弥富駅の便益を300人と6分から検証する
55.5億円の駅整備で市民の移動はどれだけ改善するか
弥富駅の自由通路整備で、誰の移動が、1日に何回、何分短くなるのでしょうか。
私は、55.5億円とされる事業の費用対効果を考える出発点として、この具体的な数字を市民に示すべきだと考えます。[1]
市は、鉄道を利用する人以外の自由通路利用者を1日300人と想定しています。
南側の駅入口から北側の通路入口予定地まで、近い方の西踏切を回る経路を約600mとして考えると、約90mの自由通路によって平面の移動距離は約510m短くなります。
歩行速度85m/分で換算すれば約6分。この300人の時間短縮を、費用対効果の出発点として示すべきです。
300人は市の議会答弁で確認できる想定通行量です。
約600mは今回の経路確認として示された距離、約90mは市が公表する自由通路の延長です。
約6分は、これらの距離と歩行速度から求める平面移動の概算です。
階段やエレベーター、踏切待ちを含めた最終的な短縮時間とは区別して説明します。[1][2][3]
市の答弁にある1日300人という想定
2021年9月6日の市議会で、市は自由通路の想定通行量を、JR利用者約2,900人、名鉄の南側からの利用者やJRとの乗り換え利用者2,800人、それ以外の利用者300人、合計1日6,000人と説明しています。300人は全体の約5%です。[2]
この内訳から分かるのは、南北を通り抜ける人の効果と、駅へ向かう人や乗り換える人の効果を、分けて説明する必要があるということです。「6,000人が利用する」という総数だけでは、それぞれの移動がどれほど改善するかは分かりません。
時間短縮は通行量と移動時間で確かめられる
国土交通省の「都市再生交通拠点整備事業に関する費用便益分析マニュアル(案)」(2001年4月)は、自由通路などの便益項目として歩行者の時間短縮を示しています。
通行量、平均短縮時間、時間の金銭換算値を使う方法です。
迂回経路や踏切待ちを考慮する一方、新しい通路側の階段などの移動も計算に入れる必要があります。[3]
現在の駅入口は南側にあるため、南北を行き来するには線路を迂回する必要があります。
遠い東踏切ではなく、近い西踏切を回る約600mの経路を基準とする考え方です。
自由通路約90mとの平面距離の差は約510m。国交省マニュアル(案)の平面歩行速度85m/分で割ると、約6分となります。[1][3]
300人が平均6分短縮できる場合の試算
計算の入口は、(西踏切経由約600m − 自由通路約90m)÷ 歩行速度85m/分 = 約6分です。
ただし、自由通路側の階段の上り下りやエレベーター待ちは短縮効果を小さくし、現在の踏切待ちは短縮効果を大きくします。
これらを確認した上で平均短縮時間を確定する必要があります。
1日300人について、1回平均6分の短縮が得られる条件で、300人/日 × 6分/人 = 1,800人・分/日 = 合計30人・時間/日
往復を既に含む通行量なら、さらに2倍してはいけません。
上記の2001年マニュアル(案)の時間価値1分40円を参考に置き、毎日同じ通行量があるとすると次の金額です。
本事業に適用すべき原単位・年度は別途確認が必要です。[3]
| 項目 | 試算結果 |
| 1日の時間短縮便益 | 300人 × 6分 × 40円 = 7万2,000円 |
| 1年間の時間短縮便益 | 7万2,000円 × 365日 = 2,628万円 |
| 50年間の単純合計 | 13億1,400万円 |
| 50年間の現在価値 | 割引率4%で 約5億6,455万円 |
現在価値とは、将来の効果を基準時点の価値に換算したものです。
この約5.65億円は、通行量・短縮時間・時間価値が一定で、供用開始直前を基準に翌年から50年間評価する条件です。
市の正式な評価基準年や供用開始時期を反映した値ではありません。人口や利用状況が変われば、試算も変わります。
また、2001年の同マニュアル(案)の評価期間は供用後40年です。
ここで50年を示したのは、市のCVM算定資料の期間に合わせて規模感を考えるためです。
同じ条件で40年間なら、現在価値は約5.20億円となります。
この便益は、市に現金が入ることを意味しません。利用者が節約する時間を社会的な価値として換算したものです。
55.5億円を説明するには追加の効果の根拠が必要
試算した約5.65億円は、駅利用者以外の300人の時間短縮だけの評価です。
一方、55.5億円は駅舎や駅前広場なども含む総事業費です。
