愛知県弥富市において8年ぶりの新築マンション供給となる、15階建てのランドマークプロジェクト「ダイアパレス弥富」。この大規模開発を手掛けるダイア建設名古屋は、かつての経営破綻という歴史を経て、現在では大和地所グループの強固な資本と先進的なノウハウを背景に「地域特化型の高付加価値デベロッパー」へと見事な変貌を遂げています。
本報告書では、弥富市特有のゼロメートル地帯という災害リスクを逆手にとった強靭な商品企画から、年間売上860億円規模を誇る大和地所グループのしたたかな「ストックビジネス戦略」の全貌までを徹底解剖。多角的な視点から、新生ダイアパレスが中京圏で確立した独自のポジショニングと、その事業モデルに潜む「光と影」を浮き彫りにします。
調査報告書 エグゼクティブ・サマリー
本報告書は、愛知県弥富市で進行中の「ダイアパレス弥富」プロジェクトを起点に、事業主であるダイア建設名古屋、およびその親会社である大和地所グループ全体の事業構造と戦略的意図を多角的に分析したものです。
1. 企業体制と歴史的背景
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大和地所グループ傘下: ダイア建設名古屋は大学関連ではなく、横浜を拠点とする独立系総合デベロッパー「大和地所グループ」の完全子会社です。
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地域特化型への転換: 経営破綻した旧・ダイア建設から東海地区の事業を継承し、かつての「全国大量供給型」から、居住性を重視する「地域密着・高付加価値型」へとパラダイムシフトを遂げました。
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強固な収益基盤: 大和地所グループは多角化経営(ホテル、レジャー、航空事業等)と賃貸事業を屋台骨とし、売上高860億円(2025年3月期)に達する盤石な財務基盤を誇ります。
2. コアとなる事業戦略とビジネスモデル
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製・販・管の一貫体制: グループ内で開発から販売、引き渡し後の管理(大和地所コミュニティライフ)までを完結させ、長期的な品質維持と顧客からの信頼獲得を実現しています。
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ストック収益へのハブ機能: マンションの分譲事業は一過性の利益追求ではなく、数十年単位での確実な管理収益(ストックビジネス)を生み出し続けるための「顧客獲得パイプライン」として機能しています。
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グループ間シナジー(技術移転): 首都圏で成功しているハイエンドブランド「ヴェレーナ」の設計思想(大空間バルコニー等)を「ダイアパレス」の規格に転用し、ブランド価値を大幅に引き上げています。
3. 「ダイアパレス弥富」プロジェクトの特徴
弥富市特有の「海抜ゼロメートル地帯」というリスク(ジオハザード)に正面から向き合い、それを「災害に強いランドマーク」という付加価値へと昇華させています。
| 項目 | 概要および特長 |
| 基本規模 | 15階建て・総戸数96戸(2027年9月竣工予定) |
| 徹底した水害対策 | 全住戸を2階以上に配置。1階エントランスを周囲より30cmかさ上げし、移動式止水板を展開可能な設計。 |
| 防災インフラ | 非常用プロパンガスの常備、防火水槽、地震管制装置付ストレッチャー対応エレベーターの実装。 |
| 駐車場戦略 | 敷地内115%確保かつ全台平面式。将来の機械式駐車場修繕コスト増大リスクを排除。 |
| 空間価値の最大化 | 首都圏のノウハウを活かした奥行2.9mのワイドバルコニーや、上層階のルーフトップバルコニーを採用。 |
4. 潜在的リスクと今後の課題
優れた事業展開の一方で、持続的な成長に向けて克服すべき懸念事項も存在します。
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過去のブランドイメージ: 旧ダイア建設時代に生じた施工不良やネガティブな企業イメージの完全なる払拭が求められます。
