十四山中学校跡地利活用整備方針(案)の分析
体育館等を撤去しても、南校舎は南海トラフ地震に備える防災施設として残すべきである
作成日:令和8年(2026年)9月2日
検討・協議用
結論
今回の整備方針案は、従来よりも住民意見、防災、地域交流、複合利用を前面に出した点では改善しています。
しかし、実態はなお、
「住民の声は文書に載せたが、住民が求めた比較検証までは行っていない」
という段階です。
特に問題なのは、建物の安全性、アスベスト、基礎杭、防災上の実効性を十分に調べないまま、全延床面積の約88%を令和11年度までに解体する方向を先に決めていることです。
体育館、プール、給食棟、部活動棟等について、棟別調査の結果、防災上の寄与が小さく、安全性や維持費に課題がある施設を選別して撤去することは合理的です。
多目的グランドやイベント広場の整備とも両立できます。
一方、3階建て鉄筋コンクリート造、延床面積3,314平方メートルの南校舎は、普通教室、多層階、屋上、トイレ、給排水設備等を備えています。
旧十四山中学校が現在も2次開設避難所及び緊急時避難場所に位置付けられていることを考えれば、南校舎は「不要な旧校舎」ではなく、南海トラフ地震等に備えるための既存の防災資産として評価すべきです。
したがって、
体育館やプール等を撤去して多目的グランドを整備する一方、南校舎は、原則として南海トラフ地震の発生まで「防災休止施設」として残置する。
という選別保存案を、正式な比較対象に加えるべきです。
ただし、これは南校舎を無期限、無条件、無管理で放置するという意味ではありません。
3年ごとに構造安全性、アスベスト、設備、維持費、防災効果を再評価し、必要最小限の管理を続けることが前提です。
発災前に解体できるのは、同等以上の代替防災機能が確保され、実動訓練で機能が確認された場合、又は客観的な調査によって安全に維持できないと判明した場合に限るべきです。
現状の案は「最終的な整備方針」ではなく、南校舎の選別保存を含む追加調査と比較検証を行うための「検討素案」と位置付けるのが妥当です。
1 今回の案で改善された点
評価できる点はあります。
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硬式野球場中心の案から、多目的グランド、イベント広場、地域交流を含む方向へ広がった
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全校舎解体ではなく、特別教室棟と渡り廊下を残す方針になった
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「防災拠点」「地域交流」「教育・体験」を複合させる考えが示された
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十四山中学校跡地では民間事業化が難しいというサウンディング結果を認め、公共利用を基本とした
-
住民説明会やパブリックコメントで出た、防災、情報公開、試験利用等の意見を本文に掲載した
方向性としては、単一用途の運動施設から「平時にも災害時にも使う地域拠点」へ修正されています。
ただし、表現が柔らかくなった一方で、「南校舎等を解体し、上野グランドを十四山グランドへ統合する」という事業の骨格は残っています。
改善はしていますが、住民が求めた代替案の比較まで行われたわけではありません。
2 市案と「南校舎防災保存案」の違い
市案の数字を再計算すると、次の構造です。
市の整備方針案
| 項目 | 面積・費用 | 分析 |
|---|---|---|
| 既存建物全体 | 6,436㎡ | 12棟合計 |
| 残す建物 | 783㎡ | 特別教室棟728㎡+渡り廊下55㎡ |
| 残す割合 | 12.2% | 全体の約8分の1 |
| 解体する建物 | 5,653㎡ | 南校舎、体育館、給食棟等 |
| 解体する割合 | 87.8% | 実質的には大部分を解体 |
| 解体部分の概算 | 約2億8,265万円 | 5万円/㎡で機械的に計算 |
| 残す部分の大規模修繕 | 約1億2,215万円 | 15万6,000円/㎡で機械的に計算 |
| 判明している工事費小計 | 約4億480万円 | グランド等の整備費を含まない |
「一部を残す計画」と表現されていますが、実際には約88%を解体する案です。
南校舎を加えて残す代替案
| 項目 | 面積・割合 | 考え方 |
|---|---|---|
| 南校舎 | 3,314㎡ | 防災休止施設として保存 |
| 特別教室棟・渡り廊下 | 783㎡ | 平時利用を含めて改修 |
| 保存部分合計 | 4,097㎡ | 既存建物の約63.7% |
| 撤去部分合計 | 2,339㎡ | 既存建物の約36.3% |
| 撤去費の単純試算 | 約1億1,695万円 | 市と同じ5万円/㎡を仮置き |
この代替案では、体育館、プール、給食棟、部活動棟等を整理し、多目的グランドを拡張しながら、南校舎の防災機能を残せます。
市の単価を南校舎の「全面大規模修繕」にそのまま当てはめると約5億1,698万円になります。
しかし、住民が提案しているのは、全館を毎日使うための全面改修ではありません。
使用する上階、階段、トイレ、防災設備等を限定した「防災休止」であり、必要なのは全面改修費ではなく、最低限の安全確保費と年間管理費の積算です。
3 判明している約4億480万円は総事業費ではない
市案で示された約4億480万円には、少なくとも次の費用が十分に反映されていません。
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多目的グランド拡張
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駐車場・イベント広場
