弥富IC「水害救助・道路搬送ハブ」予備検討
結論
この構想は十分に検討価値があります。
ただし、海南こどもの国と同じ「大型ヘリ拠点」を弥富ICにも造るのではなく、次の役割分担が合理的です。
- 海南こどもの国・愛西市:大型ヘリによる浸水区域外への広域搬送拠点
- 弥富IC:ボート・小中型ヘリで救助した住民を集約し、大型バスで高速道路経由で搬出する「救助・道路搬送ハブ」
- 大型ヘリ:道路が寸断された場合、重症者搬送、孤立地域対応のバックアップ
大型ヘリだけで市民を搬送するより、ボート・小中型ヘリを「末端救助」、大型バスを「大量搬送」に使う方が輸送力を確保しやすい構想です。大型バス10台なら、1回で概ね400~500人を運べます。
現在の県・市の計画
愛知県が整備しているゼロメートル地帯の広域防災活動拠点は、4か所です。愛知県の防災対策(2026年6月)
愛西拠点の正式な運用想定も、「住宅等からボート・ヘリで救助→拠点に集約→大型ヘリで内陸へ搬送」です。愛西拠点運用資料
一方、弥富市はすでに、NEXCO中日本との協定に基づき、2026年度予算2,000万円で弥富ICに「緊急時避難場所」を整備する計画ですただし、公表資料ではヘリ、船着場、バス転送、収容棟までの機能は確認できません。広報やとみ2026年5月号
したがって、まったくの新規提案ではなく、現在の緊急時避難場所を「救助者集約・道路搬送拠点へ拡張する提案」とするのが現実的です。
推奨する施設規模
以下は基本設計前の比較検討値です。
| 項目 | 推奨する仮設定 |
|---|---|
| 高水位上の有効面積 | 10,000~15,000㎡。愛西拠点の上面7,400㎡よりやや大きく、バス機能を追加 |
| ヘリ離着陸帯 | 直径50mの無障害空間を基本検討。小型機限定なら30m、大型CH-47対応なら100m必要 |
| 大型バス | 8~10台分。停車区画は概ね1台3.5m×15m、別に一方通行車路と12m級の転回余地 |
| 一時収容 | 500~1,000人。屋根付き1,000~2,000㎡程度。平均滞在6時間以内、最長24時間対応 |
| ボート船着場 | 4m程度のスロープを2系統。緩勾配、多段式又は浮桟橋併用、2方向から接岸可能にする |
| ライフライン | 非常電源、衛星通信、照明、給水、トイレ等を最低72時間自立 |
| 運用区画 | ヘリ、ボート、救助者、バス、救援物資の動線を分離 |
災害派遣受入れの目安例では、小型ヘリは直径30m、中型UH-1級は50m、大型CH-47級は100mの空地を必要とし、周囲障害物にも厳しい制限があります。山形県地域防災計画のヘリポート基準例
弥富ICでは100m円を確保すると、ヘリ機能だけで約1haを占めます。高速道路施設、標識、照明、車両、人の集積を考えると、CH-47対応はかなり難しく、50m級の中型ヘリ対応を第一案とするべきです。
必要な高さ
愛西市の「盛土3m」を、そのまま弥富ICへ当てはめてはいけません。
基準にすべきなのは盛土量ではなく、想定水位に対する上面標高です。
設計上面高は、概ね次の考え方になります。
上面標高 = 洪水・高潮・津波の最大想定水位の最高値 + 余裕高0.5~1.0m
弥富IC周辺は、木曽川洪水想定で1~3m又は3~5m程度、高潮想定では周辺に5m以上の浸水深区分があります。
ただし、ハザードマップの浸水深は周辺地盤からの深さであり、高架道路面そのものの浸水深ではありません。木曽川洪水ハザードマップ、高潮ハザードマップ