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弥富プロジェクトの車両水没リスク: 居住空間の浸水は防げるものの、全台平面式駐車場であるため、広域の河川氾濫等が発生した際に住民の車両が水没し、「陸の孤島」となるリスクが残存しています。
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多角化経営の財務的脆弱性: ホテルやレジャー等の「景気敏感産業」を広く展開しているため、外部環境のショックに対するリスク管理と、分譲本業の競争力維持が課題となります。
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日常の居住性能への配慮: 空間デザインの評価が高い一方で、遮音性や収納力など、生活の質に直結する基本性能部分の継続的な改善が顧客満足度を左右します。
愛知県弥富市におけるダイア建設名古屋の事業展開と大和地所グループの分譲マンション事業戦略に関する調査報告書
1. 序論
現在、愛知県弥富市において進行中の「ダイアパレス弥富」開発プロジェクトは、同市内において8年ぶりとなる新築分譲マンションの供給であると同時に、2003年以降で最高層・最大級(15階建て・総戸数96戸)のスケールを誇る地域特化型のランドマークプロジェクトである。
本報告書は、当該プロジェクトを手掛けるダイア建設名古屋株式会社の企業としての実績、業界内での地位、および事業方式の特質を詳細に分析するものである。
なお、事前の照会事項において同社は横浜を本拠地とする独立系総合不動産デベロッパー「大和地所(だいわじしょ)グループ」の完全子会社である。同社を傘下に収める大和地所グループ全体の事業構造を俯瞰し、コングロマリット(複合企業)体制における分譲マンション事業の戦略的位置づけや役割、そして今後の展望について多角的な視点から考察を加える。
2. ダイア建設の歴史的背景と業界における地位の変遷
現在のダイア建設名古屋の業界的地位を理解するためには、かつて全国規模で事業を展開していた旧「ダイア建設」の歴史的経緯と、その後の経営再建プロセスを遡る必要がある。
2.1 旧ダイア建設の栄枯盛衰と業界ポジション
旧ダイア建設は1976年に設立され、「ダイアパレス」ブランドを中心に全国で2,000棟、10万戸以上の分譲マンションを供給した実績を持つ、国内有数の大手マンションデベロッパーであった。創業者は、当時マンション業界の最大手であった株式会社大京(ライオンズマンションを展開)の出身であり、ダイアパレスはライオンズマンションの強力なライバルとして位置づけられていた。
大京のライオンズマンションが赤レンガ調の外壁タイルとライオン像をシンボルとしていたのに対し、ダイアパレスはやや明るめのレンガ調タイルと、エレベーター塔屋等に掲げられた「ダイア建設」のロゴマークを視覚的な特徴とし、交通利便性の高い立地と一次取得者向けの比較的購入しやすい価格帯を武器に急速にシェアを拡大した。
しかし、バブル経済の崩壊以降、不動産業界全体の資金繰りが悪化する中で、同社も深刻な経営難に直面した。
さらに、急速な事業拡大の弊害として一部の施工不良問題(外階段を固定するボルトが取り付けられず、ナットだけが溶接されていた事案など)が表面化し、デベロッパーとしての品質管理姿勢が厳しく問われる局面もあった。
産業再生機構の支援等を経て事業継続を模索したものの、2008年のリーマン・ショックによる急激な不動産市況の悪化が致命傷となり、同年12月に民事再生法の適用を申請し、事実上の経営破綻に至った。
2.2 大和地所グループによる救済と「ダイア建設名古屋」の誕生
経営破綻した旧ダイア建設に対し、2009年に横浜を拠点とする総合不動産企業である株式会社大和地所がスポンサーとして支援に乗り出し、同社を完全子会社化した。
大和地所は自社グループのノウハウを注入し、コンプライアンスと品質管理体制の抜本的な見直しを図った。
大和地所傘下での経営再建が軌道に乗った2014年10月、グループ内の事業再編が実施された。旧ダイア建設の事業のうち、地域密着型の展開が強みであった「名古屋(東海)地区」および「新潟地区」の事業がそれぞれ新設分割され、「ダイア建設名古屋株式会社」および「ダイア建設新潟株式会社」として独立した。
同時に、旧ダイア建設の本体事業は大和地所に吸収合併されて解散し、首都圏における分譲事業は同じく大和地所傘下の「大和地所レジデンス(旧・日本綜合地所)」が担う体制へと移行した。
