弥富の未来を決める計画を、市民みんなでつくろう
弥富市の土地利用、道路、駅、農地、公共施設、防災など、まちづくりの基本方針を定める「都市計画マスタープラン」が、2028年度に期限を迎える。
次の計画は、これまでの延長ではいけない。
弥富市は日本最大級のゼロメートル地帯にあり、高潮や洪水が発生すれば、ほぼ全域が長期間浸水する可能性がある。市の防災指針でも、避難所や公共施設、緊急輸送道路まで浸水する危険性が示されている。
その一方で、一宮西港道路を見据えた物流・産業開発、農地の保全、弥富駅周辺整備、学校跡地や公共施設の再編など、市の将来を左右する計画が次々に進んでいる。
だからこそ次のマスタープランでは、「どこを開発するか」だけでなく、災害リスクを基準として、
- どこに住宅や公共施設を配置するのか
- どの農地を遊水空間として守るのか
- どこに物流・産業施設を誘導するのか
- どこに垂直避難できる防災拠点を整備するのか
- 限られた税金を何から優先して使うのか
を、市民に分かる形で決めなければならない。
全戸・全市民アンケートを
前回の計画では、3,000人を対象とした抽出アンケートは行われたが、地区別の市民ワークショップはなく、完成直前のパブリックコメントも意見提出は0件だった。
次回は、広報やとみの全戸配布に合わせ、すべての世帯へ調査票を届けるべきである。さらにWEB回答を利用し、同じ世帯の家族一人ひとりが意見を出せる「全戸・全市民調査」にする必要がある。
弥富市では2017年にも、木曽川下流河川事務所が高潮・洪水時の避難行動について、市内21,528世帯に調査票を配布した実績がある。集まった1,599件の回答は、避難のタイミングや広域避難をためらう理由などを知る貴重な資料である。
この過去の結果と新しい全戸調査を比較すれば、この10年間で市民の暮らしや防災意識がどう変わったかも明らかになる。
防災の専門家を計画の中心に
前回の策定委員長は、都市交通計画を専門とする大学教授であった。次回は交通だけでなく、高潮、洪水、長期浸水、液状化、広域避難を土地利用と結び付けられる都市防災の専門家が必要である。
その最有力候補の一人が、東京大学の加藤孝明教授である。加藤教授は、災害に対する市街地の弱点を分析し、住民とともに防災まちづくりを進めてきた専門家である。
加藤教授を委員長または統括アドバイザーに迎え、交通、河川・排水、農業、公共施設、財政等の専門家と、公募市民による委員会をつくるべきである。
完成した計画を見せるのでは遅い
行政が計画案を作り終えてから、市民に「意見はありませんか」と聞く方法では、本当の市民参加にはならない。
最初の調査から、地区別ワークショップ、複数案の比較、事業の優先順位決定まで、市民が参加できる仕組みが必要である。市民の意見を採用しなかった場合も、その理由を公表すべきである。
次の都市計画マスタープランは、単なる行政文書ではない。
未来の弥富で、どこに住み、何を守り、税金を何に使い、災害からどう命を守るかを決める、市民全員の設計図である。
弥富市次期都市計画マスタープランの策定体制と防災都市づくりに関する調査・提言報告書
調査基準日:2026年8月11日
1 調査の目的
弥富市の現行都市計画マスタープランは、2028年度に計画期間の最終年度を迎える。次期計画は、人口減少、財政制約、公共施設更新、農地保全、一宮西港道路を見据えた産業開発、弥富駅周辺整備、南海トラフ地震、高潮・洪水・長期湛水など、今後の市の存続に関わる課題を一体的に扱う計画でなければならない。
本報告書は、現行計画と前回の策定過程、委員会構成、学識経験者の専門分野、市民参加の実態を検証するとともに、江東区、墨田区、木曽川下流河川事務所等の先行事例を踏まえ、次期計画の策定体制と調査方法を提案するものである。
