「市民の声」を無視し、「既定路線」を突き進む弥富市総合計画~アンケート分析で見えた、行政の「開発優先」と市民の「生存危機」の決定的乖離~
弥富市が策定を進める「第2次弥富市総合計画 後期基本計画(試案)」および「デジタル田園都市構想総合戦略」について、その基礎資料となった「市民意識調査アンケート(自由意見)」との整合性を分析しました。 その結果、浮かび上がったのは、市民が悲痛な叫びとして訴える「生活防衛・生存への不安」を、行政が「成長と開発の論理」で上書きし、黙殺しようとする実態でした。
本レポートでは、両者の間に横たわる5つの決定的な矛盾点を指摘します。
- 「民意の無視」の制度化:駅自由通路事業の強行
アンケートにおいて、市民からは「中止・見直し」「エレベーターだけで十分」「借金を残すな」という、事業に対する厳しい批判と凍結要求が噴出しました。 しかし、計画書ではこの声を完全に無視し、以下のように記述されています。
- 計画の記述: 「重点戦略2」や「施策目標4」において「着実な推進」「賑わい創出の核」と明記。
- 【分析】 市民が「水道代の値下げ」や「命を守る防災」への予算配分を求めているにもかかわらず、行政はこの巨大事業を「後戻りできない聖域(決定事項)」として扱っています。アンケートは市民の意見を聞くためのものではなく、単なる「ガス抜き」の儀式に過ぎなかったことを、この計画書自体が証明しています。
- 「コンパクトシティ」という名の「周辺部切り捨て宣言」
計画書が掲げる「コンパクトなまちづくり」や「拠点の形成」は、十四山・大藤・栄南地区などの周辺住民にとって「生活基盤の放棄」を意味します。
- 計画の記述: 北部(駅周辺)を「居住・商業」、南部(港湾後背地)を「工業・物流」とゾーニング。
- 【分析】
- ヤード問題の追認: 南部を「物流・産業拠点」と位置づけることは、住民が苦しんでいる「大型トレーラーの通行」や「外国人ヤードの乱立」による治安悪化を、行政が「産業振興」の名の下に追認・促進することと同義です。
- 生活インフラの放棄: 「コンパクト化」の名の下に、周辺部の商業施設や公共交通網の縮小が正当化されようとしています。具体的な「買い物難民・交通弱者」への救済策は乏しく、精神論で片付けられています。
- 防災対策の「軽さ」:「命」より「イベント」
「海抜ゼロメートル地帯」に住む市民の、「避難所がない」「高い建物がない」という生存への渇望に対し、計画書の回答はあまりに悠長です。
- 計画の記述: 「ゲーム的な要素を取り入れた楽しい防災イベント」「出前講座」等のソフト対策を列挙。
- 【分析】
- 矮小化: 市民が求めているのは「楽しいイベント」ではなく、津波から逃れるための「物理的な高さ(避難タワー・高台)」です。
- 財政の矛盾: 今後40年で約400億円程度のインフラ更新費用が必要とされている中で、新規の駅整備に巨額を投じる余裕はありません。ハード整備(命の砦)の遅れを、安価なソフト事業で誤魔化そうとする姿勢が見え隠れします。
- 「共助・民間活力」という名の責任転嫁
計画書に頻出する「共助」「市民協働」「民間活力」という言葉は、行政責任の放棄を美辞麗句で飾ったものです。
- 計画の記述: 「保育所の民営化」「地域コミュニティ(ボランティア)による課題解決」。
- 【分析】
- 保育所の民営化: 市民は「保育の質」や「保育士の待遇改善」を求めていますが、行政はコストカットありきの民営化を進めようとしています。
- ボランティア頼み: 「高齢者の生きがい」としてボランティア活動を推奨していますが、アンケートでは現役世代から「自治会・行事の負担が重すぎる」という悲鳴が上がっています。行政がやるべき仕事を市民に押し付ける「二重基準」が存在します。
- 「テンプレート行政」の限界:誰の方を向いているのか
「第4次産業革命」「Society 5.0」「SDGs」「リカレント教育」など、国の報告書からコピー&ペーストしたような流行り言葉が並んでいます。
- 【分析】
- 地域性の欠如: これらの言葉は、弥富市特有の課題(金魚池の跡地利用、外国人住民との摩擦、全国有数の高い水道料金)に対する独自の処方箋にはなり得ません。
- 上しか見ていない: 国や県の方針をなぞるだけの「作文」であり、市民の生活実感や「痛み」に寄り添う姿勢が欠落しています。
【結論】
この後期基本計画は、「市民のために作られた計画」ではなく、「国や県、そして一部の利害関係者の方を向いて作られた計画」です。
アンケートで噴出した市民の不満(駅反対、南部格差、生活防衛)に対する回答はここにはありません。むしろ、「市民が反対しようとも、計画通り駅整備とコンパクトシティ化(周辺切り捨て)を進める」という行政の強い、そして冷淡な意志が、「着実な推進」という言葉に凝縮されています。
この計画書がそのまま実行されれば、市民と行政の溝は決定的なものとなり、失望した若年層を中心とする人口流出は止まらないでしょう。私たちは、行政に対し、「ハコモノから生活防衛へ」の大胆な政策転換を強く求めます。
