「学校に行かない選択をした子の思い、親の思い」ともに話すwith木村泰子 主催:NPO法人トモニトウ
木村泰子さんが語る「学校に行かない子どもたち」と大人のあり方
1. 「不登校」という言葉への違和感と、子どもの苦しみ
木村さんは、「不登校」という一つのくくりに子どもを当てはめてはいけないと強く語ります。
100人いれば、100通りの困り感があります。学校に行かないという選択をするまでに、子どもたちは「行かなければならないのに、自分は行けない。自分はダメなんだ」と極限まで苦しみ抜いています。だからこそ、木村さんは**「不登校という言葉は、社会に存在してはいけない言葉だ」**と言います。
学校に行けなくなった子どもに対し、大空小学校ではこう伝えていたそうです。 「ごめんな。あんたの問題ちゃうねん。あんたが来られへんのは、学校の空気に問題があるねん。どこを変えたらあなたが安心して来れるか、それを考えるのは私たち大人の仕事やから教えてよ」 子どもの問題にするのではなく、大人が環境を見直すところからスタートすることが重要だと説いています。
2. 「特別扱い」は解決にならない。変えるべきは学校の空気
「制服がしんどいなら、私服で来てもいいよ」と学校が特別に許可を出すケースがありますが、木村さんは「それで子どもが学校に来られるようになることは100%ない」と断言します。 みんなが我慢して制服を着ている中で、一人だけ私服で来れば「お前だけ贔屓されてる」といじめの火種になりかねません。一部の子を特別扱いするのではなく、**「すべての子どもが自分らしくいられる(多様性を認める)空気」**へと、学校のシステムを根本から大胆に変える必要があります。
そのため大空小学校では、担任一人が教室を抱え込む制度を壊し、複数の先生、事務職員、用務員、保護者や地域住民など、多様な大人が日常的に教室に入るようにしました。閉鎖された空間に教員以外の多様な大人がいるだけで、不適切な指導のブレーキになり、学校の空気が変わっていくと言います。
3. 「学校に行かなくてもいい」で終わらせてはいけない
昨今、「無理して学校に行かなくていい。フリースクールなどの違う場所がある」という声がメディア等で広がっていますが、木村さんはこの議論に強い危機感を持っています。
もちろん、無理をして心がズタズタになるくらいなら行かない方がマシです。しかし、「行かなくていい」で終わらせてしまうと、「今の学校は変わらないままでいい」ということになってしまいます。 「学校という本質をもう1回問い直そう。学校を作る主語は子どもです。先生が主語になっているから、先生に合わせられない子どもが学校に来られなくなる。子どもを主語にすれば、変わらなければいけないのは先生の方です」と指摘します。
4. 子どもの「自分で決める」を尊重する
学校に行けない子が学校に来られるようになる一番のキーポイントは、**「その子が自分で決めること」**だと言います。
いつ学校に来るか、どこで何分学ぶか、何時に帰るかを自分で決める。そして、自分で決めて行動することを、学校が当たり前に応援する。そうすると、10分間の学びが1時間に変わり、子どもは自分で居場所を見つけ始めます。
【エピソード:一人の卒業式】
大空小学校に5年生の終わりに来た、学校に行けなくて苦しんでいた子がいました。その子は卒業式をどうするか聞かれた時、自分で**「一人の卒業式を選ぶ」**と決めました。みんなと一緒は無理だから、一人でやる、と。 学校側は「わかった」とそれを受け入れました。当日の午後1時、その子とお父さん、お母さんが講堂に入場してくると、教職員全員が正装でスタンバイしていました。すべてのセレモニーを省略することなく、教職員の合唱も贈りました。 「校長室でこっそり証書を渡す」というのは学校側の都合です。「たった一人の卒業式」を自分で決めたその子の選択を、成功体験に変えようとするのが大人の役割だと木村さんは語ります。
5. 「困った」とオープンに言える職員室をつくる
大空小学校の卒業生が、高校生になってからあるシンポジウムでこう語ったそうです。 「今の学校は、大人のみんなで何とかしようという空気がないから困っているんです。みんなで何とかしようと思えば、みんな幸せになりますよ」
木村さんは、**「先生のせいにするのではなく、校長や先生自身が『困った、どうしよう』と声を上げられる職員室にすることが大切だ」**と語ります。誰かが困った時、瞬時にオープンにして「私も困ってるねん。みんなでどうしようか」と助け合える大人たちの姿を、子どもたちはしっかりと見ています。
最後に
木村さんは、「不登校は今の日本社会では当たり前になっている」と指摘します。学校の空気が吸えない子がいて当たり前の社会。その「社会の当たり前」を変えなければならない。 「ほんの小さなことかもしれないけれど、人と人が繋がること。一人でも繋がっていれば子どもは死なずに済む。それは、大人の誰にでもできることだ」と、私たち一人ひとりの行動を促す言葉で締めくくっています。
