【提言】弥富市教育大綱への抜本的見直し
~「知・徳・体」の呪縛を解き、「自立・尊重・創造」の弥富へ~
現行の教育大綱案は、前例踏襲と思考停止の産物です。木村泰子先生(元大阪市立大空小学校校長)が指摘するように、戦後の古い概念である「知・徳・体」に固執することは、これからの予測困難な社会を生きるこどもたち、特に多様な背景を持つ弥富のこどもたちの未来を閉ざすことに他なりません。
以下に、木村先生の提言を核とした、弥富市の現状に即した修正案を提示します。
- 理念の刷新:時代遅れの「知・徳・体」から「自立・尊重・創造」へ
【現状の批判】 大綱案にある「知・徳・体」は、戦後昭和の画一的な教育観です。 木村先生が指摘するように、「体(体力)」がない障害のある子や、従来の「知(学力)」の枠にはまらない子は、このスローガンの下では「欠けた存在」とみなされかねません。これは「誰一人取り残さない」と言いながら、スタートラインでこどもを選別する矛盾を孕んでいます。
【修正提言】 弥富市の教育目標を以下の3つのキーワードに転換すべきです。
- 自立(Jiritsu):
- 海抜ゼロメートル地帯という地域特性において、自らの命を守り、主体的に判断し行動する力。
- 先生や親に「やらされる」のではなく、自ら学びのエンジンを回す力。
- 尊重(Soncho):
- 「知・徳・体」のバランスを強いるのではなく、他者との違い(国籍、障害、文化)を認め合い、リスペクトする力。
- 弥富市の高い外国人住民比率を背景に、単なる「共生」を超え、互いのルーツを尊重する土壌を作る。
- 創造(Sozo):
- 正解のない社会において、多様な他者と対話し、新しい価値や解決策を生み出す力。
- 具体策の転換:「管理と枠組み」から「対話と多様性」へ
【現状の批判】 「環境整備」や「相談体制」といったハード・制度論に終始しており、そこに「魂(どう関わるか)」が入っていません。また、「開かれた学校」を掲げながら、設置者である市側が情報を隠蔽し対話を拒む現状は、現場に「不信感と無力感」を生んでいます。
【修正提言】 木村先生の「スーツケース(管理・密閉)ではなく風呂敷(包容・柔軟)」の思想を取り入れるべきです。
- 「インクルーシブ」の再定義: 特別な支援が必要な子を「分ける」のではなく、同じ場で学ぶからこそ育つ「尊重」の心を重視する。不登校児や外国にルーツを持つ子を「枠(スーツケース)」に押し込めるのではなく、学校側が形を変えて(風呂敷)受け入れる体制への転換。
- 「対話」による合意形成: 「管理職の言うことを聞け」というトップダウンではなく、教職員、こども、保護者が「何が最上位の目標か(例:すべての子どもが安心できる居場所)」を対話で共有するプロセスを大綱に明記する。市長・教育委員会自身がその対話の姿勢を市民に示すことが先決である。
- 評価指標(KPI)の再設定:数値目標から「こどもの事実」へ
【現状の批判】 「努めます」「図ります」という言葉遊びに終始し、5年後の達成イメージが皆無です。テストの点数や進学率といった「見える学力」だけを追えば、必ずこぼれ落ちるこどもが出ます。
【修正提言】 木村先生が提唱する「見えない学力」と「こどもの事実」を評価の軸に据えるべきです。
- 定性的なKPIの導入:
- 「自分の言葉で、自分の思いを語れているこどもが何人いるか」
- 「困ったときに、SOSを出し、それを周囲が受け止める関係性ができているか」
- 大人(行政・教員)の自己評価:
- 「こどもが安心して本音(怒られるようなことでも)を言える空気を、大人が作れているか」を指標とする。
【結語:未来は創れる】
「過去は1ミリも変えられないが、未来は創れる」。 木村先生のこの言葉通り、弥富市が財政難や学校統廃合といった「過去・現状の課題」に足を取られ、美辞麗句の大綱でお茶を濁すのはもう終わりにするべきです。
「自立・尊重・創造」。 この3つを軸に、海抜ゼロメートル地帯から、多様な背景を持つこどもたちが「サンサンと輝く太陽と花畑」のような未来を自ら切り拓けるよう、魂の入った教育大綱への書き換えを強く求めます。
(以下AIでディープサーチ)
弥富市教育大綱の抜本的改定に関する調査研究報告書
~「知・徳・体」の超克と「自立・尊重・創造」による未来型教育モデルの構築~
序章:弥富市の教育が直面する構造的転換点
1.1 報告書の目的と背景
本報告書は、弥富市教育委員会が策定する次期教育大綱の方向性について、現行の「知・徳・体」に基づく基本理念を抜本的に見直し、新たに「自立・尊重・創造」を中核据えた教育ビジョンを提言することを目的とする。
現代社会は、VUCA(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)と呼ばれる予測困難な時代に突入している。気候変動による災害の激甚化、グローバル化に伴う地域社会の多文化化、そして人工知能(AI)の急速な進化は、学校教育に対して、従来の知識伝達型モデルからの脱却を迫っている。特に、海抜ゼロメートル地帯に位置し、多様な防災課題を抱える弥富市においては、受動的な知識としての「学力」ではなく、生存と共生のための能動的な「コンピテンシー(資質・能力)」の育成が急務である。
本提言は、大阪市立大空小学校の初代校長である木村泰子氏の実践理論、OECD(経済協力開発機構)が提唱する「ラーニング・コンパス2030」、そしてインクルーシブ教育や心理的安全性に関する最新の学術的知見や統計データを論拠とし、現行大綱が抱える構造的な限界を明らかにするとともに、具体的な修正案とその理論的妥当性を提示するものである。
