブレーン」の存在である。
首長が「陽(太陽)」として市民に希望と活力を与え、対話の先頭に立つ一方で、副市長やブレーンが「陰(月)」として財政の引き締め、コンプライアンスの徹底、そして実行可能なシステム設計を冷徹に担う。この陰と陽のバランス、すなわち強固な「チーム戦」こそが、停滞した行政のオペレーティングシステム(OS)を刷新し、持続可能な未来を創造するための唯一の解である。
弥富市のような危機的状況を脱却するためには、次期市長選挙において有権者が、候補者の華やかなスローガンや耳触りの良い公約に惑わされることなく、その背後にある「チームの構成力」と「財政・ガバナンスへの深い理解度」を厳格に評価することが求められる。
真の価値創造は、優秀なチームによる地道な対話と、妥協なき規律の中からのみ生まれるのである。