2027年ADB名古屋総会に向け、NGO・NPOの連絡会が始動します
2010年、生物多様性条約COP10が開かれ、「愛知目標」と「名古屋議定書」が採択された名古屋国際会議場。
その同じ会場を中心に、2027年5月2日から5日まで、第60回アジア開発銀行年次総会が開催されます。
加盟国・地域の財務大臣や中央銀行総裁、金融機関、企業、国際機関、NGO、報道関係者など、約5,000人が集まる大規模な国際会議です。
この総会に向けて、国内外のNGO・NPOが連携し、市民社会の立場からADBの政策や融資を学び、検証し、意見を届ける「ADB名古屋総会NGO連絡会〈仮称〉」が設立されます。
リリオの会の今枝久さんから案内をいただきました。今枝さんは東海市民社会ネットワークの幹事でもあり、2010年のCOP10で生まれた市民社会の熱気が再び東海地方に広がることを期待しています。
9月2日にオンライン設立総会
ADB名古屋総会NGO連絡会〈仮称〉設立総会
- 日時:2026年9月2日(水)午後7時30分~9時
- 開催方法:オンライン
- 内容:参加者の自己紹介、活動計画案・資金計画案の検討など
- 参加登録:オンライン参加申込フォーム
今回は講演を聞くだけの催しではなく、これからどのような活動を行うかを話し合う「設立総会」です。国際協力や国際金融の専門知識がなくても、まず情報を知り、一緒に学ぶところから参加できます。
そもそも、アジア開発銀行とは
アジア開発銀行、ADB(Asian Development Bank)は、1966年に設立された国際開発金融機関です。フィリピンのマニラに本部を置き、現在は69の国・地域が加盟しています。
政府や企業に対して、道路、鉄道、港湾、ダム、発電、上下水道、都市開発、農業、教育、保健、防災などの事業資金を融資・出資・無償支援し、政策づくりへの助言も行っています。
2025年にADBが自己資金から承認した事業は、総額293億ドルに達しました。気候変動対策として計上された自己資金も135億ドルで、年間融資承認額の51%を占めています。どの事業を選び、誰に、どのような条件で資金を出すかは、アジア・太平洋地域の社会と環境を大きく左右します。
日本はADBに大きな責任を負っています
日本は、米国と並ぶADBの最大株主です。
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出資シェア:約15.6%
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投票権シェア:約12.7%
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最貧国などに無償支援を行う「アジア開発基金」の最大拠出国
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ADB最大規模の単独国信託基金「豊かで強靱なアジア太平洋日本基金」の拠出国
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これまでの歴代総裁を日本人が務める
したがって、日本は単なる総会開催国ではありません。
ADBがどのような開発政策を採用し、どの事業に融資するかについて、強い発言力と説明責任を持つ国です。
なお、ADBのお金がすべて日本の税金から直接支出されているわけではありません。通常の融資財源には、加盟国の払込資本、ADBの利益・準備金、ADBが国際市場で発行する債券の収入などが使われます。一方、日本政府は出資金のほか、無償援助を行う基金や信託基金にも公費を拠出しています。
つまり市民が問うべきなのは、単純な「海外へのばらまき」ではありません。
日本が大きな影響力を持つ国際金融機関を通して、誰のために、どのような条件で、どのような開発を進めているのかという問題です。
開催を歓迎するだけでなく、市民が検証する必要があります
ADBの融資によって、電気、水、交通、医療、教育を利用できるようになった地域がある一方、大規模な道路、ダム、発電所、都市開発などでは、住民移転、生活再建、環境破壊、先住民族の権利、債務負担、情報公開などが問題になることがあります。
ADB自身も、環境・社会への影響を管理するための制度や、影響を受けた住民が申し立てる「アカウンタビリティ・メカニズム」を設けています。
しかし、制度があることと、現地で住民の声が十分に反映されることは同じではありません。融資を実行する前の住民参加、情報公開、代替案の検討、被害が生じた場合の救済まで、市民社会が継続して確認する必要があります。
2026年のADB年次総会でも、市民社会プログラムの主要議題として、次の問題が取り上げられました。
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環境・社会 safeguards とADBの説明責任
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気候変動対策と公正なエネルギー移行
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女性や若者が参加する持続可能な都市づくり
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災害に強い教育・公共サービスへの資金