2 調査結果の結論
弥富市は次期都市計画マスタープランを、従来型の「土地利用、道路、公園、防災等を分野別に並べる計画」から、災害リスクを土地利用、公共施設配置、開発許可、農地保全、産業立地、財政投資の判断基準とする計画へ転換すべきである。
そのためには、次の改革が必要である。
- 都市防災と土地利用を統合できる学識経験者を委員長に選任する
- 複数分野の専門家と公募市民による独立性の高い委員会を設置する
- 広報やとみの全戸配布網を利用し、全戸・全市民調査を実施する
- 木曽川下流河川事務所の過去の全戸配布型調査を基礎資料として活用する
- 地区別ワークショップとGISによる地域安全点検を行う
- 2024年に策定された立地適正化計画防災指針を、具体的な土地利用ルールへ発展させる
- 事業費、財源、実施時期、担当部署、評価指標を計画に明記する
東京大学の加藤孝明教授は、これらを統括する委員長または主任学術アドバイザーとして、最有力候補の一人である。
3 弥富市の都市計画を構成する三つの計画
弥富市の都市計画は、主に次の三層で構成されている。
3-1 名古屋都市計画区域マスタープラン
都市計画法第6条の2に基づき、愛知県が広域的な観点から定める計画である。市街化区域と市街化調整区域の区分、広域道路、土地利用、都市施設等の基本方針を定める。
3-2 弥富市都市計画マスタープラン
都市計画法第18条の2に基づき、弥富市が市内の土地利用、道路、公園、下水道、景観、防災等の基本方針を定める計画である。
現行計画は2017年度から2018年度にかけて策定され、2019年度からおおむね10年間、実質的には2028年度までを計画期間としている。弥富市都市計画マスタープラン
3-3 弥富市立地適正化計画
人口減少下でも一定の人口密度と生活サービスを維持するため、居住誘導区域と都市機能誘導区域を定める計画である。
弥富市は2024年4月、この計画に防災指針を追加した。弥富市立地適正化計画・防災指針
次期都市計画マスタープランでは、この三つの計画に加え、地域防災計画、地域強靱化計画、農業振興地域整備計画、地域計画、公共施設再配置、公共交通計画等を一体的に調整する必要がある。
4 次期計画の策定時期
現行計画は2028年度に終了するため、次期計画は2029年度から開始するのが自然である。
一方、2026年8月現在、市公式サイトでは、次期都市計画マスタープランについて、策定委員会、委員公募、市民アンケート、委託業務、策定日程等の具体的な発表を確認できない。
2026年6月議会の一般質問通告書では「第3次弥富市都市計画マスタープラン」という表現が使用されているが、これは議員側の質問項目であり、市が正式に策定開始を発表した資料とは区別する必要がある。
基礎調査から計画決定までには少なくとも2年程度を要する。2029年度開始を目指すなら、2026年度中に準備作業を始め、2027年度から本格調査に着手すべきである。
5 前回の策定委員長と専門分野
前回の都市計画マスタープラン策定委員長は、大同大学工学部建築学科の嶋田喜昭教授であった。
市の策定委員会設置要綱では、委員長は委員の互選ではなく「委員の中から市長が依頼する」とされていた。前回の策定体制・委員名簿・開催経緯
嶋田教授の専門は、都市・地域計画、都市交通計画、交通工学である。大学の研究紹介では、都市・交通計画の企画立案、実態調査、施策評価、道路交通安全等を主要分野としている。大同大学・都市交通計画研究室
弥富駅、公共交通、道路、コンパクトシティ等を重視する計画において、嶋田教授の専門性は適合している。
しかし、巨大水害、高潮、長期湛水、液状化、広域避難と土地利用を一体化する防災都市計画が、専門の中心というわけではない。次期計画では、交通計画に加え、都市防災と土地利用を統合できる専門家を中心に据える必要がある。