この吸収合併の主たる目的は、両社が得意とする分野に経営資源を効率的に再配分し、収益体質をさらに強化することにあった。
2.3 東海圏における現在の実績と地位
現在のダイア建設名古屋は、大和地所グループの子会社として、資本金5,000万円、愛知県名古屋市中区丸の内に本社を構え、新築分譲マンション「ダイアパレス」、新築戸建て「ダイアテラス」の開発・販売などを手掛けている。
従業員数は約21名(不動産部門等を含めグループ関連での記載では変動があるが、本体は少数精鋭)の組織体制でありながら、2025年3月期の単体売上高は157億円を計上しており、極めて高い生産性を誇る。
旧ダイア建設時代からのレガシーを引き継ぎつつ、地域に根ざした事業展開を行うダイア建設名古屋は、東海エリア(愛知・岐阜・三重)において累計7,000戸以上という圧倒的な分譲実績を保有している。
かつての「大量供給型の全国区ブランド」から、「持続可能性(サステナビリティ)と長期的な居住快適性を重視する地域特化型ブランド」へとパラダイムシフトを果たしており、現在の中京圏においては、地場の大手デベロッパーと対等に渡り合うための強力な競争優位性と独自のポジショニングを確立している。
3. ダイア建設名古屋の事業方式と商品企画の特質
3.1 グループシナジーを活かした製販管一貫体制
ダイア建設名古屋の事業方式における最大の特質は、大和地所グループの総合力を背景とした「製・販・管の一貫体制」にある。用地の取得から商品企画、施工の品質管理、販売業務、そして引き渡し後のアフターサービスに至るまで、外部への丸投げを排し、グループ内で完結・連携するビジネスモデルを構築している。
特に重要なのが、引き渡し後の管理業務を担う「大和地所コミュニティライフ株式会社(旧・日綜コミュニティ)」との強固な連携である。
同社は、大和地所グループ内で分譲されたマンションの日常管理や大規模修繕計画の策定を専門に行う企業であり、住環境の維持向上と長期的な資産価値の保全に直結している。
デベロッパー側(ダイア建設名古屋)が独自のアフターサービス業務基準を設け、管理会社側(大和地所コミュニティライフ)が現場のフィードバックを吸い上げるこの循環システムは、かつてのダイア建設が抱えていた品質管理上の課題を完全に払拭し、顧客からの長期的な信頼を獲得する源泉となっている。
3.2 新生「ダイアパレス」の設計思想
大和地所グループ参画後の「ダイアパレス」は、「ずっと。」というブランドテーマを掲げている。
これは、顧客が「ずっと住み続けたい」と思える安全・安心・快適な住空間と、環境との共生を実現するという理念に基づく。
「安全」「環境」「家族」「コミュニティ」の4つを商品企画の柱としており、現代の多様なライフスタイルに適応するための仕様が標準化されている。
また、車社会である中京圏・東海エリアの地域特性を深く理解し、多くのプロジェクトにおいて「敷地内駐車場100%確保(可能であれば全台平面式)」を事業計画の必須条件として組み込んでいる点も、同社の事業方式の大きな特徴である。
これは、機械式駐車場の将来的な修繕コスト増大というマンション管理における致命的なリスクを未然に防ぐアプローチであり、前述の「製・販・管一貫体制」だからこそ実現できる長期視点に立ったランドスケープデザインと言える。
4. 弥富プロジェクト(ダイアパレス弥富)に見る最新の開発傾向
弥富市で進行中の「ダイアパレス弥富」の事業内容を分析することで、ダイア建設名古屋の最新の開発技術と地域適応戦略がより明確になる。
本プロジェクトの事業方式において最も高く評価されるべきは、徹底した地域特性(ジオハザード)への適応戦略である。
弥富市は伊勢湾に面し、木曽川などの大河川下流域に位置する典型的な「海抜ゼロメートル地帯」であり、水害リスクに対する住民の潜在的な不安は極めて高い。
ダイア建設名古屋は、このペインポイントを設計上の制約と捉えるのではなく、逆に「災害に強いランドマーク」という付加価値へと昇華させている。
第一に、水害対策の徹底である。万が一の浸水に備え、全96戸の住戸を2階以上に配置し、居住空間への浸水リスクを物理的に排除している。
さらに1階エントランスの床レベルを周囲の地盤より30cm高く設計し、増水時には移動式止水板(ボックスウォール)を展開できる体制を整えている。
第二に、非常時のエネルギー的独立性の確保である。広域災害時のインフラ途絶を見越し、敷地内のエネルギー庫には弥富市の地域特性に合わせたプロパンガスを数日間分常時確保している。
