【サマリー】弥富市役所が生まれ変わる!「次世代リーダー(係長)試験制度」
人口減少や高齢化など、私たちのまちが抱える課題は日々複雑になっています。これらの課題にスピーディーかつ柔軟に対応するため、弥富市役所は「年功序列」の古い体制から脱却し、大規模な組織改革(職員改造計画)。
その第一弾となるのが、市役所の最前線で実務を引っ張る「係長(グループリーダー)」に、意欲ある若手・中堅職員を抜擢する新しい試験制度の導入です。
1. なぜ今、人事制度を変えるのか?
これまでの「長く勤めれば自動的に昇進する」仕組みでは、組織が硬直化し、市民の皆様への行政サービスの低下を招く恐れがありました。
そこで、「年齢」ではなく「やる気」と「実力」を持つ上位20%の優秀な人材を早期に見つけ出し、責任あるポジションを任せることで、市役所全体の活力を劇的に引き上げることを目指します。
2. 新制度の3つの大きな特徴
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「やる気」を最重視する飛び級の実現
年齢や経験年数にとらわれず、20代後半〜30代の若手でも、自ら手を挙げて過酷な試験に挑む「意欲」を高く評価し、早期登用を行います。
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幹部との直接対話(スキップレベル・面談)
直属の上司だけでなく、市長や副市長などの経営幹部が直接面談を行います。若手が市の未来や政策について堂々と意見をぶつける機会を作り、真のポテンシャルを見極めます。
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第三者機関の活用による「公平性」の担保
将来的に、愛知県や名古屋市などの専門機関へ試験業務を委託することで、身内贔屓のない客観的で透明性の高い評価システムを構築します。
3. どのような基準で評価されるのか?
ペーパーテストの一発勝負ではありません。先進自治体の成功事例を取り入れ、「日々の地道な頑張り」を最も高く評価する仕組みを採用します。
| 評価項目 | 配点 | 評価の狙い |
| 日常の勤務評定(過去4年分) | 40点 | 日々の業務成果や、目標に向けた継続的な貢献度を最重視します。 |
| 幹部による直接ヒアリング | 30点 | 知識量ではなく、まちづくりへの「熱量(モチベーション)」を評価します。 |
| 企画書・小論文作成 | 30点 | 弥富市の課題をどう解決するか、論理的な思考力やアイデアを評価します。 |
4. 中堅・ベテラン職員も強力にアップデート
若手の登用だけでなく、これまで試験制度がなかった時代に入庁した30代〜50代の既存職員に対するフォローも万全に行います。
より高度な行政サービスを提供するため、法律や市の財政に関する「4年間集中研修」を義務付け、市役所全体の基礎能力を力強く底上げします。
5. 弥富市の未来に向けて
この改革は、単なる市役所内部のルール変更ではありません。意欲と能力にあふれる職員が、市民の皆様のために最前線で存分に力を発揮できる「新しく、活力ある弥富市役所」へと生まれ変わるための第一歩です。これからの行政サービスの向上に、ぜひご期待ください。
弥富市職員改造計画:次世代型係長(グループリーダー)試験制度の即時導入に関する総合的調査及び要綱案の構築
1. 序論:地方自治体における人事評価の転換と本稿の射程
現代の地方公共団体は、人口減少、少子高齢化、そして住民ニーズの高度化・複雑化という極めて難解な行政課題に直面している。
こうした環境下において、年功序列を前提とした旧態依然たる人事制度や、横並びの昇進構造は、組織の硬直化を招き、行政サービスの質的低下に直結する。
本稿では、弥富市における抜本的な「職員改造計画」の第一弾として、組織の中核を担う初級管理職(弥富市におけるグループリーダー、すなわち係長級)の選抜機構である「係長試験制度」の早急な導入に焦点を当てる。
職員の採用から退職に至るまでの包括的な処遇や、真の活性化をもたらす育成計画の策定には、中長期的な視座に基づく4年程度の周到な準備期間を要する。
