適法でも、十分とは限らない――弥富市報酬審議会7つの弱点 その1.4%はどう決まったのか――市長・議員報酬の決定過程を検証 資料は非公開、会議は傍聴不可――市民が検証できない報酬審議

弥富市特別職報酬等審議会の検証
結論
今回の答申について、直ちに「違法」「無効」「結論ありき」と断定できる資料はありません。委員数や選任方法は、形式上は条例の範囲内です。
しかし、「市民が結論の妥当性を検証できる、独立性・透明性の高い審議だったか」という点では、重大な弱点があります。
最大の問題は、1.4%という結果そのものよりも、
- 委員構成が市と日常的に関係する団体代表に偏っている
- 公募委員の選考過程が見えない
- 会議を傍聴できない
- 22の配布資料が公開されていない
- 45%加算と年間支給額の構造が十分に審議された形跡がない
- 事務局が設定した「引上げ幅」を選ぶ形になっている
- 少数意見や答申案の修正過程を追えない
という意思決定過程です。
| 評価項目 | 判定 | 主な理由 |
|---|---|---|
| 条例上の形式 | おおむね適合 | 10人以内、市長が公共的団体代表等から委嘱 |
| 委員の独立性 | 要改善 | 7団体代表、学識1、公募2。全員を市長が選任 |
| 意見の多様性 | 一部あり | 据置意見は記録されたが、選択肢自体が引上げ中心 |
| 資料の十分性 | 外部検証不能 | 22資料の現物が未公表 |
| 会議の公開性 | 不十分 | 傍聴不可、録音はあるが要旨のみ公表 |
| 答申理由の再現性 | 不十分 | なぜ2.8%でも0%でもなく1.4%なのか客観式がない |
| 1.4%という結果 | 直ちに不合理とはいえない | 財政制約を考えた抑制案だが、説明は再現できない |
1 審議会が評価できる点
一方的に「何も審議していない」と評価するのも正確ではありません。
第1回では、物価、人事院勧告、県内順位、財政指標、議員定数、会議日数、政務活動費の有無などが取り上げられています。
また、議員報酬について据置を求める意見も記録され、最終答申には「隔年開催」「幅広い委員選任」「地方自治に精通した委員」という付帯意見が入りました。第1回審議会要旨、答申書
したがって、問題は「一切審議していない」ことではなく、「市民が検証できるだけの資料と記録が公開されていない」「審議対象に重要な抜けがある」ことです。
2 委員選任の問題
形式上は条例に適合している
弥富市の条例では、審議会を10人以内とし、市域内の公共的団体等の代表者その他の住民から、必要の都度、市長が委嘱すると定めています。弥富市特別職報酬等審議会条例
今回の内訳は次のとおりです。
- 公共的団体・市関係委員会等 7人
- 学識経験者 1人
- 公募市民 2人
したがって形式的な違反は確認できません。
ただし、実質的な独立性には疑問が残る
JA、商工会、区長会、社会福祉協議会、民生委員、女性の会、行政改革推進委員会など、地域事情に詳しい団体が参加する意義はあります。
しかし、これらの多くは日頃から市と関係を持つ団体です。
市長・副市長の給与を、市長が選んだ委員が審議する以上、外見上の独立性を高める工夫が必要です。
さらに、公式会議録によれば、永井利明、三浦義光、鈴木みどりの3委員は、少なくとも令和元年9月当時、弥富市議会議員として在職していました。令和元年9月10日市議会会議録
元議員であることは欠格事由ではなく、議会実務を知る長所もあります。
しかし、今回の審議対象には議員報酬が含まれます。少なくとも、
- 過去の公職歴を委員名簿に明記する
- 元議員が複数を占める場合は、市民・納税者側の委員を増やす
- 利害関係・市との契約や補助関係を申告する
- 現職・元職の市議、市職員経験者の人数に上限を設ける
といった配慮が望まれます。
公募委員の選考過程も見えない
公表資料からは、次の事項が確認できません。
- 応募者数
- 募集期間と周知方法
- 応募資格
- 選考基準
- 選考者
- 小論文・面接等の有無
- 2人を選んだ理由
公募委員が2人いるというだけでは、多様性が担保されたとはいえません。
