弥富市の入札制度をどう見直すか――一般競争入札の対象額と予定価格の公表
2026年9月24日現在の公表資料に基づく
弥富市の官製談合事件を受け、職員への研修だけでなく、入札への参加機会と価格情報の管理をどう設計してきたのか、検証が必要です。
とりわけ、①いくら以上の工事を原則として一般競争入札にするか、②予定価格をどの案件で入札前に公表するか、という二つの判断を市民に示してほしいと思います。
市の要領には、どのように書かれているか
弥富市一般競争入札(建設工事)実施要領第3条は、一般競争入札の対象を、原則として土木一式・舗装・その他の工事は設計金額5,000万円以上、建築一式工事は1億円以上としています。
必要に応じ市長が決める工事も対象となり、反対に、一定の特別な理由があれば指名競争入札とする余地もあります。
したがって、この額を「それ未満は例外なく指名競争、それ以上は例外なく一般競争」と説明するのは正確ではありません。
指名競争入札では、市が参加業者を選びます。弥富市建設工事等請負業者選定要領には「市内業者を優先することができる」とあります。
この規定から直ちに市外業者が排除されるわけではありませんが、実際にどの工事で何社を指名し、何社が応札したかは検証すべきです。
比較の一例として、春日井市の2026年度の制度では、建設工事の制限付き一般競争入札を1,000万円以上としています。
自治体によって工事の種類や参加資格は異なるため、額だけで優劣は決められません。
ただ、弥富市が現在の対象額を維持する理由と、引き下げた場合の影響を説明する材料にはなります。
予定価格の事前公表は「一律実施」ではない
弥富市予定価格事前公表実施要領は、電子入札案件のうち事前公表する対象を市長が決定するとしています。
対象となった場合、一般競争入札では公告に、指名競争入札では指名通知書に予定価格を記載します。
市の要領には事前公表と事後公表を使い分ける仕組みがあり、「弥富市の指名競争入札はすべて事前公表」とは言えません。
国の入札契約適正化指針(2024年12月閣議決定)は、予定価格の事前公表には落札価格の高止まりや談合を容易にするおそれがあると指摘します。
同時に、地方公共団体の事前公表を禁止する法令はないと明記し、実施の適否を十分に検討し、弊害が出れば取りやめを含めて対応するよう求めています。
事前公表を直ちに「違法」「談合の合法化」と呼ぶのは、指針の説明として正確ではありません。
事前公表には、職員に予定価格を探り出そうとする働きかけを減らす狙いもあります。
一方で、事前公表だけでは業者間の受注調整を防げず、事後公表だけでも職員による情報漏えいは防げません。
入札方式、公表時期、情報に触れられる職員の範囲、働きかけの記録を、併せて検討する必要があります。
事件から確認できること、落札率だけでは分からないこと
名古屋地裁の判決(2026年6月23日)は、元建設部長が3件の入札について、予定価格と同額かそれに近い設計金額、入札参加業者または指名業者などの秘密情報を伝えた事実を認定しています。
判決には、入札が不調になることへの懸念や、長年にわたる情報漏えいにも言及があります。
今回の事件で、価格情報と参加業者情報の双方を組織として守れていたかを検証する理由はここにあります。
弥富市が公表する2025年度の建設工事の平均落札率は**95.99%**です。
ただし、これは対象工事の個別落札率を単純平均した値です。
この数字だけから「全件で談合があった」「本来なら工事費を10~15%削減できた」とは言えません。
比較には、工種、資材価格、予定価格の積算、参加・応札者数、辞退、不落、最低制限価格、工事内容などを案件ごとに見る必要があります。
市に求めたい検証と改善
- 入札方式の実績を公開する。 過去数年の工事について、金額帯・工種別に、一般競争か指名競争か、参加・指名・応札者数、落札率、不落・辞退、同一事業者の受注状況を整理する。
- 5,000万円・1億円という区切りを検証する。 一般競争の対象を広げる複数の案を比較し、競争性だけでなく、地域の施工力、災害時の対応力、事務負担、工事の品質への影響も公表する。
- 予定価格の公表判断を説明する。 現に事前公表している案件の範囲と決定理由を明らかにし、公表方式別の入札結果を継続して点検する。
- 秘密情報の管理を組織で行う。 設計金額・予定価格・参加業者情報へのアクセス権限を絞り、閲覧と変更の記録、業者からの働きかけの報告、複数人での確認、不落の懸念を上司に相談できる経路を整える。
- 外部の目で継続確認する。 入札結果や制度変更の効果を定期的に公開し、独立した立場の専門家にも点検を求める。
指名競争入札も、予定価格の事前公表も、それだけで不正の証拠にはなりません。
しかし、どの方式をどの条件で使い、どんな結果が出たかを市が示さなければ、制度が適切かどうか市民は判断できません。
事件を個人の倫理だけに押し込めず、情報を守り、公正な競争と適正な施工を両立させる仕組みを検証したいと思います。
