【飛騨市のここがスゴイ!】私たちのまちが全国から注目される理由
人口減少というピンチに直面しながらも、飛騨市は現在、全国から「ベンチャー市役所」として熱い視線を集めています。
都竹(つづく)市長のリーダーシップのもと、市役所がどのように進化し、私たちの暮らしを良くしようとしているのか。
そのまちづくりの「ヒミツ」を分かりやすくまとめました!
飛騨市役所の行動指針は、ズバリ「ドS」です。
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ド・スピード感(素早く動く)
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ド・攻めの姿勢(新しいことに挑む)
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ド・誠実(市民に真っ直ぐ向き合う)
この「ドS」な市役所が実践している4つの改革をご紹介します。
1. お役所仕事を打破!「超スピード」の課題解決
これまでの市役所は「計画を作る」ことに時間をかけすぎて、行動が遅れがちでした。
飛騨市はこれをやめ、「まず現場を見て、素早く判断し、すぐ行動する(OODAループ)」というスタイルに切り替えました。
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オープンな議論: 市長、幹部、若手職員が全員参加で徹底的に話し合うため、上司の顔色をうかがって意見が潰されることがありません。
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即断即決: 複数の部署にまたがるような複雑な悩みも、市長がその場で「まずはあなたがやりなさい」と指示を出し、すぐに解決に向けて動き出します。
2. 「予算」は市民へのラブレター
一般的な自治体では「国や県から補助金をもらうこと」が目的になりがちですが、飛騨市は「市民のために何を解決すべきか」を1年かけて徹底的に議論して予算を決めています。
| 比較項目 | 一般的な市町村(従来) | 飛騨市(都竹市政) |
| 予算の目的 | 補助金の獲得と消化 | 市民の真の課題解決 |
| プロセス | 財政部門が予算を「削る」 | 全員で政策を「磨き上げる」 |
| 市民への説明 | 難解な資料を公開するのみ | 市長自らテレビやYouTubeで熱く解説 |
市長が自らケーブルテレビ等に出演し、「思いやり予算」の背景や意図を市民に直接語りかけることで、日本一透明性の高い予算づくりを実現しています。
3. 「使えない職員はいない!」最強のチーム作り
飛騨市の画期的な政策を生み出しているのは、外部のエリートではなく、地道に育ってきた市役所の職員たちです。
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才能を見つける: 「この人はこういうタイプだ」という先入観を捨て、日々の業務の中から職員一人ひとりの「隠れた才能」を見つけ出します。
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適材適所の配置: 若手のうちに様々な部署を経験(3年×3サイクル)させ、適性を見極めた後は、その人の強みが最も活きる部署で長く活躍してもらいます。
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全員がブレーン: 職員一人ひとりに権限を与え、「自ら考えて行動できる」頼もしいリーダーへと育て上げています。
4. 官民タッグの大成功!「空き家対策」
市役所のパワーアップが最も分かりやすい形で現れたのが、長年の悩みの種であった「空き家問題」です。
市役所だけで抱え込まず、地元で熱意を持つ若手不動産業者と強力なタッグを組みました。
飛騨市が実行した「本気の環境づくり」