1.2 現行大綱「知・徳・体」の構造的課題
明治以来、日本の学校教育の根幹を成してきた「知・徳・体」の三要素は、均質的な労働力の育成が求められた工業化社会においては有効なフレームワークであった。しかし、現代の多様化した社会において、この枠組みは以下の三つの重大な欠陥を露呈している。
-
「バランス」という名の排除: 「知・徳・体のバランスのとれた育成」という目標は、裏を返せば、そのバランスを欠いた児童生徒(発達障害、不登校、日本語指導が必要な子ども等)を「不完全な存在」として周縁化するリスクを孕んでいる。
-
「徳」の曖昧性と同調圧力: 「徳」という概念は、特定の道徳的価値観の押し付けや、集団への過剰適応を強いる圧力として機能しやすく、個人の主体性(エージェンシー)や多様な文化的背景を持つ子どもたちのアイデンティティを阻害する要因となり得る。
-
受動性の固定化: 従来の「知・徳・体」は、大人が与えるべき要素として定義されがちであり、子ども自身が自らの人生を切り拓く主体(エージェンシー)としての側面が希薄である。
これらの課題を克服し、すべての子どもが「自分の人生の主人公」として輝くためには、教育のOS(基本ソフト)そのものを書き換える必要がある。本報告書では、その新しいOSとして「自立・尊重・創造」を提案する。
第1章:「知・徳・体」の限界と「見えない学力」の重要性
1.1 木村泰子氏の提唱する「見えない学力」と教育の質的転換
教育大綱の改定において最も重要な視座の転換は、「学力」の再定義である。現行大綱が目指す「確かな学力」は、往々にしてペーパーテストで測定可能な「見える学力」に偏重しがちである。これに対し、木村泰子氏は、社会で生きていくために真に必要な力として「見えない学力」の重要性を説いている。
表1-1:見える学力と見えない学力の対比
| 比較項目 | 見える学力(従来の「知」) | 見えない学力(木村泰子氏の提唱) |
| 評価手法 | テストの点数、偏差値、通知表 | ルーブリック、行動観察、自己評価 |
| 性質 | 個人で完結する能力、競争的 | 他者との関係性で発揮される能力、協働的 |
| 構成要素 | 知識、技能、記憶力 |
1. 人を大切にする力 2. 自分の考えを持つ力 3. 自分を表現する力 4. チャレンジする力 |
| 社会での機能 | 入試突破、定型業務の遂行 | 複雑な課題の解決、合意形成、イノベーション |
木村氏は、学校現場における最大の問題は、子どもたちを「できる・できない」という「見える学力」の基準で分断し、評価することにあると指摘する。この分断こそが、子どもたちの自己肯定感を低下させ、不登校や学校不適応を生み出す温床となっている。弥富市が目指すべきは、この「見えない学力」を公教育の最上位目標に据え、数値化できない成長を価値づけるシステムへの転換である。
1.2 「スーツケース型」から「風呂敷型」へのパラダイムシフト
現行の教育システムを、木村氏は「スーツケース」に例えている。スーツケースは形状が固定されており、その形に合わない荷物(規格外の子ども)は入らないか、無理やり押し込められて傷ついてしまう。これに対し、これからの教育は「風呂敷」でなければならない。風呂敷は中身の形状に合わせて柔軟に形を変え、どのような形のものでも包み込むことができる。
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スーツケース型(知・徳・体): 学校が設定した「理想の生徒像」という型があり、そこに子どもを適応させる。適応できない子どもは「指導対象」となる。
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風呂敷型(自立・尊重・創造): 子どもの多様な実態を出発点とし、学校の環境やルールの方を柔軟に変化させる(合理的配慮)。
弥富市教育大綱において「知・徳・体」の文言を維持することは、行政として「スーツケース型」の教育方針を継続すると宣言することに他ならない。予測困難な社会においては、固定的な枠組みは脆弱であり、状況に応じて柔軟に変化できる「風呂敷型」のレジリエンスこそが必要とされる。
1.3 インクルーシブ教育における「徳」の矛盾
文京区の教育大綱改定議論において指摘されたように、「徳」という言葉は「国民の良識」や「民度の高さ」といった文脈で語られることが多く、インクルーシブ教育の理念と矛盾する場合がある。 「徳」はしばしば、集団の規律を守ることや、空気を読むことを美徳とする日本的な道徳観を内包する。しかし、多文化共生が進む弥富市において、文化的背景の異なる児童生徒に対して日本的な「徳」を求めることは、彼らの文化的アイデンティティを否定し、同化を強要する暴力性を帯びる危険性がある。 一方、本提言で掲げる「尊重(Respect)」は、相手の内面的な価値観に踏み込むのではなく、外在的な行動として「他者の権利を侵害しない」「違いを認める」ことを求める市民的契約の概念に近い。これにより、多様な価値観が共存する土壌が保障される。
第2章:新機軸①『自立』~エージェンシーの獲得と防災・生存能力~
2.1 OECDラーニング・コンパス2030における「エージェンシー」
新大綱の第一の柱である「自立」は、OECDが「ラーニング・コンパス(学びの羅針盤)2030」において中核概念として位置づける「スチューデント・エージェンシー(Student Agency)」と同義である。
定義(OECDによる):