-
排水・地盤対策
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アスベスト除去
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杭の処理
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設計・工事監理
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備品、通信、非常用電源
-
給水、トイレ等の防災設備
-
物価上昇
-
予備費
したがって、現段階では事業全体の総額も、南校舎を残した場合との差額も分かりません。
市は、少なくとも次の二つを別々に積算すべきです。
-
市案どおり南校舎を解体する場合の総事業費
-
南校舎を防災休止施設として残す場合の初期費用及び年間維持費
4 「概算費用」の作り方に限界がある
資料の解体費と大規模修繕費は、全ての棟について、
- 解体費=延床面積×5万円
- 大規模修繕費=延床面積×15万6,000円
という一律単価で計算されています。
鉄筋コンクリート造3階建ての南校舎も、鉄骨造の渡り廊下も、プロパン庫も、基本的に同じ平方メートル単価です。
これは初期段階の面積試算には使えますが、棟別の概算工事費とは言い難いものです。
次の違いが反映されていないからです。
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構造と階数
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建物の実際の劣化状況
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耐震診断・耐震補強の履歴
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コンクリートの中性化、ひび割れ、鉄筋腐食
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屋根、外壁、建具、設備の状態
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アスベスト含有建材の種類、場所、面積
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杭の本数、長さ、撤去又は残置方法
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内装、設備、配管の量
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周辺への飛散・騒音・振動対策
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解体重機の進入条件
「築年数が古い」ことと「防災施設として安全に限定使用できない」ことは同義ではありません。
棟ごとの調査結果を示さず、築年数と一律単価だけで南校舎の解体を決めるのは不十分です。
5 市の比較は、南校舎の防災休止案を欠いている
資料は、全建物を集会施設等として全面改修し、日常的に使用する場合について、
- 大規模修繕費:約10億円
- 年間維持費:約4,884万円
としています。
しかし、住民から提案されているのは「全建物を全面改修して、全室を毎日使用する案」だけではありません。
本来比較すべき案は次のとおりです。
| 案 | 内容 |
|---|---|
| A | 市案どおり、南校舎を含む約88%を解体 |
| B | 3~5年間、全体を防災休止施設として最低限維持 |
| C | 体育館、プール、危険棟等を撤去し、南校舎を防災施設として残置 |
| D | 南校舎の上階・普通教室と特別教室棟を部分利用 |
| E | 3年間の試験利用と防災訓練後に最終判断 |
特にC案については、南海トラフ地震の発生までは南校舎を防災休止施設として残すことを基本とし、3年ごとに継続の可否を評価します。
市の比較は実質的に、
- 全面活用すると約10億円、年間約5,000万円
- 特別教室棟だけを残し、他を解体する
という二択です。これは比較条件が公平ではありません。
パブリックコメントで「3年程度の実証期間」が提案されたことを記載しながら、その費用や効果を試算していません。
意見を紹介しただけで、政策比較には反映していない状態です。
6 なぜ特別教室棟だけでは防災機能の代替にならないのか
旧十四山中学校は現在も2次開設避難所です。
また、市の緊急時避難場所一覧では、校舎2階・3階・屋上を避難場所とし、学校全体で4,171人を収容可能としています。
この4,171人は、避難可能面積1平方メートル当たり1人で算定した、高潮、洪水、津波等から命を守るための緊急避難人数です。
避難生活ができる人数ではありません。
また、4,171人のうち南校舎、特別教室棟、屋上がそれぞれ何人分を担うのかは示されていません。
市が残そうとしているのは、鉄骨造2階建ての特別教室棟728平方メートルと渡り廊下55平方メートルです。
一方、解体対象の南校舎は鉄筋コンクリート造3階建て、3,314平方メートルです。
特別教室棟だけを残す案では、次の機能をどれだけ失うのか検証されていません。
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3階及び屋上への垂直避難
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多人数を短時間で収容する機能
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普通教室を使った家族単位の避難
