なぜ事件は起きたのか? 名古屋市の「鉄の掟」と弥富市の「教育の空白」を比較する
今回の弥富市における入札情報漏洩事件。多くの市民が「なぜ?」と感じていることでしょう。 かつての感覚では「金品を受け取らなければ(賄賂でなければ)罪にならない」という誤った認識があったかもしれません。しかし、現在は法律も社会の目も大きく変わっています。
お隣の名古屋市では、30年前の汚職事件を教訓に、職員と業者との接触について極めて厳しい「倫理規則」を定めています。この名古屋市の基準を紐解くことで、今回の弥富市の事件が、単なる個人の暴走ではなく、**「やるべき教育を怠ってきた歴代市長・副市長の責任」**であるという本質が見えてきます。
1. ここまで厳しい! 名古屋市の「職員倫理ルール」
名古屋市では、職員が利害関係者(契約業者など)と接触する際、以下のような極めて厳しい「行動のルール」を定めています。これらは「疑いを招く行為そのもの」を禁じています。
利害関係者とは?
単に契約している業者だけでなく、**「過去3年間に契約等の関係があった業者」や「これから申請しようとしている業者」**も含まれます。
「割り勘」でもアウト? 厳しい飲食の制限
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お茶も食事も原則禁止: 利害関係者と共に飲食することは、たとえ割り勘であっても、原則として禁止されています(「疑惑や不信を招く恐れ」があるため)。
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夜の会食は許可制: 自分の分を自分で支払う場合でも、夜間に会食をする場合は事前の許可が必要です。つまり、こっそり飲みに行くことはできません。
ゴルフ・旅行は「もってのほか」
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ゴルフ・麻雀・旅行の禁止: 共に遊ぶこと自体が禁止されています。
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同級生でも要注意: たとえ同級生であっても、相手が市の指名業者であれば、ゴルフや旅行に行けば「癒着」を疑われます。公正な職務執行に疑念を持たれる場合、これらの行為は許されません。
このように、名古屋市では**「李下に冠を正さず(疑わしいことは一切しない)」**という徹底したルールが運用されています。
2. 「お金を貰わなければいい」は昔の話
かつては「情報を教えても、金品を貰わなければ贈収賄(ぞうしゅうわい)にはならない」という古い認識が一部にありました。しかし、現在は違います。
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教えた時点で犯罪成立: 金品の授受がなくても、入札の予定価格などの秘密を漏らせば「地方公務員法違反(守秘義務違反)」や「官製談合防止法違反」等の重大な犯罪となります。
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業者側の事情: 名古屋市に出入りする業者はこの厳しさを熟知していますが、弥富市を中心とする地元業者は、こうしたコンプライアンス(法令遵守)の感覚がアップデートされていない可能性があります。
今回の容疑者は、ひょっとすると「お金をもらっているわけではないから、少し教えるくらいなら大丈夫だろう」「昔からの付き合いだから」という、致命的な認識の甘さがあったのではないでしょうか。
3. 本当の責任者は誰か? 組織的な「教育の空白」
もし、容疑者が「情報を漏らすだけで犯罪になり、懲戒免職や逮捕に繋がる」という認識を強く持っていなかったとしたら、それはなぜでしょうか?
ここに、弥富市の構造的な欠陥があります。
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情報の途絶と教育不足: 名古屋市では常識とされている倫理研修やルールの徹底が、弥富市では行われてきませんでした。
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歴代トップの怠慢: 職員に対し「何が犯罪か」「どこからがアウトか」を徹底的に教育し、業者との付き合い方を指導するのは、市長や副市長の責務です。
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無知が生んだ被害者: 適切な教育を受けていれば、職員は「それは教えられません」と断ることができたはずです。その意味で、今回の容疑者は、組織の無策によって犯罪者に仕立て上げられた**「組織的不作為の被害者」**という側面も否定できません。
結論:弥富市に必要なのは「意識改革」と「トップの責任」
今回の事件を、一職員の不祥事として片付けてはいけません。 名古屋市のような明確なルール作りと、それを職員に浸透させる教育を行ってこなかった**歴代の市長・副市長こそが、真に責められるべき「責任者」**ではないでしょうか。
市民の信頼を取り戻すためには、単なる謝罪ではなく、名古屋市並みの厳しい倫理規定の導入と、徹底した職員教育という「根本治療」が不可欠です。