なお、前回の都市計画マスタープラン策定委員会と、常設の弥富市都市計画審議会は別組織である。嶋田教授は2025年3月時点で、都市計画審議会の会長も務めている。令和6年度都市計画審議会会議録
6 前回の策定過程
前回の主な策定手続は次のとおりである。
| 項目 | 前回の実績 |
|---|---|
| 市民アンケート | 18歳以上3,000人を抽出 |
| 有効回答 | 1,254人、回収率41.8% |
| 策定委員会 | 6回。ただし第5回は資料送付のみ |
| 主な学識・専門委員 | 都市・交通計画関係2人 |
| 市民代表 | 2人 |
| 庁内作業部会 | 企画、危機管理、環境、農政、商工、土木、下水道、都市計画 |
| 地区別ワークショップ | 公式の開催経緯には記載なし |
| パブリックコメント | 1か月実施、提出意見0件 |
アンケートの回収率は低くないが、住民同士が地図を囲み、地域の課題や複数の将来案を検討するワークショップは確認できない。
また、完成直前に行われたパブリックコメントは提出意見が0件であった。これは市民が無関心というより、完成案を最後に提示するだけの参加方法では意見が出にくいことを示している。
前回の委員構成は、行政職員、関係行政機関、団体代表が中心であった。公募市民と複数分野の専門家が、政策の優先順位や複数案を比較する体制は十分ではなかったと評価できる。
7 現行計画における防災の評価
弥富市が防災を全く考慮していないわけではない。
2024年に追加された立地適正化計画防災指針では、洪水、高潮、津波、浸水継続時間等をGIS上で重ね合わせ、詳細な災害リスク分析を行っている。
主な分析結果は次のとおりである。
- 木曽川の想定最大規模では、居住誘導区域内人口24,289人のうち23,318人が3日以上浸水する
- 高潮想定最大規模では、21,957人が浸水深3メートル以上の区域に入る
- 高潮や洪水では、ほぼ全域で長期湛水が想定される
- ほぼすべての避難所、都市機能、緊急輸送道路が浸水する可能性がある
- 市外への広域避難、垂直避難、公共施設の浸水対策、排水機場更新等が必要である
この分析は重要な前進である。
一方、市全域にリスクがあることから、現在の居住誘導区域を基本的に維持し、広域避難、情報発信、協定、防災訓練等を対策の中心としている。
次のような具体的な空間ルールには十分踏み込んでいない。
- 電気・機械設備を想定浸水深より高い位置に設ける
- 一定規模以上の建物に垂直避難空間を確保する
- 公共施設に孤立時の電力、水、通信、備蓄を確保する
- 開発によって失われる雨水貯留能力を事業者に補償させる
- 浸水深や浸水継続時間に応じて土地利用強度を変える
- 要支援者人口と避難容量を地区ごとに比較する
- 災害時にも産業・物流機能を継続できる条件を設ける
また、現行都市計画マスタープランの「具体的な施策」は、弥富駅自由通路、用途地域見直し、土地区画整理、コミュニティバス等が中心であり、防災事業が独立した重点事業として工程化されていない。現行計画の実現化方針
現状は、災害リスクの分析は進んだが、それが土地利用と公共投資を決定する上位ルールになっていない段階である。
8 加藤孝明教授の適性
東京大学の加藤孝明教授は、次期計画の委員長または統括アドバイザーとして、最有力候補の一人である。
加藤教授は、東京大学生産技術研究所・都市基盤安全工学国際研究センターの教授で、専門は地域安全システム学である。
主な研究対象は次のとおりである。
- 市街地の脆弱性評価
- 防災・減災まちづくり
- 復興準備、事前復興
- GISを利用した地域安全分析
