「結局いくらかかるのか」に答えてほしい――十四山中学校跡地の市民説明会を考える【第6回】
2026年9月26日の十四山中学校跡地の市民説明会を振り返って、私が改めて深刻だと思うのは、事業全体の費用と収支が見えないまま、整備の方向が示されていることです。
昨年の案に住民から強い異論が出て、時間をかけて見直したはずです。
だからこそ新しい案では、「何を造るか」に加えて「いくらかかり、誰が使い、何が得られるか」を示してほしかった。
企業でも行政でも、事業を選ぶ際に欠かせない判断材料です。
解体費の数字はある。では事業全体ではいくらか
「費用が全く示されていない」と言うのは正確ではありません。
市の2026年9月の整備方針案には、既存建物を全て解体した場合の想定費用が3億2,180万円、全てを大規模修繕した場合の想定費用が10億401万6,000円と、建物別の概算が載っています。
南校舎の解体費はそのうち1億6,570万円です。
ただし、今回の案は全解体でも全棟改修でもありません。
特別教室棟と渡り廊下を残して改修し、ほかを解体する方針です。
全解体の3億2,180万円を、そのまま今回の解体工事費と呼ぶことはできません。
逆に、建物の一部改修だけを見て、グラウンドや安全設備の費用を落としてもいけません。
市の資料にある「約1億円の交付税措置」も、解体費から1億円を直ちに差し引ける補助金という意味ではありません。
市は、一定の期限までに対象事業として解体した場合、地方債に関連して後年度の地方交付税の算定に見込める額と説明しています。
適用条件と市の実質負担を、事業費と分けて示す必要があります。
石綿調査と工事費上昇をどう織り込むか
解体前には、石綿(アスベスト)を含む建材の有無を調べることが必要です。
調査結果によっては除去方法や工期、費用が変わります。
今の時点で「この校舎に石綿がある」と断定はできませんが、調査を済ませたのか、概算に調査・除去費をどこまで含めたのかは確認すべきです。
資材費や労務費が変動する中、工事の入札が予定どおり成立するかも見通しに関わります。
市には、見積もりの時点と前提、価格上昇時の再試算、入札が不調になった場合の工程と追加負担を示してほしいと思います。
「多目的グラウンド」の中身で、費用は変わる
十四山中学校のグラウンドは、閉校後も市民が使える「十四山グランド」として設置されています。
現在の広場を活用する案と、上野グランドを統合し、硬式野球にも対応できるよう整備する案は、同じ費用ではありません。
硬式球を使うなら、敷地の広さだけでなく、打球の飛び出しを防ぐネット、支柱と基礎、周辺道路・住宅への安全対策などを、実寸図面とともに検討する必要があります。
私は整備費が「数億円になる」と現段階で断定しません。
だからこそ、市が仕様別に概算を出すべきなのです。
軟式野球・ソフトボール等を中心に現施設を使う案とも比較してほしいと思います。
上野グランド跡地の収入見込みは
市は、上野グランドの土地には物流・工業系の民間需要があるとの調査結果を示し、十四山グランドへ統合した後、新産業エリアとして活用する方針です。
しかし、需要があるという評価だけでは、市にいくらの収入が入るかは分かりません。
そもそも売却、貸付け、その他の方法のどれを想定するのか、処分に必要な造成やインフラ整備の費用はいくらかによって、収支は変わります。
「高く売れるはず」という期待を事業の根拠にするなら、鑑定評価や複数の価格シナリオを示す必要があります。
売却がまだ決まっていないなら、売却収入を確定財源のように扱うこともできません。
判断に必要な一枚の表を
私が市に求めたいのは、次の項目を同じ条件で比較できる資料です。
| 比べる項目 | 明らかにしてほしいこと |
|---|---|
| 建物の解体・改修 | 対象棟、石綿調査、工事費、価格上昇時の費用 |
| グラウンド | 現状利用、軟式等中心、硬式対応の各案の工事費・安全対策費 |
| 防災機能 | 南校舎解体前後の高所避難・避難生活の受け入れ人数と代替費用 |
| 上野グランド跡地 | 売却・貸付け等の方式、評価額、造成費、収入時期 |
| 維持管理・財源 | 年間費用、更新費、交付税措置の条件、市の実質負担 |
これらを通常、工事費上昇、跡地収入が得られない場合の複数の見通しで示してほしいと思います。
概算段階でも、分かっている額、まだ分からない額、その理由を分けて説明できます。
防災上の大切な建物を解体し、新たな施設を整備する判断です。
「設計の段階になれば分かる」で済ませず、まず住民と議会が費用対効果を比べられる資料を出す。
それが、昨年の住民の声を受けて計画を見直した市の責任だと考えます。