しかも、第2回要旨には「公募枠の拡大」という意見が記載されていますが、最終答申ではこの表現が消え、「地域に密着した団体の代表者等の登用」に変わっています。第2回審議会要旨
誰の意見で、なぜ「公募枠の拡大」が答申から外れたのかは、公開資料から確認できません。
これは事務局による答申案作成過程を検証する必要性を示しています。
3 会議の公開方法には大きな問題がある
第1回会議では、「傍聴席を設けず、後日、要旨を公表する」方式を異議なく確認しています。
これを直ちに違法とは断定できません。
しかし、市長や議員自身の給与・報酬を審議する会議であり、個人の病歴や企業秘密などを扱う会議ではありません。
非公開にする積極的理由は乏しいと考えられます。
近隣の愛西市は、同じ令和7年度の特別職報酬等審議会を公開し、傍聴者を受け入れ、会議録だけでなく、諮問書、委員名簿、会議資料、追加資料を一式公表しています。愛西市・第1回審議会資料
一方、弥富市の公式ページで公開されているのは、
- 答申書
- 第1回要旨
- 第2回要旨
だけであり、22の配布資料は掲載されていません。弥富市特別職報酬等審議会
つまり、愛西市との比較からも、弥富市の非公開は制度上避けられないものではなく、市の運用上の選択だったと考えられます。
要旨の精度にも問題がある
第2回要旨では、委員の意見がA、B、C……と匿名化されていますが、AからGまでの後に、再びF委員が登場します。
同一委員の再発言なのか、H委員の誤記なのか判別できず、8人の出席委員と8票の対応関係を再現できません。
また、欠席した鈴木委員から書面意見を受け取ったとありますが、
- 書面意見の具体的内容
- 票数に含めたのか
- 答申案にどう反映したのか
も明確ではありません。
録音まで行った以上、少なくとも発言者名を付した詳しい会議録、又は匿名化した逐語録を公開すべきでした。
4 選択肢の設定が引上げ方向に偏っている
事務局が提示した選択肢は、
- 据置0%
- 1.4%引上げ
- 2.1%引上げ
- 2.8%引上げ
でした。
しかし、第1回終了時には、市長等について据置案が実質的に消え、1.4~2.8%の引上げ幅を選ぶ構造になっています。
議員についてだけ据置案が残されました。引下げ案は市長等にも議員にもありません。
これは、審議会が「適正額をゼロから考えた」というより、「事務局が設定した引上げ幅から選んだ」形に近いものです。
特に、
- 1.4%=人事院勧告2.8%の半分
- 2.1%=累計4.2%の半分
- 2.8%=指定職改定率
という設定に、職責や財政力を数量化した客観的根拠はありません。
なぜ「半分」が妥当なのかは、近隣市が採用したという以上の説明がなく、政策判断として再現できません。
本来は、先に評価基準と配点を決め、その後で金額を算定すべきです。
5 事務局資料について、何が不足しているのか
ここは表現を正確にする必要があります。
「資料を全く出していない」は不正確です。要旨上、委員には22資料が示され、年額換算も説明されています。
正しくは、
委員には22資料が示されたとされるが、資料の現物が市民に公開されていないため、その内容と十分性を検証できない。要旨から見る限り、年間支給額を左右する重要事項の審議が不足している
という評価になります。
特に不足又は不明なのは、次の項目です。
① 45%加算の根拠と他市比較
弥富市議会議員の期末手当は、報酬月額に45%を加算した額が基礎です。弥富市議会・月額報酬と期末手当
しかし、会議要旨には、
- なぜ45%なのか
- いつ導入したのか
- 20%等の自治体とどう比較したか
- 現在も45%が妥当なのか
を審議した記録がありません。
月額を1.4%上げると、45%加算を通じて期末手当も同時に増えます。したがって、月額と45%加算を切り離して考えることはできません。
② 月額順位ではなく年間支給額の一覧
要旨には「年額換算でも下位」とだけありますが、37市の具体的な年額、加算率、支給月数、順位は公開されていません。
