弥富市公立保育所の民営化基本方針

令和4年1月

弥 富 市

はじめに

近年、人口減少・少子高齢化の進展、核家族化の進行など、保育を取り巻く状況も変化してきており、保護者の就労機会の増加による保育需要の増加だけではなく、就労形態も多様化していることから、延長保育や一時保育など保育サービスの一層の充実が求められています。

そうした中、本市では令和 2 年 3 月に 5 年間の子育て支援の指針となる「第 2 期弥富市子ども・子育て支援事業計画」を策定し、「子どもの未来をはぐくむまち・弥富」を基本理念に、関係部門・関係機関が一体となって、家庭や地域の保育機能を支えるための多面的な子育て支援施策を積極的に推進しているところです。

一方、本市では、昭和 60 年から 6 度にわたり策定してきた行政改革大綱に基づき、「民間活力の効果的な活用」を重点推進項目の一つとし、民間に委ねることによって効率化が図れることなどを見極めた上で、民間委託等を推進してきました。

本市の保育は、平成 26 年度には、9 か所の公立保育所で担っていましたが、平成 27 年度から市内私立幼稚園が認定こども園に移行し、本市の保育の一翼を担っています。

そうしたことも踏まえながら、公と民が協働して柔軟で充実した保育サービスを提供する体制を構築していくことを目的とした「弥富市公立保育所の民営化基本方針」を作成しました。

1    保育の現状と課題

(1)年齢別就学前児童数の推移

本市の 0 歳から 5 歳の児童の人口は、年々減少しており、令和 3 年 4 月 1 日現在で

1,948 人となっており、平成 28 年度と比べ 299 人減少しています。

(単位:人)

区 分 H28 年度 H29 年度 H30 年度 H31 年度 R2 年度 R3 年度
0 歳 331 355 329 330 319 309
1 歳 363 346 349 333 331 310
2 歳 382 345 342 356 341 320
3 歳 362 371 351 343 341 337
4 歳 394 360 365 354 338 337
5 歳 415 383 358 352 352 335
合 計 2,247 2,160 2,094 2,068 2,022 1,948
前年比 ▲113 ▲87 ▲66 ▲26 ▲46 ▲74

備考 児童数は、各年度 4 月 1 日現在

 

(2)出生数の推移

本市の出生数は、平成 29 年の 364 人をピークに減少傾向となっており、令和 2 年は

339 人となっています。

(単位:人)

H27 年 H28 年 H29 年 H30 年 H31 年 R2 年
346 331 364 345 336 339

資料:市民課

 

(3)乳幼児の人口の推計(0 歳児~5 歳児)

本市の乳幼児人口を、平成 27 年から平成 31 年の 4 月 1 日の住民基本台帳の人口を基にコンホート変化率法により推計すると、0 歳児~5 歳児までの子どもの将来推計は、令和 2 年度をピークに減少していくことが見込まれます。

(単位:人)

区 分 R2 年度 R3 年度 R4 年度 R5 年度 R6 年度
0 歳 331 327 323 319 314
1 歳 336 337 333 329 325
2 歳 326 329 330 326 322
3 歳 355 324 328 328 324
4 歳 339 351 320 324 324
5 歳 347 332 344 313 318
合 計 2,034 2,000 1,978 1,939 1,927

資料:第 2 期弥富市子ども・子育て支援事業計画

 

(4)公立保育所及び私立認定こども園(保育部)の入所状況

市内には、保育所が 9 施設、認定こども園が 1 施設あり、保育所は全て市直営、認定こども園は学校法人が運営しています。

公立保育所の入所児童数は、令和 3 年 4 月 1 日現在、953 人で定員に余裕があります。入所率の低い保育所は、栄南保育所が 45.6%、次いで十四山保育所が 53.3%となって

います。

一方、入所率の高い保育所は、弥生保育所が 88.0%、次いでひので保育所が 78.3%となっています。

私立の認定こども園(保育部)は、定員を大きく上回っています。

市全体での入所児童数の推移は、本市の就学前児童数が減少しているにもかかわらず、横ばいで推移しています。これは、就労などで保育所を利用する保護者が増加しているためです。