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家財道具の処分を補助: 買い手がつきやすいよう、家の中を空っぽにする費用を市がサポート。
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手厚い改修補助: 移住者が家を直す費用を最大150万円補助し、移住・定住を強力に後押し。
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公平な輪番制: 民間業者が「儲かる物件」だけを奪い合わないよう、賛同業者間で順番に物件を担当する仕組みを構築。
| 指標 | 実績(2022年3月末時点) | 備考 |
| 累計登録件数 | 236件 | 年平均30〜35件の新規登録 |
| 累計成約件数 | 169件 | 登録物件の約7割が成約(大ヒット!) |
| 対外的な評価 | 国土交通大臣表彰を受賞 | 全国の空き家対策の「モデル」に |
まとめ:前向きな空気で、持続可能な飛騨市へ
「人口減少」という現実は簡単には変えられません。
しかし、飛騨市はそれを悲観するのではなく、「課題に真っ直ぐ立ち向かい、まち全体を前向きな空気で満たす」という道を選びました。
自ら考え行動する市役所職員、熱意ある民間企業、そして市民が一体となることで、規模は小さくても、全国に誇れる「楽しくて持続可能なまち」が、ここ飛騨市で作られています。
間違いだらけの市長選び 〜飛騨市に学ぶ、真のリーダーの条件〜
私たちが市長を選ぶとき、一体何を見ているだろうか。
「国との太いパイプ」「輝かしい公約」「知名度」——もしそんな基準だけでトップを選んでいるとすれば、それは大きな間違いかもしれない。
真に問われるべきは、「硬直化した巨大な歯車(市役所)をいかに動かし、そこで働く人たちをどう育てるか」という、極めて泥臭い経営能力だからだ。
その答えの一端が、人口約2万2千人、広大な面積を抱える合併市町村・岐阜県飛騨市にある。
県庁中枢で知事のブレーンを務めた経歴を持つ都竹淳也市長が実践しているのは、派手な打ち上げ花火ではなく、自治体のOS(基本ソフト)そのもののアップデートである。
「6年の歳月」が意味するもの 〜補助金消化からの脱却〜
全国の多くの中小市町村が抱える最大の弱点、それは「予算編成能力」の欠如である。
国が立派なマスタープランを示しても、現場レベルでは「使える補助金があるか、ないか」で事業が決まる。
補助金という枠の中に事業を当てはめるだけの、いわば“消化試合”に陥っているのが実態だ。
都竹市長がケーブルテレビの番組で語った「予算編成が満足するものになるまで6年かかった」という言葉は、極めて重い。
就任当初、彼は手取り足取り、予算の査定や作り方の根本から指導したに違いない。
「国のお金があるからやる」のではなく、「この町に何が必要で、どう実現するのか」をゼロベースで組み立てる。
職員たちがその思考プロセスを身につけ、自律的に予算を編成できるようになるまで、実に6年の歳月を要したのだ。
これは並の忍耐力ではできない。
「あなたがやってください」〜縦割りを壊す究極のトップダウン〜
現代の行政課題は、福祉、教育、防災といった従来の「課」の枠組みには綺麗に収まらない。
課題は常に、部署と部署の“境目”や、複合的な領域に発生する。
都竹市政の真骨頂は、予算編成の前提となる徹底したヒアリングにある。
課長や係長だけでなく、最前線に立つ担当者まで交え、市長自らが膝を突き合わせて語らう。
もし担当者が「これはうちの課の管轄ではないので、できません」と課題を打ち明けたとしよう。
その時、都竹市長はこう即答するという。
「わかりました。それは重要な課題ですね。では、あなたがやってください」
この瞬間に、行政の縦割りは崩壊する。
既存の枠組みを飛び越え、「課題に気づいた者」に権限と責任を与え、即座に職務命令を下す。
これこそが、首長が持つ最大の強み(トップダウンの正しい使い方)である。
OODAループを回す「人づくり」
もちろん、ただ「やれ」と丸投げするわけではない。