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高齢者、障害者、乳幼児、女性等の分離スペース
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医療、休養、授乳、感染症対応の個室
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長期浸水時に上階で滞在する機能
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備蓄、通信、救援活動のための諸室
したがって、「一部の建物を残したから防災機能は維持される」とは言えません。
7 南校舎には三つの防災上の役割がある
防災機能は、次の三つに分けて評価する必要があります。
1 高潮・洪水・津波等から命を守る緊急時避難場所
弥富市内及び周辺には高台が少なく、多層建物の上階と屋上には代替しにくい価値があります。特に徒歩で遠くまで避難できない高齢者や、避難開始が遅れた住民にとって、近隣の垂直避難場所は重要です。
2 発災後に生活する指定避難所
内閣府の避難所運営ガイドラインは、スフィア基準として1人当たり最低3.5平方メートルの居住空間を示し、パーティション、簡易ベッド、冷暖房設備、空調の早期復旧等を求めています。
実際の生活可能人数を算定する際には、廊下、階段、トイレ、受付、備蓄、医療、要配慮者スペース等を除く必要があります。
普通教室を持つ南校舎は、体育館だけの避難所よりも、家族、要配慮者、感染症対応等の空間を分けやすい利点があります。
3 地域の救援・復旧活動を支える防災拠点
上階を備蓄、通信、応援職員、保健・福祉支援、物資管理等に使用し、運動場を物資集積、車両展開、仮設施設、災害廃棄物の一時管理等に活用することが考えられます。
南校舎と運動場を一体的に残すことで、「建物の上階」と「広い屋外空間」を組み合わせた防災拠点にできます。
8 「南海トラフ地震まで残す」を現実的な制度にする
地震調査研究推進本部は、南海トラフ地震の発生確率を最も高い「Ⅲランク」としています。
具体的な確率を伝える場合は、今後30年以内に「60~90%程度以上」とする表現を防災上重視することが望ましいとしています。
しかし、発生時期が分からない地震だけを期限にすると、「無期限保存ではないか」という批判も予想されます。そこで、次の管理・再評価制度を組み込む必要があります。
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南校舎は、原則として南海トラフ地震の発生まで残置する
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使用範囲を2階、3階、屋上、必要な階段・トイレ等に限定する
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不使用部分の電気、給水、空調等は区画ごとに停止する
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屋根、外壁、雨漏り、消防設備、アスベスト、鍵・警備を定期管理する
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非常用電源の接続盤、優先回路、通信、給排水、災害用トイレを整備する
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年1回以上、開錠、避難経路、電源、通信、トイレ等を実動確認する
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3年ごとに安全性、維持費、防災効果、代替施設の整備状況を公表する
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発災後は避難及び応急復旧に活用し、その役割を終えた段階で改めて将来利用を判断する
発災前の解体を検討できる例外は、次の二つに限定すべきです。
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同等以上の垂直避難、避難生活、防災拠点機能を持つ代替施設が供用され、実動訓練で機能が確認された場合
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構造調査等により、安全性を合理的な費用で維持できないと判明した場合
いずれの場合も、調査結果、失われる機能、代替策、費用比較を公表し、議会及び住民の意見を聴いて判断する必要があります。
9 アスベストと杭を調べずに解体費は確定できない
今回の整備方針案には、アスベストの詳細な調査結果や除去費が示されていません。
解体・改修工事では、工事対象部分の材料について書面調査と目視調査を行い、含有の有無が不明な場合は分析調査又は含有とみなした対応が必要です。
対象となり得るのは吹付け材だけではありません。
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天井・壁の成形板
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スレート
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Pタイル
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床材の接着剤
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外壁仕上塗材