しかしながら、組織の推進力たる係長級の選考に関しては、現状の課題を打破し、職員の主体性を引き出すための「起爆剤」として最優先で導入すべきである。
本稿では、指定されたベンチマーク自治体(岐阜県多治見市、愛知県名古屋市)の先進事例や統計データ、並びに地方自治法・地方公務員法等の法的枠組みを多角的に分析し、弥富市の規模と実情に即した「係長昇任試験実施要綱案」を提示する。
2. 係長試験導入の組織論的意義と基本理念
係長(グループリーダー)は、実務の最前線において部下を統率し、組織の目標を達成するための「管理職への登竜門」である。
この職位に誰を登用するかは、組織全体の士気と業務遂行能力を根本から左右する。
係長試験の導入には、単なる選抜手続きにとどまらない、深い組織論的・人材育成的な意義が内包されている。
2.1. 「262の法則」に基づく人材の最適配置と「やる気」の抽出
組織論や集団心理学において広く知られる「262の法則(パレートの法則の派生概念)」によれば、いかなる組織においても、構成員は自然に「上位20%の極めて優秀で意欲的な層」「中位60%の平均的な層」「下位20%の意欲や能力に課題を抱える層」に分化するとされる。
地方公務員組織においてもこの法則は例外ではない。重要なインサイトは、全ての職員が管理職に向いているわけではなく、また全員が管理職になる必要もないという冷徹な現実である。
係長試験を導入する最大の裏テーマは、この「上位20%」たる意欲と能力を持った人材を早期に発掘し、適切な権限と責任を付与することにある。
試験制度は、筆記試験や面接試験を通じて受験者の能力を「一定程度客観的に認める」機能を持つが、試験結果が絶対的な指標となるわけではない。
能力評価において最も絶対的な基準となるのは、自ら手を挙げて過酷な試験に挑むという本人の主体的な「やる気(モチベーション)」の可視化である。
管理職への意欲を持たない者に年次進行で無理に管理職を押し付けるのではなく、意欲ある人間を20代後半から30代前半という早期の段階で引き上げることこそが、組織全体の活性化の源泉となる。
2.2. 追い抜き人事(抜擢人事)の正当化と実力主義の浸透
従来の弥富市の人事慣行において、30代での課長登用や、年次を大きく飛び越えた若手の係長登用は、いわゆる「追い抜き人事」として組織内にハレーションを生むリスクを孕んでいた。
しかし、客観的かつ公平・公正・透明な係長試験というプロセスを経ることで、この追い抜き人事に強力な正当性と組織的合意が付与される。
実務経験の長さや年齢といった属人的な要素(年功)ではなく、行政実務に不可欠な法務知識や、組織論・マネジメント能力を習得しているかが厳格に問われるため、若手であっても実力次第で早期登用が可能となる。
このシステムは、若手職員に対して「努力次第で早期に裁量権を獲得できる」という強力なメッセージを発信し、優秀な人材の市役所への定着を促す効果をもたらす。
2.3. 入庁10年以内における基礎能力の定着と組織論の醸成
係長試験に向けての学習プロセス自体が、組織全体に対する強力な人材育成機能を持つ。入庁後数年から遅くとも10年以内の職員に対し、以下の知識を体系的に習得させる絶対的なマイルストーンとして機能するためである。
行政運営の根幹をなす地方自治法および地方公務員法は、地方公共団体の基本構造、財務の仕組み、公務員としての権利義務、服務規律等を規定する絶対的基礎である。
これに加え、市民生活の基盤となる民法(特に契約法理や不法行為責任)および行政法(行政手続法や行政不服審査法等)の知識は、多様化する住民トラブルや複雑な行政権限の行使において不可欠な「リーガルマインド(法的思考力)」を形成する。
さらに、各種財政指標の理解に基づくコスト意識や、組織内における自己の役割認識、部下育成(OJT)の手法を含む組織論・マネジメント能力が求められる。
試験という明確な目標が存在することで、若手職員は日常業務の傍らでこれらを自律的に学習し、結果として組織全体の業務処理能力が底上げされる。
2.4. スキップレベル・ヒアリング(1階層飛ばしの面談)の制度化
新たな人事体制の確立において、単なるペーパーテストと同等に重要なのが、昇進を伴う人事異動のプロセスにおける「ヒアリング機能」の抜本的強化である。
