高山市は まちづくりの総合戦略の構成要素としての自由通路(弥富の自由通路とは意味が違う)

高山本線高山駅自由通路新設及び橋上駅舎化事業について、弥富市議会総務建設委員会として視察させてもらいました

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以下 私のレポートです

現地調査の結果、まず幅員が6メートルあり通路と言うよりも広場・ギャラリーと言っても良いほどの空間設計がされています。
内部は地元産の木材を使用した装飾、ユネスコ無形文化遺産高山祭の祭屋台の一部を実物大で製作展示するなど、地元伝統技術の結集である『祭屋台』を題材にした展示により、観光客だけでなく市民にも地元伝統技術に興味を持っていただけるような空間づくりを行ったそうです。
内部の天井と壁は豊かな木材で温かみを出しながら、足元からガラス越しに光を入れ、線路やホームがガラス越しに見える浮遊感も演出されています。優れたデザインであることが現地で確認できました。
外観については、設計者である建築家内藤廣さんの特徴でもあるのか実にシンプル、見ようによっては、そっけないデザインとなっています。
高山と言えば「格子」や「瓦屋根」などデザインのアイコンが豊富にあるはずです。しかし、自由通路の空間ボリュームがかなり大きいことを考えると、鉄道駅としての景観バランスを考え「ワイドビューひだ」など列車や線路など鉄道施設の方を、デザイン上の主役(図)として、自由通路はその背景(地)として、鉄道を引き立たせると言う考えであれば優れたデザインであると評価しました。
ただし、エスカレーターを4基設置するなど、今後の維持管理費を考えると相当の負担があるのではないかと思われます。
東側の広場も同じデザイナーが設計監修しているとのことでした。2つの長方形の水盤があります。これも意匠的にはシンプルですが、効果的なおもてなしの演出として評価に値します。
駅周辺施設全体で、トイレほか清掃管理委託料約1200万円、保守管理委託料2100万円、電気・上下水道料約500万円は毎年相当な負担になるはずです。エスカレーター、水景施設の循環装置、滅菌装置など今後の老朽化に伴って修繕・更新費用は相当あるはずです。
特筆すべきは、この自由通路事業の財源が、借り入れは一切行わず国の補助金と都市計画税や一般財源、基金を充当して行ったことです。
高山市役所の令和2年度の歳出総額は約600億円、都市計画税は9億円。同じ自由通路といいながら、総額600億円に対する自由通路42億円と当市の140億円に対する40億円では差がありすぎます。特に、当市には都市計画税という財源が無いことを注意しなければなりません。
また、「観光がまちづくりの核」であるどころか、大都市から遠く「特急ひだ」が「死活的な生命線」であることも当市と比較になりません。もちろん、弥富にとって重要な通勤・通学については近鉄への補助で役割は果たしています。
この自由通路は、高山駅周辺土地区画整理事業があっての事業であることも注意しなければなりません。
区画整理事業の中で駅の橋上化が行われ、平成24年度から平成29年度、事業費約42億円、そのうちJRが約5%、計算上2億円程度を負担したとなっています。従来の高山駅舎区域が区画整理事業区域に編入され、面積が減少していますので、区画整理事業による精算金でJR負担分は賄うことが出来たことが示唆されます。
弥富駅と比べると金額が大きいのは、やはりJRにとって高山本線の基幹となる駅であり、駅機能が相当大きかった事が想定されます。構内のホーム上の屋根の整備も含まれていると考えられます。
この事業の設計にコンペが行われたことも注目すべき点です。
自由通路の利用状況について「東西を通り抜ける人数」について統計は取れていません。高山駅は通勤にはほとんど利用されておらず、観光地の駅としての利用に特化しているとの説明でした。
高山市にとって観光地としての入り込み客数の維持・増進は死活的に重要な課題であろうかと思います。ちなみに入湯税は年間約1億円です。
地域経済を維持するために、高速バスのターミナルを含めて高山駅でのアクセスとしてJR東海を支援することに関して、高山市民としての市民合意はあったのだと思われます。
もちろん「高山駅周辺地区まちづくり委員会」で具体的な施設、都市景観についての検討、市議会の特別委員会も設置されています。
高山市役所がJRとの交渉力、市民とのコミュニケーション能力、事業の合意を形成する能力が高いと感じました。
事前にホームページを閲覧して感じたのは、飛騨市役所にも共通しますが、市長が「市民が主人公の新しい高山市のまちづくりを進める基礎として、情報公開日本一を目指した行政情報や会議の公開」に取り組んた真の行政の仕組みの改革」により組織全体、職員全体が、行政を経営するための能力が鍛えられている点が当市にない力の差であると感じました。