担当者が「この課題を解決するには、こういう体制と予算が必要です」と具申するためには、徹底した現状把握、課題の構造化、そして解決策の比較検討が不可欠になる。
これはいわゆる「OODA(観察・情勢判断・意思決定・行動)」の基本プロセスだ。
市長からの厳しい(しかし愛のある)ヒアリングに耐えうる論理を構築する中で、職員は否応なしに鍛えられる。
飛騨市役所には、外部から招き入れた特別な「懐刀」や「ブレーン」が多数いるわけではない。
今いる職員たちを、現場のサブリーダーとして育て上げているのだ。
官民を繋ぐ熱量 〜空き家対策が示す未来〜
この市役所内部の意識改革は、必然的に市役所の外へと波及していく。
飛騨市の空き家対策が注目を集めているのは、市役所内の横断的な連携にとどまらず、地場の不動産事業者を巻き込んでいる点にある。
「なんとかしなければ」とくすぶっていた地場の若い民間経営者の熱意を、生まれ変わった市役所の担当者がすくい上げ、繋ぎ、環境を整える。
やる気のある民間と、やる気のある行政がタッグを組んだ時、地域は初めて自走を始める。
結びにかえて
私たちは、ともすれば「誰が市長になっても同じだ」と諦めてはいないだろうか。
しかし、飛騨市の事例はそれを明確に否定している。
トップの本気と、それに伴う泥臭い組織改革があれば、役所の人間は育ち、地域を巻き込む原動力となる。
「間違いだらけの市長選び」から抜け出すためのヒントは、公約の華やかさではなく、「この人は、市役所という組織をどう動かし、人をどう育てるつもりなのか」という視点を持つことにある。
飛騨市・都竹市政の軌跡は、全国の自治体にとって希望のベンチマークであり続けている。
飛騨市における都竹淳也市長の行政経営と政策形成プロセスに関する総合研究
1. 序論:人口減少先進地における価値創造の行政モデル
平成の大合併を経て誕生した地方自治体の多くは、広大な市域と分散した集落、そして急激な人口減少という構造的な課題に直面している。
2004年に古川町、神岡町、宮川村、河合村の2町2村が合併して誕生した岐阜県飛騨市もその典型であり、森林率が約93.5%を占める広大な面積を持ちながら、人口は2万人台へと減少を続けている。
このような「人口減少先進地」における中小市町村の行政運営は、国や県が策定するマスタープランや指針に追随し、国庫支出金や県支出金(補助金)を獲得してそれを消化することに終始する「補助金消化型」の運営に陥りやすい。
予算を獲得することが目的化し、住民の真の課題解決が後回しになるという現象は、全国の中小自治体で共通して見られる弱点である。
しかし、飛騨市は現在、「ベンチャー市役所」あるいは「ドSな市役所(ド・スピード感、ド・攻めの姿勢、ド・誠実)」と形容されるほど、全国でも稀有な政策立案能力と実行力を持つ自治体として注目を集めている。
この変革の中心にいるのが、2016年に市長に就任した都竹淳也氏である。
同氏は、行政は「計画ありき」ではなく「実践による出口重視」であるべきだという哲学のもと、硬直化した地方行政のシステムを根本から作り変えた。
本研究は、都竹市長の経歴から培われた政治的・行政的バックボーンを紐解きながら、同市が達成した予算編成プロセスの抜本的改革、独自の組織マネジメント(部下育成)、OODAループを活用した意思決定、そして官民連携による空き家対策などの具体的事例を総合的に分析し、地方行政における真の価値創造モデルを明らかにするものである。
2. 都竹淳也市長の経歴と政策的バックボーン
都竹淳也市長の極めて高度な行政マネジメント能力を理解する上で、岐阜県庁時代における異色の経歴は不可欠な要素である。
1989年に筑波大学社会学類を卒業後、岐阜県庁に入庁した同氏は、一般的な地方公務員のキャリアとは一線を画す特異な業務に従事してきた。
2.1. 知事秘書としての高度な対外折衝と政策立案経験
1994年の自治体国際化協会(CLAIR)シンガポール事務所への派遣を経て、1999年に知事公室秘書課へ異動し、2001年からは梶原拓知事の随行・政策秘書、2005年からは古田肇知事の随行秘書を務めている。