- 気候変動を踏まえた大規模水害
- 住民参加による地域防災
- 都市計画と防災計画の統合
加藤教授は研究だけでなく、各地域の現場にも関与している。
墨田区
墨田区都市計画マスタープラン改定検討委員として、町会等に積極的に働きかけ、地域ごとの市民意向を把握するワークショップを充実させるよう提案している。墨田区改定検討委員会会議録
江東区
江東区大島四丁目エリアのまちづくり検討では、地域検討会の座長を担当している。また、江東区新庁舎計画では、防災・災害対策の専門家として副会長を務めている。江東区新庁舎策定会議委員名簿
伊豆市土肥地区
伊豆市では協議会会長として、観光、環境、防災を両立させる「海と共に生きる」観光防災まちづくり計画に関与した。5回の協議会に加え、住民ワークショップ、市民集会等を実施して計画を策定している。伊豆市「海と共に生きる」観光防災まちづくり
弥富市は、ゼロメートル地帯、高潮、河川洪水、長期湛水、津波、液状化、広域避難、農地と物流開発という課題が重なる。そのため、加藤教授の専門と実績は極めて適合性が高い。
ただし、加藤教授一人に依存するのではなく、地域交通、河川・排水、農業、財政、公共施設等の専門家と組み合わせる必要がある。
9 江東区・墨田区から学ぶ策定方法
9-1 江東区
江東区の2022年都市計画マスタープランでは、外部策定会議を約3年間で10回開催している。
学識経験者として、都市計画、福祉、建築、土地・エネルギー、交通、緑・景観等を専門とする6人を選任した。さらに、公募区民3人、町会、商工・商店街、東京都、港湾、UR等が参加している。
市民参加として、次の取組を行った。
- 3地域で各3回の区民ワークショップ
- オンライン方式
- 書面参加
- 対面型オープンハウス
- 大学3研究室による学生ワークショップ
- 3,000人アンケート
- 区民説明会
- 議会特別委員会への継続的な中間報告
防災面では「浸水対応型のまちづくり」を重点戦略とし、電気室、備蓄倉庫、集会所等を想定浸水深より高い位置に配置し、建物同士をデッキでつなぐ垂直避難ゾーンを形成する方針を持つ。江東区浸水対応型まちづくりビジョン
9-2 墨田区
墨田区では、一般住民だけでなく、企業、商店街、小学5年生、中学2年生を対象に、それぞれアンケートを実施した。
さらに、地域別ワークショップ、区民ミーティング、成果発表会、シンポジウムを行い、市民提案を計画へつなげている。墨田区の市民参加実績
弥富市が参考にすべきなのは、アンケートの回答数だけではない。調査、対話、複数案の比較、計画への反映、結果の説明を一連の手続としている点である。
10 次期策定委員会の構成案
次期策定委員会は、18人から22人程度とすることが望ましい。
10-1 学識経験者
- 委員長:都市防災と土地利用を統合できる専門家
- 副委員長:都市・地域・交通計画の専門家
- 河川、水防、排水、長期湛水の専門家
- 農業、農地、グリーンインフラの専門家
- 公共施設マネジメント、自治体財政の専門家
- 市民参加、地域コミュニティの専門家
加藤孝明教授を委員長または統括アドバイザー、地域交通・都市計画の専門家を副委員長とする構成が考えられる。
10-2 公募市民・当事者
- 北部、中部、南部、東部の各地域代表
- 若者、子育て世代
- 高齢者、障害者等の当事者
- 農業者
- 商工業・物流事業者
- 自治会、防災活動者
10-3 関係行政機関
- 愛知県都市計画部門
- 愛知県河川・道路部門
- 木曽川下流河川事務所
- 名古屋港関係機関
- 必要に応じて鉄道事業者
10-4 委員会制度の改善
- 委員長は委員の互選とする
- 委員の選任理由と専門分野を公表する
- 利害関係と利益相反を確認する
