【提言】指名停止で弥富市の工事は止まるのか?
~業者を「温室育ち」にしてしまった歴代首長の重い責任~
今回の官製談合事件を受け、関与した業者への「指名停止処分(一定期間、公共工事に参加できない措置)」が避けられない状況です。これに対し、市民の皆様から**「地元の建設業者がいなくなったら、弥富市の工事が止まって困るのではないか?」**というご懸念の声をいただいています。
しかし、結論から申し上げれば、本来あるべき「競争」が行われていれば、過度な心配は不要なはずです。 なぜなら、ここ30年間で日本の建設業界は大きく変わり、淘汰と成長を繰り返してきたからです。今日は、公共工事の原点と、弥富市政が業界に与えた「負の側面」について解説します。
1. 公共工事の原点:「道普請」の精神とは
そもそも公共工事とは何でしょうか。 その原点は、かつて村人たちが鍬やスコップを持ち寄り、自分たちの手で道路や堤防を直した**「道普請(みちぶしん)」**にあります。 「自分たちの生活を守る道であり、堤防である」という意識があるからこそ、見えない部分も手を抜かず、限られた予算で最良の材料を使い、頑丈に作る。これが公共事業の魂です。
現代では専門業者がその代行を行っていますが、原資が「市民の血税(市税や国庫補助)」であることに変わりはありません。 だからこそ、民間工事以上に**「品質」「耐久性」「安全性」**が厳しく求められるのです。耐震性不足や手抜き工事は、市民の生命に直結するからです。
2. 「失われた30年」:全国は競争で強くなった
約30年前、全国規模で談合が社会問題化し、建設業界は大改革を行いました。 「指名競争入札(仲間内での受注)」から、**「一般競争入札(誰でも参加できる競争)」**への移行です。
この30年間、全国の建設会社は何をしてきたか。
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技術力の向上: 競争に勝つため、コストを下げつつ品質を保つ技術を磨いた。
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経営の効率化: 無理・無駄・ムラをなくし、利益が出る体質を作った。
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事業譲渡と再編: やる気のある会社が、後継者のいない会社の技術や人材を引き継ぎ(M&A)、規模と実力を強固にしてきた。
つまり、まともな競争環境にあった地域では、「安かろう悪かろう」の会社は淘汰され、技術と経営力のある強い会社だけが生き残っているのです。
3. 最大の被害者は「甘やかされた業者」かもしれない
ひるがえって、弥富市はどうだったでしょうか。 安藤市長、そしてその前の市長たちが、旧態依然とした「談合システム」を温存してきました。
もし、今回の事件で地元の業者が立ち行かなくなるとすれば、それは**「弥富市の甘い汁(不当に高い工事単価)」**を吸わなければ生きられない体質になってしまっていたからです。 他所の地域が荒波に揉まれて筋肉質になっている間に、弥富市の業者は「下駄を履かせてもらった高値」で受注し、コスト削減や技術開発の努力を怠ってしまった可能性があります。
そう考えると、**このシステムを温存した歴代市長こそが、地元の建設業者をスポイルし(ダメにし)、結果として彼らを窮地に追いやった「真の加害者」**と言えるのではないでしょうか。
4. 建設業界への願い
私は長年、建設の世界に身を置いてきました。この業界がいくつもの荒波を乗り越えてきた底力を知っています。 今回の事件は、弥富市の建設業界にとって「正面衝突事故」のような衝撃でしょう。しかし、私は心から願っています。
**「弥富の業者も、腐敗したシステムに依存せずとも、本来の技術力と積算力を持っているはずだ」**と。
政治家へ還流するお金や、談合の調整コストなど無駄な経費を削ぎ落とし、純粋に「良いものを適正価格で作る」という原点に立ち返れば、必ず生き残れるはずです。 そして、今後はそのような健全な会社だけが、市民の財産である公共インフラを守る資格を持つのです。
これまでの「政・官・民の癒着トライアングル」を断ち切り、真に自立した建設業界へと生まれ変わる。そのための痛みを伴う改革が、今まさに求められています。