具体的には、直属の上司による主観的評価の偏りを排除し、職員に自らの意見を論理的に表明する習慣を根付かせるため、1階層上の幹部が直接面談を行う「スキップレベル・ヒアリング」を制度化する。
このアプローチでは、一般担当職員(係員)の係長級への昇任適性については所属する「課長」が、係長級から課長級への昇任適性については「部長」が、そして課長級以上の幹部登用については「副市長」が、それぞれ直接ヒアリングを実施する。
直属のライン(例えば、担当職員を係長が評価する構造)をあえて1つ飛ばすことで、より大局的な視座からの適性評価が可能となる。
幹部は次世代のポテンシャルを直接肌で感じることができ、受験者は経営層に近い幹部に対して自己の政策意図や組織論を堂々と主張する訓練を積むことができる。
これは、次項で述べる「試験の限界」を補完し、「本人のやる気」を見極めるための最重要プロセスとして位置づけられる。
3. 先進自治体(ベンチマーク)の分析とインサイトの抽出
弥富市における係長試験制度の構築にあたり、組織規模や体質において弥富市のベンチマークとして極めて親和性の高い岐阜県多治見市の人事計画と、長年係長試験を実施し豊富なデータを有する愛知県名古屋市の事例を比較分析する。
これにより、制度設計における成功要因と陥りやすい罠を明確にする。
3.1. 制度比較と定量データの分析
| 比較項目 | 愛知県名古屋市(大規模指定都市) | 岐阜県多治見市(弥富市の規模的ベンチマーク) |
|---|---|---|
| 導入経緯と目的 | 独立した人事委員会の下、厳格な競争試験として長年実施。 |
平成11年度に管理職試験、平成13年度に総括主査級(係長級)試験を導入。「やる気」ある若手の政策形成参画が目的。 |
| 受験資格(到達年数) |
大卒で採用後5~6年目、短大卒7年目、高卒9~10年目で受験可能。 |
一般職3級在職3年以上、または経験年数(大卒等)10年以上。 |
| 評価手法の構造 |
筆記試験、面接、経歴・人事評価等の書面審査の組み合わせ。 |
①小論文(30点)、②過去4年間の勤務評定・目標管理(40点)、③特別職による総合評価(30点)。 |
| 外部視点の導入 | 人事委員会という独立機関が担う。 |
新規採用や昇任試験の面接に外部面接官を導入し客観性を担保。 |
| 直近の課題と傾向 |
受験者数の激減。H17年度(12.6倍)からR4年度(3.9倍)へと倍率が低下。 |
ペーパーテスト一発勝負を避け、日常の業務成果(勤務評定)を最も重視する配点構造を維持。 |
3.2. 愛知県名古屋市の事例から得られる教訓(反面教師としての側面)
名古屋市では、係長昇任選考に関して、行政職事務などを対象に筆記試験と面接を長年実施してきた。
受験資格は大学卒業程度で採用後5年から6年目、高校卒業程度で9年から10年目とされており、20代後半から30代前半での早期挑戦を可能にする優れた設計である。
しかし、過去のデータ推移を分析すると重大な警鐘が鳴らされている。平成17年度には受験者2,111人(倍率12.6倍)を誇っていた係長試験は、平成21年度には受験者1,355人(倍率5.94倍)へと激減した。
さらに直近の令和4年度のデータでは、係長昇任選考と転任試験を合わせて受験者857人に対し合格者220人となり、倍率は3.9倍にまで落ち込んでいる。
この受験者数と倍率の構造的な低下は、有能な人材の「名古屋離れ」や、現代の若手職員が抱く管理職への忌避感、あるいはワークライフバランスの過度な偏重といった複合的な要因に起因すると推察される。
ここから得られるインサイトは、係長試験を単に「難易度の高い選抜の関門」として設定するだけでは、職員のモチベーションを引き出すどころか、逆に受験控えを助長するリスクがあるということである。
試験合格後のインセンティブ(職務裁量の拡大、政策形成への直接的な関与等)を明確に示し、「自発的に挑戦したくなる試験」としてデザインすることが不可欠である。
3.3. 岐阜県多治見市の事例から得られる最適解
多治見市は、早くから能力主義・成績主義へのシフトを明確化し、平成11年度(1999年)から管理職(課長級)昇任試験を、平成13年度(2001年)からは総括主査級(係長級相当)昇任試験を導入している。