高山本線高山駅東西口駅前広場整備事業について

この事業は、旧城下町の西側に設けられた高山本線に対してさらに西側が製材工場と農地でしたが、廃業に伴い徐々に住宅地化していく状況の中で西側の開発を区画整理事業によって行おうとするものであり、開発の背景、目的、手段共に納得の出来るものでした。
「市施行の区画整理事業」を活用して「用地処理を容易」にして、「都市計画道路」を整備する手法は優れていると評価しました。
東西の駅前広場及び都市計画道路、従来歩行者専用だった駅の北側の地下道を、高さ制限があるものの自動車2車線と歩行者・自転車の地下通路を整備牽制すると言う極めて総合的なものであり東西をバランスよく開発した事業として評価できます。
もちろん「高山駅周辺地区まちづくり委員会」で具体的な施設、都市景観についての検討、市議会の特別委員会も設置されています。
土地区画整理事業は平成10年度から31年度の22年にわたり、道路面積が施工前9.0%から23.5%へと15%を増加している一方、民有地は47.0%から41.4%と約5%の減少です。
この理由は保留地処分で事業費をねん出する民間土地区画整理組合ではなく、高山市が施工者となり、高山市の都市計画税(年間約9億円)と都市計画道路等の整備については国庫補助を活用したことで、減歩率15.83%となっています。地権者にはありがたい事業であったのではないかと思われます。
さらに特筆すべきは議会の状況です。
高山市の議会基本条例に基づく主な取り組みで特筆すべき点は、広報公聴活動として平成22年より「市民意見交換会」を開催し、具体的には「地域別市民意見交換会」を21会場で年1回以上、「分野別市民意見交換会」を委員会が必要に応じて開催、「手挙げ式市民意見交換会」を団体からの希望に応じて開催しています。
CATV「はい、議長です」の放映を年5回、議会中継は録画配信だけでなくライブ配信を平成17年度より実施しています。
また平成2年度より「ちいきミライ箱」の運用、平成3年より「議会モニター」の委嘱をしています。
また議案の審議・審査方法の見直しとして「議員間討議の導入」を行うこと、議案審査の取り組みの強化としては「論点整理、現地調査、参考人招致」などを行っています。
委員会活動を中心とした政策形成サイクルの導入として、委員会は「政策課題を設定」し「視察調査や市民意見交換会」「議員研修会」等の取り組みを通じて、政策提言に向けた調査研究を進める。「常任委員会開催を毎月定例化」しています。
政策提言等の内容の質を高めるとともに、政策課題についての議員の共通認識の醸成を目的に全員で「政策討論会」を開催しています。
平成23年11月より市の政策水準を向上させるために政策討論会を得て市長に政策提言を実施しています。
会議録についてはインターネット等の「会議録検索システム」を導入しています。

 

参考
市公式ホームページの「市長の動き」もとても具体的です(飛騨市も同様ですが)