- 会議資料を開催前に公表する
- 発言内容が分かる議事録を作成する
- 議会へ半年ごとに中間報告する
- 委託コンサルタントは調査・資料作成を補助し、政策判断は委員会が行う
- 計画策定後も推進・評価会議として存続させる
11 全戸・全市民を対象としたアンケート調査
次期計画では、前回の3,000人無作為抽出方式を改める必要がある。
弥富市は広報やとみを委託により全戸配布している。この配布網に合わせ、市内全戸に調査票を配布する全戸配布・全市民回答方式を採用すべきである。
都市計画マスタープランは、土地利用、防災、農地、公共施設、道路、駅、公共交通等を決める計画である。したがって、一部の市民を抽出するだけでなく、すべての世帯と市民に意見表明の機会を保障することが望ましい。
12 木曽川下流河川事務所の全戸配布型調査
木曽川下流河川事務所を中心とする木曽三川下流部広域避難実現プロジェクトは、2017年2月、弥富市を含む8市町村を対象に「これからの高潮・洪水災害に備えるための住民意識調査」を実施している。
調査票は、市町村の広報配布に合わせ、町会・行政区を通じて配布された。
| 区分 | 配布数 | 回収数 | 回収率 |
|---|---|---|---|
| 8市町村全体 | 117,338通 | 11,310通 | 9.6% |
| 弥富市 | 21,528通 | 1,599通 | 7.4% |
この調査では、巨大台風接近時の避難判断、避難開始のタイミング、広域避難をためらう理由、避難手段、家族構成、要支援者、ペット、避難先等を調べている。
調査結果は、広域避難シミュレーションや広域避難計画の検討に利用された。木曽三川下流部高潮・洪水災害広域避難計画
弥富市はこの調査の対象自治体であり、市内だけでも1,599件の回答データが存在する。次期都市計画マスタープランで、この結果を利用しない手はない。
13 過去調査と新調査の比較
2017年調査から約10年が経過している。この間に、次の変化が生じている。
- 高齢化と単身世帯の増加
- 新たな高潮浸水想定の公表
- 立地適正化計画防災指針の策定
- 弥富駅周辺整備の進展
- 小学校再編と公共施設更新
- 一宮西港道路計画
- 農振計画の全体見直し
- 農地転用、資材ヤード、物流開発問題
- スマートフォンとWEB回答環境の普及
新しい全戸調査では、2017年と同じ設問を一部残し、防災意識や避難行動がどのように変化したかを比較する必要がある。
過去の調査は単なる参考資料ではなく、約10年間の変化を確認する基準値として利用できる。
14 全戸調査と全員調査の二層構造
全戸配布だけでは、世帯主一人の意見に偏る可能性がある。
2017年調査も世帯単位の回答であり、回答者の約7割が60歳以上、男性が76.7%を占めていた。この偏りを改善するため、次の二種類を同時に実施すべきである。
14-1 全世帯調査票
各世帯で1通回答する。
- 世帯人数と年齢構成
- 高齢者、障害者、乳幼児等の有無
- 自動車台数と避難時の利用可能性
- ペットの有無
- 想定する避難先
- 市外へ広域避難できるか
- 長期湛水に備えた備蓄
- 公共施設・避難場所への要望
- 地域で危険と感じる場所
- 今後も住み続けるために必要な都市基盤
14-2 市民個人調査票
15歳以上の市民一人ひとりが回答できる方式とする。
- 将来の弥富市に求める都市像
- 守るべき農地、自然、景観
- 開発を認めてもよい場所
- 弥富駅、道路、公共交通への評価
- 公共施設整備の優先順位
- 災害時に実際に取る行動
- 市外への広域避難の可能性
- 弥富市に住み続けたいか
- 税負担と公共事業の優先順位
- 災害リスクの高い地域での開発条件
小中学生については、学校を通じて「子ども版まちづくりアンケート」を実施する。