また、防災備蓄庫や敷地内地下の防火水槽を完備し、建物内に設置された2基の大型エレベーターのうち1基は地震管制装置付のストレッチャー対応型を採用することで、緊急時の医療搬送ルートまで確保している。
第三に、住戸内の空間価値の最大化である。
2〜6階の住戸には奥行き約2.9mのワイドバルコニーを、上層階(9タイプ)にはルーフトップバルコニーを配置している。
これは、親会社である大和地所(大和地所レジデンス)が首都圏で展開し、グッドデザイン賞を受賞した奥行き4mの「オープンエアリビングバルコニー」の設計思想を、ダイアパレスの規格へと巧みに技術転用したものである。
NTTの全住戸一括加入型高速Wi-Fiの標準装備や、外出先から操作可能なIoT対応機器の導入など、先進的なスマートライフ基盤の実装も相まって、同プロジェクトは単なる住戸の販売を超えた「強靭なシェルターとしての安心感と先進的な居住体験」を提供する事業モデルを体現している。
5. 大和地所グループの全体像と多角化経営の全容
ダイア建設名古屋の属する「大和地所グループ」におけるマンション事業の真の位置づけを理解するためには、グループ全体の巨大な事業ポートフォリオと収益構造を把握する必要がある。
5.1 独立系デベロッパーとしての成長軌跡とM&A戦略
株式会社大和地所は1993年に関内(横浜市中区)で設立された総合不動産デベロッパーである。
同社は大和ハウス工業などの財閥系・大手ハウスメーカー系とは一切の資本関係を持たない独立系企業として成長を遂げてきた。
同グループの目覚ましい成長を牽引したのは、不動産開発のノウハウに加え、経営破綻した同業他社や異業種企業を積極的に買収し、自社グループのポートフォリオに組み込んで再生させる「スポンサー型M&A」戦略である。
2008年から2010年にかけての金融危機に乗じ、経営破綻した「ダイア建設」、および「日本綜合地所」(現在の「大和地所レジデンス」)を相次いでグループ化し、両社が保有していた優良な顧客基盤、ブランド資産、そしてマンション管理の権利を一挙に獲得した。
5.2 コングロマリットとしての多角化事業展開
大和地所グループは現在、単なるマンションデベロッパーの枠を超え、多種多様な事業を展開するコングロマリットを形成している。
| 事業領域 | 主なグループ企業・運営施設 | 事業概要・特徴 |
|---|---|---|
| 分譲マンション・戸建事業 | 大和地所レジデンス、ダイア建設名古屋、ダイア建設新潟 |
首都圏、東海、信越における不動産開発・販売。 |
| マンション・ビル管理事業 | 大和地所コミュニティライフ |
グループ物件の管理、大規模修繕、保険代理店業務。 |
| ホテル・リゾート事業 | moksa Rebirth Hotel、サザンビーチホテル&リゾート、熱海TENSUI |
京都八瀬の歴史的癒しの地でのホテル運営、沖縄糸満市での大型リゾート運営など。 |
| ゴルフ・レジャー事業 | ベルセルバCC(市原・さくら)、ゴールデンパームCC、ベルビーチGC |
千葉、栃木、鹿児島、沖縄における本格的チャンピオンコース及びリゾートゴルフ場の運営。 |
| 航空・ヘリコプター事業 | エクセル航空(つくば本社・沖縄支社) |
航空機整備業務に加え、沖縄でのVIP向けヘリタクシー、遊覧飛行、報道取材フライトの提供。 |
さらに、大和地所本体は全国の主要都市(東京、神奈川、大阪、京都、福岡、北海道など)に膨大な数のオフィスビル、商業施設、ホテル用不動産(ホテルリブマックスへの一棟貸し等)を自社保有し、賃貸事業を展開している。
5.3 強固な財務基盤と収益構造
この多角化戦略の最大の成果は、景気変動に極めて強い「ストック型(継続課金型)」の収益構造を構築したことにある。
大和地所グループの売上高は860億円(2025年3月期)に達し、経常利益も約200億円規模という極めて高収益な体質を維持している。
親会社である大和地所単体の財務データ(2025年3月期)においても、自己資本比率は約42.6%と健全な水準を確保し、約318億円の利益剰余金を積み上げるなど、盤石な財務基盤を誇る。
特筆すべきは、大和地所(単体または特定のセグメント)における売上構成比である。
ある市場分析によれば、同社の売上に占めるマンション分譲事業の割合はわずか5.0%に過ぎず、賃貸住宅(25.6%)、戸建住宅(24.1%)、商業施設(23.1%)、事業施設(21.3%)といった賃貸用不動産の保有・運用事業が収益の根幹を成していると指摘されている。