予備検討では「T.P.+5~6m級」を出発点にできますが、最終的には県の水位計算データ、NEXCOの道路標高測量、堤防決壊位置ごとの流速・洗掘計算で決める必要があります。高速道路本線・ランプより低い上面は避けるべきです。
最大の問題点
- サギのコロニー
弥富ICでは、NEXCO中日本の公式記録上、春に数千羽のサギが飛来・営巣していました。これはヘリのバードストライクとダウンウォッシュによる生態影響の両面で、ヘリポート計画の重大な制約です。NEXCO中日本資料
古い記録なので現在の営巣状況を再調査する必要がありますが、場合によっては「弥富IC構内へのヘリポート設置不可」という結論もあり得ます。その場合でも、ボート・バス搬送ハブとしての価値は残ります。
- 高速道路が本当に浸水区域外まで通じるか
弥富ICの路面だけが残っても、東側・西側の橋梁、盛土、料金施設、接続道路が使えなければ搬出できません。
- バスは浸水前に高架道路上又は浸水区域外へ待機
- 東西2方向の搬出ルートを設定
- 浸水区域外の降車・収容先を複数指定
- 本線上には救助者を滞留させず、IC外側の専用上面部で乗降
という運用が必要です。
なお、名古屋西IC~弥富ICでは2027年春頃まで床版更新工事が進められています。
更新工事は有利な材料ですが、災害時の通行継続性を保証するものではないため、別途耐震・浸水・盛土安定評価が必要です。NEXCO中日本リニューアル工事
- ヘリと住民・バスの同時運用
ヘリの離着陸中は、バスや住民を近接させられません。
飛散物、騒音、排気、ローター風対策として、ヘリ区画と収容・バス区画を物理的に分離し、離着陸時は道路の一時規制が必要です。
- 台風直後はヘリが飛べない
暴風・豪雨中はヘリもボートも活動が制限されます。
この施設は主として暴風通過後の救助拠点であり、事前の広域避難を置き換えるものではありません。
- 船着場
水深が大きく変化するため、固定岸壁だけでは機能しません。
緩勾配スロープ、多段踊り場、ガイド杭式浮桟橋、ウインチ、防舷材を組み合わせ、流木・車両等の漂流物、洗掘、油や汚水への対策が必要です。
大型フェリー級ではなく、浅喫水の救助艇、ゴムボート、水陸両用車を対象とするのが現実的です。
推奨する救助動線
住宅・避難ビル
→ ボート又は小中型ヘリで救助
→ 弥富ICで安全確認・トリアージ・受付
→ 屋根付き一時待避
→ 大型バス乗車
→ 高速道路で浸水区域外へ搬送
逆方向には救助隊員、燃料、医薬品、ボート、食料を送り込めるよう、住民動線と救援動線を分離します。
直ちに行うべきこと
2026年度の緊急時避難場所整備に、将来拡張を妨げない条件を今の段階で組み込むことが重要です。
- NEXCO協定、計画面積、上面標高、収容人数、車両進入方法を公開・確認
- 将来のバス転回場、専用ゲート、船着場接続部、電気・給排水管を予約
- 県・NEXCO・自衛隊・消防防災航空・警察・バス事業者による共同可能性調査
- サギ営巣・飛行経路・周辺障害物の航空安全調査
- 500人、1,000人、3,000人救助時の搬送シミュレーション
- 「高速道路不通」「ヘリ使用不可」「高潮と河川氾濫の複合」の代替運用を策定
- 海南こどもの国、愛西拠点、弥富ICを結ぶ合同訓練
提案の正式名称は、例えば「東名阪自動車道弥富IC水害時広域救助・道路搬送拠点」が適切です。
現在の2,000万円規模の避難場所とは別次元で、ヘリ・船着場・バス機能まで整備するなら、愛西・西尾の実績から見て概ね10億円級の事業になる可能性があります。
まずは既存計画を拡張可能な形で施工し、2026年度中に共同可能性調査を実施する進め方が妥当です。