15 WEB回答と紙回答の併用
広報やとみに調査票と専用QRコードを同封し、次の回答方法を用意する。
- スマートフォン、パソコンによるWEB回答
- 紙調査票の郵送回答
- 市役所、支所、コミュニティセンター等の回収箱への提出
- 高齢者等を対象とした地域会場での回答支援
WEBでは、同一世帯の複数人が個人回答できるようにする。
地域別分析ができるよう小学校区等を識別する番号を付ける一方、氏名や正確な住所は原則として収集せず、匿名性を確保する。
16 回答率を高める対策
2017年調査は弥富市で21,528通を配布したが、回収率は7.4%であった。したがって、全戸配布するだけでは十分ではない。
- 回答時間を10分程度に抑える
- 調査目的を広報やとみで事前説明する
- 市長と策定委員長が市民へ協力を呼びかける
- 回答期限前にLINE、メール、ホームページ等で再周知する
- 自治会、学校、JA、商工会、福祉団体等と連携する
- 地区ごとの回答率を公表する
- 結果と計画への反映状況を全戸へ報告する
- WEB回答が困難な市民への支援を行う
市民意見については、採用・不採用だけを示すのではなく、どの意見を計画へ反映し、反映しなかった場合はその理由を公表すべきである。
17 アンケート結果の利用方法
調査結果は、市民意識の紹介で終わらせず、次の政策判断に直接利用する。
- 地域ごとの広域避難可能人数
- 避難手段と避難開始時期
- 自動車避難による渋滞予測
- 垂直避難場所の不足地域
- 要支援者の多い地域
- 公共施設を防災拠点化すべき地域
- 長期湛水時に孤立する世帯数
- 市外避難先と受入れ可能人数
- 住宅・物流施設の開発条件
- 農地の遊水・雨水貯留機能
- 一宮西港道路沿道の土地利用
- 学校、駅、道路、公共交通の投資順位
- 公共施設再配置の優先順位
- 市民が守りたい場所、改善したい場所
木曽川下流河川事務所の2017年調査、広域避難シミュレーション、動く高潮・洪水ハザードマップと、新しい全戸・全市民調査をGIS上で重ね合わせる必要がある。
18 アンケート以外に必要な市民参加
全戸・全市民調査に加え、次の取組を行う。
18-1 GIS型まちの安全点検
市民が地図上に、次の場所を入力する。
- 危険な道路や交差点
- 冠水・浸水しやすい場所
- 避難時に通れない場所
- 守りたい農地、自然、景観
- 開発を検討してよい場所
- 防災拠点が必要な場所
18-2 地区別防災ワークショップ
北部、中部、南部、東部等に分け、次の災害を想定する。
- 南海トラフ地震
- スーパー伊勢湾台風級の高潮
- 木曽川洪水
- 排水機場の停止
- 液状化
- 長期停電、断水、通信障害
- 市内の道路が長期間通行不能となる状況
18-3 複数案の比較
市が一つの完成案を示すのではなく、例えば次の複数案を提示する。
- 開発・産業立地重視案
- 農地・遊水機能重視案
- 駅周辺集約重視案
- 防災拠点分散案
- 財政負担抑制案
市民に費用、効果、災害リスク、将来負担を示し、選択してもらう。
19 次期計画の中心理念
次期計画の中心テーマとして、例えば次の名称が考えられる。
「水と共に生きる、浸水対応型・防災都市やとみ」
防災を一つの章に置くのではなく、土地利用、道路、駅、農地、住宅、産業、公共施設等のすべてに災害リスクを重ねる必要がある。
具体的には、次のゾーンを設定する。
- 防災・垂直避難拠点ゾーン
- 条件付き開発ゾーン
- 農地・遊水機能保全ゾーン
- 物流・産業継続ゾーン
- 公共施設・地域生活拠点ゾーン
- 復旧・復興準備ゾーン
20 土地利用・建築に求める条件
住宅、物流施設、商業施設、公共施設等について、次の条件を検討する。