この制度の目的は、年齢にとらわれず「やる気」のある30代若手中堅職員に対し、政策形成への参画と責任を付与することにあると明記されている。
多治見市の評価システムにおける最大の特筆すべき点は、100点満点の配点バランスである。
企画書・小論文作成試験が30点、特別職(市長や副市長等)による日常勤務状況を踏まえた総合評価が30点であるのに対し、最大の40点を「過去4年間の勤務評定及び目標管理制度の取組状況」に割り当てている。
これは、一発勝負のペーパーテストによる評価の偏りを排除し、日々の地道な業務成果や継続的な貢献度を最も高く評価するという極めて合理的なメッセージである。
また、特別職による評価枠が30点設けられている点は、首長や経営層の組織マネジメント方針を昇任人事に直接反映させる有効な機能となっている。
弥富市における制度設計においては、この多治見市の配点モデルをそのままベンチマークとして取り入れることが最適解となる。
4. 人事評価機関の独立性と事務委託の戦略的活用
係長試験をはじめとする客観的な人事評価制度を適正かつ厳格に運用するためには、作問、採点、面接等の実務を担う評価機関の独立性と専門性が不可欠である。
現在、弥富市は人事委員会を設けておらず、公平委員会のみを設置し、その事務局を監査委員事務局が兼務している状態である。
4.1. 公平委員会と人事委員会の構造的差異
地方公務員法において、都道府県および人口15万人以上の指定都市等には人事委員会の設置が義務付けられているが、弥富市のような規模の自治体においては公平委員会を置くことが基本とされている(同法第7条第3項)。
両者の機能には決定的な違いが存在する。公平委員会は、主に職員の勤務条件に関する措置の要求の審査や、懲戒処分等の不利益処分に対する不服申立ての裁決を行う、事後的な「権利救済機関」としての色彩が強い。
対して人事委員会は、採用試験や昇任試験の実施、給与勧告、人事行政に関する高度な調査・研究など、より広範かつプロアクティブな「人事行政の専門機関」である。
監査委員事務局が公平委員会の事務を兼務する現在の弥富市の体制では、試験問題の法的妥当性の担保や、厳密な採点基準の策定といった、昇任試験に伴う膨大かつ専門的な実務を単独で担うことはリソース的に極めて困難である。
4.2. 地方公務員法に基づく事務委託の推進(4年計画)
この構造的課題を解決するための長期的かつ現実的なアプローチが、愛知県または名古屋市の人事委員会への「事務の委託」である。
地方公務員法第7条第4項は、「公平委員会を置く地方公共団体は、議会の議決を経て定める規約により、公平委員会を置く他の地方公共団体と共同して公平委員会を置き、又は他の地方公共団体の人事委員会に委託して次条第2項に規定する公平委員会の事務を処理させることができる」と明確に規定している。
この法的枠組みを活用した事務委託は、全国の自治体で広く実践されている。
例えば、岩手県北上市は岩手県人事委員会へ、栃木県内の市町は栃木県人事委員会へ、沖縄市は沖縄県人事委員会へ、島根県飯南町は島根県へ、それぞれ事務委託を行う規約を締結している。
関西広域連合においても、公平委員会の事務を構成府県市(兵庫県や京都市等)に2年間ずつ輪番で委託し、簡素で効率的な執行体制を維持している。
愛知県内においても、過去に愛西市などの合併に伴う調整方針で愛知県に対する事務委託が議論された経緯があり、また委託団体向けの規則(愛知県人事委員会規則一〇―三)が整備されていることから、県への事務委託を受け入れる土壌は既に存在している。
弥富市においては、向こう4年間を目標に、自前の専門的な人事体制を構築するまでの過渡的な措置、あるいは恒久的な行財政効率化策として、愛知県または名古屋市に対する人事・公平事務の委託協議を本格化させるべきである。
これにより、小規模自治体単独では困難な、客観的で高度な昇任試験の作問ノウハウや採点基準を安定的かつ低コストで活用することが可能となる。
5. 過渡期における既存職員(30代・40代・50代)への暫定措置と再教育
