【市民への提言】弥富市入札問題:「99%の落札率」は本当に自然なのか?
~建設のプロである安藤市長が「不自然ではない」と答弁することの、本当の不自然さについて~
2月13日に行われた記者会見において、安藤市長は今回の入札結果(落札率は3件いずれも97パーセント以上、1件は落札率99.09%)について、「業者が積算した額が予定価格に近かったと認識していた。結果として99パーということがあるということでございますので、入札した結果において、それを99だから不自然だなということは覚えていません」という旨の答弁をされました。
しかし、長年この業界で積算や入札の実務に携わってきた私の視点から申し上げると、この答弁は**「いくつもの点において極めて不自然」**です。
なぜ99%という数字が「偶然」ではあり得ないのか。一般の方には見えにくい入札の裏側と、数学的なあり得なさを、専門的な視点から解説します。
1. 前提:安藤市長は「入札と工事のプロ」である
まず皆様に知っていただきたいのは、安藤市長は決して素人ではないということです。長きにわたり、弥富土地改良区で実際に設計図を描き、積算(工事費の計算)を行い、業者を選定し、監督業務を行ってきた、まさに**「現場叩き上げのプロ」**です。
入札制度の裏も表も、実務の厳しさも熟知している市長が、今回の数値を「不思議に思わない」ということは、経験上あり得ないことなのです。
2. 「予定価格」はどうやって決まるのか?
今回の「まちなか交流館改修工事」の予定価格は約6億5994万円でした。この金額は、ドンブリ勘定で決まるものではありません。
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膨大な積算作業: 市は設計専門の会社に委託し、数百万円以上の費用と時間をかけて図面を作成します。窓ガラス1枚、配管1本に至るまで、何千という項目を拾い出します。
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1円単位の積み上げ(金入り): 標準的な材料(コンクリート等)は公表されている単価を使いますが、改修工事特有の部材などは、実際に複数の業者から見積もりを取り、最も安い価格を採用します。
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経費の加算: そこに現場管理費、会社の利益、職員の福利厚生費などを、決まった計算式で積み上げます。
こうして、何十人もの専門家が膨大な時間をかけて弾き出した答えが、今回の「6億5994万円」という数字なのです。
3. なぜ「99%」が数学的にあり得ないのか
入札に参加する業者は、本来であれば「自社ならいくらでできるか」を独自に計算して入札します。しかし、以下の理由から、市が弾き出した予定価格に、わずか1〜2週間で「99%(ほぼ同額)」まで肉薄することは不可能です。
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時間の壁: 市側が数ヶ月かけて作った積算を、業者がわずか数週間の入札期間で、しかも少人数の営業担当だけで正確に再現することは、物理的に不可能です。
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計算の複雑さ(建築工事の特殊性): 道路舗装のような単純な工事であれば、公表単価だけで近似値を出すことは可能です。しかし、今回のような複雑な「建築・改修工事」は、独自の見積もり要素が多岐にわたります。
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「試験」に例えるなら: これは、出題範囲が膨大で極めて難解な入学試験で、「満点(100点)」に近い99点を偶然取るようなものです。実力だけで、市が計算した「正解」と偶然一致することは、天文学的な確率と言えます。
4. 本来の入札のあるべき姿
国や自治体が定める「予定価格」は、「手抜き工事をせず、適正な利益を出して社員に給料を払える金額」として設定されています。 本来の競争入札は、各企業が企業努力を行い、「うちは5億円でできる」「うちは6億円だ」と競い合うものです。
もし、すべての項目を正しく積算したとしても、企業ごとに仕入れ値や経費は異なるため、市が決めた価格とピタリと一致することはあり得ません。
5. 結論:不自然以外の何物でもない
かつて全国で談合事件が多発し、入札制度は改革されました。しかし、今回の件は「自社で見積もった結果、偶然99%になった」という言い訳が通用するレベルの工事ではありません。
複雑に絡み合った6億円規模の改修工事において、短期間で市の積算価格とほぼ同じ金額を弾き出すこと。それは**「答え(予定価格)を知っていた」**以外に説明がつかない現象です。
これをご存じないはずがない「プロ」である安藤市長が、「不自然ではない」と言い切る姿勢こそが、今回の事件の最も深い闇であると言わざるを得ません。
