8月3日開催弥富市議会公共工事入札問題調査特別委員会の公式動画はこちらから
日時: 令和8年(2026年)8月3日開催 場所: 弥富市議会(特別委員会) 出席者: 委員長、各委員、市側答弁者(財政課長 ほか)
「個人の問題」で終わらせない――弥富市の官製談合再発防止、8月3日の議会質疑から問う
2026年9月24日現在の公表資料に基づく
弥富市の官製談合事件を受け、2026年8月3日、市議会の公共工事入札問題調査特別委員会で、市の入札制度、予定価格の管理、職員の相談・通報制度、再発防止の進め方が議論されました。会議動画は市議会の公開ページから確認できます。
この日の議論で大切なのは、元職員の責任とは別に、組織の手続は不正を防ぎ、異変に気づき、止められるものだったのかという問いです。以下の市の答弁・議員の指摘は、8月3日の会議をまとめた整理記録に基づく要旨です。逐語的な引用ではありません。公表済みの市の資料、国の指針と照合し、確認できない意図や違法性は断定しません。
市の対策には前進がある。その効果をどう確かめるか
市は、2026年3月に管理職等51人を対象とした研修、6月に市長を含む162人が参加した公正取引委員会職員による講習を実施したと公表しています。検討委員会には、弁護士2人と大学准教授1人の外部有識者が加わっています。8月3日の会議をまとめた記録では、市が審査会資料の回収枚数を確認する運用に改め、対象事業者への請負代金額の30%の賠償請求について全額納付を受けたと答えたことも記されています。取り組みと回収の説明は、まず確認しておきたい点です。[1][2]
ただし、研修を実施した人数や資料の回収方法だけでは、不正が起きた経路に対策が届いているかは分かりません。公正取引委員会は2026年の調査で、官製談合の防止には発注機関による組織的な取り組みが極めて重要だとし、マニュアルの点検表などを公表しています。[3]
指名の「決裁」は残る。それで審査内容を確認できるか
8月3日の会議をまとめた記録によると、市は、工事等指名業者審査委員会で率直な意見交換を行うため議事録を作成していない一方、審査結果は決裁文書として残していると説明しました。
決裁文書は、誰が承認したかを確かめるための重要な記録です。しかし、それだけで、指名案のどこを点検し、どの理由で妥当と判断したかまで読み取れるとは限りません。議会が求めるべきなのは、発言を一字一句公開することだけではなく、候補の選定理由、偏りの確認、疑問点とその処理を、後から検証できる形で残すことです。
国の入札契約適正化指針(2024年改定)も、透明性と公正な競争を基本に、指名や落札者決定の経緯を第三者が点検できる仕組みを示しています。[4]
「参加できる制度」と「実際に競争している制度」は同じか
会議をまとめた記録では、市は一般競争入札の参加資格を合理的な範囲で設定しているとの考えを示す一方、参加事業者数や応札金額について定例的な分析は行っていなかったと説明し、今後の検証の必要性にも言及しています。
競争性は、制度の名前や参加資格の設定だけで判断できません。案件ごとの参加者数、辞退、落札率、応札価格の分布、工種、規模、地域要件、予定価格の公表時期をそろえて比較する必要があります。落札率が高いだけで談合と認定することはできません。一方、市の積算が適正だから高いという説明にも、データによる検証が必要です。どの条件で参加者が少なくなるのかを調べ、原因と改善策を公表してほしいと思います。
情報へのアクセス制限と、利用状況の点検は別の役割
会議をまとめた記録によると、市は、共有サーバーの関係データや電子調達システムへのアクセスを所定の職員に限っていると答えました。一方で、操作履歴の定期的な確認はしていなかったと説明しています。
アクセス権限を絞ることは必要です。同時に、権限のある人がどの情報を扱ったかを後から確認できることも大切です。ここで確認すべきなのは、ログが実際にどのシステムで、何を、どの期間記録しているのか、保存と点検の責任者は誰か、例外的な照会や印刷・持ち出しをどう記録するかです。会議で定期点検をしていないと答えたことから、直ちに「ログは存在しない」「今回の漏えい経路は特定できた」と結論してはいけません。
通報窓口は「ある」だけで使えるか
弥富市の職員等公益通報制度実施要綱では、副市長が通報対応を総括し、人事秘書課に内部窓口を置いています。職員だけでなく、市と契約関係にある事業者やその役職員も対象に含まれます。[5]