新たな係長試験制度を導入する際、最も慎重な制度設計が求められるのが、長年の年功序列システムの中で「試験を受けずに」年齢を重ねてしまった30代後半から50代の既存職員(とりわけ非管理職、あるいは既に管理職に就いている者)の処遇である。
5.1. 試験システム空白世代へのアプローチ
これらの世代に対して、今から20代の若手と同様のペーパーテストを一律に課すことは、現実の業務負担や組織のハレーションを考慮すると必ずしも得策ではない。
しかしながら、試験制度が存在しなかった結果として、自治体運営に必要な法的・財政的知識の体系的なインプットがなされていない現状を放置することは、重大な行政リスクである。
したがって、係長試験のエッセンス(中核要素)を注入するための暫定措置として、30代から50代の職員を対象とした「4年間集中研修プログラム」を早急に立ち上げるべきである。
本研修は、単なる座学の聴講で終わらせるのではなく、実践的な課題解決能力と法的思考の習得を厳密に求めるものとする。
具体的には、地方公務員法による服務規律の徹底、民法に基づく行政契約上のトラブルシューティング、行政法に則った不服審査への論理的対応、そして弥富市の財政指標を用いた予算編成シミュレーションなど、実務に直結する高度なカリキュラムを4年間で体系的に履修させる。
5.2. 課長級試験の否定と管理職登用の在り方
なお、一部の先進自治体(東京都など)では、係長級のみならず管理職(課長級)昇任試験を実施している事例が存在するが、弥富市における本計画においては、課長級に対するペーパーテスト主体の昇任試験の導入は「否定的」な立場をとるべきである。
その理由は極めて明確である。
係長(グループリーダー)級までは、実務を正確かつ適法に遂行するための法的知識や基礎的な事務処理能力が不可欠であり、これを試験で測定することには合理性がある。
しかし、課長級以上の幹部に求められる本質的な能力は、記憶力や知識の多寡ではなく、予期せぬ行政課題に対する局地的な危機管理能力、議会や地域住民との高度な対人折衝力、そして政治的調整力である。
これらはペーパーテストでは到底測定し得ない。
したがって、係長級までは試験による明確なスクリーニング(262の法則に基づく上位層の抽出)を行い、課長級以上の登用にあたっては、前述した「副市長等によるスキップレベル・ヒアリング」と、係長としての過去のマネジメント実績の蓄積に基づく「厳格な選考」を重視することが、組織論としての最適解である。
6. 弥富市係長級(グループリーダー)昇任試験実施要綱(案)の構築
以上の理論的背景、先進自治体のデータ分析、および弥富市の組織風土を踏まえ、即座に導入すべき「係長昇任試験実施要綱」の原案を以下に提示する。
この要綱案は、多治見市の評価システム(過去の勤務評定の重視)と、早期登用(抜擢人事)を可能にする受験資格の柔軟性を融合させた、弥富市特化型のハイブリッドモデルである。
【弥富市係長級(グループリーダー)昇任試験実施要綱(案)】
第1章 総則
(目的)
第1条 この要綱は、弥富市における行政運営の高度化及び組織の抜本的活性化を図るため、管理職への入口である係長級(グループリーダー職を含む。以下同じ。)の職への昇任に関し、職員の能力、意欲、及び勤務成績を客観的かつ厳正に評価するための昇任試験(以下「試験」という。)の実施について、必要な事項を定めるものとする。
2 試験の実施に当たっては、従来の年功や経験年数に過度に捉われることなく、「262の法則」に基づく真に意欲と能力を有する若手・中堅職員の早期登用(抜擢人事)を積極的に促進し、当事者が主体的に政策形成に参画する風土を醸成することを基本理念とする。
第2章 試験の対象及び受験資格
(受験資格)
第2条 試験を受験することができる者は、行政事務に従事する一般職の職員(技術職等を含む)のうち、試験実施年度の4月1日において、次の各号のいずれかに該当し、かつ、係長級の職務を遂行する強い意欲を有する者とする。
(1) 大学を卒業した者にあっては、本市における在職期間が満5年以上の者。
(2) 短期大学を卒業した者にあっては、本市における在職期間が満7年以上の者。
(3) 高等学校を卒業した者にあっては、本市における在職期間が満9年以上の者。