また、公立保育所と私立認定こども園(保育部)の入所児童数の推移は、公立保育所は平成 28 年度と比較し 10.3%減少しているのに対し、私立認定こども園(保育部)は 74.2%増加しています。

 

〇公立保育所、私立認定こども園(保育部)の定員及び入所児童数

(単位:人)

 

学区等

公 立 私 立
施設名 定員 入所児童数 施設名 定員 入所児童数
白鳥学区 白鳥保育所 160 108(4)
弥生学区 弥生保育所 200 176(5)
西部保育所 100 60(1)
桜 学 区 南部保育所 200 114(5)
日の出学区 ひので保育所 230 180(2)
桜保育所 175 115(8)
大藤学区 大藤保育所 90 55(1) 認定こども園

弥富はばたき幼稚園

70 108
栄南学区 栄南保育所 90 41(0)
十四山地区 十四山保育所 195 104(7)
合      計 1,440 953(33) 70 108

備考

1 入所児童数は、令和 3 年 4 月 1 日現在。市外からの受託児童を含む。 2 ( )内は、入所児童数のうち私的契約児童数

3 弥富はばたき幼稚園は、保育部のみの児童数

 

〇公立保育所、私立認定こども園(保育部)の入所児童数の推移

(単位:人)

区 分 H28 年度 H29 年度 H30 年度 H31 年度 R2 年度 R3 年度
公立保育所 1,063 1,025 960 985 982 953
私立認定こども園 62 69 80 90 109 108
合 計 1,125 1,094 1,040 1,075 1,091 1,061

備考 入所児童数は、各年度 4 月 1 日現在。市外からの受託児童を含む。

 

 

(5)私的契約児の状況

*1

私的契約児は、3 歳以上児で保育給付認定(2 号認定)を受けない児童が、定員に余裕

がある場合に限り、保育所の入所を認めるものです。

令和 2 年度から急減していますが、これは令和元年 10 月から 3 歳以上児の保育料の無償化制度が始まり、私的契約児は、無償化の対象外となるため、無償化の対象となる保育給付認定(2 号認定)を受けるように転換されたためです。

また、私的契約児は、普通交付税の基準財政需要額に算入されないため、保育料を除いた運営費が全て市負担となっています。

今後は、私的契約児を解消し、保育所を認定こども園化することによって、保育料が

*2

無償化の対象となる教育給付認定(1 号認定)を受けての入所に転換していく必要があり

ます。

 

 

〇私的契約児童数の推移

(単位:人)

H28 年度 H29 年度 H30 年度 H31 年度 R2 年度 R3 年度
105 95 107 97 36 33

備考 入所児童数は、各年度 4 月 1 日現在

*1 満 3 歳以上の小学校就学前の子どもであって、保護者の労働又は疾病その他の内閣府令で定める事由により家庭において必要な保育を受けることが困難であるもの

*2 満 3 歳以上の小学校就学前の子どもであって、2 号認定の子ども以外のもの

 

(6)市外の保育所への通園状況

市内在住の児童は、特別な理由がある場合に、市外の保育所へ通園することがあります。主に、愛西市の私立保育園に通園しています。

これを広域保育といいますが、市外の保育所への通園児童数は、年々減少傾向にあります。

 

〇市外保育所通園児童数の推移

(単位:人)

H28 年度 H29 年度 H30 年度 H31 年度 R2 年度 R3 年度
76 66 59 49 49 40

備考 通園児童数は、各年度 4 月 1 日現在

 

(7)公立保育所の職員の状況

令和 3 年 4 月 1 日現在の公立保育所に勤務する職員は、正規職員が保育士 97 名、調理員 8 名、会計年度任用職員が保育士等(延長保育対応無資格者を含む。)155 名、調理員 12 名となっています。