日本の都道府県行政において、知事の「政策秘書」とは単なる日程管理にとどまらず、知事の右腕あるいはブレーンとして県政の重要課題に直接関与し、各部局間の利害調整、県議会や中央省庁との対外折衝、特命事項の処理を担う極めて高度なポストである。
特に、梶原知事と古田知事という、アプローチの異なる二人のトップの側近として機能した経験は計り知れない。
古田知事の就任時には、知事から直接政策担当を命じられ、向こう10年の県政の指針づくりを主導している。
この時代に培われた、複雑な事象を瞬時に構造化し、関係者を巻き込んで合意形成を図るスキル、そして国や他自治体とのタフな対外折衝の経験が、現在の飛騨市における「即断即決の職務命令」や、あらゆるステークホルダーを巻き込む政策推進の基盤となっている。
2.2. 「課題解決」から「前向きな空気感」の醸成への転換
県庁時代、総合政策課や商工政策課の課長補佐、障がい児者医療推進室長を歴任した同氏は、2007年頃から人口減少を前提とした政策推進に携わり、抗えない現実を真正面から受け止めるスタンスを確立した。
行政が「人口減少を食い止める」という実現不可能な幻想を追うのではなく、「人口減少によって生じる課題に徹底的に対応する」という課題解決型の市政を志向している。
同時に、小さな自治体は「前向きな空気感」によって一気に動くという集団心理のメカニズムを熟知している。
課題解決という言葉が持つ後ろ向きな響きを払拭するため、意識的に新しいことにチャレンジし、まち全体を前向きな雰囲気で満たすことを意図して政策を展開している。
あらゆるものを地域資源と捉え、広葉樹の活用や薬草のまちづくり、アニメ映画の舞台となったことによる観光振興などを次々と打ち出す手腕は、この「空気感の醸成」という明確な戦略に基づいている。
3. 予算編成プロセスの改革:脱「補助金消化」と6年間の軌跡
中小市町村の行政運営において最も脆弱な部分が「予算編成」である。旧来の自治体では、国が策定したマスタープランや指針をベースに、各課が使える補助金メニューを探して事業を組み立て、それを財政部門が削り取るというプロセスが一般的であった。
このシステムでは、住民にとって本当に何が必要かという議論が欠落し、手段(補助金獲得と消化)が目的化してしまう。都竹市長はこの根本的な欠陥を是正するため、予算編成の仕組みそのものを「政策協議の場」へと変革した。
3.1. 政策立案型予算編成へのシフトと年間スケジュールの再構築
飛騨市の予算編成は、単なる数字の足し引きではなく、約1年をかけた壮大な「政策立案の鍛錬の場」として機能している。従来の一般的な自治体と飛騨市の予算編成プロセスを比較すると、その構造的違いは明白である。
| 進行時期 | 従来の予算編成(一般的な市町村) | 飛騨市の予算編成プロセス(都竹市政) |
|---|---|---|
| 6〜7月 | 前年度決算の処理と通常業務に終始 |
市長から次年度の予算編成方針(テーマ)を組織全体に発表 |
| 夏期(8月頃) | 特段の次年度向けアクションなし |
職員がテーマに基づき、政策作りのための情報収集・勉強・現場調査に徹する |
| 9月 | 各課で予算要求書(数字ベース)の作成を開始 |
総合政策課と各部門が議論し、上がってきた政策案を徹底的にブラッシュアップ |
| 10月〜秋季 | 財政部門によるヒアリングと予算査定(削減作業) |
市長と全部局による「政策協議」の開始。予算を切る議論ではなく政策の本質を問う(80時間以上を投入) |
| 12月〜1月 | 市長査定(最終的な数字の確認のみ) | 議論を重ねて洗練された政策案に対して予算を紐付け、最終的な意思決定を行う |
このプロセスにより、職員は「いくら必要か(How much)」ではなく、「何を解決すべきか(What)」「そのために市民や関係者の声を聞いたか(How)」という政策の本質に長期間向き合うことを余儀なくされる。
3.2. 「6年」という歳月が意味する組織の自律稼働