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住民協議や苦情申立てを行った人への報復防止
これらはADBに反対するためだけの議論ではありません。開発の効果を高め、失敗や被害を防ぎ、政策を修正できる仕組みをつくるための議論です。
2026年ADB総会・市民社会プログラム/ADB環境・社会フレームワーク
すでに愛知県と名古屋市の公費が使われています
愛知・名古屋の支援実行委員会が公表した2026年度予算案は、総額3億5,078万2千円です。
このうち、
- 愛知県負担金:1億7,339万1千円
- 名古屋市負担金:1億7,339万1千円
合計3億4,678万2千円、予算全体の約98.9%を愛知県と名古屋市の公費が占めます。これは2026年度分だけの数字であり、総会開催に必要な費用全体ではありません。
一方、開催推進会議の公表名簿には、経済団体、金融、交通、観光、行政、大学など39団体が並んでいますが、少なくとも現時点では、NGO・NPOを代表する組織は見当たりません。
だからこそ、行政や経済界による「歓迎」「観光」「地域PR」だけでなく、税金、環境、人権、貧困、地域住民への影響を検証する市民社会の窓口が必要です。
1997年の福岡総会は、政府との対話制度を生みました
今回の連絡会には、過去の確かな成果があります。
1997年のADB福岡総会を前に、NGOと国会議員が、ADBなどの多国間開発銀行に対する日本政府の意思決定や説明責任について問題提起しました。
その結果、同年4月、当時の大蔵省とNGOとの定期協議が始まりました。現在の「財務省・NGO定期協議」です。
この協議は一時的なイベントで終わらず、2025年までに85回開催されています。ADBだけでなく、世界銀行、IMF、国際協力銀行、JICAなどの政策や事業について、政府と市民社会が意見交換する制度として継続してきました。
一回の国際会議をきっかけに、約30年続く政府との対話制度が生まれたのです。
名古屋総会で市民が問いたいこと
NGO連絡会では、少なくとも次のような視点を共有していく必要があります。
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その事業は、本当に貧困の削減や住民生活の向上につながるのか
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利益を受ける人と、移転や環境悪化などの負担を受ける人は誰か
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住民に十分な情報が提供され、計画段階から参加できているか
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気候変動対策とされる事業が、地域の自然や暮らしを壊していないか
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融資を受ける国に、返済可能性を超える債務を負わせないか
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日本政府はADB理事会で何を主張し、どのような判断をしたのか
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問題が起きたとき、誰が責任を負い、被害をどう救済するのか
「開発」という言葉だけで事業を正当化するのではなく、目的、費用、効果、リスク、代替案、意思決定過程を公開して検証することが重要です。
弥富市を含む東海地域にもつながる問題です
ADBの問題は、遠い外国だけの話ではありません。
巨大公共事業、財政負担、防災・気候変動、環境影響、住民参加、情報公開、専門家の独立性といった論点は、自治体の政策決定にもそのまま当てはまります。
海外の開発事業を市民の目で検証する経験は、地域の道路、学校、上下水道、公共施設、防災事業などを考える力にもなります。
また、製造業と国際的なサプライチェーンが集積する東海地方にとって、アジアの人権、環境、脱炭素、労働、災害リスクは、地域経済の将来にも直結しています。
「詳しくないから参加しない」ではなく、まず知るところから
連絡会に参加することは、最初からADBへの賛成・反対を決めることではありません。
日本政府がどのような立場を取り、私たちの公的資金や国際的な影響力がどのように使われているのかを学び、疑問を出し、必要な改善を提案するための場です。
2010年のCOP10では、名古屋から「愛知目標」と「名古屋議定書」が世界へ発信されました。2027年のADB総会でも、単なる歓迎行事に終わらせず、市民社会と行政、企業、国際機関が対話できる仕組みを東海地方に残せるかが問われています。
まずは9月2日のオンライン設立総会から、一緒に学び始めてみませんか。
追加情報
愛知・名古屋支援実行委員会は、2026年9月1日から「ADB年次総会パートナーシップ事業」の募集も開始しています。市民団体、学校、企業、自治体などが実施する講演会、学習会、国際交流事業などを認定し、公式サイトで紹介する制度です。
助成金制度ではありませんが、今後、NGO連絡会や地域団体が開く学習会を広く周知するために活用できる可能性があります。