(4) 前各号に掲げる者のほか、民間企業等での高度な実務経験を有し、市長が同等の能力及び経験を有すると認める者。
3 前項の規定にかかわらず、地方公務員法第29条に基づく懲戒処分の対象となり、その影響期間を脱していない者は、受験することができない。
第3章 試験の方法及び配点基準
(試験の方法)
第3条 試験は、第1次試験(筆記・記述)及び第2次試験(勤務評定・面接)に区分して実施する。
(第1次試験の内容)
第4条 第1次試験は、係長級職員として必要不可欠な法的素養及び論理的思考力を判定するため、次の方法により行う。
(1) 筆記試験(択一式): 地方自治法、地方公務員法、行政法、民法、及び地方財政の基礎知識について出題する。
(2) 企画書・小論文作成試験: 弥富市が直面する行政課題の解決策、又は組織論に基づく部下育成(OJT)の手法について記述させる。
(第2次試験の内容)
第5条 第2次試験は、第1次試験の合格者を対象として、日常の勤務実績及び管理監督者としての意欲・適性を判定するため、次の方法により行う。
(1) 勤務成績の評定: 過去4年間における人事評価結果、及び個人目標の達成状況の書面審査。
(2) スキップレベル・ヒアリング(個別面接): 受験者の直属の長を越えた幹部職員(部長級以上)による口述試験。本面接においては、知識量ではなく、受験者の「やる気(モチベーション)」と組織貢献への覚悟を最も重視して評価する。
(総合評価の基準と配点)
第6条 試験の最終的な合否は、試験結果が絶対的な指標ではないという前提に立ち、日頃の実績と本人の意欲を最重視して決定する。
原則として、100点満点中、企画書・小論文を30点、過去4年間の勤務評定を40点、幹部によるヒアリング総合評価を30点とする多面的な配点構造を採用する。
第4章 試験の実施機関等
(昇任試験委員会の設置と事務委託)
第7条 試験の厳正な実施を図るため、市に「弥富市係長級昇任試験委員会」を置く。
2 本市が、将来的に地方公務員法第7条第4項の規定に基づき、愛知県又は名古屋市等の人事委員会に対して公平・人事事務の委託を行った場合は、本章の規定にかかわらず、当該委託先の人事委員会規則等の定めるところにより、試験の一部又は全部を運用するものとする。
第5章 過渡期における特例措置
(既存職員に対する4年間集中研修)
第8条 市長は、本試験制度の導入に伴い、係長級未満の職にある30代から50代の職員、及び本試験を経ずに既に管理職等に就いている既存職員に対し、試験のエッセンスを代替する措置として、地方自治法、地方公務員法、民法、行政法、及び財務行政に関する「4年間集中研修」を義務付けるものとする。
(施行期日)
第9条 この要綱は、令和X年X月X日から施行する。
7. 結論:制度定着に向けた条件と波及効果
係長(グループリーダー)昇任試験の導入は、単に昇進のルールを変更する手続き論ではなく、弥富市役所という組織の精神的土壌(カルチャー)を刷新するための第一歩である。
「試験に受かればよい」という形式主義に陥らないためには、評価の核心を「本人のやる気」に置き、スキップレベル・ヒアリングを通じて幹部が直接その熱量を測る仕組みが不可欠である。
また、試験制度がなかった時代に入庁した現在の30代から50代の層に対しては、決して阻害感や不公平感を抱かせることなく、第8条に規定した「4年間集中研修」を通じて必要な法的・財政的リテラシーを再構築させることが、組織全体のハレーションを防ぐセーフティネットとなる。
さらに、中長期的な視座に立てば、独立した人事評価の専門性を担保するために、愛知県や名古屋市の人事委員会に対する事務委託(地方公務員法第7条第4項)の協議を並行して進めることが、制度の持続可能性を飛躍的に高める。
本稿で提示した係長試験制度を即座に稼働させ、「262の法則」に基づく意欲ある上位20%の若手・中堅職員を早期に抜擢・育成すること。
これが実現すれば、弥富市の行政組織は劇的な活性化を遂げる。
この先行投資としての試験制度の運用データと知見を礎として、採用から退職までの包括的な「真の職員活性化計画」を、4年間のスパンでじっくりと構築していくプロセスこそが、本市が歩むべき人事改革の最適解である。