調理員は、正規職員、会計年度任用職員いずれも給食調理業務委託が進むことにより、今後も減少していくことが見込まれます。

 

(8)公立保育所の建設年度

弥生保育所、白鳥保育所は、比較的新しい保育所ですが、西部保育所、南部保育所、大藤保育所、栄南保育所は、建設後 40 年以上が経過し、老朽化が進んでいます。

今後は、弥富市公共施設等総合管理計画及び弥富市公共施設再配置計画に基づき、施設の長寿命化を計画的に進めていく必要があります。

 

保育所名 延床面積(㎡) 建設年度 経過年数
白鳥保育所 1,562 2014 7
弥生保育所 1,806 2010 11
西部保育所 733 1977 44
南部保育所 1,445 1979 42
ひので保育所 1,920 2004 17
桜保育所 1,297 1986 35
大藤保育所 1,137 1978 43
栄南保育所 907 1976 45
十四山保育所 1,789 1986 35

 

(9)保育所の運営費

公立保育所の運営経費は、平成 16 年度からは国が負担していた保育所運営費の国庫負担金が三位一体改革により一般財源化され、全額が市負担となりました。

なお、その運営費は普通交付税の基準財政需要額に算入され、普通交付税で交付されますが、不交付団体になれば、全額が市負担となります。

一方、私立保育所は、国・県・市が負担する公定価格により運営されています。公定価格は、施設の定員規模や地域により国が定めています。公定価格の国・県・市の負担割合は、公定価格から利用者負担額(保育料)を差し引いた額に対し、国が 1/2、県が 1/4、市が 1/4 を負担する仕組となっています。

 

2    保育所の民営化の手法

民営化の手法には、「移管」と「委託」がありますが、特長は次のとおりです。

  • 移管:公立保育所を廃止し、民間の保育所を新設するものです。(民設民営)設置主体、運営主体ともに市から法人に変更となります。

土地は貸与、建物は譲渡するケースが多くなっています。

  • 委託:公立保育所のまま、運営のみ委託するものです。(公設民営)

運営主体のみ市から受託者(指定管理者含む。)に変更となります。土地・建物とも市所有のままとなります。

 

設置運営

 

方 式 直営(公設公営) 委託(公設民営) 移管(民設民営)
保育所 公立(市立)保育所 民間(私立保育所)
設置主体 弥富市 社会福祉法人

(学校法人、NPO、株式会社)

運営主体 弥富市 受託者

(指定管理者)

法 人
施設(土地) 市所有 市所有(貸与)
施設(建物) 市所有 譲 渡
職 員 市職員(公務員) 法人職員
運営費 一般財源 一般財源

(委託料)

保育所運営費(公費負担)

 

【主な違い】

・移管の場合は、完全な民間保育所となり、保育所運営費を国・県・市が負担します。

運営費は、公定価格から利用者負担額(保育料)を差し引いた額に対し、国が1/2、県が1/4、市が1/4負担することになりますが、普通交付税も減額されます。

・委託の場合は、一般財源で直営だったものが、受託者(指定管理者含む。)に委託料を支払って運営委託することになります。

委託料は、運営費に相当し、国・県の公費負担はなく全額市負担となりますが、普通交付税の措置があります。直営よりは人件費が安いためメリットがあるとして実施している自治体もあります。

・移管の場合は、法人が保育所を廃止しない限り保育所は存続しますが、委託の場合は、期間に制限を設け、その都度受託者を公募により決定する場合が多くなっています。

・委託の場合は、土地・建物とも市所有のままなので、修繕等維持経費は通常市が負担することになります。

 

3    民営化に対する基本的な方針

(1)実施方針

① 公立保育所の民営化を進めるに当たっては、保護者、市民、議会等へ情報提供や協議を行い、説明責任を果たすとともに、不安や懸念の払拭に努め、円滑に移行できるよう十分配慮します。

② 公立保育所の民営化は、単に運営費の削減のみを目的とするのではなく、公立保育所と私立保育所それぞれの役割を十分に発揮し、結果として本市全体の保育水準を高め、保育環境の向上に寄与することを目的とします。