「変化を起こすために、自ら目標を設定し、振り返り、責任を持って行動する能力」
従来の学校教育における「自立」は、「先生の言う通りに一人でできること(身辺自立)」を指すことが多かった。しかし、これからの「自立」は、正解のない問いに対して、自らの判断で進路を決定し、その結果に責任を持つ「知的・精神的自立」を意味する。 これは、OECDが提唱する「AARサイクル(Anticipation:見通し、Action:行動、Reflection:振り返り)」を、教師の指示待ちではなく、生徒自身が回すことによって育まれる。
2.2 弥富市の地域特性と「自立」の不可欠性
弥富市において、「自立(エージェンシー)」は単なる教育目標を超え、市民の生命を守るための必須能力である。
弥富市は木曽川下流の海抜ゼロメートル地帯に位置し、台風や高潮、南海トラフ巨大地震のリスクに常に晒されている。災害発生時、状況は刻一刻と変化し、マニュアル通りの対応が通用しない場面が多々発生する。
事例分析:マイ・タイムラインと主体性 弥富市では現在、小中学生による「マイ・タイムライン(個人防災行動計画)」の作成が推進されている。これは、河川の水位上昇時などに「いつ」「誰と」「どこへ」避難するかを、子ども自身が事前に計画する取り組みである。 もし、教育大綱が旧来の「徳(従順さ)」を重視し、「先生や大人の指示を待つ」子どもを育ててしまった場合、災害時に指示系統が寸断された際、子どもたちは判断停止に陥り、逃げ遅れる危険性が極めて高い。 逆に、「自立(自ら判断し行動する力)」を教育の最上位に置くことで、子どもたちは「想定外」の事態においても、自分の命を守るための最善の行動を選択できるようになる。これは、「生きる力」の最も根源的な姿である。
2.3 教育実践への展開:管理から自律へ
「自立」を育むためには、学校における日常的な指導の在り方を「管理」から「自律支援」へと転換する必要がある。
-
校則の見直し: 髪型や服装などの細かな規定を大人が決めて守らせるのではなく、生徒会やホームルームでの議論を通じて、生徒自身が必要なルールを策定・運用するプロセスを重視する。
-
授業スタイルの変革: 教師が一方的に知識を授ける講義型から、生徒が自ら問いを立て、探究するプロジェクト学習(PBL)や自由進度学習への移行。
「自立」とは「放置」ではない。木村泰子氏が述べるように、子どもが「助けて」と言える力(援助要請スキル)もまた、重要な自立の要素である。困ったときに独り抱え込まず、他者とつながる力を育むことこそが、真の自立支援である。
第3章:新機軸②『尊重』~科学的根拠に基づくインクルーシブ教育~
3.1 「徳」から「尊重」への転換の必要性
第二の柱「尊重」は、多様性が常態化する現代社会における最も重要な社会的スキルである。「徳」が内面的な心の在り方を問うのに対し、「尊重」は他者との関係性を構築するための具体的な技術である。 名古屋市および周辺地域(弥富市含む)の外国人住民統計(令和5年)によれば、中国、韓国・朝鮮、ベトナム、フィリピン、ネパールなど、多種多様な国籍の人々が生活している。このような多文化環境において、「日本的な徳」を強調することは、文化摩擦やマイクロアグレッション(無自覚な差別)を生むリスクがある。
3.2 インクルーシブ教育の学術的エビデンス
「障害のある子や日本語がわからない子と一緒に学ぶと、学力が下がるのではないか」という懸念は根強い。しかし、世界規模の学術研究はこの懸念を明確に否定している。
表3-1:インクルーシブ教育の影響に関するメタ分析結果
| 研究者・機関 | 対象・規模 | 主な知見 | 出典 |
| Szumski et al. (2017) | 47研究、約480万人 | 障害のない生徒の学力に対して、インクルーシブ教育は**「中立」または「わずかに正(プラス)」**の効果を持つ。特に小学校段階で正の効果が見られた。 | |
| Kalambouka et al. (2007) | 26研究 | 81%の研究において、障害のない生徒への学業的影響は**「中立」または「正」**であった。負の影響はごく一部(主に方法論に課題がある研究)に限られる。 | |
| Ruijs & Peetsma (2009) | 文献レビュー | 大多数の研究が**「正」または「中立」**の効果を報告。障害のある生徒と学ぶことで、社会的スキルや受容性が向上する効果も確認された。 | |
| Gebhardt (2015) | 学習成果の比較 | 特別支援学級よりもインクルーシブな学級で学ぶ障害のある生徒の方が、学業成績の伸びが大きいことを確認。 |
これらのデータは、「分けない教育(インクルージョン)」が、支援を要する子どもだけでなく、すべての子どもにとって有益であることを示唆している。多様な他者と共に学ぶ環境は、単一的な集団では得られない「葛藤」や「調整」の機会を提供し、それが結果として深い学びと人格的成長を促進する。
3.3 心理的安全性の確保と「尊重」の文化
「尊重」の基盤となるのは、学校組織における「心理的安全性(Psychological Safety)」である。心理学研究において、心理的安全性が高い(=リスクを取っても罰せられないと感じられる)クラスでは、生徒はより創造的になり、批判的思考力が高まることが示されている。
-
教員間の心理的安全性: 教師自身が職員室で「失敗できない」「評価される」という圧力に晒されていては、教室に心理的安全性をもたらすことは不可能である。
-
保護者との関係性: 保護者に対する教師の心理的安全性が低いと、教師は防衛的になり、創造的な教育実践が阻害される。