あま市は一般議員の月額が40万6,000円で、弥富市の40万3,000円より高い一方、期末手当の加算率は20%です。あま市議会議員報酬条例
その結果、現在の年間支給額は、
- 弥富市一般議員 約688万1,225円
- あま市一般議員 657万7,200円
- 差額 約30万4,000円
となります。
この例は、「月額順位が低い」という説明だけでは実態を表せないことを示しています。
ただし、あま市一市だけで高低を決めるのも適切ではありません。37市について同一基準日で、
- 月額
- 期末手当加算率
- 支給月数
- 年間支給額
- 人口
- 財政規模
- 議員定数
- 政務活動費
を並べる必要があります。
③ 改定による総額影響
現在の支給率を前提に単純計算すると、今回の1.4%改定による年間増加額は、市長等3人、議長、副議長、一般議員14人の合計で約195万円です。社会保険料の事業主負担等は含みません。
審議会に「1人当たりの増額」だけでなく、「市全体で年間いくら増えるか」が提示されたかは確認できません。
金額自体は市財政全体から見れば大きくありません。しかし、自らの報酬を決める制度への信頼という点では、総額表示は必要です。
④ 「政務活動費なし」と議員報酬の混同
政務活動費は、調査研究等に必要な経費を領収書等に基づいて支出する制度です。議員報酬は議員個人の所得です。
自己負担が問題なら、
- 政務活動費の導入
- 実費弁償制度
- 調査研究費の透明な精算
も選択肢になります。
「政務活動費がないから、使途を問わない議員報酬を上げる」という説明だけでは、制度目的が混同されています。
⑤ 若い候補者・専業議員の生活実態
「若年層や専業議員は生活が困難」という意見自体は理解できます。しかし、
- 議員の年齢構成
- 副業・専業の実態
- 議員活動の年間時間
- 自己負担額
- 立候補を断念した人への調査
- 報酬額と立候補者数の関係
といった実証資料は、公開された要旨から確認できません。
印象や一般論ではなく、弥富市の実態調査が必要です。
⑥ 財政の将来見通し
答申は令和6年度決算の財政力指数、将来負担比率、基金残高を参照していますが、今後の大型事業、市債発行、基金減少を含む中期的な見通しをどこまで見たか不明です。
財政状況を理由に2.8%を1.4%へ圧縮したのであれば、どの財政指標が何%分の抑制につながったのか説明すべきです。
6 委員意見のあり方
今回の審議は、各委員が1.4%、2.1%、2.8%、据置のどれを支持するかを述べ、票数を集計する方法でした。
しかし、報酬審議会は単なる多数決機関ではありません。
本来は次の順序が望まれます。
- 報酬を決める共通基準を合意する
- 月額と期末手当を含む年間支給額を比較する
- 市長、副市長、教育長、議員をそれぞれ別に職務評価する
- 財政制約と人材確保を数値で評価する
- 据置・引下げ・引上げを同じ条件で比較する
- 少数意見も答申に併記する
特に、「説明しやすいから市長等と議員を同じ率にする」という考え方は弱いものです。
市長は執行機関の長、議員は執行部を監視する二元代表制の一方です。副市長と教育長は選挙ではなく選任です。職責も人材確保の仕組みも異なるため、同率にするなら、その理由を別々に示す必要があります。
7 答申は事務局や市長を免責しない
報酬等審議会は市長の諮問機関です。答申を受けても、市長が条例案を提出し、最終的には議会が議決します。
したがって、
審議会が1.4%と答申したから、市長には判断責任がない
第三者の答申だから、議会は従えばよい
ということにはなりません。
令和8年3月議会では、実際に市長が条例改正案を提出し、議会が可決しています。令和8年3月25日会議録
答申は重要な意見ですが、法的に市長・議会の判断責任を肩代わりするものではありません。
8 加藤市議のこれまでの主張の評価
加藤市議は令和8年3月議会で、議員報酬と市長等の給与の引上げに反対しました。
この討論のうち、現在の一般質問につながる有効な問題提起は、
- 月額だけでなく期末手当を含めて見るべき
- 人事院勧告を自動的に議員報酬へ当てはめるべきではない
- 財政悪化やガバナンス問題も資料として示すべき
