
弥富駅CVMの0円回答と無回答の除外を検証する
0円268人のうち162人を便益推計から除外
事業費が増額され、市の公表額は約55.5億円となった弥富駅整備。その費用対効果を支えるアンケートを、市の算定資料から検証しました。負担額を0円と答えた268人のうち、便益推計に残されたのは106人。162人が除外され、金額の無回答24人も計算から外れています。[3]
0円の回答を外せば、残った回答から求める支払意思額は高くなります。その値を市全体の人口に掛けるため、回答の扱いは事業の便益を左右します。私は、除外した理由と、処理を変えた場合の結果を、市民に分かる形で示す必要があると考えます。
CVMには支払方法への抵抗回答などを除外する考え方があります。しかし、0円や無回答だからというだけで、どの回答も無効になるわけではありません。問題は、個々の除外が妥当か、残った回答が市民全体を代表するか、推計への影響を十分に説明できるかです。[2]

503人の回答から315人を便益推計に採用
市は2020年11月、18歳以上の市民1,000人を無作為に選び、アンケートを実施しました。回収は503通です。市は自由通路・駅舎・駅前広場を総合的に評価するため、CVMを採用したと説明しています。[1]
CVMは、事業の効果について「仮にいくらまで負担してもよいか」を尋ね、その金額から便益を推計する方法です。回答の処理は次のようになっています。
| 回答の区分 | 回収時 | 便益推計に採用 |
| 0円より高い金額を回答 | 209人 | 209人 |
| 0円と回答 | 268人 | 106人 |
| 負担金額を無回答 | 24人 | 0人 |
| その他で数値化されていない回答 | 2人 | 0人 |
| 合計 | 503人 | 315人 |
0円の割合は、回収503人では53.3%、採用315人では33.7%になります。分母が異なるため、単純な意識の変化を示す数字ではありません。除外処理で、計算に使う回答集団の構成が変わったことを示しています。

0円162人はどのような理由で除外されたか
| 0円とした理由 | 人数 | 市の処理 |
| 事業に興味・関心がない | 45人 | 除外 |
| その他の自由記入を興味・関心がないに分類 | 1人 | 除外 |
| 実施した方がよいと思うが、税金で行うことには反対 | 83人 | 除外 |
| その他の自由記入を税金で行うことへの反対に分類 | 8人 | 除外 |
| その他の残る自由記入 | 25人 | 除外 |
| 事業の必要性がない | 84人 | 0円として採用 |
| その他の自由記入を必要性がないに分類 | 20人 | 0円として採用 |
| 0円を選び、理由を無回答 | 2人 | 0円として採用 |
除外は合計162人、採用は合計106人です。「0円回答をすべて除外した」「無回答をすべて除外した」という説明は正確ではありません。
関心がないという0円も確認が必要
特に確認したいのは、「興味・関心がない」とした計46人です。
関心がない理由には、事業の効果を感じず支払う価値がない場合も、設問を理解できず判断を保留した場合もあり得ます。
関心がないという選択だけで、経済的な評価とは無関係の抵抗回答だったと判断できるのでしょうか。
国交省のCVM指針は、支払う価値がないという回答や、負担がなくても事業を行わない方がよいという回答を有効と扱う例を示しています。
一方、負担金を集める仕組みへの反対や、情報不足で判断できない回答は、抵抗回答・回答保留として除外する例を示しています。[2]
「その他」の25人についても、自由記入の内容を確認しなければ、除外の妥当性は判断できません。
氏名などを伏せた原文と分類基準の公開を求めます。
83人について、市の選択肢は「事業は実施した方がよいと思うが、税金で行うことには反対」です。
支払手段への抵抗に当たるなら除外が認められる可能性がありますが、なぜその分類が妥当かを示す必要があります。
なお、この回答は「税金で整備すべき」という意味ではありません。

