現職の有力市議による市有地の不法占拠と、それを13年間にわたり放置し続けた行政のずさんな財産管理――。令和元年(2019年)12月の弥富市議会で白日の下にさらされたこの問題は、単なる一議員のコンプライアンス違反にとどまらず、地方自治の根幹を揺るがす事態へと発展した。住民監査請求によって発覚した「意図的な図面偽装」の疑いや、議会内で質問を封じ込めようとした隠蔽体質。なぜ行政のチェック機能は働きを失い、公共の財産は長年にわたって侵奪され続けたのか。市政にはびこる癒着の構図と、ガバナンス不全の全容に迫る。
【サマリー】現職市議による水路不法占拠問題(令和元年12月 議案質疑)
日本共産党の三宮十五郎議員が、現職市議(大原功氏)による市有水路の不法占拠問題と、それを長年放置してきた弥富市のずさんな財産管理について厳しく追及した質疑です。
1. 事件の概要と監査委員の厳しい指摘
市民からの住民監査請求を受け、市の監査委員が調査した結果、極めて悪質な事実が認定されました。
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意図的な図面偽装の疑い: マンション建設時(平成18年)、申請図面では駐車場は「6台」だったが、実際には建物を市有水路側にずらして不法占拠し、駐車場を「19台」分確保していた。
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確信犯的行為: 建設当時、市から境界侵犯の指摘を受けていたにもかかわらず、図面では正しい境界線を引いて許可を得た上で、実際には水路にはみ出して擁壁を建設した。
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監査委員の勧告: 市長に対し、2年以内の擁壁撤去(原状回復)と、過去にさかのぼって不当利得(使用料)および利息の返還を請求するよう求めた。
2. 市のずさんな対応と「引き継ぎ漏れ」
三宮議員は、市が長年この不法占拠を放置していた理由を追及しました。
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市の釈明(大木副市長): 平成18年当時に3度にわたり越境の通告・指導を行っていたが、その後の人事異動で引き継ぎが行われず、記録が埋もれてしまっていた。副市長自身も通報があるまで知らなかった。
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三宮議員の批判: 「引き継ぎがなかった」というのは不自然である。当時の市長や議長(当事者)の間で暗黙の了解があり、意図的に黙認・隠蔽されたのではないかと強く疑っている。
3. 議会の隠蔽体質への批判
三宮議員は、この問題を議会で取り上げること自体に圧力がかかったことを暴露しました。
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質問取り下げの圧力: 議会運営委員会において、この問題に関する三宮議員の質問を取り下げさせる動議が可決されていた。
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個人名の公表: これは単なる個人攻撃ではなく、市政の公平性に関わる重大問題であるとし、三宮議員はあえて当事者が大原功議員であることを議場で公表。議会の自浄作用を強く求めた。
4. 今後の展開(裁判へ)
大木副市長から、今後の流れについて報告がなされました。
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相手方(大原議員)から民事調停が申し立てられており、翌年1月に裁判所で話し合いが行われる。
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調停が不成立に終わった場合は、お互いに提訴(裁判)に発展する可能性がある。
【総括】 現職の有力市議(元議長)が自身の利益(駐車場増設)のために市の土地を不法占拠し、市側もそれを13年間にわたり「引き継ぎ漏れ」として放置していたという、行政と議会の癒着・機能不全が強く疑われる事案です。三宮議員の追及により、その異常な実態が議会の場で白日の下にさらされました。
弥富市議会 令和元年12月定例会 本会議録
○8番(三宮十五郎議員) 私は日本共産党弥富市議団に属する三宮でございます。長年お世話になり、今回で48回目の一般質問となります。この質問は、市と議会が市民に寄り添うために避けては通れない問題だと考え、行わせていただきます。
先日、市民から弥富市に対して監査請求が行われ、監査委員が10月4日付で弥富市長に勧告を出しました。この勧告に対して市がどう対応するのか、公共用地管理の異常な実態について質問します。
監査請求の主旨は、「平島中新田の賃貸マンション敷地北側の擁壁が市管理の水路を侵害しており、市有財産の適切な管理を市長に求める。行政財産を不当に使用している者に対し即刻撤去を求め、適切な借地料と年5%の利息の支払いを求めるよう勧告してほしい」というものです。
監査委員はこれに対し、「財産管理を怠る事実があった」と判断し、次のような勧告を出しました。 「土地所有者は、平成18年11月1日および12月11日付の事前協議結果通知により、擁壁が官民境界を越えていることを認識していたと思われる。平成18年の開発行為許可申請書および平成19年の建築確認申請書の添付図面には正確な境界線が記載されており、所有者の主張は信頼できない。また、事後の市の測量調査でも境界侵犯が確認されている。官民境界を逸脱した理由は、駐車場の台数確保のためと思われる。図面では6台だが、現状は建物が北に移動し19台分となっている。現在居住している住人のことも考慮し、市長は土地所有者に対し、通知提出日から2年以内に水路敷地内の擁壁を撤去し原状回復すること、さらに不当利得の返還と利息の支払いを求めること」