- 審議会資料を全面公開すべき
という部分です。
一方、今後は次の表現を修正した方が説得力が上がります。
「議員報酬は成果報酬」は弱い
議員の基本報酬を、その時々の多数派が評価する「成果」で上下させると、少数意見や行政監視を弱める危険があります。
より適切なのは、
一般職の生活給や人材市場の指標を、選挙で選ばれる議員の報酬に機械的に連動させるべきではない。議員の職責、活動実態、候補者確保、住民代表性を独自に評価すべきだ
という主張です。
市長個人の責任と職の基本給は分ける
官製談合、国費返還、財政運営などは、市長の政治的・監督上の責任として厳しく検証すべきです。
ただし、将来別の人物も就任する「市長という職」の基本給と、現職市長個人の責任は、制度上いったん分けた方が論理的です。
個人責任は、
- 給与の特例減額
- 議会の問責
- 選挙での評価
- 損害が確定した場合の賠償責任
などで問うのが基本です。
一般質問では、個人攻撃と受け取られやすい「半額でも多い」「成果主義しかない」より、資料・手続・透明性に集中した方が市側の答弁逃れを防げます。
9 加藤市議の一般質問の評価
現在の一般質問案の中で最も強いのは、次の4点です。
非常に有効
- 期末手当を含む年間支給額の公表
- 45%加算の導入時期と根拠
- あま市との逆転を審議会に示したか
- 月額だけでなく年間総額を審議したか
特に刈谷市は、月額、6月・12月の期末手当、年間支給額を円単位で公表しています。刈谷市議会・議員報酬等
弥富市にも実施できない理由はほぼありません。
10 一般質問に追加すべき核心質問
加藤市議の一般質問には、次の質問を追加する価値があります。
会議公開
個人情報や企業秘密を扱わない報酬審議会について、傍聴席を設けなかった具体的理由は何か。誰がこの公開方法を提案し、どの規程に基づいて決定したのか。次回から原則公開とする考えはないか。
22資料の公開
委員に配布した22資料を、なぜ市ホームページに掲載していないのか。非公開情報を除き、全資料を公表する考えはないか。
録音・答申案修正過程
会議録作成のための録音データ、事務局が作成した答申案の各版、委員から提出された修正意見、欠席委員の書面意見は保存されているか。情報公開請求の対象となる行政文書か。
委員選任
公募委員の応募者数、募集方法、選考基準、選考者を明らかにされたい。また、委員の過去の公職歴、市との契約・補助関係等を確認し、委員名簿に明記する考えはないか。
選択肢の設定
なぜ市長等については、実質的に1.4%、2.1%、2.8%の引上げ案だけに絞り、据置・引下げを同等の選択肢として残さなかったのか。選択肢を決めたのは事務局か、審議会か。
公募枠拡大が答申から消えた理由
第2回要旨にあった「公募枠の拡大」が最終答申では明記されなかった。誰の意見により、どの段階で表現を変更したのか。
11 情報公開請求したい資料
- 第1回の資料1~22の全て
- 第2回の資料1~5の全て
- 元データ、出典、作成基準日
- 会議録音データ又は反訳
- 欠席委員の書面意見
- 答申案の初稿、修正版、最終版
- 委員回覧時の修正意見
- 公募委員募集要項、応募者数、選考基準、選考記録
- 各団体への推薦依頼文と回答
- 37市の月額・加算率・支給月数・年間支給額一覧
- 1.4%改定による年間総影響額
- 45%加算導入時の条例案、提案理由、新旧対照表、議会会議録
録音データについては保存期間が短い可能性があるため、「廃棄せず保存するよう求める」ことも検討すべきです。
最終評価
今回の審議会は、形式上の手続を踏み、反対意見も一応記録しているため、「完全なお手盛り」「審議ゼロ」と断定するのは行き過ぎです。
しかし、市民から見れば、
誰が、どの資料を基に、なぜ1.4%と判断したのか
を再現できません。
したがって、一般質問の中心は「1.4%が高いか安いか」だけでなく、
22資料を公開せず、45%加算の根拠を検証せず、傍聴も認めず、市長が選任した委員による要旨だけを根拠として、市民に納得を求めることができるのか
という意思決定過程の問題に置くのが最も有効です。

