
「暮らしと命を守る」を実行する工程表は――八木春美氏のリーフレットを読む
弥富市長選挙は11月8日告示、11月15日投票の日程で行われます。
八木春美氏の政策リーフレットには、自然災害対策、駅整備、農業、教育、福祉、財政改革が掲げられています。
八木氏は弥富市役所で長く勤務し、教育部長などを務めた経歴を紹介しています。
市の仕事を知る経験は、政策を考えるうえでの強みになるでしょう。
市長選に向けて問いたいのは、その経験をどう実行に結びつけるかです。
リーフレットは課題を幅広く挙げています。
一方、事業の順番、必要な予算、既存計画をどう変えるかは示していません。
「暮らしと命を守る」を、市民が確かめられる工程表にしてほしい。
その視点から、主な政策を読みます。
「抜本的な排水対策」は、どこをどう変えるのか
リーフレットは、海抜0メートル地域、とりわけ鯏浦・中六エリアの「抜本的な排水対策」を掲げています。
浸水への備えは、弥富市にとって切実な課題です。
ただ、「抜本的」という言葉だけでは、何が完成すれば目標を達成したと言えるのか分かりません。
どの雨量や浸水を想定するのか。
排水機場、水路、道路などのうち、どこに対策が必要なのか。
国・県・市が担う事業をどうつなぎ、最初の4年間に何を実施するのか。
対策の対象地域と効果を地図で示し、整備費だけでなく、その後の維持管理費も示してほしいと思います。
リーフレットには、避難場所の周知徹底と、災害を見越した仮設住宅設置場所の明確化もあります。
これも大切な提案です。
浸水時に実際に使える場所なのか、避難した後の生活をどう支えるのかまで、一つの計画として説明が必要です。
駅整備の「推進」に、費用の判断基準を
八木氏は、JR・名鉄弥富駅の自由通路整備と橋上駅舎化事業の推進を掲げています。
鉄道を挟む南北の移動改善やバリアフリー化には、明確な目的があります。
一方で、市が公表する総事業費は約55.5億円です。工事はすでに始まっており、今後も市の財政に関わる大型事業です。
市長として「推進する」なら、現時点の市負担、今後の費用増への備え、完成後の維持管理費をどう評価するのでしょうか。
費用がさらに増えたとき、どの時点で事業内容を見直すのか。
ほかの方法との比較を市民にどう示すのか。
推進という結論だけでなく、判断を変える場合の基準も知りたいと思います。
競馬組合への加入で、利益と負担はどう変わるか
リーフレットには、愛知県競馬組合への加入検討もあります。
名古屋競馬場が弥富市にある以上、開催地への還元や市の発言権を考えることには意味があります。
ただし、現在の組合を構成しているのは愛知県、名古屋市、豊明市です。
既存の規約資料には、利益金の配分と経費の負担について定めがあります。
弥富市が加入する場合、配分や負担をどう変えるかは、相手方との協議を要する問題です。
この問題は弥富市議会でも以前から議論されています。
八木氏には、加入によって何を実現したいのか、利益と負担をどう見積もるのか、協議をどの段階から始めるのかを示してほしいと思います。
「競馬場があるから加入すれば収入が増える」と単純に見込むことはできません。
農地を守りながら、市街化区域をどこに広げるのか
「優良農地を守りながら、市街化区域の拡大を図る」という政策も、具体的な場所が示されて初めて議論できます。
弥富市は市街化調整区域全体が農業振興地域に指定されており、農業振興地域整備計画の見直しも進めています。
農地保全と土地利用の変更には、既存の計画や手続との整合が必要です。
守る農地はどこか。住宅や企業の立地を考える区域はどこか。
開発による税収の見込みと、道路、下水道、排水、防災にかかる費用を比べた結果はどうか。
リーフレットには、名古屋港の背後地への企業誘致や東名阪弥富インター周辺の基盤整備もあります。
個々の開発を別々に語るのではなく、農地と浸水リスクを含む土地利用の全体図を示すべきだと思います。
福祉給付と給与カットを、一つの財政計画で考える
八木氏は、75歳以上への福祉給付金の支給を掲げています。
物価高の中で高齢者の暮らしを支える提案ですが、給付額、一律支給か所得に応じた支給か、対象人数、毎年必要な予算が分かりません。
学校体育館へのエアコン設置や自校方式の給食継続についても、既存の整備予定や施設の更新費を踏まえ、何を前倒しし、何を維持するのかを示す必要があります。
市は学校などの空調整備スケジュールを公表しています。
「市長の給与30%カット」は、市民に伝わりやすい公約です。
ただし、月額給料だけを対象にするのか、期末手当にも反映するのか、いつまで続けるのかで削減額は変わります。
現行条例の月額94万4,000円を基準に、月額給料だけを1年間30%減らすと、削減額は約340万円です。
姿勢を示す効果と、給付や施設整備の財源としての規模は分けて説明すべきです。
市の中期財政計画では、2026年度から2030年度にかけて、年度末の基金残高は約22.7億円から約5.3億円へ減り、市債残高は約153.5億円から約175.0億円へ増える見通しです。
前提によって変わる推計ですが、新しい支出を考える際には避けられない資料です。
市長選に向けて、示してほしい四つのこと
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最初に着手する政策――就任後の最初の予算で何を始め、4年間でどこまで進めるか。
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費用と財源――建設費や初期費用だけでなく、毎年続く支出をどう賄うか。
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既存計画との違い――駅、学校、農地利用など、市が進めている計画を継続・前倒し・変更のどれにするか。
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判断を見直す基準――事業費の増加や税収不足が起きたとき、何を基準に優先順位を変えるか。
八木氏が掲げる防災や福祉は、多くの市民にとって重要な課題です。
市役所での経験を生かすというのであれば、事業を動かす難しさも踏まえた具体的な説明を期待します。
政策の数や印象だけでは、市政を任せた後の姿は見えません。
「何を、いつ、いくらで」。
市民が比較し判断できるよう、八木氏自身の言葉で工程表と財政の見通しを示していただきたいと思います。
参照資料
- 八木春美氏「政策・後援会案内」リーフレット(提供資料、2ページ)
- 弥富市長選挙の執行日程
- JR・名鉄弥富駅自由通路・橋上駅舎化事業の概要
- 愛知県競馬組合規約に関する愛知県資料
- 弥富市の農業振興地域制度・整備計画
- 弥富市政報告会資料
- 弥富市中期財政計画(令和8年度~12年度)