都竹市長がメディア等の発信で「予算編成が満足するものになるまで6年かかった」と言及した背景には、行政組織のDNAを変革することの途方もない困難さがある。
市長就任当初は、手取り足取り予算(政策)の編成方法や論理構築の仕方を指導し、時には突き返して再考させるという、実質的な「政策作成の個別指導」を行っていたと推測される。
しかし、このプロセスを毎年繰り返すことで、組織の文化は確実に変容した。現在では、職員自らが課題の現状を分析し、複数の解決策を比較検討した上で、「この課題を解決するためには、このような体制と予算が必要である」と自律的に論理構築できるレベルに到達している。
6年という歳月は、市長がトップダウンで無理やり引っ張る段階から、職員が自律稼働し、自ら価値創造の方策をボトムアップで提案できる組織へとフェーズが移行するために不可欠な「教育投資の期間」であったと評価できる。
3.3. メディアを通じた予算の透明化と市民への直接対話
飛騨市の予算編成改革のもう一つの特徴は、編成された予算の市民に対する卓越した説明手法である。
都竹市長は、飛騨市ケーブルテレビやYouTubeを通じたトーク番組「ほっとライブひだ」において、市長自らがナビゲーターと共に当初予算の概要を直接解説している。
この番組では、単なる数字の羅列ではなく、「元気(地域外から所得を稼ぐ)」「あんき(市民の安全・安心を守る)」「誇り(風土・人を伸ばす)」という明確な政策テーマに沿って、予算規模、市の借金、ふるさと納税の状況から、薬草を活用した拠点づくり、スマート農業の推進、空き家対策に至るまでを詳細に語っている。
行政のトップが自ら、テレビ番組というマスメディアを通じて予算の背景にある意図や「思いやり予算」の特色を語る姿勢は、行政の透明性を極限まで高めると同時に、市民に対する最大の説明責任(アカウンタビリティ)を果たしていると言える。
4. 境界領域の課題解決と意思決定プロセス:OODAループの実践
自治体の行政課題は複雑化しており、真に解決すべき住民の悩みは、単一の課の所掌事務に綺麗に収まることはない。
福祉、防災、教育、都市計画といった領域の「境目」や「複合領域」に発生する課題に対し、旧来の行政組織は「縦割りの壁」に阻まれて機能不全に陥りがちである。
飛騨市はこの構造的欠陥を、徹底した公開ヒアリングとOODA的思考によって打破している。
4.1. 階層を飛び越える公開ヒアリング(語らい)によるボトルネックの排除
10月から始まる市長との政策協議は、行政特有の密室での幹部会議ではない。
副市長、部長、課長のみならず、担当の係長や一般職員、さらに総合政策課や財政課、新規採用の若手職員までもが同席する大掛かりな公開議論の場である。
市長自らが担当職員に対して徹底的なヒアリングを行い、「なぜその政策が必要なのか」「行政として住民に論理的に説明できるか」を厳しく問う。
この手法の最大の利点は、「中間管理職による情報の目詰まり(ボトルネック)」を完全に排除できる点にある。
通常の自治体では、幹部層の保守的な意識が壁となり、若手の新しい挑戦が潰されることが多い。
しかし、関係者全員が同席する飛騨市の政策協議では、市長の意図や議論の力点が組織の末端にまでダイレクトに共有される。
これにより、組織全体が同じ方向を向いて即座に動き出すことが可能となり、後からのちゃぶ台返しや部門間の責任の押し付け合いを防ぐことができる。
4.2. 即断即決の職務命令とOODAループの高速回転
縦割りの隙間に落ちるような複合的な課題が担当者から報告された際、都竹市長は「それは重要な課題だ。あなたの課だけではできないかもしれないが、まずはあなたがやりなさい」と、その場で直接的な職務命令を下す。
この即断即決ができるのは、市長自身が県庁の政策中枢で培った全体俯瞰の能力と、組織を動かすノウハウを持っているためである。
しかし、市長が単に「やれ」と指示するだけでは実効性のある政策は生まれない。
ここで飛騨市の職員に求められているのが、軍事戦略から派生した意思決定手法である「OODA(Observe:観察、Orient:情勢判断、Decide:意思決定、Act:行動)ループ」の高速回転である。