そのまま割り算して、正式な費用便益比(B/C)や違法性を判定することはできません。
それでも、この試算は事業の規模を考える材料になります。
市がさらに大きな便益を説明するなら、鉄道利用者の経路改善、安全性、バリアフリーなどについて、効果の対象と大きさを示す必要があります。
階段の上り下りやエレベーター待ちで移動が長くなる人がいるなら、その影響も評価に含めるべきです。
CVMを採用しても時間短縮の説明は必要
市は、自由通路・駅舎・駅前広場を総合的に評価するため、CVMを採用したと説明しています。
CVMは、仮にいくら負担してもよいかをアンケートで尋ね、便益を推計する方法です。市が公表する協定変更後のB/Cは1.57です。[4]
CVMの採用自体を直ちに違法とは言えません。
ただし、国土交通省のCVM指針は、他の手法の適用可能性も比較し、CVMの妥当性を判断するよう求めています。[5]
市民に必要なのは、CVMを使えるという説明に加えて、実際の移動改善との関係です。
市の算定資料では、推計した月772円を人口44,616人に掛け、年間約4.13億円の便益を計上しています。
この規模の評価が、実際の利用や改善効果とどのようにつながるのか、説明を求めます。
先に検証した「世帯一人当たり」という設問の理解、0円回答83人の除外、金額の無回答24人の扱い、説明資料や設問順序の影響も、推計の確かさに関わります。
CVMに移動改善の評価が含まれている場合、時間短縮便益を別に加えて二重計上しないことも重要です。
市に公開を求める具体的な数字
1 1日300人という想定の調査年、推計方法、平日・休日の違い、往復を含む通行量の定義。
2 西踏切経由約600mと自由通路約90mの経路図と距離、階段・エレベーター利用時間、踏切待ちを反映した平均短縮時間。
3 鉄道利用者について、経路が短くなる人と長くなる人、それぞれの人数と時間の変化。
4 自由通路・駅舎・駅前広場ごとの費用と効果、より小規模な整備方法との比較。
5 最新の事業費、維持管理費、将来の利用見通しを反映し、前提を変えた場合のB/C。
私は、西踏切経由の約600mと自由通路の約90mを比較する「300人×約6分」の評価を出発点に、階段や待ち時間を含む効果を、市民が確かめられる資料で示すことを求めます。
その上で、どのような効果が追加され、55.5億円の事業規模が必要になるのか。市民が判断できる説明が必要です。
参照資料と試算の前提
[1]弥富市 事業概要 総事業費約55.5億円
https://www.city.yatomi.lg.jp/shisei/1000749/1006126/1006274/1003914.html
[2]2021年9月6日 弥富市議会会議録 印刷98ページ 想定通行量
https://www.city.yatomi.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/004/176/kaigiroku3-9-3.pdf
[3]国土交通省 都市再生交通拠点整備事業に関する費用便益分析マニュアル 案 2001年4月 歩行者時間短縮は印刷13ページ PDF15ページ
https://www.mlit.go.jp/toshi/content/001736409.pdf
[4]弥富市 アンケート調査と費用対効果 公表B/C
https://www.city.yatomi.lg.jp/shisei/1000749/1006126/1006274/1004363.html
[5]国土交通省 仮想的市場評価法 CVM 適用の指針 2009年7月 手法選択は印刷4ページ PDF7ページ
https://www.mlit.go.jp/tec/hyouka/public/090713/cvmshishin/cvmshishin090713.pdf
月772円、人口44,616人、0円回答83人と金額無回答24人の処理、50年間という期間は、提供された市の便益算定資料とアンケートから確認した事項です。西踏切経由の約600mは今回提示された経路確認の距離です。市の公表する自由通路約90mとの差を、2001年マニュアル(案)の平面歩行速度85m/分で割ると約6分となります。起終点の一致と距離の図面確認、階段や待ち時間を含めた実際の平均短縮時間の確定は、市への確認事項です。
50年間の現在価値は、年便益2,628万円を、1年後から50年後まで年4%で割り引いて合計した独自試算です。市の公式B/Cの再計算ではありません。算式は 年便益 × 各年の割引係数の合計。
資料確認日 2026年10月2日