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下地調整材
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屋根材
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配管保温材
南校舎を保存する場合も、アスベスト調査は必要です。
ただし、アスベストがあることが直ちに全面解体の理由になるわけではありません。
建材の種類、劣化状態、使用区域、飛散可能性に応じて、除去、封じ込め、使用制限、定期監視を選ぶべきです。
また、校舎の杭についても、撤去、途中切断、地中残置のいずれにするかで費用と将来の土地利用が変わります。
アスベストと杭を調べずに示した解体費は、予算判断に使える精度ではありません。
10 地方債を理由に解体を急いではならない
資料は、令和11年度中までに解体すれば公共施設等適正管理推進事業債を活用し、約1億円を交付税措置に見込めるとしています。
しかし、ここでは、
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統合・機能廃止後、一定期間内に除却するという施設側の要件
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公共施設等適正管理推進事業債そのものの制度期間
が混同されていないか確認が必要です。
市は少なくとも、次の事項を公表すべきです。
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愛知県及び国との事前協議結果
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適用される事業区分
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起債対象となる解体費
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地方債充当率
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交付税算入率
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起債額
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償還期間、利子、実質的な一般財源負担
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制度が延長されなかった場合の対応
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南校舎を残した場合に対象外となる額
交付税措置は現金の補助金ではなく、地方債の元利償還金の一部を後年度の基準財政需要額に算入する仕組みです。
「約1億円もらえるから、今解体した方が有利」と単純化することはできません。
防災資産を失う判断を、将来制度の適用見込みだけで先に決めるべきではありません。
11 屋外運動施設の統合も別途検証が必要
弥富市は、屋外運動施設が1人当たり4.55平方メートルで、比較対象平均2.57平方メートルより多いとしています。
しかし、比較対象が「市町村A~D」と匿名であるため、次の条件を確認できません。
-
比較自治体の名称、人口、面積
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都市部・農村部等の地域特性
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河川敷や学校施設を含むか
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競技別の施設構成
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公共交通や自動車による到達性
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防災上の利用価値
施設が多いことと、上野グランドを十四山へ統合すべきことは直結しません。低平地では施設の分散が災害時の代替性になります。
統合に当たっては、南部利用者の移動時間、車を利用できない人への影響、利用可能枠、予約競争、災害時の分散拠点機能、十四山グランドの整備費、上野グランドの売却・賃貸収入まで比較すべきです。
なお、南校舎を残すことと多目的グランドを整備することは、必ずしも対立しません。体育館、プール等を撤去する配置案を作成し、実際に必要な競技面積、避難動線、緊急車両動線を図面で比較する必要があります。
12 民間提案の扱いには論理的不整合がある
資料は、民間事業者から既存校舎の一部を使う提案があったものの、「校舎全体、敷地全体の利活用ではない」として、全体の活用策としては採用困難としています。
しかし、市自身の案も、校舎の一部である特別教室棟と渡り廊下だけを活用する案です。
民間の部分活用案については、
- 単独では全体計画にならない
- しかし、公共利用、防災利用、運動施設等を組み合わせる複合計画の構成要素にはなり得る
と評価するのが妥当です。
市の部分利用は認めながら、民間提案は「部分利用だから難しい」と整理するのは公平ではありません。
サウンディングについても、参加事業者数、提案条件、価格、採算条件を可能な範囲で公表すべきです。
13 住民参加には「件数」と「反映結果」が必要
前回のパブリックコメントは11人、36件でした。
今回の資料では、地域資源バンク登録者へのアンケート結果を紹介していますが、対象者数、回答者数、回答率、年代、居住地域、質問項目、各意見の件数が示されていません。