これは、市況の波に左右されやすい「フロー型」のマンション開発による一過性の利益に依存せず、多角的な資産運用による強固な下支えによってグループ全体のリスクを分散していることを明確に示している。
6. 大和地所グループにおけるマンション事業の戦略的位置づけ
前述の通り、グループ全体の収益構造においては不動産賃貸・保有事業が屋台骨となっているものの、分譲マンション事業は依然としてグループの「成長エンジン」ならびに「ストック形成の最前線」として極めて重要な戦略的位置づけを担っている。
6.1 マルチブランド戦略とエリアの最適化
大和地所グループは、マンション事業において単一の全国ブランドを展開するのではなく、過去のM&Aで獲得したブランドの歴史的資産価値と地域性を最大限に尊重した「マルチブランド・エリア統括戦略」を採用している。
首都圏においては、旧・日本綜合地所の系譜を継ぐ「大和地所レジデンス」が、欧州風の洗練された意匠と先進的なバルコニー空間を特徴とする「ヴェレーナ(VERENA)」ブランドを展開している。
同社は毎年400〜500億円の売上を安定的に計上し、年間約1,000戸のマンションを供給しており、2023年の首都圏新築分譲マンション供給ランキングでは第6位(1,068戸供給)、全国でも第17位にランクインする業界トップクラスの地位を確立している。
一方、中京圏・東海エリアにおいては「ダイア建設名古屋」が、北陸・信越エリアにおいては「ダイア建設新潟」が、それぞれ地域に深く根付いた「ダイアパレス」ブランドを展開している。
首都圏で成功したヴェレーナブランドを地方に無理に押し付けるのではなく、地方都市において長年培われたダイアパレスの知名度とブランドエクイティ(東海エリアだけで7,000戸の実績)を活用することで、効率的なドミナント展開(特定地域への集中出店)を実現している。
6.2 「フロー」から「ストック」へのハブ機能
大和地所グループにおけるマンション分譲事業の真の目的は、単発の分譲益(キャピタルゲイン)を獲得することにとどまらない。
より高次な目的は、「グループ内エコシステム(生態系)への優良顧客の継続的な取り込み」にある。
ダイア建設名古屋や大和地所レジデンスが新たなマンションを建設し販売するたびに、グループ会社である「大和地所コミュニティライフ」への管理委託件数が自動的に増加する。
これにより、将来数十年にわたる確実なストック収益(管理費の徴収、修繕積立金の運用、数億円規模にのぼる大規模修繕工事の独占的受注、各戸の火災保険・地震保険の代理店手数料など)がグループ内に半永久的に蓄積され続ける構造となっている。
マンション開発事業は、この巨大なストックビジネスのパイプラインに水を注ぎ込むための「フロントエンド(集客口)」としての役割を十二分に果たしているのである。
6.3 空間価値の高度化とグループ間技術移転
さらに、グループ内で複数のデベロッパーを擁することは、商品企画ノウハウの共有と技術移転(シナジー効果)を促進している。
大和地所レジデンスの「ヴェレーナ」がグッドデザイン賞を受賞し、実用新案まで取得した奥行き4mの「オープンエアリビングバルコニー」の思想は、ダイア建設名古屋の手に渡ることで、地方都市のニーズや建築基準にローカライズされ、「ダイアパレス弥富」における奥行き2.9mのワイドバルコニーやルーフトップバルコニーといった新たな付加価値として結実している。
これにより、ダイアパレスはかつての大衆向けマンションから、圧倒的な空間価値を提供するハイエンド寄りのレジデンスへとブランドイメージの引き上げに成功している。
7. 事業展開におけるリスクと批判的考察
本調査において明らかになったポジティブな側面に加え、事業展開やプロジェクトに潜むリスクや懸念点についても客観的に指摘する。
7.1 過去の企業体質に起因するブランドイメージの残存リスク
現在の体制へと刷新される前の「旧ダイア建設」時代には、深刻な品質管理やコンプライアンス上の問題が存在した。
具体的には、外階段を固定するボルトが取り付けられずナットのみが溶接されていた施工不良事案や、建築基準法違反に伴う建築確認の取り消しといった事態が発生している。
また、当時の一部における強引な営業手法に対するネガティブな印象もSNS等で指摘されている。