弥富市の新大綱では、「尊重」を単なるスローガンに留めず、学校組織全体(職員室、教室、PTA)の心理的安全性を高めるための具体的な施策(対話の場の設置、非暴力コミュニケーションの研修など)とセットで推進する必要がある。
第4章:新機軸③『創造』~ウェルビーイングと価値創出の源泉~
4.1 「体」から「創造」への発展的解消
第三の柱「創造」は、従来の「体(体力・健康)」を包摂しつつ、それをより高次の「ウェルビーイング(身体的・精神的・社会的に満たされた状態)」と「価値創造能力」へと昇華させる概念である。
AIが既存の知識や定型作業を代替する時代において、人間に残された最大の領域は「0から1を生み出す創造性」と「他者と共に新しい意味をつくる共創」である。単に体が丈夫であること以上に、その健康な身体と精神を基盤として、何を生み出すかが問われている。
4.2 「創造」を評価する新たな指標:ルーブリック
「創造性」や「自立」「尊重」といった資質は、数値化が難しいため、従来の学校評価では軽視されがちであった。この課題を解決するために有効なのが「ルーブリック(評価指標)」の導入である。
事例:未来創造ルーブリックのイメージ(抜粋)
| 評価軸 | レベル1(受動) | レベル2(能動) | レベル3(協働・創造) |
| 課題発見 | 与えられた課題をこなす | 自ら課題を見つける | 地域の課題と自己を接続し、解決策を構想する |
| 対話・協働 | 自分の意見を言わない | 自分の意見を主張する | 他者の意見を尊重し、統合して新しい案を作る |
| 挑戦・失敗 | 失敗を恐れて挑戦しない | 挑戦するが失敗で落ち込む | 失敗を学習の機会と捉え、改善策を試行する |
大学教育や先進的な私学では、こうしたルーブリックを用いて「見えない学力」の可視化が進んでいる。弥富市においても、独自のルーブリックを策定し、子ども自身が自分の成長をモニタリングできる仕組み(ポートフォリオ評価など)を導入すべきである。これにより、「テストの点数が全て」という呪縛から子どもたちを解放し、多様な才能を「創造」の文脈で評価することが可能になる。
4.3 地域社会をフィールドとした創造活動
「創造」の実践の場は、教室の中だけではない。弥富市の豊富な地域資源(金魚、農業、歴史文化など)や、直面する社会課題(防災、多文化共生)そのものが、生きた教材となる。 OECDのラーニング・コンパスでも、生徒が地域社会に関わり、変革を起こす経験(Transformative Competencies)の重要性が強調されている。 例えば、外国籍の住民と共に地域の防災マップを作り直すプロジェクトや、特産品を使った新しいビジネスプランを考える探究学習などは、「自立」「尊重」「創造」のすべてを統合的に育む活動となり得る。
第5章:提言の実現に向けた具体的修正案とロードマップ
5.1 弥富市教育大綱 改定案(抜粋)
【基本理念】
現行:「心豊かで文化を育む人づくりのまち」
改定案:「個が輝き、共に未来を創るまち ~自立・尊重・創造の弥富~」
解説: 「人づくり」という言葉には、教育を行政による「形成・管理」と捉えるニュアンスが含まれる。これを、市民一人ひとりが主役となって未来を創る「主体・創造」のニュアンスへ転換する。
【目指す児童生徒像】
現行:「知・徳・体のバランスのとれた生きる力」
改定案:「自ら問いを立て、多様な他者と協働し、新しい価値を創造する力」
【3つの柱の再定義】
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自立(Agency)~自ら考え、判断し、行動する力~
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正解のない問いに対し、自らの責任で最適解を導き出す力。
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災害時等の予測困難な状況において、自他の命を守るための判断力。
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助けを求め、ネットワークを活用しながら課題を解決する力。
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尊重(Respect)~違いを認め、対等に関わる力~
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国籍、障害、文化の違いを豊かさと捉え、対話を通じて合意形成する力。
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いじめや排除を許さず、すべての人が心理的安全性を感じられる場を作る力。
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インクルーシブな環境の中で、互いの強みを生かし合う協働力。
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創造(Creation)~心身の健康を基盤に、未来を拓く力~
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失敗を恐れず挑戦し、試行錯誤のプロセスから学ぶ姿勢(レジリエンス)。
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地域の課題を自分事として捉え、革新的な解決策を生み出すイノベーション力。