「期待が高い」「確認された」と一般化する前に、少なくとも次の対応表が必要です。
| 住民意見 | 件数 | 市の判断 | 採否理由 | 計画への反映箇所 |
|---|---|---|---|---|
| 3年間の試験利用 | ||||
| 南校舎の防災保存 | ||||
| 防災機能の具体化 | ||||
| 費用と財源の公開 |
特に「体育館等を撤去し、南校舎を南海トラフ地震に備えて残す案」を、採用又は不採用とする根拠を数字で示す必要があります。
14 文書として不足している事項
内容以前に、次の点も修正又は補足が必要です。
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目次と本文の章番号が一致していない
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4ページに説明のない記号が残っている
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費用単価の出典、算定年度、消費税の扱いがない
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「大規模修繕」の工事範囲が定義されていない
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比較対象自治体が匿名
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サウンディング参加者数が不明
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「防災拠点」の性能目標がない
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全体事業費と財源計画がない
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南校舎解体後に失われる避難面積・人数がない
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南校舎を防災休止した場合の年間費用がない
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南校舎と多目的グランドを両立させる配置比較がない
方針決定後、直ちに設計へ進むための資料としては、基礎情報が不足しています。
15 総合評価
| 評価項目 | 評価 |
|---|---|
| 利活用の方向性 | 一定の改善 |
| 住民意見の掲載 | 改善 |
| 多目的グランド・交流機能 | 検討価値あり |
| 南校舎の防災価値の評価 | 不十分 |
| 建物・アスベスト・杭の調査 | 不十分 |
| 解体と防災休止の費用比較 | 著しく不十分 |
| 地方債の説明 | 制度確認が必要 |
| 防災拠点の性能目標 | 不明 |
| 意思決定手続 | 結論が早い |
最も合理的なのは、現段階で南校舎の解体を確定せず、次の順序で判断することです。
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全棟の構造安全性、劣化、耐震補強履歴を調査する
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アスベストと杭を調査する
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体育館、プール、給食棟、部活動棟等から撤去対象を選別する
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南校舎の2階、3階、屋上の実際の避難可能面積と人数を算定する
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南校舎の防災休止に必要な初期費用と年間維持費を算定する
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南校舎を残した配置で、多目的グランドと緊急車両動線を設計する
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解体、部分保存、転用のライフサイクルコストを比較する
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3年間の試験利用と実動防災訓練を行う
-
結果を市民と議会に公表し、再度意見を聴く
-
その上で、保存、改修、解体を最終判断する
市自身の「令和11年度まで」という前提に立ったとしても、直ちに令和8年12月に不可逆的な南校舎解体方針を確定する必要はありません。
調査、試験利用、配置比較を行った上で判断する余地があります。
市に求める核心
体育館やプール等を撤去して多目的グランドを整備することと、南校舎を防災施設として残すことは両立できます。
南校舎は、原則として南海トラフ地震の発生まで防災休止施設として残置し、必要最小限の管理と3年ごとの安全確認を行うべきです。
発災前に解体するのであれば、同等以上の代替避難機能が確保され、訓練によって実効性が確認されたこと、又は安全に維持できないことを、数字と調査結果で示す必要があります。
「一部を残したから防災に配慮した」と説明するのではなく、失われる避難機能、残る避難機能、全体事業費、南校舎を残す代替案を数字で比較してから判断すべきです。
南校舎を残す理由は、古い校舎への郷愁ではありません。
災害が起きる前に失えば、必要になったときに取り戻せない防災機能があるからです。