ここに図面の写しがありますが、申請上は6台しか確保できないはずの駐車場が、実際には水路側に建物をずらすことで19台分作られています。賃貸住宅において駐車場6台と19台では利用価値が全く異なります。これを議長も務められた現職の議員が行っていると思うと、非常に残念です。監査委員の決定は正当なものだと考えますが、市長はどう対応されるのでしょうか。
○議長(佐藤高清議員) 大木副市長。
○副市長(大木博雄氏) 8月6日に住民監査請求が出された事実を確認した後、監査結果が出る前の8月22日付で、擁壁の撤去と、民法703条および704条に基づく使用料相当の不当利得の返還を求める通知を出しました。撤去期限については、建物が償却するであろう30年後の令和19年12月31日としました。
その後、10月4日の監査結果による市長への勧告を受け、改めて「監査結果通知から2年後の令和3年10月3日までに擁壁を撤去すること」および「それまでの使用料相当の不当利得の返還」を請求いたしました。
○議長(佐藤高清議員) 三宮議員。
○8番(三宮十五郎議員) 監査結果に基づいて厳格に対応していただきたいと思います。しかし、平成18年当時に市がはみ出しを指摘し、所有者が原状回復の誓約書を出したにもかかわらず、工事がそのまま進められた経緯があります。当時の担当職員がこれを知らなかったとは考えにくいですが、その後、問題にされることはありませんでした。
前市長(服部彰文氏)に確認したところ、在職中にこの件の報告を受けたことは一度もないとのことでした。庁舎内の職員から副市長になられた大木副市長は、この問題についていつ知ったのでしょうか。
○議長(佐藤高清議員) 大木副市長。
○副市長(大木博雄氏) 私がこの状況を把握したのは、市民からの通報があった今年の6月だったと記憶しています。それまでは全く知りませんでした。
○議長(佐藤高清議員) 三宮議員。
○8番(三宮十五郎議員) 撤去を要求しながらそのまま工事が進んだことを、市の担当者が知らないはずがありません。しかし、前市長にも伝わらず、副市長も監査請求まで知らなかったというのは、弥富市の公共財産管理の仕組みを疑わざるを得ません。市当局は今回の問題をどう考えているのでしょうか。
○議長(佐藤高清議員) 大木副市長。
○副市長(大木博雄氏) 事実関係について補足しますと、平成18年11月1日、12月11日、12月13日の3度にわたり、市から越境に関する通告を行っております。しかし、その後の人事異動等で適切な引き継ぎがなされていなかったため、私が知ったのは今年6月になりました。今後はこのような事案が生じないよう、引き継ぎを徹底します。今回のケースは境界確認後の越境であり特異な事例だと考えていますが、しっかり管理してまいります。
○議長(佐藤高清議員) 三宮議員。
○8番(三宮十五郎議員) 全く引き継ぎがされていないとのことですが、平成18年4月の合併時、旧弥富町では住民投票を求める約4,500筆の署名が出されたにもかかわらず、議会で否決され吸収合併が強行されました。その時の議長が今回の土地所有者だったと思います。
1回の指導で黙認され、引き継がれなかった背景には、時の市長と議長の暗黙の了解があったのではないかと推測します。このような大事な問題が引き継がれなかったケースは他にもあるのでしょうか。
○議長(佐藤高清議員) 大野開発部長。
○開発部長(大野勝貴氏) 公共事業や境界確定により後から越境が判明するケースはありますが、境界確定後に構造物が越境するような事案や、現在係争中の案件は他にございません。
○議長(佐藤高清議員) 三宮議員。
○8番(三宮十五郎議員) 最初からこのような形でやられた事案はこれだけだということですね。当時の合併をめぐっては、反対した議員が役職から外されたり、この土地所有者から辞職勧告を出されたりした経緯があります。市長、町長、議長が一体となって事業を強行する中で、このような事態が発生したと考えざるを得ません。
私がこの質問を通告した際、議会運営委員会で発言の取り下げが求められました。しかし、これは個人攻撃ではなく、市政と議会の公平・公正な運営に関わる根源的な問題です。あえて当事者が現在この場にいる大原功氏であることを明らかにし、二度とこのようなことが起こらないよう教訓にしていただくことを強く要望します。
また、弥富市としても、名古屋市のように外部監査を入れ、案件と対策状況を系統的に記録し、公開・共有する仕組みを確立すべきだと考えますが、いかがでしょうか。
○議長(佐藤高清議員) 大野開発部長。
○開発部長(大野勝貴氏) 今後は公共用物管理条例や各種法令に基づき、各課で適正に管理してまいります。また、人事異動等による引き継ぎ漏れがないよう努めてまいります。
○議長(佐藤高清議員) 三宮議員。
○8番(三宮十五郎議員) ほとんど事実を確認する資料がないというのは許されないことですが、非常に残念です。議会運営委員会がなぜ質問取り下げを決定したのかについても、当時の委員長が今の議長ですので、議会改革協議会等で解明していただきたい。市議会の重要な幹部が関与している問題として、議長に強いイニシアチブを求めます。
○議長(佐藤高清議員) 大木副市長。
○副市長(大木博雄氏) ご質問にはありませんでしたが、今後の進め方について説明いたします。相手方から民事調停の提起があり、来年1月16日に出頭の呼び出しがありました。相手方の主張も聞きつつ、市としてもしっかり対応します。調停が成立すれば議会の議決となりますが、不成立の場合は互いに提訴となる可能性もあります。
○議長(佐藤高清議員) 三宮議員。
○8番(三宮十五郎議員) 重ねて申し上げますが、監査委員の報告は非常によく調べられ、市が正すべき点を指摘したものです。この報告に沿って厳正に事を進めていただくことを強く要請し、次の質問に移ります。
