弥富市長が弥富市に不当な支出をさせたことについて、弥富市民3名が名古屋地方裁判所に対して住民訴訟を提訴するものです。
住民訴訟の理由
名古屋市のベッドタウンの弥富市のJR・名鉄弥富駅で、総事業費46億円の自由通路及び橋上駅舎化事業計画が進めています。
弥富市によれば、この事業計画は鉄道で分断された南北の一体化と、駅を拠点とする地域の発展を目指すことが大きな目的であるとしています。
しかしながら、計画策定やその計画の当否判断の上で不可欠な実態調査と分析、比較検討など基礎的なデータ、資料を求めてもほとんど公表されていないのが現状です。
また、自由通路整備に関する国の制度の適用についても、実態に合わせた分析、検討と弥富市としてのあるべき負担を的確に踏まえた判断がどのようにされているかについても明らかにされていません。
こうした中で、都市計画決定や、道路認定の手続きを進め、本年4月1日にはJR、名鉄と工事に関する協定・覚書を結んでしまいました。
基本的な説明さえないままに、本来鉄道事業者が行うべき事業を弥富市が主体となって施行し、不当で過大な費用を弥富市に負わせようとしています。
そこで制度の適用が適切であるかどうかを、十分な資料、データを踏まえつつ客観的な立場で判断を仰ぐものです。
要旨
弥富市が計画しているJR・名鉄弥富駅自由通路及び橋上駅舎化事業について「都市計画決定手続き、道路認定手続き、JRとの協定、名鉄との覚書」は地方自治法違反であるとして、「弥富市長に対してJRとの協定、名鉄との覚書の差し止めと支払い済みの市費の返還」を求めて弥富市民3名が住民訴訟を起こしています。
地方自治法第2条14項は「地方公共団体は、その事務を処理するに当たっては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない。」と規定し、地方財政法第4条1項は「地方公共団体の経費は、その目的を達成するための必要且つ最少の限度をこえて、これを支出してはならない。」と規定しています。
弥富市では30年前に本件と同様な事業として「近鉄弥富駅の橋上化」が近鉄を事業主体として施工されています。踏切の混雑と危険性の解消のために、弥富市が駅前広場を道路事業として整備し、近鉄は駅の橋上化と、乗客の利便性と安全性のために、狭くて危険だったプラットホームを倍の広さに改良しエレベーターやエスカレーターを設置しました。弥富市は近鉄の総事業費24億円のうち9億円を補助しました。
この事業の背景は、従来は北側にしかなかった改札口へ南側から来る住民が一旦西側の踏切を渡らなければならなかったことです。
特に近鉄は本数が多く、朝7時台は、一時間に上下21本の停車する列車と通過する8本を通すために遮断機が下り大変不便でした。また、車も自転車も歩行者も多く大変危険な状態でした。橋上化により南側からもスムーズに乗れるようになりました。
同時期に南側の平島地域で区画整理事業も計画施工されていました。区画整理事業により供給される宅地の価値を高める効果がありました。区画整理事業による人口増加という事業目的からも大きな事業効果があり、弥富市でなく近鉄に補助するという費用対効果の高い事業でした。
なお、近鉄は当時1日16,000人の利用客がありましたが、名鉄やJRはそれぞれ3000人程度です。
また、当時、弥富市の分譲住宅は「名古屋まで14分」をうたい文句にしていましたが、14分は近鉄の急行であってJRや名鉄ではありません。市民から見れば弥富の交通の顔は近鉄です。
原告が地方自治法違反であると主張することは2点あります。
JR・名鉄弥富駅の整備に関しても、行政として、事業の目的と手段を真っ当に比較検討すれば、市道としての自由通路整備ではなく、近鉄と同様に鉄施設の改良の補助とならなければならず、弥富市自体が事業主体となって40億円(うち鉄道負担は1億円)を支出するのは違法です。
鉄道施設としての整備事業であれば、鉄道事業者が建設する自由通路部分に対して国の要綱が示すように、自由通路部分11億円のうち3分の2の約7億円を補助すれば足りるということを主張しています。
第二の問題点は契約方法が違法です。仮に弥富市が事業主体になる場合でも協定書ないし覚書による契約締結は、地方自治法第234条2項に違反します。
地方自治法は、契約は一般競争入札を大原則としており、仮に事業を行うしたとしても発注者である弥富市に精査した図面や見積もりを示し一般競争入札を行うことによって事業遂行をはかるべきところ、全てJRと名鉄に委ねる方式は弥富市としてチェックが不十分であり弥富市としての行政責任を放棄するものであり違反です。
住民訴訟の概要
(1)原告請求者
弥富市民3名(請求代表者 加藤明由)
(2)被告
弥富市長
(3)提出日 令和4年4月21日