部下は、新しい課題に取り組む際、まず現場に足を運んで現状を観察し(Observe)、EBPM(証拠に基づく政策立案)的視点やデータを駆使して何が問題の根本であるかを判断し(Orient)、取り得る方策を比較検討して方針を定め(Decide)、市長の承認を得て即座に実行に移す(Act)。
飛騨市が「計画ありき(計画なくして事業なし)」のPDCA至上主義を明確に否定し、分厚い総合計画を作らずに「実践による出口重視」を採用しているのは、このOODAループによる機動的かつ柔軟な課題解決を最優先しているためである。
職員がこの比較検討のプロセス(OODA)を経ていなければ、市長に対して体制構築や予算の要求を上げることはできない。
日々の業務におけるこの厳しい訓練の積み重ねが、市役所全体の政策処理能力を飛躍的に向上させている。
5. 組織マネジメントと人材育成:「使えない職員はいない」
飛騨市が次々と革新的な政策を打ち出せる背景には、「ブレーン」と呼ばれるような特定の優秀な外部人材に依存しているからではないかという推測が生じるかもしれない。
しかし実際のところ、高度な専門性が要求される一部の分野(危機管理における自衛隊出身者の登用や、児童相談所元所長による福祉部門の統括など)を除けば、政策立案の主軸を担っているのはプロパーの市職員たちである。都竹市長の組織マネジメントの根幹には、「すべての職員に独自の強みがあり、使えない職員は一人もいない」という強烈な信念が存在する。
この信念と実践的なマネジメント手法は、同氏がウェブ上のノート(note)等で公開している「部下の育て方」に関する発信に詳細に記述されている。
5.1. 原体験と先入観の排除
市長のこの哲学は、重度の知的障害と自閉症を持つ次男を育てた原体験に深く根ざしている。
「努力すれば誰でも同じようにできる」という若き日の考えは打ち砕かれ、人は生まれながらにして個別の強みと弱みを持っていること、そして周囲の環境がその個人のポジティブな特性を見出し、活用しなければならないことを学んだという。
この経験から、市長は職員に対する先入観(偏見)を徹底的に排除している。
管理職は往々にして、部下の外見や話し方、過去の評価から「この人間はこういうタイプだ」と決めつけがちである。
しかし市長は、これを単なる「仮説」として扱い、日々の業務の中で仮説が覆る瞬間を待ち構えている。
口下手で事務作業しかできないと見られていた職員が、実は外部との対外折衝において持ち前の誠実さで圧倒的な信頼を勝ち取るといった事例を通じ、強みは「毎日見ようと努力しなければ見えない」と断言している。
5.2. 「事もなげにやってのける」才能の発見と自己のベンチマーク化
職員の強みを発見するための実践的な手法として、市長は「自分自身の能力をベンチマーク(基準)とする」アプローチを採用している。
自分が苦労するような複雑な調整業務や、緻密な計画書の作成を、部下が「事もなげに(平然と)」やってのけた瞬間を見逃さない。
口頭での複雑な指示を一度聞いただけで、瞬時に論理的な文書に再構築してしまう才能などを高く評価し、その強みを最大限に活かす業務を割り当てている。
5.3. 3年×3サイクルのローテーションと「全員ブレーン化」
飛騨市の人事戦略において特徴的なのが、新規採用職員に対する「3年×3サイクル(約9年間)」のジョブローテーションである。
最初はこれまでの経験が活かせる窓口業務等から始め、次は農業系、その次は全く毛色の異なる観光系といった具合に、意図的に多様な部署を経験させる。
この過程で、自ら新しいことを企画するのが得意な人間、緻密な制度設計が得意な人間、対外調整が得意な人間といった適性を完全に可視化する。
そして、適性が見いだされた後は、その強みが最も活きる部署に長期間(7〜8年)配置し、組織全体のパフォーマンスを最大化している。
嫌な仕事や困難な業務であっても、組織の誰かに押し付けるのではなく、「相対的比較」によってその業務に対する心理的・物理的苦痛が最も少ない(あるいはその業務を強みでカバーできる)職員を見つけ出して配置する。