前市長國島芳明さんのインタビュー 日経グローカル No.259 2015. 1.7

前市長國島芳明さんのインタビュー動画から
(抜粋)
(國島芳明さんは元高山市役所の職員)
自分が市の中で、いろんなポストもずっと重ねてきて、でもそれでもやりたいっていうことは、どうしたって自分の意思決定ではできないとこが非常に多く出てきましたので。
その意味では、やっぱり自分が目指す高山市の政治のあり方っていうか、行政のあり方みたいなものを少し新しく作っていきたいという思いで手を挙げたっていう。
ちょうど副市長のときに60歳を迎え一応還暦だったので、今まで培って、あるいは皆さん方が大変育てていただいたりしたことに対して、今度は市長という立場でお礼返しをしたいと。
だからその意味では、皆さん方がいろんなことを思ってみえるのを、できるだけ高山市としてお聞きして、そしてそれを拾い上げて、それを具体化してお返ししていくと。
そういうそのキャッチボールが、どうも今までの自分が経験している行政の中では、どうも少なかったように思いましてねて。
できるだけその市民の皆さんの声が市政に反映していく。そういうシステムを作りたかったっていうのが大きい柱の一つです。
日本みたけりゃ高山おいで」っていうことですよ、一言で言えば。
いわゆる日本そのものが、現在もそのきちっと受け継がれて残っている。
それは、自然、歴史、伝統、文化。人々の気持ち、生き方っていうか。
それは僕はこの飛騨地域の高山っていうのが壊れずに残ってる。
だから温泉も用意してます。もう素晴らしい景観の山岳もあります。
飛騨牛とかっていう大変美味しい肉もあります。
美味しい日本酒もあります。
そして優しくみんなが笑顔で声をかけてください。そういう環境もあります。
古い街の中では歴史的なものいろんなものを感じさせていただきますと言う。
だからもう一度人間性を取り戻して元気になって帰っていただける場所は高山ですよっていうのが私の売り込みです。
そういうものを全てやっぱし、高山市の観光の資源だというふうにして売り出さなきゃいけないっていうのが一つありますよね。
二つ目は、これだけ人口がだんだん少なくなってくる状況の中では、世界のお客様をこの日本に呼び寄せて、そしてできれば高山に来ていただけるということをやっぱりしなきゃいけないだろうというのが二つ目の大きいことですね。
そのためにはいろんなアナウンスができる。例えば看板だとかあるいはパンフレットだとかあるいはいろんなホームページだとかっていういわゆるハードルをなくしていくっていうか、バリアをなくしていくとかっていうことをやっぱ努めていかなきゃいけないだろうなと。いうふうに思っていますそのことに力を入れています。
意図的に迎え入れるということではなしに、そこが自然となってるっていうことが大事だと思うんですよ。
テーマパークのように作られてて、そこのところにお迎えされて何か楽しいことやってまた帰ってくるっていうふうではなしに。
そこの行くこと自体がもう違った世界なんだけど、
そこにはばっちり歴史だとか文化だとか、人々の生活っていうのがそこで根付いてるっていうことが大事だろうというふうに思います。
自然エネルギーの自給自足。エネルギーの自給自足です。これはもう絶対。今エネルギー大作戦というのをやってましたね。100倍にしようと高山で自然エネルギーを100倍にして自給自足にしようという活動を今させていただいたんですよ。
だからその水力発電を奨励したりとか、あるいは太陽光発電だったりとか、いろんな可能性を、これから温泉を活用して何かできないかとか。
人間が生きていくための社会を構成していくためのエネルギーというのを自給自足する食べ物もそうだし水もそうだし、電気もそうだし、ガソリンみたいなものに変わるものも含めてですけどそれができれば電気代が高くなったとか低くなったとかだこうだとかとも影響されない。
要するに、自立ができるということが目的なんですよ。
うん、最終目的は自立ができる精神的にも経済的にも、ある意味で日本からこの高山ってのは独立して自立しているんだっていうような、やっぱしまちにしなきゃいけないと思うんですよね。
いつまでも国の補助金に頼ってるとか。ね、そういうふうじゃなしに、やっぱし自分たちのまちは自分たちで何とかできるんだっていうそういう自立したまちにするための第一歩として、エネルギーは自給自足にしようね、これが最高の私の目的。
高山の人は英語でシャイだってことですよ。
要するに、例えば一つのことをやったやったというふうに自慢する人は少ないんです。
もうスッゴイそのエネルギーを持ってたり、スッゴイ活動してみえるんだけど、いやそんなことは大したことありませんよみたいな、そういう気質の人が高山人の気質ですね、これ飛騨人と高山だけじゃないし、飛騨人だと思います。それを我々飛騨弁というと「こうとな」となってるんですけど。
「こうとな」文化があるっていうのは、そういういわゆるちょっと控えめな、前へどんどん出ていくっていうふうじゃなしに一歩引いてやることがきちっとやるという。
「こうとな」文化と我々言ってますけど、これが高山人の気質だと僕は思ってます。(中略)
そういうのがやっぱりこの高山の子供たちも含めて笑顔がね、あふれるそういうまちになれば一番いいなって思ってます。
私はいろんな方々に、高山に本当に来てもらいたいんすよ。
来てもらって、楽しんでもらって元気になってもらって帰ってもらいたいんですよ。
そういう意味で、その帰っていただくためには、よかったなって思って帰っていただかないとまた来たいと思ってくれないんで。
だから高山っていいとこやったなっていうふうに思ってくださるように、我々は一生懸命おもてなしをするし、自分の生活を磨きます
ですから何度でも訪れたくなるようなまちにしますので、ぜひ度々訪れていただければと思ってます。待ってます。

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