回答の扱いを変えると推計額は大きく変わる
市の算定資料では、315人の回答を用い、受諾率曲線の面積から1人当たり月772円を推計しています。
その値に人口44,616人と12か月を掛け、年間約4.13億円の便益を計上しています。
月772円 × 44,616人 × 12か月 = 年間4億1,332万2,624円
市が採用した計算法を再現し、回答の扱いだけを変えると、次のようになります。人口と12か月という集計条件は固定しています。
| 計算条件 | 採用人数 | 月額の推計 | 年間便益 |
| 市の採用処理 | 315人 | 772円 | 約4.13億円 |
| 除外された83人を0円として戻す | 398人 | 約612円 | 約3.28億円 |
| 除外された0円162人をすべて戻す | 477人 | 約512円 | 約2.74億円 |
| 金額無回答24人だけを0円と仮定して追加 | 339人 | 約718円 | 約3.84億円 |
| 0円162人を戻し、金額無回答24人も0円と仮定 | 501人 | 約488円 | 約2.61億円 |
ここで示したのは、回答処理による違いを調べる感度分析です。
除外された抵抗回答をすべて戻すべきだと確定したものでも、無回答が本当に0円だったと認定したものでもありません。
その他の数値化されていない2人は、引き続き除外しています。
0円162人をすべて戻す条件では、年間便益は約4.13億円から約2.74億円へ、約3分の1減ります。
さらに金額無回答24人を0円と仮定すると約2.61億円です。
回答処理が、事業を支える便益の規模に大きく関わることは確認できます。
費用は増えて約55.5億円です。提供された旧算定資料の46.245億円との差は約9.26億円、約20%に当たります。
比較時点を明らかにし、増額後の費用と、回答処理を点検した便益を同時に評価する必要があります。[3]
金額の無回答と0円の理由の無回答は異なる
金額を答えていない24人は、支払意思額が分からない回答です。
0円と選んだ2人の理由が空欄である場合は、金額の0円自体は示されています。
これらを区別して処理すること自体には理由があります。
金額無回答24人が、設問を理解できなかったのか、情報不足だったのか、答えたくなかったのかは不明です。
一律0円と決めることも、除外による偏りを確認せず市全体へ推計を広げることも避けるべきです。
0円側と支払う側を同じ基準で点検したか
市のアンケートは、0円を選んだ人には理由を尋ねています。
一方、負担額を選んだ人には、金額の意味や事業の効果を正しく理解したかを確認する対応する設問が、提供された調査票では見当たりません。
「世帯一人当たり」という設問を世帯全体の金額と受け取った人や、説明資料から実際以上の効果を想像した人が、支払う側に含まれている可能性も検証する必要があります。
何人いたかは、現時点では分かりません。
国交省指針は、支払うと答えた人についても、事業で実現しない効果を評価していないかなど、理解を確認する例を示しています。
0円側の除外理由だけでなく、支払う側の回答の妥当性も点検すべきです。[2]
315人を市民全体へ広げる根拠が必要
回収503人、その後に採用された315人が人口全体を代表するかは、最初の無作為抽出とは別に確認が必要です。
駅から遠い人や関心の低い人が除外後の集団で少なくなれば、駅整備を高く評価する人に偏る可能性があります。
年齢・地区・駅利用頻度などから確認が必要ですが、提供された算定資料では315人の代表性を確認できません。
国交省指針も、回答者の属性と母集団の構成を比較し、偏りが大きければ再調査などを検討するよう求めています。[2]
市は協定変更後のB/Cを1.57と公表しています。
ただし、最新55.5億円に対応する年度別の計算表は今回の提供資料にはなく、現在の正式なB/Cを再計算できません。
既に反映した増額をもう一度上乗せすることも避け、同じ費用条件で回答処理の影響を検証する必要があります。[1]
除外の根拠と影響を公開してほしい
私は、市に次の公開と再検証を求めます。
1 0円162人、金額無回答24人、その他2人を除外した具体的な基準と根拠。
2 その他の自由記入を分類した手順と、個人情報を伏せた記載内容。
3 除外の前後で、年齢・地区・駅利用頻度などの構成がどう変わったか。
4 支払うと答えた209人について、設問の単位と事業効果の理解をどう確認したか。
5 事業費の増額経緯、回答処理を変えた感度分析、55.5億円に対応する年度別便益・B/Cの再計算。
0円を外すことで便益が高くなる以上、その処理を正当化する根拠と、市民全体へ推計を広げる根拠を示す責任があります。
費用が増額されている今こそ、0円回答と無回答の扱いを再検証し、55.5億円の事業に見合う効果を示すべきだと考えます。
参照資料と再計算方法
[1]弥富市 JR・名鉄弥富駅利用・整備に関するアンケート調査について。調査1,000人、回収503通、CVM採用、公表B/C1.57。
https://www.city.yatomi.lg.jp/shisei/1000749/1006126/1006274/1004363.html
[2]国土交通省 仮想的市場評価法 CVM 適用の指針 2009年7月。抵抗回答と理解の確認は印刷22〜24ページ、属性の確認は25ページ、異常回答の処理は32ページ。
https://www.mlit.go.jp/tec/hyouka/public/090713/cvmshishin/cvmshishin090713.pdf
[3]弥富市 JR・名鉄弥富駅自由通路整備および橋上駅舎化事業の概要。総事業費約55.5億円。
https://www.city.yatomi.lg.jp/shisei/1000749/1006126/1006274/1003914.html
提供された市資料。スキャン_20261002.pngは問7と問8の回答処理、スキャン_20261002 (4).pngは採用315人の金額分布・推計772円・人口44,616人、スキャン_20261002 (3).pngは旧費用・便益の計算表。スキャン_20261002.pdfの印刷3ページは実際の問7・問8。
再計算では、市資料の金額区分と回答数を使用。金額は0、10、50、100、200、300、400、500、1,000、2,000、3,000、5,000、10,000円。人数は106、1、1、12、3、2、1、122、47、13、3、3、1。
各金額以上の回答割合を受諾率とし、0円で100%とする市の方式を再現。隣り合う区分の受諾率の平均に金額差を掛け、区分ごとに合計。基準ケースの計算値は月772.492円で、市は月772円に切り捨てて採用。感度分析では切り捨て前の計算値を用いて丸めて表示したため、丸め差を含みます。
再計算値は、83人追加で612.437円、162人追加で511.834円、24人追加で718.156円、186人追加で487.555円。年間便益はそれぞれに44,616人と12か月を掛けた独自試算です。原票の意味を再判定した正式な分析結果ではありません。
金額の無回答24人と、0円理由の無回答2人、調査票を返さなかった497人は別の区分です。未返送497人を0円と認定して計算には加えていません。
増額の比較基準には注意が必要です。提供された旧費用便益資料の総事業費46.245億円を基準にすると増額は約9.26億円です。「約8億円増」という比較の基準額・時点は今回確認できていないため、本文では資料間の差額を示しました。
本記事は、これまでの説明で83人を「税金で整備すべき」と表現した箇所を訂正しています。資料の実際の理由は「事業は実施した方がよいと思うが、税金で行うことには反対」です。
資料確認日 2026年10月2日
