「何人入れるか」より「何人が暮らせるか」――十四山中学校跡地の市民説明会を考える【第5回】
2026年9月26日の十四山中学校跡地の市民説明会で、住民の方から、私も見落としていた重要な問いが出ました。
浸水したときに1階が使えなくなるなら、避難所に何人が寝泊まりできるのか。
市が示す収容人数を、そのまま水害時にも当てはめてよいのかという指摘です。
一時的に逃げ込める人数と、避難生活を送れる人数は違う
まず、二つの数字を分ける必要があります。
弥富市は、旧十四山中学校の南校舎2階・3階・屋上を「緊急時避難場所」に指定し、収容可能人数を4,171人と公表しています。
これは避難可能面積を**1人当たり1㎡**として計算した、浸水などが迫ったときに一時的に高い場所へ逃げるための数字です。
4,171人が校舎内で寝泊まりできるという意味ではありません。
一方、旧十四山中学校は「2次開設避難所」にも指定されています。
しかし、市の公開する避難所一覧には、この施設で災害の種類ごとに何人が生活できるかは示されていません。
二つの指定を混同すると、地域の避難先を過大に見積もるおそれがあります。
床面積を人数で割るだけでは、避難所にならない
弥富市の避難所運営マニュアルには、1人当たりの最低面積の参考として、被災直後に座って過ごす場合は1㎡、緊急時に就寝する場合は2㎡、避難生活が長期化する場合は荷物置場を含め3㎡とあります。
これは避難所全体の延床面積を人数で割ればよい、という意味ではありません。
同じマニュアルは、幅130cm以上の通路や、受付、運営本部、救護室、物資の荷下ろし・保管場所などを確保するよう求めています。
国も、スフィア基準に沿った1人当たり3.5㎡以上の居住スペースを求め、通路や受付、物資置場を含む事前のレイアウト作成を促しています。
国が示す配置例では、床面積714㎡の体育館に、通路や必要な場所を確保して103人を配置しています。
714を3.5で割った204人とは大きく異なります。
ただし、この103人はあくまで配置例であり、弥富市の各施設にもその比率をそのまま当てはめられるわけではありません。
段ボールベッドや間仕切りを置くなら、図面上で実際に何床を置けるか。
トイレ、介護、授乳、相談の場所をどこに設けるか。
在宅避難や車中泊の方への情報提供、物資の受け渡しを担う場所も考えなければなりません。
就寝場所に使える正味の面積を確かめて初めて、生活可能人数が見えてきます。
「浸水しない場合」と「1階が使えない場合」を別々に
説明会での指摘の核心はここです。
地震後に浸水がなく、建物の安全が確認できた場合と、洪水・高潮などで1階が使えない場合では、使える部屋も、トイレや出入口の条件も違います。
体育館を使える前提で算出した人数を、浸水時の受け入れ人数として示すことはできません。
市には、旧十四山中学校をはじめ各避難所について、少なくとも次の二種類の人数を施設別に示してほしいと思います。
- 浸水がない場合:安全点検後に使える階・体育館と、通路・運営場所を除いた就寝可能人数。
- 浸水する場合:想定浸水深に照らして使える2階以上の室と、安全な動線・設備を確認したうえでの就寝可能人数。
建物自体が地震で使えない場合や、浸水が長引き電気・水・トイレが使えない場合も、別途評価が必要です。現時点の公開資料だけでは「実際は半分以下」「4分の1」とは確定できません。
しかし、1階を除き、通路や運営場所を取り、1人当たりの生活空間を確保すれば、公表される一時避難の人数より大幅に少なくなる可能性があります。市が階別面積とレイアウトを示して検証すべきです。
南校舎の価値を、人数の差で確かめる
旧十四山中学校の南校舎は、昭和52年建築の3階建てです。
市の新しい整備方針案では南校舎を解体し、2階建ての特別教室棟などを残すとしています。
解体によって、現在指定されている2階・3階・屋上の高所避難機能がどう変わるのか。
さらに、浸水時に寝泊まりできる人数は何人から何人になるのか。
これを示さずに「防災拠点を残す」とだけ説明しても、住民は判断できません。
校舎敷地が周辺より高いとの指摘もあります。
その差の大きさや想定浸水深との関係は、測量資料で確認する必要があります。
高さが有利であっても、地震後の建物の安全性や浸水時の出入りの可否まで自動的に保証されるわけではありません。
そこまで含めて比較することが、防災上の価値を正しく評価する道です。
市に、施設ごとの算定根拠、階別の使用可能面積、災害別の避難所レイアウト、南校舎解体前後の収容力を求めます。
住民の問いは、単なる数字の修正ではありません。
避難所を「何人入れる建物」ではなく、「災害時に何人を安全に支えられる拠点」として考え直す提案です。