つまり、都竹市長の周囲に特定の「懐刀」が存在するかどうかという問いに対する答えは、「市役所内に存在するすべての職員を、適材適所の配置と権限委譲によって、自律的に価値創造ができるサブリーダー(現場のブレーン)として育て上げている」ということになる。
市長がすべてを事細かに指示するのではなく、自発的に考えられる職員にはアウトラインだけを与えて任せ、彼らが上げた案には基本的に「すべてOK」を出す。
この徹底した自己効力感の付与が、役所全体の圧倒的なモチベーションと行動力を生み出しているのである。
6. 官民連携の結実:空き家対策にみる環境構築とバリューチェーン
都竹市政が長年かけて職員を育成し、OODA的思考で課題にアプローチした成果が最も顕著に表れているのが、飛騨市の「空き家対策」である。
人口減少社会における空き家問題は、権利関係の複雑さ、所有者の遠方居住、そして不動産市場における「市場の失敗」によって泥沼化しやすい。
飛騨市はこの課題に対し、市役所内の部署横断的な連携にとどまらず、民間の地場の不動産業者の「やる気」を巧みに引き出し、持続可能な官民連携のエコシステムを構築した。
6.1. 民間不動産市場の構造的課題(市場の失敗)と過去の挫折
地方の空き家流通が滞る最大の理由は、宅建業者の採算が全く合わないことである。
5,000万円の優良物件でも50万円の朽ち果てた空き家でも、権利関係の調査、境界確認、相続関係の整理、重要事項説明書の作成にかかる労力は同じである。
バブル期を経験した高齢の不動産業者は、報酬(仲介手数料)が数万円にしかならない空き家ビジネスを敬遠しがちであった。
事実、飛騨市が2008年に立ち上げた初期の空き家バンクは、業者の足並みが揃わず、一部の高齢業者の腰の重さもあって完全に機能不全に陥っていた。
6.2. 熱意ある若手民間経営者との共創と「輪番制」の導入
この八方塞がりの状況を打破するため、飛騨市役所の担当職員(総合政策課の橋本氏など)は、地場の不動産業「有限会社シンエイ地所」の若手経営者である谷邉浩也氏と強固なタッグを組んだ。
谷邉氏は、故郷の空き家問題に強い危機感を抱き、採算度外視でもこの課題に取り組む覚悟を持っていた。
飛騨市は、こうした「やる気のある民間の人間」を見出し、彼らが動きやすい環境を徹底的に整備したのである。
具体的には、市内7社の宅建業者のうち、空き家対策に賛同した4社だけで独自の「輪番制」を構築した。
これにより、業者が特定の儲かる物件だけをつまみ食いし、困難な物件を放置する事態を防ぎ、システム全体の持続可能性と公平性を担保した。
6.3. 行政による強力な後押し(予算と制度の集中投下)
やる気のある民間業者の努力を水泡に帰さないよう、都竹市政は圧倒的な予算措置と制度設計(環境作り)を行った。
2015年に官民連携の空き家情報サイト「飛騨市住むとこネット」を開設したことに加え、移住定住施策と連動した以下のような重層的な支援策を展開した。
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家財道具処分費等補助金:空き家流通の最大の障壁は、内部に残された大量の家財道具である。市はこれらの処分費用(上限10万円等)を補助し、業者(シンエイ地所等)が「家財を完全に撤去し、内装が綺麗になった状態」で物件をウェブサイトに掲載できる環境を整えた。これにより、見学に訪れた移住希望者は、改修後の生活や家具の配置を容易にイメージできるようになった。
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空家等賃貸住宅改修事業補助金:移住者が空き家を購入して改修する場合、上限150万円(補助率1/2等)という極めて手厚い改修補助を用意した。これは「住むとこネット」登録物件に限定することで、サイトへの登録動機を高めている。