8月3日の会議をまとめた記録では、職員アンケートについて、制度の内容まで知っている職員が31.1%、存在を知っている人を含めると約75%という説明がありました。これは周知方法を見直す根拠になりますが、この数字だけで「制度が全く機能していない」とまでは言えません。相談や通報があった場合の守秘、利益相反の回避、調査担当の選定、通報後の不利益防止を、職員が実際に分かる形で示すべきです。
消費者庁の現在適用されている地方公共団体向けガイドラインは、庁内窓口に加えて弁護士等を配置した外部窓口を設けるよう努めること、幹部に関係する案件では独立性を確保することを示しています。2026年12月施行予定の改定版と取り違えず、現行の指針に照らして検討する必要があります。[6]
外部有識者の参加と、独立した原因調査は分けて考える
市の当初の検討フロー図には、職員アンケートによる事実関係や職場実態の検証、課題の洗い出し、外部有識者からの意見聴取が示されています。8月3日の会議をまとめた記録では、市は、検討委員会を市の内部組織と位置づけ、「真相究明」や市長等の管理監督責任の検証を目的とはしていないと答えています。[2]
外部有識者が参加していても、その人たちが独立して資料を選び、関係者に聞き取り、異なる意見を報告書に記載できるかどうかは、委員会の権限と運営を確認しなければ分かりません。財政課が事務局を務めることについても、同課の違法行為が確認されたと断定する根拠はありません。ただし、市の情報管理や契約事務も検証対象となる以上、事務局がどの資料を外部有識者に渡し、検証範囲を誰が決めるかを明らかにすることには意味があります。
また、刑事判決が元職員の動機や犯罪を判断したとしても、それだけで市の決裁、情報管理、上司への報告の仕組みまで検証済みになるわけではありません。市の説明によれば、入札制度のあり方も再発防止の検討対象です。組織の課題があったかどうかは、記録と運用を別途調べて判断する必要があります。
市に求めたい5つの公表と改善
- 審査過程を残す。 指名理由と確認項目、異論や修正があった場合の処理を記録する。
- 入札結果を継続分析する。 参加者数・辞退・落札率等を、条件をそろえて比較し、その方法と結果を示す。
- 情報管理を点検する。 権限の範囲、操作・印刷・持ち出しの記録、ログの保存・点検方法を確認する。
- 職員が安心して相談できる経路を具体化する。 幹部に関わる案件の受付先、担当者からの独立性、通報者保護を明確にする。
- 検証の経過と結論を市民に示す。 外部有識者に渡した資料の範囲、聴取と検討の方法、残った疑問、実施する対策と効果の測定方法を、個人情報を保護した上で公表する。
なお、継続的に入札・契約を点検する入札監視委員会と、今回の事件の原因や管理監督を独立して調べる調査は役割が異なります。国の適正化指針は、前者に関して第三者の意見を反映する方策を示し、小規模自治体による共同設置や監査委員の活用にも触れています。これを「すべての自治体に独立した事件調査委員会の設置を法律で義務づける」と読むべきではありません。弥富市には、両方の必要性をそれぞれ検討し、結論と理由を示すことを求めます。[4]
責任を個人の倫理だけに押し込めず、職員が不正を断り、疑問を相談し、組織が止められる手続をつくる。 そのための原因検証こそ、市民の信頼を取り戻す出発点です。
出典・確認方法
[1]弥富市「職員逮捕への対応等について」(2026年の研修・講習の公表)。
[2]弥富市「官製談合再発防止対策検討委員会を開催しました」(検討フロー、外部有識者名簿)。弥富市議会の会議動画一覧から8月3日の特別委員会動画に進めます。本文の同会議の発言要旨は、今回提供された整理記録を基にしています。市のサイトに掲載された逐語録として扱っていません。
[3]公正取引委員会「令和8年度官製談合防止に向けた発注機関の取組に関する実態調査」。
[4]国土交通省「公共工事の入札及び契約の適正化を図るための措置に関する指針」(2024年改定)、特に第三者の監視と入札結果の分析に関する部分。
[5]弥富市「内部公益通報」および「弥富市職員等公益通報制度実施要綱」。
[6]消費者庁「公益通報者保護法と制度の概要」に掲載の、2026年12月1日より前に適用される地方公共団体向けガイドライン(内部の職員等からの通報)。