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ウェルビーイング(幸福)を追求し、持続可能な社会の担い手となる力。
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5.2 導入に向けたロードマップ
フェーズ1:意識改革と対話(初年度)
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「弥富市教育未来会議」の設置: 教職員だけでなく、保護者、地域住民、そして子ども自身をメンバーに加えた会議体を設置し、新大綱の理念を共有・深化させる。
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教職員研修の刷新: 木村泰子氏やインクルーシブ教育の専門家を招き、「管理」から「ファシリテーション」への役割転換を促す研修を実施する。
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心理的安全性サーベイの実施: 学校組織の現状を数値化し、改善のベースラインを設定する。
フェーズ2:制度設計とパイロット実践(2-3年目)
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「弥富市版ルーブリック」の策定: 「見えない学力」を評価するための指標を開発し、一部のモデル校で通知表への導入を試行する。
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校則・ルールの見直し: 全校で「ブラック校則」の点検を行い、生徒主体のルールメイキングを開始する。
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インクルーシブ教育推進モデル校の指定: 通常学級における合理的配慮の提供体制を強化し、特別支援教育コーディネーターの機能を拡充する。
フェーズ3:全市展開と文化の定着(4-5年目)
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新評価システムの全面導入: テストの点数とルーブリック評価を併用した新しい評価制度を全校で実施。
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「みんなの学校」化の推進: 地域住民が日常的に学校に関わるシステムを構築し、学校を地域コミュニティの核(ハブ)として再定義する。
結語
「知・徳・体」から「自立・尊重・創造」への転換は、単なる言葉の書き換えではない。それは、子どもを管理の対象から「権利の主体」へと解放し、学校を閉鎖的な訓練の場から「多様性と創造の実験場」へと変貌させる、歴史的なパラダイムシフトである。
海抜ゼロメートル地帯という厳しい自然環境の中で、弥富市が育むべきは、誰かの指示を待つ従順な子どもではなく、どのような荒波の中でも、自らの羅針盤(コンパス)を持って仲間と共に未来へ漕ぎ出す、たくましい「自立・尊重・創造」の精神を持った市民である。本提言が、その実現に向けた確かな一歩となることを確信する。
参考文献・資料一覧
本報告書の作成にあたり、以下の資料・データを参照した。引用箇所は本文中に形式で示した。
【公的報告書・計画】
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弥富市教育大綱(令和6年度~令和10年度)
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文京区教育委員会 教育大綱改定に関する会議録
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弥富市地域防災計画および学校教育基本方針
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弥富市広報(マイ・タイムライン、防災教育関連)
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名古屋市外国人住民統計(令和5年・令和4年版)
【学術論文・専門機関報告】
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OECD Learning Compass 2030, Student Agency, AAR Cycle 関連資料
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学校組織および学級における心理的安全性に関する学術論文(滋賀大学、筑波大学等)
-
ルーブリック評価および「見えない学力」の可視化に関する研究報告
-
インクルーシブ教育の学業成績および社会的影響に関するメタ分析・文献レビュー(Szumski et al., Kalambouka et al. 等)
【書籍・講演録・提言】
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佐藤ひとし公式サイト「現行の教育大綱案への提言」
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木村泰子「『みんなの学校』が教えてくれたこと」インタビュー記事
