愛知県の知立駅における「知立駅付近連続立体交差事業(鉄道高架化)」については、議会や市民から主に以下の構造的な問題点が厳しく指摘されています。弥富市のケースとも共通する、鉄道事業者が絡む大型委託事業のリスクを示す典型的な事例です。
1. 度重なる事業費の巨額な上振れ
知立駅の高架化事業は、当初見込みから幾度も事業費が膨張しています。
一時期は約610億円から約792億円へ増額されたと報告されましたが、さらにその後の再見直しによって総事業費は約995億円へと跳ね上がっています。
これに伴い、知立市の負担額も当初の予定から増え続け、約125億円から約149億円に達する見込みとなっています。増額の理由は「労務・資材単価の上昇」や「想定が困難な要因」と説明されています。
2. 施工計画の甘さによる事業期間の大幅な延伸
事業の完了予定時期も、当初の令和5年度(2023年度)から令和10年度(2028年度)へ5年延長され、さらに直近では令和13年度(2031年度)完了予定へと再延長されるなど、計画が大きく破綻しています。
遅延の理由について行政側は、名鉄にとって初めての施工方法であり「複雑な施工ステップで想定できなかったものもある」と見通しの甘さを認める答弁をしているほか、安全性の確保や働き方改革による現場稼働時間の短縮などを理由に挙げています。
3. 情報共有の欠如と「事後報告」で押し付けられる負担
この事態に対し、知立市議会からは「今回の延伸は事業主体である県と名鉄に責任がある」「市は途中報告も受けていないのになぜ負担増を受け入れなければならないのか」といった強い批判と不満が噴出しました。
市や市民が検証プロセスから蚊帳の外に置かれたまま、鉄道事業者の施工上の都合等で計画が変更され、そのツケ(数十億円の負担増)だけが事後報告で市に回ってくるという、極めてブラックボックスな構造が存在しています。
4. 市の財政規模を脅かす過大な負担割合
事業費の高騰は、知立市の財政を極度に圧迫しています。
過去には、高架化事業と周辺の区画整理事業などを合わせると市の一般会計規模(約200億円)を超える事態となり、市の財政力では対応しきれない状況に陥りました。
そのため、長年の慣例であった「県と市の事業費折半(1対1)」を「県2:市1」に改善するよう、知立市側から愛知県副知事へ異例の直談判(要請)が行われたという経緯もあります。
知立駅の事例は、鉄道事業者任せの委託事業において、事前の積算や期間設定がいかに不確実になり得るか、そして行政側のコントロール(統制)が効かずに自治体が際限なく負担を強いられるリスクがあるかを如実に示しています。