現在は大和地所グループ傘下で経営体制が刷新されているものの、不動産という高額商品を扱う性質上、過去の「負の遺産」が一部の消費者に不信感を抱かせるリスクは留意すべき点である。
7.2 「ダイアパレス弥富」の防災計画に潜む構造的弱点
弥富市特有の「海抜ゼロメートル地帯」という水害リスクに対し、同プロジェクトは全住戸を2階以上に配置するなどの対策を講じている。
しかし、最大の懸念点として、確保されている111台分の駐車場が「全台平面式(屋外・屋内)」である点が挙げられる。
大規模な河川氾濫や高潮が発生した場合、2階以上の居住空間は浸水を免れたとしても、地上面に駐車された住民の車両は水没するリスクが極めて高い。
車社会の東海エリアにおいて被災時に移動手段を喪失することは、生活再建に重大な支障をきたす。
周辺地域が広範囲に冠水した場合、建物自体が無事でも長期間「陸の孤島」と化すリスクは残存している。
7.3 グループの多角化戦略における財務的脆弱性
大和地所グループは、ホテル(京都のmoksaや沖縄のリゾートなど)、ゴルフ場、航空・ヘリコプター事業などを広く展開している。
これらのレジャー・観光関連事業は、景気後退やパンデミックのような外部ショックに対して極めて脆弱な「景気敏感産業」である。
また、ある市場分析では、グループの売上に占めるマンション分譲事業の割合が約5.0%に過ぎないと指摘されている。
安定した賃貸・保有事業が収益を支えている反面、大手デベロッパーの寡占化が進む分譲市場において、本業の一つであるマンション事業の存在感や商品競争力を今後どのように維持・向上していくのかが課題となる。
7.4 居住性能に関する実用上の懸念
同社の分譲物件に対する居住者からのフィードバックとして、バルコニーなどの空間デザインが評価される一方で、「上階の騒音」「部屋の収納の少なさ」といった日常的な生活の質に直結するハード面への不満が一部で指摘されている。
見栄えのする空間価値の提供だけでなく、遮音性や実用的な収納スペースの確保といった基本性能の部分において、顧客満足度を長期的に維持できるかが今後の課題として挙げられる。
8. 結論
本調査分析および批判的考察から導き出される結論は以下の通りである。
第一に、ダイア建設名古屋は、かつての全国チェーン型デベロッパーの破綻という歴史を経て、大和地所グループの強固な資本力と先進的なノウハウを後ろ盾とした「地域特化型の高付加価値デベロッパー」へと見事な変貌を遂げている。
東海エリアにおける7,000戸超の供給実績に裏付けられた深い市場理解と、敷地内平面駐車場の確保に代表される長期的な居住快適性の追求が、同社の現在の業界的地位を確固たるものにしている。
第二に、同社の事業方式は、用地取得からアフターサービス、そして引き渡し後の管理業務までをグループ内で完結させる製販管一貫体制を最大の特徴とする。
特に、現在進行中の「ダイアパレス弥富」プロジェクトは、大空間バルコニーなどの上質な設計思想と、ゼロメートル地帯特有の浸水対策(ボックスウォールや2階以上への住戸配置)、エネルギー確保といった最先端のジオハザード対策を融合させた画期的な事例であり、同社の技術力と地域課題解決力の高さを遺憾なく示している。
第三に、大和地所グループ全体における分譲マンション事業は、オフィスビルやホテル、ゴルフ場、航空事業などにまで及ぶ巨大なコングロマリット経営において、単なる一時的な売上高の追求を目的としたものではない。
それは、グループの生命線であり莫大な長期的利益を生み出す「管理ストックの持続的拡大」を牽引するための極めて重要な戦略的ハブ機能を担っている。
首都圏では「ヴェレーナ」、地方圏では「ダイアパレス」というマルチブランド戦略を展開することで、グループ全体で年間売上860億円規模の安定した収益基盤を確立している。
第四に、さらなるブランド価値の向上に向けては、過去のネガティブなイメージの完全な払拭、災害時の車両水没リスクに対するソフト面での対策、そして日常的な居住性能の継続的な改善といった課題と向き合う必要がある。
これらの懸念を克服することが、同グループの中長期的な成長において不可欠となる。
総じて、弥富市における15階建て・96戸のマンション建設は、単なる地方都市での開発案件の一つに留まらない。
それは、ダイア建設名古屋の「ずっと。」という持続可能性を追求する企業理念の体現であり、大和地所グループの洗練された地域戦略とストックビジネス重視の経営方針が如実に反映された、戦略的意義の極めて高いマイルストーン的プロジェクトであると結論づけられる。