-
木村泰子講演録「見えない学力とは」
※本報告書は、専門的知見に基づき作成された提言であり、特定の個人や団体の公式見解を代弁するものではない。
city.yatomi.lg.jp
弥富市教育大綱
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city.bunkyo.lg.jp
教育指針(素案)に対する意見及び教育委員会の考え方 – 文京区
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ypir.lib.yamaguchi-u.ac.jp
学校改善の新しい取組と教育制度の 意味についての一考察 – 山口県大学共同リポジトリ
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manabinoba.com
子どもの命を守るために学校が、大人が変わらなければ。 – 教育イベントリポート | 学びの場.com
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oecd.org
The OECD Learning Compass 2030
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oecd.org
Future of Education and Skills 2030/2040 – OECD
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gradpartnership.org
Student Agency for 2030 (OECD) – The GRAD Partnership
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www2.u-gakugei.ac.jp
Video narratives that illustrate the concepts of OECD Learning Compass 2030
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city.yatomi.lg.jp
8/1 開設 – 弥富市
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city.nagoya.jp
名古屋市外国人住民統計|名古屋市公式ウェブサイト
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nemtss.unl.edu
The Evidence for Inclusive Education: An NeMTSS Research Brief
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tandfonline.com
Full article: The benefits of inclusive education: a systematic review of student achievement in secondary schools – Taylor & Francis
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edu.yamanashi.ac.jp
主体的・対話的で深い学びの土台としての心理的安全性 – 山梨大学教育学部は
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iwakuni.ac.jp
ルーブリックの活用による保育実践力の向上について – 岩国短期大学
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humanlink.info
学校独自のルーブリック – ヒューマンリンク
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city.yatomi.lg.jp
令和7年度 弥富市学校教育基本方針
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note.com
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pmc.ncbi.nlm.nih.gov
The effects of inclusion on academic achievement, socioemotional development and wellbeing of children with special educational needs – NIH
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allmeansall.org.au
Inclusive Education – What Does the Research Say?
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satohitoshi.info
【提言】弥富市教育大綱への抜本的見直し~「知・徳・体」の呪縛を解き
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