- 居室の床高
- 電気室、機械室、非常用電源の高さ
- 垂直避難空間の収容人数
- 3日から7日程度の電力、水、食料、通信
- 救助・物資輸送のアクセス
- 開発後の雨水流出量
- 失われる農地・遊水機能の代替措置
- 液状化対策
- 災害時の事業継続計画
- 周辺住民を受け入れる一時避難空間
- 建設費だけでなく維持更新費を含むライフサイクルコスト
国土交通省も、災害リスクを評価し、防災都市づくりの基本方針と具体的施策を都市計画マスタープランへ反映するよう求めている。国土交通省・防災都市づくり計画策定指針
21 実施計画と評価方法
次期計画は、理念だけで終わらせず、各施策について次の事項を明記する。
- 実施主体
- 担当部署
- 事業費
- 財源
- 国・県補助制度
- 開始年度と完了年度
- 優先順位
- 市民・事業者の役割
- 数値目標
- 毎年度の進捗状況
評価指標には、協定数や訓練回数だけでなく、次の実質的な指標を入れるべきである。
- 垂直避難場所の収容率
- 広域避難可能人数
- 3日以上孤立する人口
- 非常用電源を浸水深以上に設置した公共施設割合
- 排水機場の耐震化率
- 災害時に機能を継続できる公共施設数
- 雨水貯留・遊水機能の確保量
- 防災条件を満たした民間開発件数
- 市民提案の計画反映率
22 策定スケジュール案
2026年度
- 次期計画の策定方針決定
- 委員会設置要綱の見直し
- 学識経験者への就任打診
- 木曽川下流河川事務所との資料共有
- 基礎データと過去計画の検証
- 全戸調査の設計
2027年度
- 全戸・全市民調査
- 子ども・若者調査
- GIS安全点検
- 地区別ワークショップ
- 災害リスクと土地利用の重ね合わせ
- 複数の都市構造案の作成
- 議会への中間報告
2028年度
- 複数案の市民比較
- 計画原案の作成
- 地区別説明会
- 議会での検討
- パブリックコメント
- 都市計画審議会への報告
- 次期計画の決定
2029年度
- 次期都市計画マスタープラン開始
- 推進・評価会議の設置
- 毎年度の進捗状況公表
23 市に確認すべき事項
次期計画について、市に対して早急に確認すべき事項は次のとおりである。
- 次期計画の策定開始年度と公表予定年度
- 策定業務委託の予算、発注時期、仕様書
- 策定委員会の設置時期と委員構成
- 委員長の選任方法
- 加藤孝明教授等の都市防災専門家へ就任を依頼する考え
- 広報やとみの全戸配布網を利用した全戸調査の実施
- 市民一人ひとりがWEB回答できる全市民調査の実施
- 2017年の木曽川下流河川事務所調査データの利用
- 地区別ワークショップの実施
- 2024年防災指針を土地利用、建築、公共施設配置へ反映する方法
- 農振計画、一宮西港道路、公共施設再編等との調整体制
- 議会への中間報告と市民への情報公開方法
24 最終提言
弥富市に必要なのは、都市計画マスタープランの中で防災に関する文章を増やすことではない。
必要なのは、災害リスクに基づいて、
- どこに住宅や施設を誘導するのか
- どこを農地・遊水空間として守るのか
- どこに産業・物流施設を配置するのか
- 公共施設にどのような防災機能を持たせるのか
- 限られた財源をどの事業へ優先投入するのか
を具体的に決定する計画へ変えることである。
その前提となるのが、独立性と専門性を備えた策定委員会、木曽川下流河川事務所が蓄積した調査結果、そして広報やとみの配布網を活用した全戸・全市民調査である。
次期計画は、行政が作った案について最後に市民の感想を聞く計画ではなく、全戸・全市民調査と地域での対話を出発点として、市民とともに将来の土地利用と公共投資を決定する計画に転換すべきである。