③ 現在の公立 9 保育所のうち、公立保育所の地域における子育て支援の拠点としての機能と役割を考慮しながら、原則として各小学校区等に一つの公立保育所を配置できるように配慮します。

④ 民営化後の移管先の施設整備に係る修繕などの負担を軽減するため、経過年数が少ない保育所を対象とします。

⑤ 民営化後の保育所は、認定こども園への移行を前提として、移管先を選定します。

 

 

(2)民営化の手法について

民営化の手法には、「移管」と「委託」がありますが、次の理由により、本市の民営化の手法は、「移管」により行い、民設民営へ移行するものとします。

① 「移管」では、公立保育所には対象とならない国・県の負担金の交付対象となりますので、運営費にかかる財源が確保しやすくなります。

また、施設の増改築や大規模修繕についても、国の補助制度が活用できます。

② 「委託」では、多様化する保育ニーズに対応するための保育内容等の変更等でも、運営主体の市との協議が必要となるなど、民間の特色であるノウハウを活かした迅速かつ柔軟な対応が発揮しにくくなります。

また、施設の増改築や大規模修繕は、全額市負担となります。

 

 

(3)移管先の選定について

移管先は、保育運営に実績のある社会福祉法人又は学校法人を対象に公募し、プロポーザル(企画提案)方式とします。

 

(4)民営化する保育所の土地・建物等

土地は有償貸与、建物及び備品類は無償譲渡を原則とします。

 

(5)移管先に求める保育内容等

民営化後の保育内容については、職員配置や設備面等に係る国の基準を遵守し、国が定める保育指針に基づいて保育を行うことを原則とし、移管前に行っていた保育内容は最低限実施するとともに、市民の保育ニーズの把握に努め、それに応えるべく保育サービスの向上を図ります。

 

(6)移管先への引継ぎ

移管に当たっては、入所児童に配慮し、環境の変化を穏やかにするために、約 1 年間の引継期間を設けて、保育移管先の保育士と公立保育所の保育士による引継保育を実施します。

 

(7)民営化後の市の役割

市は、公立保育所の民営化後も職員が訪問し、移管条件が守られているかどうか等保育所の状況を確認するとともに、施設長等から保育の実施状況等を聴き、必要に応じて指導や助言を行う等、移管後のフォローにも十分配慮します。

 

(8)職員の処遇について

民営化の実施に当たり、民営化となった保育所に在籍する正規職員については、他の公立保育所への配置換えを行います。

また、職員の入れ替わりに伴う環境の変化を最小限に抑えるため、会計年度任用職員のうち引き続き移管先での勤務を希望する者については、優先的に雇用するよう移管先に対して要請します。

 

4    各保育所の民営化等の方針

全ての公立保育所についての民営化等の方針は、次のとおりです。

 

  • 民営化等方針
保育所名 方針 実施内容
白鳥保育所 公設公営 公立保育所として継続
 

弥生保育所

 

民営化

民間の事業者を公募し、民間法人に移管し民営化する。

(認定こども園へ移行)

西部保育所 公設公営 公立保育所として継続
南部保育所 公設公営 公立保育所として継続
 

ひので保育所

 

民営化

民間の事業者を公募し、民間法人に移管し民営化する。

(認定こども園へ移行)

桜保育所 公設公営 公立保育所として継続
大藤保育所 公設公営 公立保育所として継続
栄南保育所 公設公営 公立保育所として継続
十四山保育所 公設公営 公立保育所として継続

 

 

  • 民営化実施のスケジュール
実施時期 内容
当該年度-4 年度 議会への説明
 

 

 

当該年度-3 年度

保護者等への説明

移管法人候補者の公募選定委員会の設置

移管法人候補者の決定

関連議案議決

当該年度-2 年度 移管法人等関係機関との調整(随時)
 

当該年度-1 年度

財産処分の手続(土地・建物・備品類)引継保育の実施
当該年度 4 月 民営化実施