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移住定住施策との完全パッケージ化:住宅取得支援(最大100万円)、単身者への移住奨励金(10万円)、就職奨励金(5万円)、物件見学のための交通費補助等を組み合わせ、最大で230万円規模の支援が受けられるバリューチェーンを構築した。
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解体補助金の活用:5年間サイトに掲載しても売れない物件については、最大100万円の解体補助金を活用して更地化を促し、危険家屋の放置を防ぐスキームを確立した。
さらに、固定資産税の納税通知書に「大切な家だからこそ有効活用しませんか」という案内を同封するダイレクトマーケティングを実施し、潜在的な空き家の掘り起こしを行った。
6.4. 驚異的な成果と対外的な評価
この官民一体となったOODAループの高速回転と環境整備により、「住むとこネット」は目覚ましい成果を上げている。以下の表は、その実績の一部を示している。
| 指標 | 実績・数値 | 備考 |
|---|---|---|
| 累計登録件数 | 236件(2022年3月末時点) |
年平均30〜35件、多い年で50件の新規登録 |
| 累計成約件数 | 169件(売買118件、賃貸51件) |
登録物件の約7割が成約に至る極めて高い流動性 |
| 対外的評価 | 国土交通大臣表彰を受賞 |
2021年「住生活月間功労者表彰」を受賞し全国的なモデルに |
人口2万人台の自治体において、これほどの空き家流通を実現した事例は極めて稀である。
これはまさに、市長が行政内部の縦割りを排し、担当職員の熱意と予算形成を後押しし、さらに地域経済のステークホルダー(地場産業の若手経営者)のやる気を引き出してつなぎ合わせた、都竹市政の「環境作りの妙」の賜物である。
7. 結論:持続可能な地域経営に向けた飛騨市モデルの普遍性
飛騨市における都竹淳也市長の改革は、単なる「優れた首長の属人的な成功事例」にとどまらない。その本質は、地方自治体が陥りがちな構造的欠陥(補助金依存、PDCA至上主義による行動の遅滞、縦割り行政、減点主義による人材の硬直化)を、論理的かつ継続的なアプローチによって解体し、再構築した点にある。本研究による総合的な分析の結果、以下の3点が飛騨市モデルの普遍的価値として抽出される。
第一に、予算編成プロセスを「数字の査定」から「政策的価値の徹底議論」へと転換したことである。6年という膨大な時間をかけて職員と対話し、公開ヒアリングを通じて組織全体の政策立案能力を鍛え上げた。これにより、国や県のマスタープランに依存せずとも、自前で地域の課題を発見し、解決策をデザインできる自律的な行政組織が完成した。さらに、それをケーブルテレビ等を通じて直接市民に語り掛けることで、圧倒的な透明性を確保している。
第二に、OODAループの実践と権限委譲によるアジャイル(機動的)な行政運営である。緻密な計画づくりに時間を浪費するのではなく、現場の複合的な課題に対して市長が即座に職務命令を下し、職員に現状分析と方策の比較検討(OODA)を行わせ、素早く実行に移す。このスピード感と実践主義が、市全体に「前向きな空気感」をもたらし、次々と新しい価値を生み出す原動力となっている。
第三に、「人の強みを最大化する」マネジメント哲学と、職員の全員ブレーン化である。外部から少数のエリートを連れてきて依存するのではなく、今いる職員一人ひとりの才能を日々の観察から見出し、適切なローテーションと権限委譲を行うことで、無数の「ローカルなサブリーダー」を組織内に生み出した。これが、空き家対策における若手不動産業者との協働など、民間活力を巻き込むダイナミズムの源泉となっている。
中小市町村が生き残るためには、限られた財源と人員の中で「いかに価値を創造するか」が問われる。
飛騨市の事例は、首長の本気度と、職員への徹底した教育投資、そして民間との対等な共創関係を構築する環境整備があれば、どのような規模の自治体であっても「ベンチャー市役所」へと生まれ変わり、持続可能な地域社会を構築できるという強烈な希望を示唆している。